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13話 私もお役にたちたいです

 旅を始めて半年ほど経ちました。私は教会があればお祈りを捧げてお布施をお渡しして、恵まれない子供への助力をお願いしました。薬を渡すことも考えましたがガーラン商会に大きな商会になってもらうことを最優先することにしました。その埋め合わせと言ってはなんだけど、教会で把握している病で困っている人のところへ出向いては、回復魔法をかけてあげることはしたのです。私はその度に教会でのお祈りと気持ちだけでもいいのでお布施をおねがいしました。なので教会の総本山ともいえる神聖教会からは、聖女様は敬けんな信者として認められ旅の手助けをしてくれるようになっていました。きっとお金を稼いできて、宣伝もしてくれる人って認知されたのでしょう(笑)


 亜人の奴隷を救って人間の奴隷を救わないのかと反論されるかもしれないわね。でも亜人の奴隷は人間が押し付けたもの。人間の奴隷は人間間の争い。どちらも何とかしたいけど、とりあえずは亜人は私、人間は教会にお願いで私の中の折り合いをつけたのです。


 訪れた町や村にガーラン商会の支店があればガリオスさん宛にお金と手紙を渡し、亜人の奴隷を購入しては月のドラゴンが住まう山に送り届けてもらっていました。調合した薬もお渡ししておきました。支店の人には次はどこどこ支店に伺う予定ですとお伝えしておきます。そうすると、ガリオスさんが先回りして手紙を届けておいてくれることがあるのです。なかなかいい連携が取れるようになりました。


 一方の本業である旅の進捗は、私の印象では時間ばかりが過ぎてそれほどの成果をあげられていないというのが正直なところです。問題なのは人が立ち入らない場所にまでかき分け入ったりよじ登ったり必死になって到着してみれば、何もありませんでしたって結果なことが多いことです。これは誰が悪いでもなく効率が悪いだけです。私は適材適所を提案したいのですが、私のこの提案が採用されると、キリエさんにもの凄く負担を強いることになるのが予想できます。でもダラダラ細く長く旅をするよりは皆さんのためにもなるのかな?とも思い、悩み中です。


 四六時中一緒にいるので、キリエさんやルルーさんには私の様子はすぐ感づかれてしまいました。今日もキリエさんが私の隣に腰かけて、お話しくださいと心配をかけてしまったようです。



「キリエさん、私はキリエさんもルルーさんも心から信頼しています。私が困っていてもお2人は必ず助けてくれるのです。だからキリエさんにとてもお話ししにくいのです。でも、私の話しを聞いてほしいのは、やっぱりキリエさんとルルーさんなのです」


「何か私にもかかわることなのですね。いいですよ、何でもお話しください」


「この旅は、皆さんで同じ場所を目的にしているのでとても効率が悪いです。なので役割を分けてはどうかと考えました。村や町を訪ねて情報収集をする人たちと、穢れや邪獣を探す人たちにです。穢れや邪獣を探すのは私の得意な部分です。なので私がこの役目を負いたいと思います。ただ、私が1人では皆さんが納得されません。そうなると私の護衛にキリエさんにお供を頼むことになってしまいます。前にも2人でなら単独行動もお許しが出ましたし」


「なるほど、アリス様の石馬なら人が歩いて行くには苦労するところでも、ササっと行って魔眼で調査してササっと戻ってこれますからね。いいアイデアだと思いますよ」


「でも、ずっとキリエさんが私の面倒を見ることになります……」


「それはお互い様です。ただ、1つだけ心配なのは眠るときです。王宮にいたときに、練兵場でアリス様が大きなお部屋の箱を出されたことがありましたね。あれを小さな2人用のお部屋にすることはできませんか?あの箱なら頑丈で獣に襲われたところで問題はないのですよね?」



 うーん、知りません。エリアス、どうなの?そう聞いてみると、問題ないとのことでした。おまけにエリアスはお部屋を作るのも手伝ってくれるとのことで問題は解決です。ついでに石馬もキリエさんが乗りやすいように手直ししたいと頼んだら、これもエリアスに笑いながら了解をもらえました。キリエさんに少しでも快適に過ごしてほしいもの。



「キリエさん、お部屋は獣に攻撃されても問題ないようです。新しくお部屋を作る必要がありますが、それほど時間はかからないと思います」


「では、私とアリス様からの提案ということで、皆さんにお話ししてみましょう」




 今夜は外での野営になっています。ハーデンさんとガリスさんが薪を探してきてくれて、私の携帯かまどに薪をくべてくれました。旅の最初の頃は石を組んで焚火をしていたの。でも焚火って意外に不便で私のかまどが使われるようになりました。かまどだと上にやかんを乗せておけばお湯も沸いているし、多少は囲われているので雨風にもそれなりに堪えてくれるのです。なのでかまどの1つは常に焚き火用となっていました。その焚火代わりのかまどを囲んで皆さんと食事をしている中で、キリエさんが私と話したことを皆さんに提案してくれました。リーダーのハーデンさんは熟慮中のようですが、驚いたことに普段は大人しいガリスさんが猛反対。もちろん反対の理由は私とキリエさんが危険だからです。2人では危険な状況になっても回避をするのも一苦労。一方パーティーで固まっていれば少なくとも聖女の私は逃がすこともできるって言い分でした。私が皆さんを置いて逃げることはないのですけど、今は大人しくしておきましょう。キリエさんが私の石馬と魔眼を使った探索がいかに安全かを力説してくれたけど、ガリスさんはそれでも譲る気はないようです。


 私は皆さんに1つ提案をしました。どれほど安全かを皆さんに見てもらいましょうと。皆さんの目の前から私とキリエさんが石馬に乗り込んで森を上空から探索します。魔眼を使って獣なり穢れなりを見つけたら皆さんのところに戻ってきます。もちろん皆さんが目視できる範囲で空を飛んでの探索をします。それで皆さんに安全かどうかを判断してもらうのです。


 ハーデンさんがまずは見せてもらってからと結論を出したことで、ガリスさんもその方向で渋々了承してくれました。私は皆さんにありがとうございますと言って、ペコリと頭を下げました。こんなことでパーティー内にしこりが残るのは嫌なのです。皆さんいい人たちだからね。




 翌日は森の近くで昼間から野営をしてもらいました。皆さんは武器や防具の手入れをしながら私とキリエさんの様子を見てくれるそうです。私とキリエさんは石馬に乗り込みいってきますと伝えて空に向けて上昇。森の木を超える高さまで上昇して魔眼を使いながら森の探索を始めます。私は獣や穢れを見かけてはキリエさんに報告しました。細かい穢れは聖女の魔法で払ってしまったけど、獣についてはどうしよう?倒すことはできると思うけど、食料になることも考えるとそのままがいいかしら。少なくとも穢れを払っておけば、もう探索は不要で獣から食料を得る狩りみたいなものだものね。


 探索を進めていると1つ問題が。邪獣を見つけたの。私の魔法で払うことはできるけど、皆さんに報告する必要もある。キリエさんと相談すると後回しにしましょうとなった。細かい穢れは私が払って、大きな穢れや邪獣は皆さんのお力を借りることになりました。


 森の探索を済ませると、皆さんのいる場所に戻ります。キリエさんがハーデンさんに森の様子を報告。このまま道を進んで最も近い場所から森の中に入り、邪獣を討伐する方針がハーデンさんから告げられました。皆が出発準備を整え目的地の森の入り口に向かいます。


 森の中に入ると獣はそのまま放置しておいたので、獣は討伐する必要があります。私は人に対しては反重力の魔法はとても効果的だったのを思い出し、獣についても反重力の魔法を試させてもらうことにしました。私は魔眼で獣をみつけ魔法でエイッ!と私の背よりも高く浮かせます。皆さんにあちらですと方向を指示して先に進むと、空に浮いている四つ足の獣がいます。もちろん皆さんはあんぐり口を開けて驚き顔。ハーデンさんが急所に向けて剣を突きだすと、あっさり討伐完了です。


 今度はハーデンさんに腰のあたりまで倒した獣を降ろしてほしいとお願いされ、私は言われるまま獣を下に降ろしたら、ハーデンさんは浮いている獣をさばき始めたの。ガリスさんも手伝って肉を処理していたけど、私は目の前で解体されていく獣の姿を見ていられなくなったのです。ルルーさんがそばにおいでと手招きしてくれて、私の視界から獣を見えなくしてくれました。怖くて震えている私を、ルルーさんはよしよしと子供をあやすようにして落ち着かせてくれました。慣れなければいけないのでしょうけど、すぐには無理だと思います。しばらくは見ない方向で対応します。加工が済んだお肉はハーデンさんがいつも肉を入れて運ぶ袋に今回も入れて担いでいました。


 こんな感じで先に進むのに排除しておいた方が安全な獣は倒して進みます。食料になる獣の肉は加工して持ち帰り。食べられない獣は私が魔法で土に埋めました。こうして邪獣までの道のりはとても速いペースで移動しました。


 ようやく邪獣に魔法が届く距離までたどり着きます。私の案内はここで終了。後は皆さんの指示を受けて私も動きます。ラミアさんが守護の魔法をパーティー全員にかけてくれて。男性3人が前を歩き始めます。位置についたところで、ガリスさんが前に出てでんと大きな盾を構えます。その後ろからランツさんが黒魔法で攻撃を仕掛けて戦闘が始まりました。前で戦ってくれている人は邪獣の動きを鈍らせるために戦ってくれています。動きが鈍くなったところで私の魔法で払うのが最終目的。簡単に言えば私が魔法を当てられるくらいに邪獣を弱らせてくれているのです。私がもっと巧みに魔法が使えれば、皆さんにこんな危険なことは頼まなくていいのに……自分がふがいないです。


 ただ、今日の私は冴えていました。いつもはドバっと大量に聖女の魔法を叩きつけて払っていましたが、払うのではなく弱らせる目的で聖女の魔法を使ってみることを思いついたのです。イメージは霧のように薄く聖女の魔法の中に邪獣を捕らえておいて、徐々に邪獣の穢れを払っていくのです。私は皆さんに霧を発生させますと警告をして、この辺一帯に聖女の魔法の霧を発生させました。うっすら白く霧に包まれたけど、戦っている皆さんは集中したまま。ただ、邪獣の動きは時間がたつにつれ明らかに鈍ってきました。私でも大丈夫と確信が持てたところで私も邪獣の近くに向かいます。キリエさんもついてきて横で最大限の警戒をしてくれます。私はいきますと皆さんに告げて、聖女の魔法を邪獣に叩きつけました。大きな光の玉に飲み込まれた邪獣は、光が消えるとともに邪獣の姿も消えました。前衛の皆さんは歓喜の声を上げていたけど、ルルーさんは私の横に駆け寄ってきてくれて、私の体調を気にしてくれました。いつもの討伐より多くの魔法を使っていたから心配をかけてしまったのね、ごめんなさい。私はルルーさんに大丈夫ですと言ったのだけど、ルルーさんはハーデンさんにここで休憩を進言しました。前衛の皆さんも休憩した方がいいので、ここでしばらく休憩になりました。


 皆さんが水筒で水を飲んだり軽食を食べたりし始めます。私も水筒から水を飲んで街で買っておいたクッキーを食べることにしました。皆さんにもおすそ分けすると、甘い物にもかかわらず男性も手を出してきました。疲れたときには甘いものですよね(笑)




 目的の邪獣は討伐完了、晩御飯のお肉もゲット!いいことずくめの森の探索を終えて森の外へ向かいます。森の外の安全そうな広い場所まで戻ったところで、今日は早々に野営です。女性がお肉を料理して男性はお肉を日持ちするように加工していました。私はあまりお役に立てないので、大人しく火の番をしていました。もちろん隣にはキリエさんが私を守ってくれています。



「アリス様、魔力の負担は大丈夫でしたか?今日はかなり魔法を使われていましたけど」


「ご心配ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。私はこれでも聖女ですからね」


「聖女を過信してはいけませんよ。肝心なときに聖女の力が使えないでは、前衛の皆さんにも負担をかけることになります」



 うーん、キリエさんの言われることはもっともです。私がとどめを刺さないと、皆さんはいつまでも戦い続けなければならないですよね。うん、もう少し周りのことも気にするように心がけます!


 肉の加工を終えた男性たちが戻ってきて、かまどの近くに腰を下ろしました。今日はお肉をつまみにお酒を飲む気満々のようです。調理を終えたラミアさんとルルーさんも山盛りのお肉を乗せたお皿を両手に持ってかまどのそばに到着です。皆でいただきますと言って、手にしたフォークでお肉を刺して、そのまま口の中へ。アツアツと言いながらおいしくいただきました。私も少しお酒をいただいてみたら、皆さんが飲んでいたお酒はとても強かったの。けほけほとむせていたら、まだ子供だなって目で見られてしまいました。これでも15歳の立派な成人です!


 皆さんがある程度お腹を満たすと、食事もお酒ものんびりペースになり、今日の森の探索についての話しになりました。まずハーデンさんは私が魔法の工夫をしてくれて、探索の危険性を減らして移動をスムーズにしてくれたことと、獣の戦闘は危険度はなくなり、邪獣の戦闘では霧によって邪獣の動きがみるみる遅くなったことに感謝をしてくれました。私は皆さんのお役に立てたのなら嬉しいですとお返事しました。ガリスさんも森の上空から安全に敵の探索をしていたのを見ていてくれて、キリエさんが同行しているなら大丈夫だとお許しをくれました。私が嬉しくてちょっぴり涙目になっていると、ハーデンさんが今日の大活躍のご褒美だと言ってお肉のお皿を私の前に置いてくれました。私はそんなに食べられません!と言ってお皿をハーデンさんの前に戻すと、男性3人はこれからが食事の本番とばかりにお肉に手を出していました。底なしの胃袋です(笑)


 今日の戦闘で、私もようやく皆さんのパーティーの一員になれた気がして嬉しかった。もっと皆さんに頼られて、その期待に応えられる存在になりたいです。


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