27.呼び出し
二月末、曄雅が早朝に自主練をしていると、錦紫蘇主任から電話がかかってきた。
仕事関係は優羽に直接連絡されるはずなので仕事ではないはず。
「もしもし?」
『あ、曄雅君おはよう。今時間大丈夫?』
「うん」
『あのね、今日の昼にメールが来ると思うんだけど』
近いうちに全支部を東京本館に集め、集会を開くらしい。
錦紫蘇は会議に参加するため今は東京にいるそうで、集会があるのは一週間後。ただ、一班の三人に関してはメールの一斉送信と同時に東京に呼び戻される。集会に関して、個別で説明の必要があるから。
『メール来てからでもいいと思ったんだけど、急だと大変だと思って……』
「んじゃ荷物まとめとくわ。そのまま東京いていいんでしょ」
『うん! たぶん集会で色々と変わるから、集会の後にまた滋賀に帰るか分からないから』
「おっけー。助かった」
『来る時気を付けてね。二人にもよろしく』
「はいはーい」
という連絡があった夜、東京に着いた。
三人で自室に帰り、荷解きもしないまま丸まって寝た翌朝。
寒さで結楽とくっ付いて寝ていた曄雅が爆音アラームで目を覚ますと、既に起きていたらしい優羽がそれを止めた。
「曄雅、朝だよ」
「ん……寒っ……!」
「よしよし」
珍しく結楽も起きていて、寒がる曄雅の背をさすった。
結楽とやってきた優羽にくっ付いて暖を取り、ふと疑問を浮べる。
優羽はともかく、結楽が起きてるって何時だ。
優羽がいじっていたスマホを奪って時間を見ると、時計は十時と表示されていた。
「寝すぎた……!」
「昨日遅かったんだから正常だよ。結楽も寒さで起きたばっかり」
「さむぅい……」
二月末なのに、今日は一段と冷える。
「そんな震えるほど寒い? エアコンついてるんだけど……」
「曄雅大丈夫?」
優羽は震える曄雅に追加でブランケットをかけ、結楽は曄雅の額に手を当てた。
「冷たいね。優羽、ここ交代」
「よしよし」
体温の高い優羽をくっ付け、結楽は立ち上がるとレンジで温めるタイプの湯たんぽを温め始めた。
インスタントコーンスープを作り、そこにクルトンを入れる。
「曄雅、起きてこれだけ飲んで」
「寒い……」
「低体温だよ。疲れが溜まってたからそのせいだと思う」
優羽は曄雅の首元に湯たんぽを固定し、曄雅はコーンスープを飲んだ。
少しずつ体が温まり、震えが止まる。
「うー寒い……ちょっとマシになったけど……」
「今日は休んだ方がいいよ。僕と結楽で行ってくるから」
「念の為ね。体温がすぐ下がったり頭痛とかが出てきたら言ってね」
「いや大丈夫……」
「駄目! 無理は禁物! 最近はただでさえ物騒なんだから!」
「……分かった」
界館内にいるなら安全だし、さすがに自分でも無理がたかっているのは分かっているのでおとなしくお言葉に甘えよう。
気迫のない曄雅がベッドに入ったのを見て、優羽と結楽は顔を見合せた。
「大丈夫かな……?」
「大丈夫ではないと思う。一日五体とかざらで相手してたから相当なストレス溜まってるだろうし、今日はそっとしとこう」
「うん」
曄雅に小さく声をかけ、二人で本館に向かった。
戻ってきた二人を見て女子は手を振り、男子は挨拶する。二人とも無視で話を続けているが。
本館に着き、寒白に呼ばれた通り会議室に向かった。
結楽が開けかけた時、腕が使えない優羽が蹴り開ける。
「寒白さん帰っていい? 来たしいいでしょ」
「ちょっと優羽」
結楽は優羽の頭を掴み、掴まれた優羽はそれを嫌がる。
「結楽君……大丈夫……?」
「曄雅がストレスでちょっとヤバいことになって。主任から話の内容は聞きましたけど、集会が開かれるらしいですね」
「そうそう。実力査定でね」
三人にはその査定調査と、実力リストを作ってもらいたいらしい。
「リストって言ってもプレートはこっちで用意するから、誰がどの程度の実力があるかを見てもらいたい」
「それそこの弟子がやればいいじゃん。実力トップでしょ。曄雅以外で」
「いや……こいつは性格がひねくれてるから」
「僕らよりマシじゃない? 曄雅以下全部価値無しにするよ」
「優羽黙ってて」
結楽は優羽の口を塞ぎ、優羽は結楽の背中をつねった。
結楽は優羽のかかとを蹴り、いい加減にしろと圧をかける。おとなしくなった。
「……じゃあ俺らがそれ引き受けるので人が三人以上死ぬ緊急以外仕事入れないでくださいね。最近一日五体、六体とかざらだったんで」
「ちゃんと休んでくれ」
「あんたが言うかよ……」
「じゃあ失礼しまーす」
最後の最後に悪態をついた優羽を掴み、引きずって外に出た。
「ちょっと優羽! そーゆーの言ったら余計長引くから!」
「黙ってはいはい流したらずっとこのままだから言っただけですけど!? 何回言っても改善しないのはあっちでしょ!?」
「にしても時と場合を選んで!」
「選んでいつ言えって!? 現に曄雅がストレスで体調不良来たしたのにさぁ!?」
二人の怒声が飛び交う喧嘩の声が扉の外から聞こえ、寒白は頭を抱えた。
松笠は苦笑いを零し、線蓮は苦虫を噛み潰したように顔を歪める。
「 あの二人もまぁ扱いにくい……。なんで専務に向かって文句言えるんだか……」
「自分たちの首を切って損するのはこっちだと分かってるからじゃないですか。首切られても向こうは学生だから学校に通って生きてけますし」
「あー面倒臭い」
「人間の闇だな」
松笠はそう言いながら立ち上がると、パソコンを片付けた。
「さてと、じゃ私はこれで」
「なんだ忙しない」
「後進の教育があるんでね」
松笠の言葉に寒白は目を丸くし、松笠はにっと笑った。
「お前もう降りるのか?」
「そりゃこの歳だとできることもできなくなるからな。お前も後進育てろよ。上はそれを会計から離さないぞ」
「無理やりにでもやる」
「本人の意思は?」
「次聡」
「なんです? こっちに振らないでください」
睨まれた二人は口を閉じ、線蓮は荷物を持つと松笠よりも早く退室して行った。
「……お前の弟子反抗期じゃないか」
「かもしれん……」




