14.兄弟
クリスマスが終わると一気に帰省が始まる。いや、一気にと言うか家族で関係者の家はマンション住みで基本的に出ないのだが。
実家、義実家に帰ったり秘密にしている両親の元に帰ったり、長期外泊が許される期間でもある。
「曄雅は今年はいつ帰るの?」
「三十一の夜中」
「……嫌ってるねぇ」
「じゃあ俺年明けボーナスに貢献してくる」
「頼んだ」
主任が取った仕事など長らくやっていない。だいたい、日蔓の生気に惹かれて出てくる界魔を殺すか緊急招集で歩合を稼いでいる。
主任があの気の弱さなので仕事争奪戦に即負けるのだ。いつも班の誰かがいないと取れないが、取れなくても歩合は入るので誰もそばには付かない。
この三人は存在だけで歩合を貰うような人材だから。
結楽が出て行って、優羽が推しの配信が始まったからと部屋に引きこもり曄雅はソファでスマホをいじる。
実家に持っていく土産も買わないと。こういうのが厳しいから帰省が面倒臭いんだよな。
面倒臭いが買いに行くか。
「優羽、ちょっと出かけてくる」
「どこ行くの?」
「土産買いに」
「僕も行く! 曄雅一人じゃ危ないし」
「配信は?」
「配信より曄雅かな」
優羽はパーカーを羽織ると上着を着て、軽く髪を整えた。
「……あピアス付け替えていい?」
「どうぞ」
その間に結楽に出かけると連絡すれば、本館に迎えに来てと返ってきた。結局いつも通り三人か。
一人じゃないなら面倒臭さも薄れるな。
「おっけー行こう」
「結楽が迎えに来いって」
「んじゃライフルもいるね」
優羽がライフルを持ち、二人で本館に行くと本館では相変わらずの争奪戦が繰り広げられていた。その中で結楽は壁に寄り添って眺めているだけ。
「結楽! 仕事どうなったの」
「上ランクなかったよ。ぜーんぶ四以下」
「まぁいいじゃん。行こう」
「ごーごー!」
土産と言えば田舎の方が美味しいものは売っていたりする田舎の土産売り場なめんなよ。
三人で久しぶりに歩いてお土産屋に向かう。
「いらっしゃーい」
「曄雅が買うお土産の量って尋常じゃないよね」
「お土産渡す人の量が尋常じゃないからな」
「何買うの?」
「安いもん」
「えぇ……」
曄雅的にはお土産に意味を感じていないので選ぶのは二人に任せ、曄雅は尊音にお土産買っとくという連絡だけ入れた。
この時間は仕事中のはずなので返信は夜かな。時間制限付けなくてよかった。
「曄雅ー、食べ物だけでいいの?」
「なんでもいい」
「んじゃこれねー」
優羽は店のレジに五種類を各十一個ずつ積み上げ、会計をお願いした。
十一人にそれぞれ付きが五人いて、全員に配らなければならないので計五十五個。これでも未成年のいとこ分や母方の親戚分は入っていないんだぞ。
レジも大慌てで袋に入れてくれて、大袋を受け取る。
「名家って大変だねー」
「俺のとこが古臭いだけ。白梅は自由だし天葵は子供一番だし。まぁ日蔓の今の本家当主が腐ってるだけってのもあるけど」
頂上に君臨する日蔓だからこそ仕来りを壊せないってのもあるんだろうけどな。
さて、次期当主が成人した瞬間抜けたら皆どんな顔するか。ついでに尊音も誘拐まがいに連れ去ってやろう。あんな家系にいる方が心にも体にも悪影響だ。
「さてと! 帰って校内新聞つーくろ」
「ちょっと僕たちの記事じゃないよねー!? 曄雅ー!?」
「追え!」
曄雅は大荷物を持ったまま走り出し、二人もそれを追った。
肩を揺すられ、目を覚ます。
「曄雅、七時だよ」
大晦日の日、目を覚ましたら曄雅は起き上がって体を震わせた。
「寒ッ……!」
「だいぶん冷え込んでるから……もう外も真っ暗だし」
夜中に車と新幹線で行くので夕方から仮眠していたのだ。
起きた曄雅は身支度を始め、小さな荷物と大きな土産を玄関に置いた。
「あ、曄雅! 尊音君から電話!」
「はーい」
どうやらもう駐車場に着いたらしい。ヤバいもうそんな時間か。
「ヤバッ……」
「一応一式持ってってよ」
「持った! 行ってくる! 明日の昼には帰ってくるはず!」
「はーい」
「いってらー! 気を付けてね!」
慌ててマンションを出て、駐車場に降りた。
「尊音!」
「兄さん! 遅いー!」
「ごめんごめん。行こうか」
「うん」
真っ暗な中車に乗ると、運転手は簪だった。
「お願いします簪さん」
「はい。……日蔓君、その子は……」
「弟です」
「尊音です。初めまして」
簪は目を丸くし、とりあえず鏡越しに挨拶した。
車の鏡は安全のため付けているが、付けることで危険になるんだよな。
「は、初めまして……。弟いたんですね……」
「意外と皆知らないんです」
駅に着いた二人は降りるとネット予約のチケットを受け取り、中に入った。
「ちょっと急ごう」
「うん」
はぐれないよう手を繋ぎ、尊音の無理のない速さで新幹線に入った。
二人とも荷物は小さいので足元に置き、ライフルだけ危ないので棚に乗せた。証明書と社員証だけ持って、席に座る。
「狭くない?」
「大丈夫」
「静かにね」
尊音は小さく頷き、スマホをマナーモードにする。
曄雅も設定を変え、少し体の力を抜いた。なんで実家に帰るのにこんな胃の痛い思いしなきゃならねぇんだ。
優羽と無線に問題がないかを確認して、一度耳に付けた。さすがに話せないがメールで声が聞こえるかは確認する。毎年のことだが優羽の通信機は毎年グレードアップするので確認が必要。
問題が起こりませんように。




