60 レジーナの準備期間
前回のおはなし:レジーナが弟子をとる決心をした。
ついに「最強の魔導士。ひざに矢をうけて~」の4巻とコミカライズ1巻が発売になりました!
どうか、よろしくお願いします。
「ここは俺に任せて先に行けと~」の2巻も発売中です!
確かに弟子にする前には直接会うべきだ。
ミルトも俺と同意見なのだろう。うんうんと頷きながら言う。
「ああ、もちろんだ。ロゼッタと直接会って決めてくれればいい」
「今からロゼッタを呼んでこよう」
そう言ってゼノビアが立ち上がりかけたので、俺は止めた。
「ゼノビアが呼べば来るだろうが……いまは授業中だ」
「そ、そうですね、師匠。失念いたしておりました」
レジーナは、もう一度俺を抱っこしたまま座る。
そして俺の頭を撫ではじめた。
「明日の授業終わりでいいよ。こっちにも準備があるからさ」
「準備? 何かするのか?」
レジーナは問いに直截は答えず、俺の頭を撫で繰りまわす。
「師匠。おれは未熟だから。見ただけでは力量はわかっても才能はわからないから」
「才能は、俺も見ただけではわからないさ」
「本当に? 師匠でもわからないの?」
「当たり前だが、わからない」
「そうなんだねー」
才能など見てわかるわけないではないか。それが出来るのは神だけだ。
だというのに、なぜかレジーナは驚いていた。
「俺の作った守護神寵愛値測定装置の結果を確認するか?」
「うーん。別にいいや。ミルトの装置を信用していないわけじゃないけどさ」
「わかった。確かにあれは絶対ではないからな」
ミルトはまったく気にしていない様子でそう言った。
自分の装置の弱点をよく把握しているのだろう。
その後、俺は託児所の授業が終わる時間まで弟子たちと話した。
託児所の授業が終わる時間には、当然ながら学院の授業も終わっている。
俺はロゼッタと教室の外で落ち合って、一緒に託児所へと向かった。
サリアとローズ、そしてルンルンと合流した後、アルティ、ティーナとも合流する。
そして、全員で訓練場へ移動して訓練を開始した。
サリアとローズは、俺たちの訓練を神獣たちと一緒に見学していた。
訓練の合間、俺は尋ねた。
「サリアもローズもつまらなくないか?」
「おもしろい!」
「うん! あにちゃがびゃってうごいておもしろい!」
「すごいねー」
「うん、すごいー」
サリアもローズも訓練を楽しんでみてくれているようでよかった。
訓練の後、休憩しながら皆に尋ねる。
「授業はどうだった?」
「大変勉強になったわ!」
「うん、ためになったよ!」
「それは何よりだ」
そんなことを話していると、俺と同じく授業に出ていないアルティが言った。
「みなさん、明日授業が終わった後、総長室に来てくれませんか?」
「いいけど、総長先生、何か御用なのかな?」
「きっと、何かの指令だとわたくしは思うのよね!」
「指令かー。どんとこいだよ! でも総長先生に会うのは緊張するんだよね」
「まあ、気持ちはわかるが、そのうち慣れるさ」
総長室に寄るために、俺とロゼッタは明日の託児所の延長を頼むことにした。
次の日も早朝から皆で訓練した。
訓練後、託児所にサリアとローズを預けてから、ティーナとロゼッタは授業に向かう。
そして、俺は魔力量増加と操作技量向上のための訓練を兼ねて武器を作る。
だんだん鍛冶師としての腕前が向上している気がする。
ティーナとロゼッタの授業が終わった後、俺たちは総長室へと向かう。
サリアとローズの託児は延長をお願いしてあるので安心だ。
総長室に入る前に、俺はシロを抱え上げてこっちを向かせる。
「めえ?」
シロは首をかしげて、一声鳴くと、俺の顔をべろべろ舐めた。
シロは、俺が舐めて欲しいから抱き上げたと思ったのかも知れない。
「シロ。いまから総長室に入るけど、昨日みたいに総長先生のひざに飛び乗ったりしたらダメだ」
「……めえ」
「俺の横で行儀よくしていないとだめだよ?」
「…………」
返事をしない。これは聞いていないふりをするつもりだろう。
「シロ。いうこと聞けないなら、シロだけ部屋の外でお留守番だからね」
「めえ!」
それは嫌だと抗議している。
「シロ。行儀よくできる?」
「めえめえ」
どうやら行儀よくしてくれるらしい。
俺は安心してシロを床に降ろすと、総長室の扉をノックする。
すぐに入るように言われたので、部屋の中へと入った。
総長室の中にはゼノビアだけがいた。
昨日と違いゼノビアは部屋の奥にある椅子に座っている。
ゼノビアの椅子は座り心地がよさそうだ。
その前には頑丈そうな木製の立派な机がある。つまり、総長の執務用の椅子と机だ。
執務用の椅子に座ることで、いま総長として俺たちに会っていると示しているのだろう。
俺はゼノビアに向けて姿勢を正して言う。
「総長先生。呼び出しに応じて我ら四人参上いたしました」
「ご苦労」
ゼノビアは座ったままだ。
俺はちらりとシロを見る。シロはきちんと行儀よく立っていた。
赤ちゃんヤギなのに、とても立派だ。後で褒めてやろう。
「よく来てくれた。皆に会ってほしい者がいてな。もう出てきてよいぞ」
ゼノビアがそういうと、隣の部屋から、
「貴様たちが魔王を倒すつもりでいる新入生たちだな!」
野太くて低い声が聞こえて来た。




