表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鏡界館  作者: 織優幸灔
三章
97/155

7.準備

 会議が終わり、日蔓と線蓮と寒白の三人は(おどろ)に引きずられて行った。天葵(てんぎ)家との武力なんちゃらがあるらしい。なんて言ってたっけな。




 未優と優羽は日蔓に言われた通り、界魔の塔に向かう。静璐がそこにいるらしい。




 フードを被った未優は、ずっとにこにこ笑っている優羽に近付かないように歩く。なんだろう、物凄くやりにくい圧がある。


 日蔓の他人を寄せ付けない圧倒感とは違う、有無を言わぬ圧。





 ずっと見てくる優羽を時々睨みながら歩いていると、後ろから足音が聞こえた。


「未優!」


 日蔓の声そっくりの声で後ろから飛びつかれそうになったのを飛び退いてかわした。



 飛んできた尊音(たかね)を優羽が支え、未優はそれを睨む。


「なんで飛び付いてくるの」

「騙されるかなーと思って」

「騙されるわけない」

「さすが」




 三人で界魔の塔に入り、未優先頭で階段を登り始めた。



「未優、支配人が君に執着する理由知ってる?」

「知らない」

「静璐が異様な力を持つ理由は?」

「知らない」

「兄さんが静璐を引き入れた理由」

「知らない」

「君が鏡界にいた理由は?」

「うるさ」



 未優は足を止めると振り返った。未来夢(みらいむ)と重なって、あぁこの景色かと静かに納得する。


「他人のこと聞かないで。過去のことは知らない」

「ごめん」

「尊音はなんで来たの?」

「暇だった」





 沈黙の走る薄暗い階段を上がり、数分もすると誰かが見えてきた。


 相手も三人に気付くと軽く会釈する。

 やつれた顔に黒い隈が特徴的な男。




「未優さん、静璐の迎えですか」

「誰?」

「塔界屋管理官の鬱です」

「トンカチは?」

「もう一つ上で界魔と話してます。静璐以外には話したがらなくて」

「じゃあ僕らも待っといた方がいいね」

「……どちら様?」



 鬱に尊音と優羽を紹介すると、鬱は驚きながら優羽を見た。


瞳星(どうせい)さん……生きてたんですか……」

「まぁね〜」



 この二人、鬱とは初対面だが有名すぎるがために初対面でもだいたいの情報を知られている。

 唯一困るとすれば、相手は知って当然の状態なので自己紹介が聞けないことが多々あるぐらいか。


 だから初対面では淡白に「誰?」と聞くことが多い。












 界魔の話が終わって、日蔓に電話しながら階段を降りると下に鬱以外の色々が集まっていた。


 日蔓の話を聞きながら、三人に小さく会釈する。



『未優と優羽がそっち行ったはず。僕もすぐ行くよ。ここいても意味ないし』

「尊音さんもいますよ」

『サボりだねー。そろそろ着くから降りてきてー』

「あ、はい」





 鬱はオペレーションルームに戻り、四人で外に出ると既に日蔓が待っていた。

 未優は走って日蔓と手を繋ぐ。



「静璐、情報収集どうだった?」

「びっくりすること色々聞けました」

「おぉ?」

「後で話します」



 未優のいるところで話すと未優の記憶が戻る危険があるし、未優の記憶が戻ると支配人が来る。それはまずい。



 静璐の今は駄目だという思考が伝わったのか、日蔓はにこっと笑った。


「じゃ後で」

















 それから約四日後の日曜日。

 さっそく地方の界魔屋が集められ、日蔓、優羽、丁字、七竈による訓練が始まった。


 日蔓によると、昔にやった滋賀支部教育と同じ方法らしい。これで育たないなら現代に合わない強制労働に変えると言っていた。

 それでも死ぬよりはマシだと。




 夕方の六時までに配られた要提出の紙。

 近距離、中距離、遠距離のどれがいいかと個人情報諸々。


 静璐と未優は近距離を丸で囲み、氏名や歳や身長を書いて指揮台にいる日蔓の元へ行った。そばにある箱に入れる。



「日蔓さん、こんな情報どうするんですか?」

「平均身長割り出して動き方叩き込む。別に二人は個別でやるからいいんだけどね」

「個別っすか」

「静璐は特に。一般人のに合わせてたら体なまるよ」



 日蔓と話しているうちに皆もぞろぞろと入れに来て、中には蜜列(みつら)栖樹(すのき)、その他日蔓にスカウトされたらしい人達も数人いた。

 皆、日蔓に一声かけてからどこかへ行くかその場に留まるか。



 中でも未優と留まった栖樹がバチバチに火花を飛ばしている。

 静璐は睨んでくる蜜列から必死に逸らすだけ。




 なんでこの四人仲良くできないのかなと見下ろしていると、暇人ペアがやってきた。


「ようが〜」

「曄雅ー、来たよー」

「日蔓さん人気っすね」

「なんでこんなことになるのかなぁ」


 パソコン片手にやってきた優羽は箱を交換し、線蓮は日蔓の隣に座った。交代で日蔓は降りる。



「さ、未優ケーキ買いに行くんでしょ」

「あそこ行きたい。シュークリーム美味しいとこ」

「どこだっけ。静璐覚えてる?」

「はい」



 データ化は優羽がしてくれるらしいのでそれまでは普通に過ごす。







 静璐が界魔から聞いた情報が確かで信憑性があるなら次支配人が動くのは未優の記憶が戻った時。皆が完全に育ちきるまでは未優には何も伝えず、周囲も今まで通り。

 もし未優に聞かれた場合、静璐が聞けたのは支配人の腹心関係のみということで意見をまとめた。


 変に気を使わせて記憶が戻るよりも記憶が戻らなかった今まで通りに過ごした方が安全と判断したのだ。

 未優はストレスに弱いのでその面でも言わない方がいい。


 勘のいい未優に気付かせないため、それを知っているのも必要最低限で。







「ねぇ日蔓、日蔓運転免許持ってるんでしょ」

「僕ペーパーだもん」

「何ペーパーって」

「初心者」


 自分の質問の答えに未優は目を瞬き、静璐は運転免許を持っていることに驚く。


「運転って習うんじゃないの?」

「界魔屋って免許取る時間あるんですか?」

「同時に質問しなーいの」

「運転って習うんじゃないの」


 こういう時に静璐が黙っちゃうんだよな。


「習うけど基礎だけなんだよ。普通に運転しようとしてもまず怖いね」

「日蔓が?」

「いや僕は身分証明書のためだけに作ったし。パスポート持ち歩くの面倒臭いもん」


 そもそも取った時期は班として活動せず、まだ主任にも上がっていない時だったので超暇だった。引きこもりにならないよう衝羽に引きずられながら行っただけだ。



「暇な時期っすか」

「まー十六の事件後から未優が入ってくるまでは一回も仕事入れてなかったからね」

「日蔓さんって全部外食っすよね?」

「衝羽って言う家政夫がね」

「家政夫……」

「仕事しなくても最低限は入ってくるからさ」



 界館は歩合制だが、最低でも月二十五万は基本給として入る。そこから仕事に入った分だけ、ランクに応じて給料アップだ。


 二十八年、まぁまともに仕事に入るようになってから二十年。その半分以上を二ランクで稼いでいると、貯金は巨額にまで膨れ上がる。



「未優の記帳もしないと。線蓮になってからはほぼなくなったけどたまに上が給料入れてない時あるからね。未優みたいな多忙な社員は特に」

「タダ働き!?」

「その確認をするための記帳。てことでコンビニ寄るよ」

「はぁい」

「お菓子は買いません」

「はぁ!?」

「ケーキ屋とどっちがいい」



 未優は渋々黙り、日蔓と静璐は呆れながらため息をついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ