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鏡界館  作者: 織優幸灔
二章
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12.テスト

「ただいまー」



 買い物に行っていた曄雅が帰ってきて、寝ていた優羽が薄く目を開けた。



「……あ、起こした?」

「ん……大丈夫……」





 結局昨日の雨で熱を出した優羽は結楽の膝に寝転がり、結楽は優羽の頭を撫でた。

 前髪を上げると腕をつねられる。



「結楽、熱どう?」

「さっき測ったら三十八度だったよ」

「そんな高くはないか。優羽、なんか食べれそう?」

「うん……食欲はあるよ。頭痛いけど……」

「寝ながら食べれるヤツの方がいいか」



 曄雅はお粥を作り始める。優羽は水っぽいお粥は気持ち悪いと言って食べないのでいつも軟飯的なもの。お茶漬けやひつまぶしは食べるのに。




 コトコト煮ている間はキッチンに座ってスマホをいじる。

 通知が鳴り止まないと思ったら衝羽(つくばね)から明日はテストという嫌がらせのようなメールだった。行けたら行くと言ういつもの返事だけ返し、絶対に来いと言うメールを無視する。



「曄雅ー、俺もお腹空いた」

「なんか作るか」



 ずっと優羽の頭を撫でている結楽は足を伸ばすと寝転がり、上に手を伸ばした。心地よさそうに眠る優羽の寝顔見ていたら眠たくなってきた。

 昼食ができるまで少し昼寝しよう。







 と思って目を覚ますと、曄雅に頬を挟まれ優羽が上から覗き込み寝る前より明らか部屋が暗かった。



「……おはよう」

「お前もう朝だぞ」

「わぁ」

「さすがに寝すぎ」

「優羽もう大丈夫?」

「うん」

「ならよかった。じゃご飯ちょうだい」



 曄雅に頬を引きちぎれんばかりに引っ張られた結楽は発狂し、優羽に止められた曄雅は最後に一発結楽の脛を蹴り飛ばした。



「行ってくる」

「行ってらー」


 結楽が足を抱え悶絶している間に曄雅は出かけていき、結楽は疑問符を浮かべながら優羽を見上げた。


「どこ行くの?」

「学校だよ。今日テストだから。結楽も準備して!」

「……面倒くさっ!?」









 優羽に強制連行された学校、椅子を揺らしながら向かいの誰かの席に座った優羽と話す。

 一学年一クラスなのでこの二人はいつも一緒。



「ねーテストまだあるの?」

「次ので最後。予定確認しといてって言ったじゃん」

「だーって面倒臭い……!」

「勉強できんだから文句言わないのー」

「優羽はほんと馬鹿だよねぇ」



 優羽は作戦や状況整理と言った頭が柔らかくないとできない仕事はドンと来いだが、優羽も曄雅もまともに小中に行っていないので基礎ができていない。そのせいで頭が悪い。


 優羽に至っては元不登校&いじめられたらやり返すタイプのいじめられっ子兼いじめっ子だ。だから十七になる前に髪は金に近いベージュだしピアスも片方八個か十個近く開いている。

 今は塞がらないように小ぶりのを付けているが、出かける時や気分によってはガッツリ不良の付ける色々なピアスを付ける。



 曄雅は小学校に上がる前から研修や見習いとして仕事に毎日のように行っていたらしいので小学校には行っていない。

 三人が班になったのは同時、曄雅が十三で二人が十五の時。それまで結楽は普通に小中学に通っていたし、優羽も基礎が分からないまま行ったり行かなかったりだったので結楽は勉強ができる。二人は無理。


 要は基礎の問題だ。




「最近は覚えたし今回もちゃんと解けてるよ」

「どうかな。百点以下は零点と同じじゃん」

「それ自論? 吐き気がする」

「自論? まぁ親の言葉?」

「その親生きてんの?」

「死んでないでしょ。死んでも意味ない家だし」

「ふーん。じゃあ次それ言ったら殴る」

「……よしサボるか!」

「ちょっとー」



 もうチャイムが鳴るというのにスマホで食べ物屋を検索し始める結楽に優羽が呆れていると、優羽のスマホに電話がかかってきた。



 優羽はそれを取ると教室から出ていく。


 結楽が曄雅にテストサボろうと誘って了承を得ていると、前の椅子に誰か座った。優羽が戻ってきたのかと思って見上げれば全然知らない人。

 世の中はこういう人をイケメンと言うんだろうな。優しい顔系の優羽より男らしい顔。マジで誰。



金草(きんそう)結楽君? 僕桃桜(とうろう)風綯(ふうな)って言うんだけど。初めまして」

「女っぽい名前。なんか用?」

瞳星(どうせい)君と仲良いんだなと思って。ちょっと興味あるんだけど話しかけるの怖い雰囲気してるじゃん?」

「俺に仲取り持てって? やるか死ねって言われたら死ぬんだけど」

「えぇー……」


 困った様子で苦笑いを零す桃桜を見下ろし、にこっと笑った。



「冗談冗談」

「あ、ほんとに? 本気の顔だったからびったくりしたよ……」

「演技上手いでしょ。俺こういうの得意だから」

「そうなの? すごい演技力だね」

「そうでしょ。チームメイトが二人とも誤魔化すのが上手いから身に付けたんだよ」


 頬杖を突いて、にこにこと笑ったまま興味深そうな目をする桃桜と話す。


「チームメイトって、日蔓君と瞳星君? 歴代最強って言われてる班なんでしょ。俺入ったばっかりで全然知らないんだけどどれぐらい強いの?」

「んー……君なんでここに来たの? 界魔の被害者?」

「うん」

「その時何クラスだった?」

「確か……二って言ったたよ」

「そのぐらいなら曄雅一人で五分もかからないよ。優羽のサポートがあれば一分もいらない」

「すご……! 僕の時は大人数が何時間もかけて戦ってたのに……」

「だから歴代最強なの」



 感心する桃桜に色々な武勇伝や語り継がれる伝説等、あることないこと吹き込んで二人を自慢していると、ずっと感心しっぱなしの桃桜がいきなり顔色を変えた。

 一瞬扉の方に視線を移したかと思えば二度見をして身を引く。



「結楽、まだ?」

「あ、今行く!」


 扉に立っていた曄雅と優羽の圧で桃桜は少し怯えたような表情を見せた。



 結楽は机にかけていた鞄を背負うとあぁそうだと思い出したようにスマホの角を机に付け、目を丸くする桃桜に顔を近付けた。


「君表情より言動の嘘気を付けた方がいいよ。そんなんじゃ優羽には勝てないからね、桃桜風綯クン」



 元々サボる気でいたのでライフルケースを手に持ち、スマホをポケットに突っ込んだ。




 ここ最近で二ランクに大人数が動員された戦いはない。それに自分が被害に遭ったランクを確かって思い出すなど、ここ最近ならパッと答えれるはずだ。

 曄雅のことには反応するくせに優羽のことには感心する表情ばかり浮かべて何も言わない。どうせ優羽を妬みでもしたんだろうな。




「おまたせ二人とも」

「遅いよー。あれ誰? 何の話してたのさ」

「知らない人。二人の自慢話してたんだよ。武勇伝語りっての?」

「知らない人に自慢話されても困るんですけどー」

「ごめんごめん。……どうしたの曄雅」


 優羽は結楽の肩に腕を置き、曄雅は結楽と腕を組む。でもその顔は上の空。


「いや、来週クリスマスだなと思って」

「……そうじゃん寒白(かんしろ)さんの誕生日!」

「プレゼント買いに行こー!」

「いや、それもだけど俺、尊音(たかね)の誕生日……」

「……二十五だっけ!? やっぱ行かないと! 何するか考えてる!?」

「全く……」

「着いてから考えよう! 行くよ!」

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