59 弟子たち その4
前回のおはなし:レジーナとディオンにも事情説明した。
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ディオンが真面目な顔で言う。
「その三人は、師匠が才能を見込まれた三人ということですね?」
「訓練を始めたのは成り行きもあるが、充分に才能があると俺は判断した」
「師匠の判断なら間違いありますまい」
レジーナが俺の頭を撫でる。
「師匠を入れて四人になるのか。少し戦力としては不安かな?」
「あとは神獣たちだな。シロにフルフル、それにここにいないがルンルンがいる」
「神獣?」
俺は神獣についても、レジーナとディオンに説明する。
「それは心強いですね」
「師匠、ルンルンとかいう犬にも会わせておくれよ」
「ああ、今度こちらに連れて来よう」
レジーナが俺の部屋に遊びに来たら早い。
だが、さすがに勇者レジーナが一介の生徒の部屋を訪ねては目立ちすぎる。
総長室に連れてくるのがいいだろう。
真面目な顔で考えていたディオンが心配そうに言う。
「師匠……、その若者三人に魔王と戦う覚悟がありましょうや?」
「三人共に俺の目的が魔王、厄災の獣テイネブリス討伐だということは明かしてある」
ともに魔王討伐する同意を得たことも告げた。
「もっとも将来的にどうなるかはわからないがな」
「……師匠の正体は明かされているのですか?」
「一応、ゼノビアの弟子、アルティには俺の正体を明かしてある」
「つまり、我が弟子ティーナには明かしていないのですね」
「そうだ。アルティに比べると、ティーナは覚悟がまだな」
すでに救済機関入りしているアルティと、学生のティーナは立場が根本的に違う。
それにティーナは皇族だ。しがらみもあるだろう。
「ご配慮感謝いたします」
そういって、ディオンは頭を下げた。
ディオンの頭の上に乗っているシロは器用にバランスをとっている。
そんなシロを優しい目で見ながらゼノビアが言った。
「で、ここからが相談の本題なんだが……。ロゼッタを誰かの弟子にしようと思うのだ」
「ロゼッタって言うと、師匠が育成し始めている生徒の一人だっけ?」
「そうだ。レジーナ、よく覚えていたな」
「ゼノビアはおれをなんだと思っているんだ。弓スカウトだったよね?」
「ああ、狩人神の愛し子だ。レジーナ、どう思う?」
「どう思うって、そりゃゼノビアの好きにしたらいいよ。才能あるんでしょ?」
レジーナは、ロゼッタをゼノビアの弟子にすることを相談されていると思ったようだ。
それに気づいて、ミルトはゆっくりと首を振る。
「そうではないよ。俺たちはレジーナの弟子にどうかと思っている」
「……おれは弟子をとる器じゃないよ。ゼノビアが弟子にすればいいよ」
「ゼノビアはアルティという弟子がいる。ディオンにはティーナという弟子がいる」
「それならミルトが弟子にすればいいよ」
「俺には師匠が弟子入りすることになっているから」
「え゛っ?」
レジーナが変な声を出した。
ミルトはそんなレジーナを気にせず説明を続ける。
「だから誰も弟子をとっていないのはレジーナだけなんだ」
「いやいやいや、師匠が弟子になる必要はないじゃないか」
「建前だよ、建前」
「師匠を弟子にするのが建前なら、ミルトがロゼッタの師になっても負担は一人分じゃないか」
俺は弟子の話し合いを黙って聞くことにした。
レジーナの主張の方が正しい気がするが、俺が口出すことでもない。
しばらく、ミルト、レジーナ、ゼノビアが話し合う。
それをディオンは黙って聞いていた。
この百年間、賢人会議はこんな雰囲気で進められていたのだろう。
それがわかって俺は嬉しかった。
なぜ嬉しくなったのかは、自分でもよくわからない。
弟子は子供のようなもの。子供の成長を見られたから嬉しく思ったのだろうか。
いや、ただ単に弟子たちの百年間を感じられて嬉しかったのかもしれない。
しばらく経って、議論が出尽くし静かになった。
その時、自然とディオンに視線が集まる。
「……そうですね。レジーナの主張は正しいとは思いますが……」
「でしょ?」
「ですが、レジーナ。正しさとは別にして、そろそろ弟子をとってはどうでしょう?」
「……だからおれは、弟子をとるような器では――」
「それを言ったら、私たちもそうです。未熟の極みですよ」
「……だけど」
「不幸な出来事のせいでレジーナが弟子をとることに抵抗があるのは知っていますが……」
レジーナはゆっくりと首を振る。
「おれは弱いから……弟子をとる資格がないって思うんだ」
「レジーナが弱いなら、全員弱いでしょう」
ディオンの言葉に納得しなかったのかもしれない。
レジーナはひざの上にいる俺をぎゅっと抱きしめる。
「師匠はどう思う? おれは弟子をとってもいいのかな?」
「そりゃいいだろうさ」
「おれ、まだ弱いよ?」
「俺はレジーナを強いと思うよ」
それからもレジーナは俺に色々と尋ねてきた。
やはりレジーナは弟子を亡くしたことで自信を無くしているようだった。
レジーナ自身も、自分の力量が他の弟子たちより劣っているわけではないと理解している。
それでも、決心がつかなかったのだろう。
俺としばらく会話して、レジーナは俺を抱っこしたまま立ち上がる。
「師匠。そろそろおれも弟子をとった方がいいのかもしれないね」
「ああ、俺もそう思うよ」
「ありがとう。レジーナ。決心してくれたんだな」
ゼノビアが嬉しそうにそう言った瞬間、
「だけど! すべてはロゼッタに直接会ってからだ!」
そう、レジーナは力強く宣言した。




