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12話 鬼の形相のガリオスさんと白いバラ飾り

 私がガリオスさんから奴隷の首飾りの説明を受けている間に、他の亜人の子供たちも集められました。命の危険があると言っていた子たちは、どの子も幼い子供でした。すぐにキリエさんにお願いして、子供たちに薬を飲ませてもらいました。


 新しく呼ばれた子供たちは、正直汚い身なりに悪臭もしています。下の階から連れてきていたようですが、ここの階よりさらに劣悪な環境なのでしょう。うーん、言いたいことは山ほどあるけど、今は冷静に冷静に!



「ガリオスさん、さすがにこの子たちが聖女の奴隷では、聖女の名が笑われてしまいます。どうすればいいですか?」


「奴隷を出荷するにも、買い手の方のご身分もございますので、それなりの服装も用意しております」


「分かりました。追加の子の契約のときに説明をお願いします。この子たちのことはお任せしても大丈夫ですか?」


「はい、聖女様。体を洗って着替えをさせ、食事もさせておきます。聖女様からその分のお支払いもしていただいておりますので」



 再び階段を上り応接室に戻ったところで、契約書にサインをしてお支払いをしました。お部屋にはいくつかの服が用意されました。ここに並べられたのは高級な服ばかりなのでしょうけど、必要な服はそういう服ではありません。



「ガリオスさん、あの子たちは月のドラゴンが住まう山に供物として捧げます。始めは山の管理をするために働くようなので、丈夫で動きやすい服が第1、ただ、ドラゴン様のおそばにお仕えするのですから、粗末な物ではいけません。それと申し上げにくいのですが、最後はドラゴン様が……金属類が使われていない服がいいでしょう」



 ガリオスさんはなるほどと察してくれて、新しい服の指示を店員さんにしてくれる。持ってきてくれた服はメイドさんと執事さんのような服だった。これなら動きやすくて人と会っても嫌な印象は与えないでしょう。



「ガリオスさん、この服でお願いします。これもお支払いを済ませてしまいましょう。それと、今後もガーラン商会さんで奴隷を購入する際にはこの服を着せて、月のドラゴンが住まう山まで送り届けるまでを私の奴隷商品としてください」


「聖女様は今後も亜人をお買い上げになるのですか?」


「はい、そのつもりです。今のところガーラン商会さんでお世話になるつもりですが、他の商会も誠意を見せてくれれば、そちらにお取引をお願いすることもあるでしょう。なのでガリオスさんも、私との取引に魅力を感じなければ、ぞんざいに扱っていただいてかまいません。それが商売ですものね」


「あはは、聖女様は手厳しい。まるで商人のようですよ。ガーラン商会としては今後も聖女様とのお取引は続けさせていただきたいと考えております。奴隷売買のことでなくとも、何なりとご明示ください」


「ありがとうございます。では、さっそくお言葉に甘えてガリオスさんにお願いしたいです。私についての噂を広めて欲しいのです。私が亜人をペットとしてかわいがる趣味があること。ペットに飽きると月のドラゴンが住まう山に供物として捧げてしまうこと。さらにかなりの目利きなうえに、亜人とも直接亜人の言葉で話せるので、ごまかしやふっかけが通用しないこと。なので聖女に目をつけられたガーラン商会さんは聖女の対応で苦労しているまで付け加えればいいですかね?」


「世の中にどんな反響が起こるのかは予想できませんが、聖女様のお願いですので対応いたします」


「もしもこのことでガーラン商会さんに損なことになれば、そのときは私が別の方法で穴埋めはさせていただきます。まずは私を信じてお力を貸してください」


「かしこまりました」



 私はガリオスさんと今後もよろしくお願いしますと握手してお別れした。3人はガーラン商会の皆さんに見送られて旅を再開するのでした。




 皆さんとは森で合流。念のため私の魔眼で穢れを確認して、皆さんが手分けして小さな穢れも払ってから先に進みました。しばらくはいつも通りの旅が続きました。


 異変を知らされたのは、ガーラン商会を出て3日後でした。エリアスが私に教えてくれたのです。亜人の子供たちが連れ去られたと。私は頭に血が上ってすぐに助けに向かう気満々。そんな私の変化を察知したルルーさんに、まずは落ち着いてくださいとなだめられて深呼吸。皆さんに事情をお伝えしました。もちろん皆さんはどうしたものかと言われたのですけど、私の考えはいとも簡単。私が石馬を飛ばして子供たちを救出。ガリオスさんと相談して後の対応をお願いして、皆さんに合流。それほど時間はかかりませんとお話ししました。もちろん私1人の単独行動はダメ。でも、石馬の最高速は馬ではとてもついてこれないのです。うーん、困りましたね。


 そんな中、キリエさんが軽く手を上げ、私がアリス様の石馬の後ろに乗せてもらって、行動を共にすればいいでしょうと提案してくれました。私はその提案を聞いて、エリアスに確認してみました。過去にも聖女様は石馬の後ろに人を乗せて移動したことがあったようです。念のため後ろの人と体を紐で結んだようですが(笑)私がそのことを皆さんにお伝えすると、皆さんもそれならと許してくれました。ちなみにエリアスにこの場所まで帰ってくる案内は可能かと聞いたら、任せてくださいって請け負ってくれました。頼りになりますなぁ(笑)


 ハーデンさんの行ってこいの激励で、私とキリエさんは石馬で飛び出しました。言葉のとおり飛んでます。何事も動じないキリエさんもさすがに空を飛ぶのはビビッています。まずはエリアスに教えてもらった襲撃現場に向かって全力で飛びました。おかしなことに結構街から近い位置なのよね。これなら騒動を聞きつけて誰かしらが王国軍に伝えてくれてもよさそうなのですけど。キリエさんと辺りを見回しても、争った形跡すらない。うーん、どうしよう。困ったときのエリアス頼み。エリアスが必死に探してくれた結論は街に戻っているのでは?でした。ただ、微弱な痕跡が街に向かっているだけなので、街に行ってみないと詳しいことは分からないようです。仕方ない街に戻ってみよう。


 再びキリエさんと石馬に乗って街を目指します。さすがに街に飛んでいくと目立つので、地上を高速で進むことにしました。街の門を通り過ぎて街の中へ。エリアスに確認をお願いすると、私が知らない街のはずれの辺りにいそうだととの報告をしてくれました。ここで私は考えます。そもそもガーラン商会が悪さをしたのか、本当に賊に奪われたのかを。うーん、悩むよりガーラン商会さんで聞いてみましょう。私とキリエさんはガーラン商会を訪ねることにしました。


 さすがにキリエさんは最大の警戒態勢で辺りを見回してくれています。私とキリエさんの姿を見かけて、先日お話しした店員さんがすぐにガリオスさんを呼んできてくれました。挨拶をしようとするガリオスさんに、すぐに私は状況をお伝えしました。普段は穏やかな表情をしているガリオスさんが鬼の形相になって人を集めだします。その間にガリオスさんは事情を説明してくれました。


 ガーラン商会さんは私の依頼をしたとおりのことをしてくれたそうです。皆をお風呂にいれて、着替えをさせて、食事をとらせてくれたみたいです。ただあいにくとガーラン商会さんの荷車が出払っていて、街を出発できるのが数日後になりそうだったとのこと。聖女様からの依頼でもあるため、ガリオスさんは知り合いに奴隷を送り届けることを依頼されたそうです。それも聖女様が購入された大切な商品だと付け加えて。なので、ガリオスさんは依頼した商会さんに裏切られたと言って怒り心頭のようです。ガリオスさんいい人そうだけど、怒るととっても怖いのね(汗)


 ガリオスさんは聖女様、準備が整いましたと言って私とキリエさんを案内しながらお仕事を頼まれた商会に向かいました。大人数が商会の入り口に集まり、鬼の形相のガリオスさんが現れたので、商会の皆さんは大慌て。会長と思われる人がガリオスさんのところへ歩み寄り、何やらお話しをしていました。今度はもう1人の会長さんも鬼の形相になり、こちらの商会の店員さんも集められて、されに大人数が集まりました。


 もう私もキリエさんもどこに向かっているのかも分からない状況の大勢での大急ぎの移動です。ただ、移動している道すがら、ガリオスさんが状況を説明してくれました。ガリオスさんが仕事を依頼した商会は、戻ってくる予定だった荷車が故障してしまって、戻ってこれないとの報告を受けたようです。大商会からの大切なお客様と念を押されていた依頼だったので、こちらの会長さんも大急ぎで荷車を準備できる店を探してくれたそうです。ただ、知り合いのお店には荷車はなかったとのことで困っていると、知り合いの知り合いという業者を紹介されたそうです。料金は高めだけどすぐに荷車も出せると言うのでお願いしたそうです。おまけに知り合いにも口利きのお礼に少しお金を手渡したそうです。事情を聞いている間にエリアスにも声をかけられました。正確な居場所が分かったようです。私がそのことをガリオスさんにお伝えすると、ガリオスさんは皆さんに行先を告げてその場所に向かいました。


 到着したのは倉庫街のような場所。ただ、大きな倉庫街の横の小さな倉庫街と言った感じの場所でした。入り口には柄の悪そうな見張りと思われる人が立っていました。私も魔眼で見てみると、女の子たちの姿が確認できました。ガリオスさんには止められたけど、私はキリエさんと2人だけで倉庫の入り口に向かって進みました。もちろん見張りの2人は私たちのことを入れまいと扉の前に立ちはだかります。



「ごめんなさい。私の奴隷がこちらにいるようなので連れ帰ります」


「そんなもんはいねえよ、とっとと帰りな」


「いいえ、こちらにいるんです。えーと、地下の奥のお部屋のようです。連れて帰ります。邪魔をされるのなら私の所有物を盗んだということにしますがいいですか?」


「そんなものはいねえと言ってるだろう、痛い目を見たくなけりゃとっとと帰りな」


「いいえ帰りません。皆を連れて帰ります。そこをどいていただけないと、あなたたちを排除することになります」



 もう見張りの人たちは暴力に訴えてきました。仕方がないので私は反重力の魔法で2人の体を屋根の高さくらいまで浮かせてしまいました。この魔法だと手出しをされないし相手も傷つけなくて安心です。扉も鍵かかかっていたので、これは壊して進みましょう。扉は風圧をかけて室内へ向けて吹き飛ばしてしまいました。扉は後程弁償しますね。魔眼で物音に驚いてこちらに向かってくる人が6人いることを確認。私は大きな声で、私の奴隷を返してくださいと伝えたら、皆さんがこちらに殺到してきました。うーむ、これも反重力で天井に張り付いてお待ちいただきましょう。地下にも4人ほどいるようなので、遠隔から失礼して天井に張り付いていただきました。ここでいったん私とキリエさんは皆さんのことろへ戻ります。もちろん皆さんは不思議そうに私と上空に浮いている人を交互に見ていました。



「ガリオスさん、取り急ぎ空に浮かせたり天井に張り付けたりしておきました。皆さんのお力を借りて捕らえてもらえますか」


「かしこまりました」



 まずは空を飛んでいる人を1人こちらに連れてきます。もちろん飛んだままです。下向きだと攻撃されても嫌なので、くるりと半回転さえてお腹を空の方へ向けました。皆さんが取り巻く中へゆっくりと降ろしていきます。下の人たちが手も足も掴んでくれたのでもう安心です。ガリオスさんが指示を出してくれて、空中に浮いたまま手足を縛ってくれました。縛り終えたところで反重力の魔法を解除、ドスンと落ちればぐえって声がでていました。おほほ、失礼いたしました。


 この調子で次から次へと空に浮かべたまま連れてきて1人ずつ縛ってもらいます。地下から浮かせて来るときに、壁にごつんと頭をぶつける音が聞こえたの。ちゃんと確認してあげないと怪我をしそうね、ごめんなさい。


 中にいた人を全員捕らえたところで、エリアスにも確認をしてもらいます。エリアスももう安全とお墨付きをくれました。私が中に入ろうとすると、キリエさんとガリオスさんはそれはダメだと止められました。中の状況によっては、私がショックを受けることを気にしてくれたのかもしれません。それに魔眼で見た限りでは、私の奴隷の他にも何人もの奴隷がいたみたいですし。


 ガリオスさんが中のことは任せて、私はキリエさんとここで待機してほしいとお願いされました。私はガリオスさんに死にそうな子がいたら薬を飲ませたいのでここに連れてきてほしいとお願いして、請け負ってもらえました。ガリオスさんは縛った人たちから牢屋の鍵を探して、見張りの人を残して倉庫の中に入って行かれました。そのうち救助された子供たちがぽつりぽつりと私たちのところに歩いてきました。大きな女の子は小さな子を抱っこするようにしながら歩いてきました。私は両手をいっぱいに広げて子供たちを向かい入れ抱きしめます。



「無事で本当によかった。怖い思いをさせてしまってごめんなさい」



 私は順番に皆を抱きしめながら謝罪をして回りました。ただ、幸いなことに暴力などは振るわれていなかったようで、それだけは安堵しました。私の奴隷の子供たちの後に、他の子どもたちも地上に連れ出されました。ただ、この子たちは悪人の商会とは言え悪人の持ち物に変わりがありません。皆さんもそのことは承知していて、逃げないように警戒はしているようでした。私は気にせず1人1人に声をかけました。どこか痛むところはとか、欲しい物はないかとか。お水が欲しいという子が多かったので、リュックからカップを取り出して、魔法で水を注いで渡しました。順番にゆっくり飲んでもらいながら、他の子の様子も確認して回りました。全体的に飢えてはいたけど暴力は振るわれていないようでした。




 ガリオスさんが戻ってこられたところで、今後のお話しをしました。ガリオスさんは王国軍に突き出すと言われたけど、私がその場合の奴隷の子供はどうなるのか聞くと分からないとのことでした。王国軍が連れて行くのは間違いないようですが、その後のことは庶民には分からないようです。うーん、それじゃどうしたらいいの?いっそのこと、私がこの商会から買い取ってから王国軍に引き渡せばいいかしら?私がそう提案すると、ガリオスさんは聖女様は人が良すぎますと鼻で笑われました。ガリオスさんこそ失礼です!


 そもそもどうしてこんなことをしようとしたのか聞いてみたら、亜人好きの聖女様ならお気に入りの亜人を人質に身代金を要求すれば、払ってくれるだろうと考えただけのようです。まさか倉庫に乗り込んできて、天井に押し付ける魔法まで使うなんて、想像もできなかったようです。お転婆な聖女は想定外だったのね。


 ガリオスさんはキリエさんと話していたけど、結局は私がどうしたいかを決めて欲しいとのことでした。私は正直奴隷の子たちが無事なら何でもいいとお答えしました。実はガリオスさんも信用にかかわる問題なので大事にはしたくないようだです。うん、それなら簡単ね。この件はなかったことにしましょう。もちろん私の依頼の商品の発送に手違いを起こした皆さんにはペナルティーとして、ここの商会で所有している亜人の子たちは私の奴隷として献上すること。私はその子たちを受け取って、配達上のミスだったことを受け入れて不問とすること。もちろんどの商会のことも問題にはしません。こんなところでいかがでしょう?後のことは皆さんでうまいことやってほしいと言うのが本音なのですけどね。


 結果としてはこうなりました。罪を犯した商会は亜人の奴隷契約を破棄して私の奴隷にすること。ガリオスさんが仕事を依頼した商会には、ここで助けた子供たちをご自分の荷車で確実に送り届けること。ガリオスさんにはここで助けた子供たちの服と旅の間の食料の提供と、もともと私が頼んでいた子供たちを送り届けることをご自分の商会の荷車で確実に送り届けることにでした。どの商会の皆さんも了解をしてくれて、この件は終了です。




 ガーラン商会に戻ると店員の皆さんが手分けして連れ帰ってきた子供たちをお風呂に入れてくれました。その間に商会から預かってきた奴隷契約の書類に私がサインをしました。すべての書類にサインをすれば、すべての子供たちが私の奴隷となりました。私がホッとしていると、ガリオスさんは私にきちっとした謝罪を始めました。私はひと通りの謝罪の言葉を聞いて、もう終わりにしましょうと伝えました。


 ガリオスさんは私の奴隷を取り返そうと真摯に動いてくれたり、私が倉庫に入るのを止めてくれたり、連れ帰ってきた子供たちをすぐにお風呂に入れてくれたりと、ちゃんと誠意は見せてくれました。まだ完全に信用した訳ではないけど、誠実な人なのは間違いないです。少しご褒美も必要よね。


 私はリュックの中からムーンストーンの白いバラを取り出します。それをガリオスさんにお渡ししました。



「ガリオスさん、そのバラの飾りは聖女がお世話になった人に、感謝のしるしとしてお渡ししている物です。王宮でお世話になった皆さんには髪留めにつけてお渡ししたのですが、男性には何に加工してお渡しすればいいのか分かりませんでした。なので、ガリオスさんがお好きな物につけて加工してください。それを身に着けて堂々と、聖女様に亜人の仕入れを任されている商会だと宣言していただいて結構です。ただ、私としてはガーラン商会さんには奴隷商は聖女様のペットの仕入れだけにしてもらって、薬の販売業を担当してほしいです。ゆっくりでいいですから、私に協力して人々を救う商会になっていってください」



 私はそういうと、30包の薬もお渡しした。



「この薬は、たぶんなんにでも効くと思います。さすがにお亡くなりになられた人は無理でしょうけど。このお薬をどう使うかを楽しみにしています」


「聖女様のご期待にお応えできるよう、努力をしていくことをお約束します」


「私も協力します。ゆっくりやっていきましょう」



 聖女の手足として動いてくれるガリオスさんとはこうして出会いました。ガリオスさんの活躍はもう少し先のお話しになります。


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