99 竜の山脈へ
前話のおはなし:生徒弟子たちは、集められて突然竜と戦うことを告げられた。
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レジーナの言葉に一番驚いたのはロゼッタだ。
「えぇ! 竜って、ドラゴンですか?」
「ドラゴンじゃない竜なんていないよ!」
俺の懐に入って寝ていたはずの、人神の神霊フィーが急にそんなことを言う。
今日のフィーはなぜか元気だ。
人神の降臨から二日経った。
昨日、一日大人しく良く寝ていたので回復したのかもしれない。
「きゅるー」
ルーベウムは羽をパタパタさせてロゼッタの顔の前へと飛んでいく。
ここぞとばかりに、自分が立派な竜であることをアピールしているのだろう。
「ルーベウムちゃんは、ちょっとどいて」
ロゼッタは視界をふさぐルーベウムをどかせると、レジーナを見た。
「お師さま。あたしには竜を相手にするのは早いんじゃ……」
「そんなことあるまい。それにおれもついていくから安心しろ」
師匠にそう言われたら、ロゼッタとしてはもう何も言えない。
「……わかりました。がんばります」
諦めたようにそう言った。
「きゅぅ」
一方、ルーベウムは少ししょんぼりして俺の胸元に飛び込んでくる。
ロゼッタにかまってもらえなくて寂しかったようだ。
そしてティーナは鼻息を荒くしている。
「竜と戦えるなんて! 腕が鳴りますわ! ね、アルティ」
「そうですね」
アルティは平然としている。
きっとアルティは竜と戦うのも初めてではないに違いない。
いまだ不安そうなロゼッタに対して、ディオンが言う。
「私もついていきますから。過度に怯える必要はありませんよ」
「ありがとうございます!」
やっと、ロゼッタは安心したようだった。
そしてゼノビアが言う。
「みな、気を付けて行きなさい」
「「はい!」」
「アルティ。皆を頼む」
「わかりました」
自分の弟子であるアルティの力強い返事に、ゼノビアは深く頷いた。
その後、俺たちは総長室を出て飛竜の部屋へと向かう。
今回は三頭の飛竜に分乗し、飛び立った。
飛竜に乗るのは俺にアルティ、ロゼッタ、ティーナにレジーナとディオンに神獣たちだ。
六名と神獣を乗せるうえ、長旅になる。
飛竜の負担を少なくするためにも、頭数を多くしたのだ。
レジーナの後ろにロゼッタとアルティが乗り、ディオンの後ろにはティーナが乗った。
そして、俺は神獣たちと一緒である。
道中は何事もなく進む。
レジーナたちと一緒だからか、宿泊する際の部屋はとてもよい部屋ばかりだった。
食事もおいしく、シロは凄く喜んでいた。
そして、レジーナが楽しそうだったのが印象的だった。
俺たちが竜の山脈の近くまで来たのは三日後だった。
飛竜たちは、怯えるので近くの町の救世機関関連施設に預けてある。
そこから徒歩で、山脈へと向かうのだ。
街を出たところで、レジーナが皆に言う。
「ロゼッタ。先頭を歩くのだ」
「わ、わかりました!」
「目的地はわかるな?」
「わかります!」
道中、レジーナはロゼッタに色々説明していたのだ。
その中には目的地の情報も含まれる。
冒険者になれば、パーティーの全員が訪れたことのない場所に行くことは、よくある事。
そのようなときに先頭を歩くのは、基本的にロゼッタのようなスカウトである。
ロゼッタは地図を見ながら、迷いなく歩き始める。
その後ろにアルティ、ティーナの順で続き、生徒たちの最後尾を俺が歩く。
レジーナとディオンは少し離れてついてきている。
フルフル、シロ、ルーベウムは俺の横をちょこちょこ歩いてついて来る。
フィーは俺の肩の上に乗っていた。
街を出てから四時間後。山のすぐ近くにやっと到着した。
上空には竜が二頭ほど、大きく旋回しているのが見えた。
縄張りへの敵対者の侵入を見張っている竜なのだろう。
恐らく人族を見張っているのではなく、同じ竜の侵入を警戒しているに違いない。
「さて……」
レジーナが前に出る。
「子供たち。準備は良いか?」
「「はい!」」
ロゼッタとティーナは元気よく返事をした。
こちらにも伝わってくるほど、二人とも緊張している。
「できています」
一方アルティは冷静に返事をした。
「うむ。よい返事だ。ルーベウム。お主はディオンのところに行って隠れているがよい」
「きゅる、なんで?」
「お主が強い竜ゆえ、この辺りの竜が怯えたら困るであろう?」
「きゅるうー」
レジーナにそう言われて、ルーベウムは誇らしげに鳴く。
そして、大人しくディオンのところに飛んでいった。
「ルーベウム。私の懐の中に入っていてください」
「きゅる。わかった。怯えたら困るもんね、ルーベウム強いし」
「はい。鳴いてもいけませんよ」
「わかった」
ルーベウムは大人しくなる。すると、途端に気配が消える。
俺がルーベウムと初めてあった時、魔力による探索が通用しなかったことを思い出す。
恐らくルーベウムの特殊技能だろう。
どのような技能なのかしっかり聞いておくべきだった。
戦闘が終わったら、忘れずに聞いておきたい。
ルーベウムが気配を完全に消したのを確認して、レジーナは満足そうにうなずいた。
「おれに任せておくがよい」
そして、大きく息を吸い込んだ。




