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004 追跡のコード

 壱与という突然できたバディと共にスコアレスの追跡へと乗り出した僕たちだったが、どうしても聞いておかなければならないことがあった。


「なあ、壱与はスコアレスに対してどう思う? 排除は当然だと思うか?」


「さっきのマザーとの話ですか? 私の都市保安に関する思考ルーチンはマザーのコピーですから、都市の秩序を優先した答えになりますよ。マスターはノイズの許容を望みますか?」


 大きな瞳で僕を見つめる彼女は、天真爛漫な表情とは裏腹に無機質な答えを返した。


「正直、分からないな……。マザーは、スコアレスや低スコアの人間を意図的に作っているんじゃないかと思う。確証はないけどね」


「意図的に、ですか? 一体何のために?」


「都市の反対勢力を管理したいのさ。これも仮説だけどね」


「仮説の根拠はあるんですか?」


「今から行く三等地区さ。何故かマザーの監視の目が緩い」


 スコアレスの温床になっているが、捜査課への指示も散発的なものばかりだ。


「管理されたノイズで、マッチポンプを作りたいんじゃないかと思っている」


「ですけれど、明確にスコアレスは、法を犯しています。それを野放しにはできませんよ」


「それは、その通りだ。だから僕も強くは反発していない。ただ、意図的な選別の上に成り立つような秩序だったら納得は出来ない」


「マスターのお話はとても興味深いですけれど、現在の任務には関係ないかと思います。それに、マスターも秩序を作る側の人間ではないですか」


 壱与の真っ当な指摘に当てられ、逃れるように窓の外の景色を見るふりをしながら口を開いた。


「……そうだな。壱与の言う通りだな」


 結局は、僕もマザーに従うだけの人間だ。 僕はそこで会話を切った。少し、冷静になりたかったからだ……。



「マスター、マスターは彼女とかいるんですか?」


 少しの間の沈黙を破り、やぶからぼうに壱与が場にそぐわない質問を投げかけてきた。


「何でさっきの流れから、そんな質問になるんだよ……」


「いえ、ちょっと空気が重くなりそうでしたので、フランクな質問でもと思いまして。ああ、もちろん彼女がいないのは知ってますよ」


「決めつけるな! ……いや、いないけども……」


 オブザーバーの名に恥じない観察眼なのか、看破されていた。


「まあ、職員のデータベースにアクセスしたんですけどね」


「何でそんなプライバシーに関わる情報までアクセスできるんだよ!」


 いかん、いかん、壱与のペースに振り回されてるな。更新されるマップの反応を確認しながら、気を引き締め直す。 既に街の喧騒は遠ざかり、やや古ぼけた建物が目立ってきた。


「反応が近くなって来たぞ、壱与。移動速度からいってスコアレスは、徒歩だ。近くなったら車を降りて追跡するからな」


「おお、いよいよですね。任せてください。脚力には自信がありますから」


 自分の足をパンと叩いて見せた壱与に釘を刺しておく。


「脚力自慢はいいけど、第一に気付かれないように近づくんだぞ、いきなり走るなよ」


「私の脚力を馬鹿にしないで下さい、逃げられても追いつけます」


「この辺は入り組んでるから隠れられたら見失う。来栖の追跡もタイムラグはあるから、気付かれずに確実に拘束しろ」


「はぁ、善処します……」


 本当に善処してくれよ……。 相方への不信感が募りだしたところでマップが更新されて、シンボルが停滞した。


「対象が止まったな。マップ上では廃アパートになっているから、スコアレスの根城かもな」


 この辺りの都市外縁部には、旧時代の建物も多く、マザーの管理下にない廃墟等も存在する。 スコアレス達はそういった場所を転々としている事が多いのだ。


「よし、近くに車を止めて突入するぞ、絶対に指示に従えよ、壱与!」


 壱与との初任務の突入が近づき、緊張感が高まるなかで、マザーの言葉が未だ僕の脳裏に反芻していた……。



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