80 次の日の朝
前回のおはなし:みんなで相談して、寝ようとしたら呼び出しを受けた。
「ここは俺に任せて先に行けと~」の3巻が8月に発売です!
「最強の魔導士。ひざに矢をうけて~」の4巻とコミカライズ1巻が発売中です!
『いま大丈夫か? 総長室に来て欲しいのだが……』
通話の指輪から聞こえたのは、ゼノビアの声だ。
「今から寝るところなのですが、急ぎのようならば向かいますが……」
『そうか。睡眠は大切だものな。明日の朝で良いので総長室に来てくれ』
「ご配慮感謝します」
そして通話が切れる。
試練について、俺からも話を聞きたかったのかもしれない。
もしかしたらルーベウムのことを聞きたかったのかもしれない。
ロゼッタの合格はもう決まっているのだ。
つまり、合否判定のために話を聞きたいのではないだろう。
ということは、急ぎではない。明日で良いはずだ。
「……明日は託児所にサリアを迎えに行く前に総長室に寄ろうかな」
そんなことを言いながら、俺はベッドに入る。
シロとフルフル、ルーベウムも入ってくる。
「昔は徹夜ぐらいなんてことなかったのに……」
やはり体が子供だと眠くなるのも早い。不便なものだ。
だが、八歳の身体も悪いことばかりではない。
回復も早いし、成長も早い。
「きゅる。ふかふかなのだ」
ルーベウムはベッドの上でぴょんぴょん跳ねた。
「これはベッドというんだよ。家ではここで寝ることが多いんだ」
「そっかー」
ルーベウムはベッドが気に入ったようだ。
「ルーベウム。寝るから揺らすのはやめておくれ」
「わかった」
ルーベウムは大人しくなると、俺の頭の右横で丸くなる。
ちなみに俺の左横にはシロがいる。フルフルは布団の中、俺のお腹のあたりにいる。
「……め……ぇ」「ぴ……ぎぃ」
シロとフルフルはもう寝息を立てていた。
シロもフルフルも疲れていたのだろう。
俺たちが試練を受けている間、レジーナたちと激しく遊んでいたのかもしれない。
明日、総長室に行ったら、そのあたりも聞いてみよう。
「ルーベウムは何歳なの?」
「わかんない。卵から孵ったのは先週ぐらいだけど……」
ドラゴンの年齢は卵だったころから数えるのかもしれない。
「先週孵ったばかりにしては、人族の言葉うまいね」
「きゅる!」
ルーベウムは嬉しそうに鳴く。
「でも、しゃべれるのはウィルに名前つけてもらったからだよ」
「ほう? そうなの?」
「そう。よくわかんないけど」
自分でもよくわからないらしい。
「それはそれとして、ルーベウムは神獣、竜神の眷族だと思うよ」
「そうなの?」
「うん。ちなみにシロとフルフル。ここにはいないけどルンルンも神獣だよ」
「仲間!」
「ちなみに俺も人神の神獣らしい」
「ウィルとも仲間!」
ルーベウムはとても嬉しそうに羽をバタバタさせる。
「寝る前は静かにね」
俺はルーベウムを優しく撫でる。
「わかった」
ルーベウムは人と同じぐらいの体温だ。
俺はルーベウムやシロ、フルフルを撫でている間に、いつの間にかに眠ってしまった。
次の日の朝。
「めえめえええめええ」
シロが一心不乱に頭突きしてくる。
「ウィル起きて」
ルーベウムはそう言いながら、俺の顔をべろべろ舐めていた。
「起こしてくれてありがと」
シロもルーベウムも、俺が総長室に呼び出されたことを聞いていたのだ。
だから起こしてくれたのだろう。
「フルフルは……」
「ぴ……ぃ」
まだ気持ちよさそうに眠っていた。
フルフルを起こすのも可哀そうなので、俺はそっとベッドから起き上がる。
簡単に準備をして、ルーベウムとシロと一緒に部屋を出ようとすると、
「ぴぎぴぎぃ!」
慌てた様子で、フルフルが追ってきた。
「フルフル、総長室に行くだけだし寝ててもいいんだよ」
別に戦闘があるわけでもない。お話しするだけだ。
それに今日はサリアを迎えに行くので、長くても数時間で部屋に戻ってくる。
「ぴぃぎ!」
だが、フルフルは絶対に置いて行かれたくないらしい。
「わかった。今度からは起こすようにするね」
「ぴぃ」
そして俺たちは総長室に向かって歩く。
ルーベウムもシロもフルフルも楽しそうにじゃれあいながらついて来る。
互いに頭突きをしあったり、フルフルの上に乗ったり、フルフルが上に乗ったり。
ルーベウムが、シロとフルフルと仲良くなってくれて良かった。
「ぴぃぴぃ!」「きゅるるるる」「めええええ」
「みんな遊ぶのはいいけど、静かにね」
早朝、それも夜明け直後なので、まだ寝ている人も多いはずだ。
寮は防音性能は高いが、あまり騒がしくすると迷惑かもしれない。
「「「…………」」」
神獣たちは素直に無言になった。
だが、じゃれあうのはやめない。無言ではしゃいでいた。
「まあ、無言なら、それほど騒がしくないしいいかな」
しばらく歩いて、総長室の前に到着する。
ノックをする前に、
「入りなさい」
すぐに中からゼノビアの声がした。
「失礼いたします」
「うむ。よく来た。……すみません朝早くに来ていただいて」
ゼノビアは椅子から立ち上がってこちらに来る。
「いや、昨日は眠くてさ。配慮してくれてありがと」
俺は砕けた口調で話しかける。ゼノビアは途中から敬語になった。
つまり隣の部屋を含めて、この辺りには俺と弟子たちしかいないということだろう。
そして、俺たちは話し合いを始めることにした。




