79 生徒同士の情報共有
前回のおはなし:ロゼッタが合格した。
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歩きながらロゼッタが言う。
「本当はローズを迎えに行ってあげたいけど……」
「もう眠っているだろうし、明日の朝迎えに行ってあげようか」
「そうだね。それがいいかも」
すでに日付が変わりそうな時刻だ。
託児所の子供たちも、みんなお風呂に入って眠っている頃だ。
職員さんたちも一息ついている頃だろう。今から行けば迷惑になる。
「ルーベウム。明日サリアとルンルンを紹介するね」
「わかった」
しばらく歩いて、俺たちは俺の部屋に到着した。
部屋の中に入ると、まず俺は服を着替える。
俺が今身に着けているのは、ディオンにもらったローブ一枚だけだ。
それ以外は靴すら履いていない。
部屋着に着替えて、靴を履いて、みんなにお茶とお茶菓子を出した。
ルーベウムとシロ、フルフルにもお菓子を出すのは忘れてはいけない。
そして、改めてルーベウムのことを皆に紹介した。
シロもフルフルもルーベウムのことが気に入ったようだ。
「なるほど、お師さまが……」
ディオンの弟子であるティーナがつぶやいく。
「あとでディオンさまにも経緯を尋ねないとだな」
「きゅるるー?」
ルーベウムは会話に興味がないようで、シロとフルフルと仲良く一緒にお菓子を食べている。
「ロゼッタたちの試練はどんな内容だったの?」
「それが、ウィル聞いてよ。レジーナさまとディオンさまと戦わされたんだ!」
ロゼッタは前のめりになっている。
詳しく話を聞いてみると、転移魔法陣をくぐると真っ暗な部屋にいたらしい。
それは俺と同じである。
「三人同じ場所に飛ばされたことにはすぐ気づけたの?」
「それは気付けたよ。アルティの剣とティーナの杖が光ってたし」
「飛ばされた場所も、すぐ近くでしたから、すぐ気づけましたわ」
「問題はその後です」
ロゼッタたちは、周囲を魔法灯の光で照らして現状把握しようと努めた。
そこにレジーナが突っ込んできたのだという。
「レジーナさまに必死に対応していたら、ディオンさまも現れるし……」
「死ぬかと思いましたわ」
ロゼッタとティーナはそう言うが、レジーナもディオンも加減している。
実力差が大きければ大きいほど、手加減は簡単になる。
ロゼッタたちが死ぬことはまずないだろう。
実際、ロゼッタたちは大きな怪我は全くしていない。
むしろルーベウムと戦った俺の方が危険だったぐらいだ。
「しばらく戦っていたら、突然『もうよいだろう!』 ってレジーナさまが」
「戦っていたらというよりも、必死に凌いでいただけなのだわ……」
「うん。ティーナの言う通り、まともに戦えてなかったと思う」
そう言ってからロゼッタが少し考えながらつぶやいた。
「どうして合格させてくれたのかな」
「お二人相手にまともに戦えるなら、そもそも弟子になる必要がないから」
「……それはウィルの言う通りだと思うけど」
ロゼッタは自分の戦いぶりに納得できていないらしい。
既に救世機関入りしているアルティが強いのは当然だ。
アルティほどでなくとも、ティーナの経験値もかなり高い。
故郷のアルマディ皇国の王宮でも訓練していたのだろう。
「いまは仕方ないんじゃないかと思うよ」
「そうです。それにロゼッタも充分戦力になっていました」
アルティがはっきりと言う。
「お世辞でも嬉しいよ」
「お世辞は言いません。お世辞はお互い百害あって一利なしです」
ロゼッタが調子に乗り、実力を過信して一番困るのはロゼッタ自身だ。
その次に困るのは同じパーティーに所属する俺たちである。
「ロゼッタはちゃんと役に立っていました」
「そうですわ!」
「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ」
ロゼッタは少し微笑んだ。
それから、どのように戦ったのか三人から教えてもらった。
レジーナは巨大なこん棒を力任せに振り回していたようだ。
「ディオンさまはどのような動きをされていたの?」
「お師さまは大きな杖を構えて、後衛的な役割を果たされていましたわ」
ディオンの弟子であるティーナが色々教えてくれる。
ティーナは、魔法の種類や杖攻撃のタイミングなど詳細に観察していたようだ。
恐らくディオンはティーナへの指導を兼ねて、わかりやすいように動いたのだろう。
「話を聞く限り、ディオンさまは後衛に徹していたみたいだね」
「お師さまは治癒術師ですからね」
二人が本気なら、ディオンも前に出ただろう。
ディオンは前衛としても、かなり強い。
昔、俺は「治癒術師は、自らの身を自分で守れるようになるべきだ」とディオンに教えた。
だから、ディオンは優れた杖術と体術を身に着けている。
ディオンは戦士としても超一流なのだ。
ディオンが試練に顔を出した本当の目的は、生徒が怪我したときに癒すためだろう。
それから三十分ほど話し合ってから解散した。
みんな疲れているので、早めに解散となったのだ。
俺も疲れたのでお風呂に入って寝ることにした。
魔法でお湯を生成し、湯船にためて、神獣たちも洗ったのでさらに疲れる。
「だが、魔力を使うのも訓練の一貫だから仕方ないね」
ルーベウムも、シロやフルフルと同じくお風呂が好きなようだった。
「キュルキュル」
「めめえ」
風呂上がりにルーベウムとシロは元気に頭をぶつけあっている。
それを優しくフルフルが見つめていた。
「本当に元気だな。俺はもう疲れたよ」
そういってベッドに向かおうとしたとき、俺の通話の指輪から声がした。




