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鏡界館  作者: 織優幸灔
二章
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4.アスレチック

 朝から未優を走り回らせている時に限り、夕方に未優が転ぶことが多くなった。つまずくと言うよりかは膝の力が抜けるような。




 日蔓の書いた丸で石蹴りをしながらあちこち飛び回る。



「日蔓、ラムネちゃんもう来ないの?」

「あー、そうだね。いい遊び相手になるか」


 ラムネは死に物狂いで逃げていたが、未優はまだまだ走り回れそうだったしラムネと衝羽でも呼んで遊ばせるか。





 そう思って呼んだ数分後、衝羽が全力疾走で走ってきた。未優に突っ込み、抱き上げて高く掲げる。



「今日は一段と可愛い! 何して遊ぶ!?」

「鬼ごっこ!」

「よし俺鬼やろう!」



 二人が走り回り始め、未優に全く追いついていない衝羽が俊敏性だけで応戦していると肩にラムネを乗せた線蓮がやってきた。


 ラムネは飛び降り、二人の方へ走っていく。

 大人びた風格して許可された時は超遊ぶ子供っぽい猫だ。



「ようがー、未優の検査どうじゃった?」

「脳には問題ないって」


 一応線蓮にも立てなくなったこと、経過観察中だと言うことを伝える。


「……立てなくなった、か……」

「今は問題ないんだけどね」

「こっちでも記録を調べておこう」



 線蓮は指揮台に座る日蔓の隣に座ると足を組んだ。



「異様なのが揃いつつあるな」

「どういうこと?」

「曄雅の異常な鏡瞳と言い動き出した支配人と言い、天災を予知する猫も突出した脚力を持つ未優も」

「そもそも変な会社だし。仕方ないんじゃない」

「よし、アスレチック行くか!」



 なんでそこにそう飛んだのか。


 線蓮は二人と一匹に声を掛けると、技術棟地下一階に移動した。





 馬鹿広い部屋を望んだせいで線や配管の設置を苦労させたと噂の技術棟模擬試験室、通称アスレチック。


 まぁ普通に訓練したり遊んでいいよというところ。存在を知っている人はかなりの古参しか知らないが。

 たぶん支配人の事件後から入った人は知らない。



「未優、好きに遊んでいいよ」

「どうやって遊ぶのこれ?」

「衝羽に教えてもらいな。何でもしていいから」

「おいで未優ちゃん」




 面倒見のいい衝羽に丸投げし、日蔓と線蓮は壁沿いのベンチで見学。

 猫も衝羽もギリギリの高さを身軽に飛び越え、たまに落ちそうになっている。夕方の足がおぼつかない時は危ないな。



「マジで人間離れした身体能力」

「だって日常生活で教えてないのに受け身取る子だよ」

「これは期待大じゃな」

「あんまり無理はさせたくないんだけど」






 夕方前、まだ四時頃。未優がよくつまずくようになってきた頃を見計らい、日蔓は声をかけた。


「未優! 戻っといで」



 衝羽と一緒に戻ってきた未優は疲れた様子でベンチに座り、日蔓に開けてもらった水筒で水を飲んだ。



「足大丈夫?」

「ちょっと疲れた」

「歩けなくなる前に帰ろうか」



 水筒を閉め、未優を手招きした。

 頷いた未優はベンチから降りたかと思えば、急に視界からいなくなり派手に転んだ。


 頭がゴンッと鳴り、衝羽が顔を青くする。



「ちょっと遅かったか」

「未優ちゃん大丈夫……!?」

「いたァい……!」

「また頭ぶつけたね」



 日蔓は未優を起こし、抱っこした。未優は額を押える。



「はい衝羽」

「お前なぁ」

「んじゃ病院行こうか。抱っこしたくないなら衝羽帰っていいよ」

「渡さんぞ」



 さすがに猫を連れていくわけにはいかないのでラムネは嫌がる線蓮を引っ張って帰っていき、三人は病院に向かった。






 疲れと眠気で検査を嫌がる未優を看護師に預け、日蔓と衝羽は待ち合いで待機。衝羽は座り、最近ストレスで潔癖気味になっている日蔓は立ったまま。



 十二科がまとまっているのでかなり騒がしい待ち合いだ。特に子供。


 内科や耳鼻科等の診察室が二階にある科も待ち合いは全て下。一階には整形外科、脳外科、小児科など。他にも諸々。



 親が小声で注意している子供もいれば完全放置もいる。うるさいのは言うまでもない。


 走り回る子供に足引っ掛けたらどうなるかなと眺めていると、向かいの睨んでくる衝羽に気付いた。



「何」

「お前子供嫌いだよな」

「まぁうるさいし」

「なんで未優ちゃん連れてきたんだか。警察に渡すでも専務に預けるでもいいのに」

「なんとなく? 専務三人の適当な保護で反骨精神鍛えるより有効活用した方がいいでしょ」

「それだけ?」

「それ以外に何がある。赤の他人だったのに」

「……別に」



 なんだこいつと睨んでいると、日蔓の真ん前を子供が走り回り始めた。ちょうど子供が真ん前に来る時に立つ足を組み替え、わざと足を引っかける。


 親も泣いたら来るんだから泣く前から来いよ。できるなら走り回る前から。




「お前なぁ……」

「行ってくる。未優戻ってきたら見とくか先帰っててもいいよ。たぶん愚図るから」

「はいはい」





 検査から帰ってきた未優は半泣きで看護師に抱えられ、すぐに衝羽に移った。足が完全脱力状態で、首に腕をかけて背中を支えないと絶対に落ちる。


「先に帰ろうか。疲れたよね」

「日蔓は?」

「今検査結果聞きに行ってるよ。すぐ戻ってくる」

「じゃあ待ってる」

「帰っていいんだよ?」

「すぐ戻ってくるんでしょ」

「うん。……ここ騒がしいけど大丈夫?」



 頷いた未優を椅子に座らせ、日蔓に待機中とだけ送っておいた。

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