81 弟子たちとの会合
前回のおはなし:ウィルは朝早く総長室にやって来た。
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俺に椅子を勧めてから、ゼノビアは隣の部屋に呼びかける。
「レジーナ、ディオン、ミルト! 師匠がいらっしゃったぞ! 早く来い」
どうやら、弟子たち四人全員が揃っているらしい。
夜明けからさほど時間が経っていないというのに、全員揃っているのは意外だった。
「みんな早起きなんだね」
「早寝早起きは健康に良いですから」
ゼノビアはどや顔で言う。
弟子たちはみな高齢者だ。ゼノビアも外見は若いが、百三十歳を超えている。
年寄りは朝が早いというのは、本当らしい。
だが、俺はそういうことは口には出さない。
「……年寄りは朝が早いんだよ!」
「ルーベウム、やめなさい」
「えー、なんでー?」
ルーベウムは俺の肩に登って羽をバタバタさせている。
ルーベウムは生まれたばかり。
だというのに、誰からそんなことを聞いたのだろうか。
そんなことを考えていると、部屋の奥からディオンが出て来た。
「そうだ、年寄りは朝が早いんだ」
「ディオン!」
ルーベウムが俺の肩からディオンの肩へと飛んでいく。
ルーベウムはディオンに甘える。ディオンもルーベウムを優しく撫でている。
どうやら、年寄りは朝が早いと教えたのはディオンらしい。
ディオンが大好きなシロもディオンのところに駆けて行く。
「ディオンは神獣たちに大人気だねー」
「大きいから獣に好かれるのかもしれませんね」
「ぴぎ」
「俺のところにいてくれるのは、フルフルだけだね」
俺がひざの上に乗ったフルフルを撫でていると、
「シュコーーシュコーーシュコココ」
レジーナがやって来た。
フルフェイスの兜に、全身鎧。それに巨大なこん棒を持っていた。
「……ふ、ふひ……わはははっはは」
思いっきり笑ってしまった。
俺が笑ったからか、フルフルもテンションが上がって、激しくプルプルする。
「師匠、どうしたんだい?」
そんなことを言いながら、シュコーシュコー音を出しながら、近づいて来る。
ひとしきり笑った後、俺はレジーナに言う。
「……絶対、わざと俺を笑わせようとしているだろ!」
「ばれました?」
レジーナは兜と鎧を素早く脱いで、巨大なこん棒も床に置く。
「レジーナ、完全に途中から笑わせに来てたよね!」
「笑いをこらえる師匠が可愛かったからつい」
「ついじゃないよ。笑ってたら常識ない人扱いされるところだった」
まじめなシーンで、しかも世界一の権力者の姿を見て爆笑するなど失礼が過ぎる。
「本当に勘弁してくれ」
「善処します」
そう言ったレジーナはニヤニヤしていた。
絶対またやる気だろう。本当に厄介なこと、この上ない。
そんなレジーナを見て、ゼノビアがため息をついた。
「レジーナいい加減にしろ。師匠が迷惑をしているだろう」
「はーい」
レジーナは俺を後ろから抱っこすると、そのまま長椅子に座る。
俺とレジーナに向かい合う形でゼノビアとディオンも腰を掛けた。
すぐにディオンはシロに登攀を試みられている。
逆にルーベウムはディオンの肩から俺のひざの上に飛んできてあくびをする。
まだ赤ちゃんなので、眠くなったのかもしれない。
ルーベウムがひざの上に来たのと入れ替わりに、フルフルがレジーナの頭の上に登る。
その時、隣の部屋からミルトが出て来た。
「師匠。お待たせしました」
ミルトは少し疲れた表情をしている。
弟子たちの中で最年少であるものの、只人族のミルトは肉体年齢は最高齢だ。
「ミルト、大丈夫か? ちゃんと寝てる?」
「はい。ご心配をおかけしてすみません。調べものがありまして」
「きちんと寝ないといけないよ? もう若くないんだから」
「ありがとうございます」
本当に健康には気を付けて欲しい。
それから俺は眠りかけているルーベウムを撫でながらディオンに尋ねる。
「ルーベウム、ああ、この竜の子にはルーベウムと名付けたのだが……」
「よい名前ですね」
「ありがとう。どういう経緯で拾ってきたの?」
「話せば長くなるのですが……」
遠方に出張していたディオンは、俺の帰還の報を聞いて戻って来た。
その途中、学院に近い竜人族の集落に立ち寄ることにした。
近いと言っても、学院から徒歩で五時間程度はかかるらしいのだが。
ディオンは余程の緊急時ではない限りは集落に立ち寄るようにしているらしい。
その集落はディオンの本拠地、つまり勇者の学院に最も近い竜人族の集落だ。
同時にこの大陸で最大の竜人族の集落でもある。
それゆえ、色々困った竜人族がディオンを頼って集まってくる。
また、竜人族が得た情報も、その集落へと集まってくるのだ。
「いつものように集落に立ち寄り竜神の神殿にお参りしたところ……」
ディオンは水神の愛し子だが、竜神の神官でもある。
ちなみに水神の愛し子なのに、水神の神官ではない。
「卵から孵ったばかりのルーベウムが神殿の最奥、竜神像の前にいたのです」
「ほう?」
「その時は夕方だったのですが、神殿在住の神官が言うには朝には卵すらなかったと」
「朝から夕方の間に現れたと……」
「私は竜神さまが、この子、ルーベウムを私に託されたのだと思いました」
「まあ、普通はそう思うよね」
「ですが、私がルーベウムを抱き上げると、『ういるぼるむす?』と」
「俺の名を呼んだの?」
「発音は少しおかしかったですけどね。ゼノビアから聞いていた師匠の名だと気付きました」
「だから、俺と出会った時、俺のことを簡単に信用してくれたのか」
「そうです」
そう言ってディオンは笑った。




