58 弟子たち その3
前回のおはなし:弟子たちはウィルの前世がエデルファスだと納得した。
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ひざの上のフルフルを優しく撫でながら、ミルトが言う。
「最年少の俺が、今では一番老けているんですから。人族とは損なものですね」
「種族差は仕方があるまいよ。私も際限なくでかくなるから不便なものだ」
竜人は竜人で苦労があるようだ。
成人後も大きくなり続けるから、衣服をずっと買い替え続けないといけない。
「えー、おれは師匠と同じ種族のミルトがうらやましいけどな」
「うんうん、それはあるな。うらやましい」
レジーナとゼノビアがそんなことを言いながらお菓子を食べる。
一方、シロはディオンの身体を登ることに夢中になっていた。
「シロ、人の身体に無許可で登ってはいけません」
「めえええ」
「許可を取ってからにしなさい。俺の身体なら登っていいから、俺で我慢しなさい」
そう言って俺はシロの方へと手を伸ばし、傾斜をつけて登りやすいようにした。
だが、シロはディオンに夢中のようだった。
やはり、俺の身長の二倍以上あるディオンの方が登りがいがあるのだろう。
「めえ?」
シロはディオンを見上げて首をかしげる。
「私の身体なら登っても構わないよ」
「めえ!」
ディオンに許可をもらって、シロは登攀を再開する。
ディオンは登りやすいよう少し腕に傾斜をつけてくれていた。
そのおかげもあり、すぐにシロはディオンの頭の上に到達した。
「めえええめええええ!」
ディオンの頭の上に器用に立って、短い尻尾をご機嫌に振っている。
そんなシロのことは置いといて、俺はレジーナとディオンに向けて経緯を話すことにした。
「ゼノビアとミルトからどのくらい聞いているのかわからないが……」
「あえて、ほとんど話してませんよ。レジーナたちも師匠から聞きたいだろうと思いまして」
ゼノビアなりに配慮したのだろう。
「あ、師匠と私の弟子アルティが二人で獣の眷族を倒したことは話してます」
「うん。それは聞いたよ。八歳でもさすがは師匠だね!」
「見事なものです。出来が違いますな」
レジーナとディオンに褒められた。
照れ臭いので、俺は話を進めることにした。
「そうか。じゃあ、一から説明しよう」
俺は死後から時系列順に、この学院に入学するまでを説明した。
もちろん、神の世界のことは次元が違うので、時系列から根本的にずれてしまう。
だが、とても分かりにくいので、俺の体感の時系列で伝えた。
「師匠も苦労したんだねぇ」
レジーナは俺の頭をしきりに撫でている。
小さい子の頭を撫でたいだけに違いない。
「いや、レジーナたちの苦労に比べたら大したことではない」
「そんなことは無いと思いますが……」
頭にシロを乗せたディオンもそんなことを言う。
「それはそれとして、師匠をいじめたヴォルムス家はつぶしとく?」
「いやレジーナ。俺のことは気にしなくていい。民に害がないなら好きに放置してくれ」
「そっかー。師匠がそう言うなら……」
「レジーナ。権力を持つものは抑制的でなければなりませんよ?」
最年長のディオンが諭すように言う。
「それは、重々わかってるけどさー」
レジーナもディオンの言うことは聞くようだ。
俺の弟子たちは全員幼い時に俺のもとに来た。だから弟子入りの順番も年齢順だ。
特にディオンは卵のころから、俺が育てた。
つまり、俺の一番弟子にあたるのがディオンである。
最年長として、一番弟子として、まとめ役となって頑張ってくれたのだろう。
「ディオンは……苦労してそうだな」
「そんなことはありませぬよ?」
そういって、ディオンは微笑む。
ディオンは周りに苦労を見せないタイプなのだ。
「本当にディオンは、俺のいない間、頑張ってくれたようだな。ありがとう」
「……いえ、私は出来ることを出来る範囲でしただけで」
「それが凄いのだ」
「……あ、ありがとうございます」
ディオンの目から、つーっと静かに涙がこぼれた。
それを見て笑うものは誰もいない。
「ディオンには、本当に苦労させたもんね」
そう言って、レジーナはうんうんと頷きながら、俺の頭を撫でていた。
ゼノビアとミルトもうんうんと頷いている。
「めえ?」
シロはディオンの頭から肩へと降りた。そして、ディオンの顔をぺろぺろ舐めていた。
シロなりに励まそうとしているのだろう。
「ありがとう。シロは優しいのですね」
ディオンは肩の上のシロを優しく撫でる。
そしてすぐに泣き止んだ。
「すみません。師匠。つい感極まってしまいまして」
「いや、気にしないでくれ」
百年分の色々な思いがあったのだろう。泣いても仕方のないことだ。
シロはディオンの涙が止まるのを確認すると、再び頭の上に戻って「めえ!」と鳴いた。
それからはゼノビアとミルトが今後の方針を説明していった。
具体的には俺の正体は隠しておくことなどだ。
「だから外では師匠に敬語を使うのは禁止だからな。特にレジーナ。気をつけろよ?」
「お、おう、ゼノビアに言われなくても、わかってるよ」
「それならいい」
俺は数十年後に来るであろうテイネブリスの復活に備えて、若者を育成することを話しておく。
実際に、アルティ、ティーナ、ロゼッタと訓練を開始したことも伝えておく。
「今から育成したら強力な戦力になってくれそうだな!」
レジーナが嬉しそうに言った。




