傖儜 Ⅲ
対戦相手の戦意を完全に折った翔に虹渡。続きです。
「おお、なんだなんだ?」
「すごい…決めるべきところでしっかり決めてきてる…!」
「ていうか、あの子見たことないね、編入生?」
「なんかAクラスに編入した子みたい。透くんとチーム組んでトーナメントに出るらしいよ!注目株だよね!」
後ろのギャラリーがなんだか騒がしくなってきた。まあ無理もない。透のチームを組んだ人がタッグで試合をするのだから。透のチームメイトの実力を見ておきたいというのも納得だ。まあ野次馬根性のやつもいるだろうが。
しかしここまで人が来るとは思わなかった。注目されて悪い気はしないが、やはり透とチームを組みたいと思っていた生徒たちの敵愾心を煽るようなことは避けたい。しっかりとここで決めてさっさと退散するとしよう。
幸い、相手チームは完全に戦意喪失状態だったので無駄に抵抗してくることもなかった。死体蹴りは甚だ不本意だが仕方ない。直ぐ楽になってもらった。
「すまなかった…」
「……………」
ボコボコにして気落ちしているのか謝ってくるのは早かった。
こんなにすんなりと謝ってくれるとは思っていなかった。もう一悶着あると思っていた。
「でも強かったし、実力も認める。長い付き合いになるとは思うからこれからもよろしく。」
「ボクもよろしく!!」
「「あぁ…よろしく…」」
まあバカにされたことで気が立っていただけで、普通に実力がある。トーナメントを争うライバルにはなってきそうだ。
「まあ、そういうことだ。お前らも見ていたと思うが面倒なことは極力起こすな。…俺がめんどくせえ…お前ら遅くならないうちに帰れよ。」
頭をぽりぽりと掻きながら藤堂先生は帰っていった。ギャラリーたちも少しずつ帰っていく。そして女子2人が残った。
「やるじゃない、あなたたち。光倉くんに八神くん、だっけ?試合直後で悪いんだけど、私たちと試合しない?あ、御影くんも是非!」
「………私も…戦いたい。」
女子と話したことがあまりない俺は、初対面でグイグイ来られるとたじろいでしまう。しかしこの2人のことは知っているぞ。髪がポニーテールだから…確か…星宮姉妹の…愛良さんのほうか。
「………その…さっきのTON 80は凄かった。」
さっきの3LEG目の先攻のCRICKETで俺は初めにTON 80を決めていた。その後その差を守り切って盤石な状態で勝っていた。
それにしても舞良さんの頬が心なしか紅潮してる…?気のせいか。
「ありがとう。そういえば、チームのメンバーは決めた?」
「………私達はだいぶ早くに決まったよ。私なにもしてないけど…」
なるほど。メンバーの勧誘は愛良さんがサクサク進めたのだろう。ハキハキと喋る人だし、人当たりも良さそうに見える。妹のために頑張る姿がなんとなく想像できた。お疲れ様…!
そのコミュ力が俺にも欲しい。
「で、試合したいんだけど、これからやらない?せっかくだし。明日から始まる練習試合の時間は男女別れて練習することになるし。」
そう。明日からはトーナメントに向けてチームごとに練習試合が組まれている。試合のない時間はチーム内での調整に時間をかけるので、なかなか男女間で試合を通じた交流という時間はなかなかとれない。そのため、放課後の自由な時間にだけ男女の特殊な試合ができることになる。
俺としてはせっかくなのでAクラスのメンバー同士の試合というのは興味がある。
「せっかくだしボクのチームメイトも呼ぶから、是非星宮さんのチームの人たち呼んでよ!」
「あら、私たちの名前知ってるのね。」
「煉射学園新聞で書いてあったよ!特待生で双子の姉妹が今回新人戦トーナメントのダークホースになるって!ここ数年女子の部は内部進学生ばかりのチームが上位を独占してるらしいし、すごい注目度だって!」
そういえばそんな記事読んだかも。『双子の美人姉妹、新人戦トーナメントの台風の目となるか!』だったか。
美人姉妹、ねぇ。これではみんなが注目しちゃうじゃないか。なんだかわからないが心の奥がチクリと痛んだ。
「そう…私はその嫌なジンクスを断ち切るために編入生だけでチームを組んだの。内部進学生は実力があるのは認めるけど、私も編入生としての意地があるからね!舞と一緒に優勝狙うの!」
「………負けない。」
舞良さんが拳を作っている。可愛い…
…はっ!殺気!?
「なーにジロジロ見てんの!舞は可愛いかもしれないけどあんたにはあげないからね?」
「はい…すみませんでした。」
コミュ力のなさを遺憾なく発揮してしまっている。男子相手ならある程度簡単に話せるが…
これでは舞良さんに嫌われちゃうな…
恥ずかしくて2人の顔が見られない。
こういう時は開き直って…
「さあさあ!チームメイト呼んで一緒に試合やろう!ブースの方は俺が借りておくからさ!」
「……………翔は何をそんなに必死になってるの?」
なんでそういうときだけ透は突っ込んでくるんだ…!恥ずかしいんだよ…!今の会話でわからないとは…!!
「わかったよー!!ボク、ドリンクの用意するね!翔はアップルジュースでいいよね?」
ほら、虹渡のこの素直さを見習って欲しいよ。おれの心中を察してくれているのかどうかは定かではないが…
それから俺たちは下校時間ギリギリまでダーツを投げ続けた。かなり恥ずかしい思いもしたが、星宮姉妹と練習した時間は有意義だった。
可愛い生徒がいたら目を惹きますよね?みちゃダメなんて決まりはないですよね…?
ちょっと不憫な翔でした。
CRICKETの試合を期待していた方々本当に申し訳ありません!実のところ、星宮姉妹の話を書く時に、書こうと思った次第で、今回はあえてカットしました。
そして今回カットしたダブルスの第3LEGは後ほどお届けします…!
次回からはダーツの話を少し離れ、数話は日常の話をお届けしたいと思っています。
また、星宮姉妹のチームについてはまたしばらく後に書こうと思っております。




