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鏡界館  作者: 織優幸灔
一章
47/155

47.拳銃

丁字(ちょうざな)! セミオート取って手榴弾入れて!」

「何年経ってると思ってるの!? 無理!」



 現れた日蔓の怒声に必死に首を横に振るが、睨まれて反抗をやめる。でも最前線から退いて九年、もう十年近く経とうとしている。無理に決まってるだろ。



「はーやーくー!」

「日蔓さん短剣は!?」

大扇(おおおぎ)が持ってんの! 研究棟も危ない!」

「研究が!」

「静璐が行ってるから! 早く取れ!」


 相変わらずキレやすい日蔓に半強要され、界魔にチラッと視線をやってから体育座りしていた足を立てた。




 界魔が人間を何十人か掴んだ瞬間、走り出して半自動式拳銃セミオートマチックピストルとマガジンをいくつか、もう片手で手榴弾を一つ持った。


 机を飛び上がり、口で手榴弾のピンを抜くと生気を吸っていた界魔の口に放り込み、そのまま全力疾走で日蔓の元に逃げる。



「こここ怖っ! こんな怖かったっけ!? 冷や汗が……!」

「うるさーい」


 日蔓はマガジンをピストルの中に入れると慣れた手つきですぐに構え引き金を引いた。

 現代日本では聞き慣れないはずの銃声も、なんの恐怖もなく扱える。皆は絶叫悲鳴の嵐だが。


 このうるさい音に慣れているから騒がしい場所や大きい音のある場所では眠れないんだろうな。一種の職業病的な。




 十五発連続で人を持つ手を狙い、それでも離さないので次は両目と人間の構造的に頭蓋骨のないはずの鼻腔を狙う。


 長らく握っていなかったしそもそも才能があまりないので百発百中とまではいかないが、それでも界魔が両手で顔を押さえるぐらいにはなった。手榴弾も効いたか。



「ショットガン欲しいな」

「殺伐しい。未優さんは?」

「塔界の方に向かわせた。外だったけどね」

「すぐ来るんじゃない?」

「来ると思うよ?」


 来ると思うけど、ショットガンが欲しいのはストレス発散したいから。何をしてもいい界魔ってサンドバッグにはちょうどいい。

 そんなこと言ったら怒られるので誰にも言っていないが。



「……まぁ動き止めれたしいっか」

「日蔓さん体術だけで戦わないの?」

「僕片腕骨折してるって知ってる?」

「……腕骨折してても撃てるんだ」

「撃てるよ。撃てるけど痛い熱い」


 連続で発砲すると振動も強いし、熱もグリップに段々伝わってくる。これ以上撃つとたぶん素手で持つのはキツいだろうな。



「界魔屋は致命傷でもない限り戦えって言われるからね。辞めて正解じゃない?」

「それはずっと思ってるよ」


 いつの間にか座ってあぐらをかいている丁字を見下ろし、こんなところで座るなと立たせた。


「危機感皆無だね」

「いやぁ……癖? なんか座っちゃうんだよね」

「厄介な癖だねー。……避けよう」



 丁字を角に寄せ、人形(ドール)を避難させている全員をはけさせた。

 声をかけるとほぼ同時に窓が割れる音が聞こえ扉から静璐が飛んできた。界魔の眉間に蹴りを入れ、床にうずくまっていた界魔を僅かに扉の方へ押し返す。



「静璐!? 未優は!?」

「専務三人と校舎に行きました! なんか現れたらしくて!」

「ここ頼んだよ!」

「うす!」



 飛び出していく日蔓を横目に、生気を排出して少し小さくなりながらも傷を再生し始めたそいつと睨み合う。


 界魔には稀に生気を取り込みにくい個体がいるそうで、これがまさにそれ。生気を吸収するエネルギーを回復に当てるために取り込んだ生気を戻す。人間で言う食べたいもの食べたけど気持ち悪くなって吐くみたいな、そんな感じらしい。吐いたら気持ち悪さも収まるし、みたいな。




 界魔が立て直す前に殴りかかるが、すぐに手で防がれた。すぐにもう片方で一発入れ、顔面を踏んで飛び上がる。


 界魔は基本人型で、まぁ人型じゃないのも結構いるが。基本人型で、弱点もほとんど人間と同じ。だが人間の心臓を貫いても大丈夫な場合があるように、界魔も心臓をえぐっても普通に生きる奴もいる。というかだいたいそう。だから界魔を殺すには頭を吹き飛ばすか頭部切断が基本。

 それでも生きる奴は生きるので、特定の中枢部を傷付けるか強い奴なら破壊する必要がある。でもそのレベルはたぶん支配人だけらしい。




 空中から叩くならいつも見ている未優のように蹴りの方がやりやすい。今回の界魔は頚椎が綺麗に浮き出てくれているし、関節の位置が分かりやすいな。


 静璐は重力に伴って落ちる体に加え、筋力で加速するとそのまま頚椎の関節に蹴りを入れた。

 頚椎の関節がガクンと外れ、一気に全身が脱力し床に落ちるように倒れた。開いた口から霊魂のような生気が漏れていく。


 死んだかどうかは分からないがとりあえず生気は戻ったようなので一安心。次は未優の方に行かないと。






 走って窓を飛び降り、校庭に降りたその瞬間。

 自分でも無意識のほどに鏡瞳(キョウドウ)が開き、半壊していた塔界も既にバキバキの本館の窓も、上から押し潰されたように潰れ割れた。


 どこかで見覚えのある薄紫に赤い口裂けの細身長身の界魔は一瞬膝を曲げたがすぐに持ち直し、静璐の方に視線を向ける。

 静璐の鏡瞳を押し返すほどのオーラが広がり、集まっていた専務三人も部長ほぼ全員も班所属も、皆が気絶した。日蔓は耐えたが未優は気絶で倒れる。

 しかしギリギリで耐えていた日蔓もすぐに倒れ、直後静璐も吊った糸を切られたように倒れた。

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