始動 Ⅰ
翔視点に戻ります。
「新人戦トーナメントのエントリーは随時受け付けてるから持って来いよー…んじゃあ今日も授業だな。」
いつも通り気怠げにホームルームをし、1限目は藤堂先生の数学の講義。
まあまだ今のところは因数分解などの中学の復習といったところだが、高校の範囲を時たま逸脱するするし、別解もたくさん解説するしでまあ充実した講義なのだが…これから先ついていけるか不安だ。まあ今のところは理解なしているが。
のらりくらりと講義を乗り越える。そして昼の休憩に入るや否や、透が近づいてきた。
「……………一緒にバーに投げに行かない?」
「乗った。」
2人で講義の愚痴を軽く零しながら支度していると、
「おーい!一緒にご飯食べよーぜ!」
「付いてきました。バーの料理食べるの初めてなので緊張します…」
「……………たかりに来たね?」
「まあまあそう言うなって。樹や虹渡がいればダーツも楽しめるしいいじゃん!」
息をするように毒を吐く透を宥めバーへ向かう。バーはなんとなくムーディーな雰囲気だが、しっかりした食事も提供される。しかも無料で。
「うわぁぁ美味しそうなのがいっぱいある!透たちいいもの食べてるなぁー!!!」
「僕のクラスはないので弁当持参する人が多いですね。あるいはカフェであれば有料で食べられるのでそこに行く人もいます。羨ましいです…!」
ここのバーに関してはA及びBクラスの生徒しか基本入れない。入るとしたらチームメイトとしてしか基本的には許されていないのだ。
料理もかなり美味しい。そして終わってからまたダーツを投げることができる。至れり尽くせりだ。
「……………まあうちの家の方が美味しいの作れる気がするよ。ここのも勿論美味しいけどね。」
「透くんの家のは少し基準が高すぎる気がしますが…」
「早く食べて投げよーぜ!」
今日は何故だか透がキレッキレだ。バーにまで毒を吐くとは。何かあったのだろうか。
「透、何かあったのか?今日いつもと調子違う気がするけど。」
「あ!それボクも思った!」
「……………やっぱりわかる?」
「何かあったんですか?」
「……………実はファンの女の子に告白されt…」
「すみませんバーテンさーん!ナイフ持って来てもらえますかー?もしだめなら出刃包丁でいいですよー!」
「……………ちょっと待って、翔、それ僕に刺さないよね?」
「お!そーゆー話ワクワクする!聴きたい聴きたい!」
「なんだか面白そうですね。色恋沙汰とは無縁だったので興味があります。」
まあモテるのは知ってたけど。知ってたけど…!!
まああれだけ綺麗なフォームで決めたいところにバシバシ決めるんだからそりゃかっこいいわな。でも…この込み上げる嫉妬からくる怒りを鎮めないと俺は気が済まない…!
「……………中学時代から好きだったみたい。でも恋愛とかしたことなくてよくわからないから断った。なんとなくで付き合っても相手を悲しませちゃうでしょ?」
「ええぇなんだよぉー面白くないなぁ!」
「自分に恋愛感情がないと長続きはしなさそうですし…まあ人気者ですからこれからまた出会いがありますよ。」
「……………恋愛に興味がないわけじゃないんだけどね。いまいちその感覚がわからないんだよ。今まで友達すらまともにいなかったからね。」
うん。それに関してはなんとなくわかる気がする。しかし先ほどの怒りが収まったわけではない。極力自然に透に提案する。
「透ー食べ終わったらダーツやろーぜ!」
「……………MEDLEYでいい?」
「そうしよう。5LEGでどう?」
「……………じゃあやろうか。っていうかちょっと…翔も雰囲気いつもと違くない?」
鋭いな。抑えよう…抑えよう……
嫉妬で怒り狂いたいところだが、ダーツで晴らすしかない、と思った俺は透に試合を申し込んだ。
MEDLEYは複数戦まとめてやる試合のこと。3、5、7LEGが一般的だ。最も一般的なものだと01ゲームとSTANDARD CRICKETを3、5、7戦行い、それぞれ2、3、4勝した方が勝ちになる。
今回やるのは5LEG MATCH。まずはじめに先攻後攻を入れ替えながら、01-CRI-CRI-01と4戦行い、最後はCHOICEと言う、先攻後攻を決めたのちに、後攻に回るプレイヤーが01またはCRIのどちらかを選ぶというシステムで行われる。
勿論、5戦全て01というものもあったりするが、今回は複合にすることにした。
そして、LEGというのはそのMEDLEYの中で何ゲーム目か、ということを言う言葉。LEG2と言えば2戦目、という感じだ。
そこで俺はいつにまでなく良いダーツで透を翻弄し、快勝したのだった。普段は全く手も足も出ず大抵MEDLEYはストレートで負けを喫する俺が初めて圧倒した。
「……………僕が負けた…?強過ぎだよ…翔どうしちゃったの…??」
「嫉妬は不可能を可能にする…!」
普段ボコボコにされている翔が怒りに狂い見事にリベンジ!
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次回もまたお楽しみください。




