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華那……たった十円の奇跡  作者: 梓理(あずおさ)
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第四十八章 利昭の縁談

 妻の葬儀が終わって、早いもので三ヶ月が過ぎた。妻の死後子供たちをどうするか親戚の間で葬儀の時からひそひそと利昭の縁談話が持ち上がっていたが、三ヶ月を過ぎたあたりから急に周囲が騒がしくなった。

「あんた、姻族関係終了届は出したの?」

 お節介な伯母が利昭に電話をしてきた。妻が死亡すれば自動的に婚姻関係は消滅するのだが、死別したままにしておくと、妻の親戚関係と縁が切れておらず、再婚後死亡した妻の親戚の者が突然何か言ってくることがあったりする。伯母はそれを言っているのだ。

「そんなものを出さないといけないんですか?」

「あんた、再婚する気があるなら綺麗にしておいた方がいいわよ」

 利昭は納得がいかなかった。長い間闘病生活が続いて、実質上利昭の妻としての役割を果たしていなかったとは言え、利昭は死後も毎日位牌に手を合わせているし、心の中ではまだ妻を想っていた。

「どうなの? 子供たちのために再婚するんでしょ?」

「はい。一応そのつもりですが、まだ気持ちの整理ができないですから」

「バカねぇ。いつまでくよくよしているの。そんなだと再婚は出来ないわよ」

 利昭は電話を早く済ませたかった。この伯母は以前からお節介焼きで苦手だ。

「いい人がいれば……」

 伯母はその言葉を待っていたかのように、

「橋本絹江と言う今年三十九になるいい子がいるのよ。先方ではあんたに会ってみてもいいって言ってるのよ。会ってみない?」

「子供が二人もいること、知ってるのかなぁ」

「大丈夫。葬式の時に呼んでおいたから子供たちを見てるわよ」

 こう言う所が伯母の嫌いな部分だ。妻を見送る最中からそんなことをしていたなんて許せないと思ったが、ここで断ると後がうるさい。それで、

「会うだけでいいなら会ってみます。先方が気に入るかどうか分かりませんが」

 さっさとお見合いの日程まで決められてしまった。


 お天気の良い日曜日、利昭は伯母が指定してきた場所に出かけた。利昭の両親は他界していないので、独りで出かけた。子供たちは家で咲恵が面倒を見てくれている。

「ちゃんと時間通り来たわね」

 伯母はご機嫌が良い。

「加藤利昭と申します。よろしく」

「こちらは前に言っていたお嬢さんよ。×(ばつ)なし、彼女は未婚だけどあんたと付き合ってもいいそうよ」

「子供がいますが、それでも?」

 と絹江の顔を見た。

「お兄ちゃんも妹さんも可愛らしいじゃない。あたしは子供好きですから構いませんよ」


 結局伯母に押し切られて結婚を前提にお付き合いをすることになった。利昭は今まで咲恵に良くしてもらって、このままずっと子供たちと一緒に居てくれればいいのにと思ってはいたが、おそらく咲恵の両親が納得しないだろうと考えて、この際咲恵にはっきりと話をして別れてもらおうと思っていた。


「咲恵さん、どうしても話したいことがあるんだ」

 いつものように咲恵が作ってくれた夕食を済ませてから利昭は改まって咲恵に話を切り出した。

「何か特別なお話?」

 咲恵はこの時、きっと自分との結婚についての話じゃないかと思った。

「今まで子供たちに本当に良くしてくれたけど、突然再婚の話が持ち上がってね、本当に済まないんだけど、僕と別れて欲しいんだ」

 咲恵は仰天した。再婚するなら自分しかいないと信じていたからだ。

「あたし、翼ちやんと雛ちゃんと別れるなんて考えられないよぉ。どうしてあたしじゃダメなの」

「僕の本当の気持ちは咲恵さんが好きだし、子供たちも母親以上に懐いているから別れたくないんだけど、あなたのご両親がこんな男と結婚するなんて話には絶対に同意なさらないと思うんだよ。咲恵さんはご自分の気持ちに素直だけれど、ご両親にしてみれば晴天の霹靂(へきれき)でとても許せる問題じゃないと思うんだ」

「あたし、親が大反対しても絶対に利昭さんと別れたくないから」

 利昭が予想した通りだ。咲恵はポロポロと涙をこぼして利昭に縋り付いた。

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