54 魔力の訓練と剣の作成
前話のおはなし:仲間が増えた。
ついに「最強の魔導士。ひざに矢をうけて~」の4巻とコミカライズ1巻が発売になりました!
どうか、よろしくお願いします。
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次に問題となるのは訓練する場所だ。
魔導師であるティーナが加わる以上、今までのように中庭でやるわけにはいかない。
「アルティ。訓練にちょうどいい場所ってどこかにあるかな?」
「訓練場はどうでしょう? 実技試験が行われた場所です」
俺は勇者の学院の入試の際に実技試験を受けていない。
だが、御曹司たちと決闘した場所で実技試験が行われたことは知っている。
「あそこか。あそこならいいかもしれないな」
魔力全開で魔法を使うことは難しいが、多少なら攻撃魔法を使っても大丈夫だろう。
「私が総長先生に訓練場の使用許可をもらっておきましょう」
「アルティ、ありがとう」
「いえ、問題ありません。お気になさらず」
それから、俺はティーナに魔導師の訓練法を伝えておいた。
俺が、ヴォルムス本家で掃除しながらやっていたことだ。
日常生活を送りながら魔力を鍛えることが可能な画期的な訓練法である。
起きている間は常に身体の中の魔力を循環させ続けるのだ。
それと同時に身体を動かす際に、逆方向に魔力で負荷をかけていく。
日常的に魔力の枷を全身にかけて暮らすのだ。
「こうすることで、筋力と同時に魔力を鍛えることが出来る」
「こ、こういう感じかしら」
「そうそう。流石ティーナ、飲み込みが早い。これを常時行えるようになろう」
「常時は大変ね」
「慣れればそうでもないよ」
部屋の中をティーナはぎこちなく歩く。最初にしては見事なものだ。
やはり、ティーナは筋がいい。
「これを続ければ魔力調節がうまくなるよ」
「回復魔法の干渉を防いだり、手を触れずに解毒と回復を同時に出来るようになるかしら?」
回復魔法をかけているところに、さらに回復魔法をかけると干渉によって事故が起きかねない。
それを防ぐことはとても難しい。
だが、俺はティーナの目の前で干渉を起こさずに回復魔法を行使してみせた。
ティーナと初めて出会った森での出来事だ。
また、手を触れずに解毒と回復魔法を同時に使って見せたりもした。
そのことをティーナは言っているのだろう。
「もちろんできるようになる」
「頑張るわ!」
ティーナがやる気を見せていると、ロゼッタとアルティが言う。
「あ、あたしにも教えて欲しいのだけど」
「私にも教えてください」
「もちろん構わない」
魔力を増やすことは前衛にも大事なことだ。
優秀な前衛は、無意識で身体能力を魔力を使って向上させているものだ。
魔力と同時に筋力も鍛えられるこの訓練は、前衛職にも最適といえるだろう。
そして何より大切な筋力と魔力の同期の訓練にもなる。
「意識的に魔力を増やす訓練をしているものは前衛には少ないんだ」
「つまり、それだけで優位に立てるってことだね!」
「レジーナさまやゼノビアさまも幼少期魔力を上げる訓練はしたそうだ」
もっとも、今の俺が教える訓練法は神々から色々教えてもらった改良版だ。
当時のものより効率がはるかに良い。
「そうなんだ! 賢人会議の方々もやったんだね。あたしもがんばろう!」
ロゼッタもやる気になっている。
俺は改めてロゼッタとアルティにも訓練方法を教えた。
魔法職ではないので、ティーナの訓練法とは微妙に異なる。
一通り教えた後、各自にやってもらい改善すべき点を修正していく。
その修正を念入りにじっくり行わなければならない。訓練の基礎は大切だからだ。
「こういう感じですか?」
「そうそう」
「ウィル、こんな感じで大丈夫?」
「大丈夫だ」
一時間が経過するころには、アルティもロゼッタも上手に訓練できるようになっていた。
「これ、結構疲れるね」
「疲れるからこそ、訓練になるんだ」
「そうなんだ、がんばろう!」
「だが、無理はしないようにな。今は気付いたときにやる感じでいい」
「わかりました。がんばります」
それから三人とも自分の部屋に帰っていった。
俺はシロとフルフルと部屋に残された。
剣の芯を作ったのもあり、結構疲れていたので長椅子に横になる。
「めええ」
俺のお腹の上にシロが乗って来た。
「シロは元気だな」
「めえ」
俺はシロのことを撫でている間に、眠ってしまった。
次の日から、サリアを託児所に送ったあと、アルティたちと訓練する日々が始まった。
それが終わると、俺はミルトの研究室に移動して獣の眷族に関する調査を手伝う。
その後は自室での剣の製作だ。
自分の剣を作るのに初日の芯づくりを入れて計二日。
アルティの剣を作るのに三日かけた。
最初に剣を作りはじめてから五日後。
俺は完成したばかりの剣を持ってアルティの部屋を訪れた。
アルティは快く部屋に招き入れてくれる。
「アルティ、剣が完成したよ」
「ありがとうございます」
「授業の開始までに間に合ってよかった」
入学式の一週間後。つまり明日が授業開始日だ。
「とはいえ、アルティは授業に出ないかもだがな」
アルティは一度勇者の学院を卒業しているのだ。いまさら授業に出るまでもない。
俺もあまり授業に出ない可能性が高いと思う。
「アルティ、剣の感触を確かめてみてくれ」
「はい。では失礼して……」
アルティは俺から剣を受け取ると、鞘からさっと抜く。
そして、数度剣を振った。
「素晴らしい剣です。手に馴染みます」
「重すぎるとか軽すぎるとか、もっと長い方がいいとか、そういうのはないか?」
「いえ、まったくありません。素晴らしいです」
「そうか。いつでも希望があったら言ってくれ。武器づくりの修練もしたいからな」
「はい。ありがとうございます」
俺の短剣も、アルティの剣も無事完成した。
これでいつでも獣の眷族ぐらいとなら戦えそうだ。




