55 授業開始の日
前話のおはなし:剣を作った。
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アルティの剣が完成した次の日。つまり授業開始の日。
俺はサリアとルンルンを託児所に送った後、シロとフルフルと一緒に教室へと向かう。
基本的に俺は授業をサボる予定ではある。
だが、週一のホームルームには出るように、ガイダンスの際に言われた。
そして、今日は授業開始日であると同時に、週一のホームルームの日でもあるのだ。
「ウィル、おはよう! 今日から授業だね」
「そうだな、ロゼッタは楽しみなのか?」
「うん、楽しみだよ! ウィルは楽しみじゃないの?」
「まあ、楽しみというかなんというか」
やる気満々のロゼッタに基本的にサボるつもりとは言いにくい。
「わたくしも楽しみです!」
「ねー、楽しみだよねー」
「はい!」
ロゼッタとティーナはニコニコしている。
二人は真面目に授業を受けるつもりなのだろう。
「ロゼッタはどの授業を受けるつもりなのかしら?」
「えっと、近接戦闘術の授業とー」
ロゼッタもティーナもそんなことを話し合っている。
同じ授業を受けたりするようだ。
どうやら二人はこの一週間で授業計画表を読み込んだらしい。
俺は授業計画表の存在すら忘れていた。
「ウィルはどの授業を受けるつもりなのかしら?」
授業をサボるつもりとは言いにくい。
だが、どうせすぐに、サボっていることは二人にばれる。
正直に告げるしかない。
「……学期末の試験だけ適当に受けようかなって」
「……なるほど。さすがウィルね」
「そっか、ウィルならそれもありかもしれないね」
ティーナもロゼッタは納得してくれたようだ。
その後、しばらくして、ホームルームが始まった。
今回のホームルームでは基本的な注意事項の伝達が行われただけだった。
ホームルームが終わると、各員それぞれ授業に向かう。
ちなみにアルティは最初のホームルームからサボっていた。
そして、俺は授業を受けずに自室に戻る。
武器を製作するためだ。
「防具も……作るべきかもしれない」
防具は武器よりも多くの素材が必要だ。
ほかにもいろいろと気を使うことがありそうだ。
動きを阻害してはまずいし、防御力も確保しなければならない。
「当面は、店売り防具を魔法で強化するぐらいにした方が良いだろうか」
とりあえずは武器を作ることにしよう。
そう考えて俺は武器を作っていく。
短剣は最初に作ったので、長めの片手剣を作る。
長めの片手剣が完成したら、両手剣、斧、槍、弓なども作りたい。
俺はあらゆる武器が得意なのだ。夢は広がるばかりである。
出来のよい武器を作れたらロゼッタやティーナに上げてもいいだろう。
武器製作は俺の性分に合っているのかもしれない。
厄災の獣を倒したら、魔導師を廃業して鍛冶師になろう。
そんなことを考えながら、俺は片手剣の芯を作り終えた。
「少し休憩して、刀身を作ろうかな」
俺の短剣とアルティの剣。
二振りの剣を作って、俺の製作技能も向上したようだ。
初日のように芯を作るだけで精も根も尽き果てるようなことはなくなった。
少し休憩すれば、集中力を維持したまま、刀身も同じ日に作れるだろう。
俺はフルフルとシロのいるリビングへと戻る。
「めえええめええ」
シロが大喜びで駆け寄ってくる。
俺が武器製作部屋にこもっている間、シロはフルフルと遊んでいたようだ。
「シロ、いい子にしててえらいね。フルフルもシロと遊んでくれてありがと」
「めえ」「ぴぎぃ」
俺がシロを抱きかかえたとき、通話の腕輪から声がした。
『いまよいか?』
ゼノビアの声だ。
周囲に誰かがいる可能性も配慮しているのだろう。敬語ではない。
「はい、大丈夫です」「めえええ」
ゼノビアの声を聞いて、シロは嬉しそうに鳴く。
『……今すぐ総長室に来るように』
それだけ言って、ゼノビアは通話を終わらせた。
「授業サボっていることはお見通しか」
とはいえ、それで怒られることはあるまい。
「めえ?」
シロは「どうしたの?」と言いたげな表情でこっちを見ていた。
「ゼノビアが俺に来て欲しいんだって。通話の腕輪を使うってことは急ぎかも」
「めえ!」
俺は抱きかかえていたシロを床に置くと、総長室への移動を開始する。
小走りになると、シロは楽しそうに走ってついて来た。
フルフルはぴょんぴょん器用に飛んで、俺にしっかりついて来る。
フルフルの移動速度はシロと互角かもしれない。
俺たちはあっという間に総長室の前へと到着した。
ゼノビアは俺が来ていることには気付いているはずだ。
だが、前回とは違い向こうから扉が開かれることはなかった。
つまり、部屋の中にはゼノビア以外にも人がいるのだろう。
だから、俺は礼儀正しく扉をノックする。
――コンコンコン
「ウィル・ヴォルムス、参りました」
「入りなさい」
「失礼いたします」
俺は扉をゆっくりと開ける。
礼儀正しい一般生徒であるかのように振る舞うことを忘れない。
だが……、
「めええええめえええめええええ」
俺が扉を開けた瞬間、シロが勢いよく総長室の中へと駆け込んだ。
嬉しそうに元気に鳴きながら、長椅子にゆったりと座っていたゼノビアに走り寄る。
そして、ゼノビアのひざの上にシロはぴょんと飛び乗ったのだった。




