102 見張りの竜との戦い その2
前回のおはなし:試合が開始された。
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ディオンの開始の宣言とほぼ同時に、まっすぐにアルティが突っ込む。
矢のような速さだ。
「G……」
竜が少し怯んだような声を出した。
たかが子供たちと考えていたのだろう。
そこにアルティが剣をふるう。
完全に虚を突いた奇襲。アルティの動きは速く、斬撃も申し分ない鋭さだ。
だが、さすがは見張りのリーダーを務める竜なだけはある。
反応も速く対応も適切だ。
「GRRRR!」
竜は咄嗟に後ろに跳んで距離をとる。
アルティの鋭い斬撃は空を切った。
だが竜が後ろに跳ぶことを読んでいたロゼッタがすでに矢を射ている。
ちょうど後ろに跳んだ竜の額に吸い込まれるように矢が飛んだ。
「GRAAAU」
だが竜は右腕で矢を払いのける。そして大きく口を開けた。
――ブレスが来る!
俺がブレスを防ぐため、魔法障壁を展開しようとみがまえた瞬間。
竜の全身が炎に包まれる。ティーナの魔法攻撃だ。
「GAAAAAAA」
悲鳴を上げながらも、竜はブレスを口から放つ。
ブレスの種類は暴風ブレス。
ティーナが放った竜の全身を包む火炎魔法を、暴風ブレスは吹き飛ばす。
もちろんそれだけでは竜のブレスは止まらない。
俺たちを吹き飛ばさんと暴風が吹きあれる。
風の中には魔法の刃が仕込まれていた。
まともに食らえばずたずたになってしまうだろう。
「そうならないようにするのが、俺の仕事だ」
俺は全員に即座に魔法障壁を展開し、暴風ブレスから守った。
暴風ブレスを放ち切った竜が見たものは、眼前に躍り出るアルティだった。
アルティは暴風ブレスの中、俺の魔法障壁に防御を任せて、一気に間合いを詰めたのだ。
「はあああああああ!」
「GU!」
アルティの斬撃に合わせて、竜は左腕をふるう。
竜の左腕、その爪は非常に鋭く、尋常ではなく硬く折れにくい。
竜はアルティの剣を爪でしっかりと止める。
アルティの剣は俺のお手製。
自分でもなかなかのよい出来だと思えた剣だ。
アルティが俺の剣を使えば、鋼鉄でも断ち切るだろう。
だが、
「むむう。まだまだか」
俺の剣では、まだ竜の爪を砕くにはいたらないらしい。
それも最高位の竜の爪ですらない。
下位ではないだろうが、まだ人語を発話できない見張りのリーダークラスの竜だ。
爪を砕けなかったのは、断じてアルティの腕のせいではない。
アルティの斬撃は充分に一流と言っていいレベル。
爪を砕けなかったのは俺の剣に問題があると言い切っていいだろう。
俺の作った剣では、鋼鉄は斬れても竜の爪は砕けないのだ。
「竜の爪も牙も斬れる剣を作りたいな……」
俺が自分の武器製作に関して反省をしている間も、アルティは鋭い斬撃を繰り出している。
竜も両手を使い、懸命に爪で斬撃を防ぎ続ける。
そしてロゼッタが的確に矢を放ちつづけている。
ロゼッタの矢は、硬い鱗に覆われた竜相手には致命傷にはなりにくい。
それでも、アルティへの斬撃の対応に全神経を費やしている竜は防ぐことは出来ない。
魔法的な防御もアルティへの攻撃を防ぐ方に費やしている。
「たあああ!」
だから、ロゼッタの矢は竜の身体を傷つけるに至る。
矢じりの半分程度、鱗をぎりぎり貫く程度。
竜の肉に届いたのは、爪の先ほどだろう。大したダメージにはならない。
「GAAAAAA」
それでも、竜にとって痛いのは間違いない。
ロゼッタは二秒に一射のペースで撃ち込んでいく。
やはりロゼッタは腕がいい。
ロゼッタのちくちくした攻撃に苛ついたのだろう。
竜が視線をアルティからロゼッタへと移す。
「よそ見するとは、ずいぶんと余裕があるわね!」
そこにティーナの攻撃魔法が襲い掛かる。
先ほどは炎だったが、今回は氷だ。
竜の全身が氷で包まれた。
「GUAA!」
竜は咆哮して、身体を大きく振るわせた。
同時に全身から魔力をほとばしらせて、氷を吹き飛ばす。
竜はすぐに大きく息を吸い込んで、暴風ブレスの構えをみせた。
同時に竜の上空に炎の球が出現する。
炎の球を出現させたのはティーナではない。竜だ。
ブレスと同時に炎の球を撃ち込むつもりだろう。
「みんな、上にも気をつけろ!」
「「はい!」」
ロゼッタとティーナは元気よく返事をして、アルティは無言でうなずいた。
アルティは姿勢を低くして、竜に斬りかかる。
ロゼッタは矢を撃ち込みながら、竜の後方へと回り込む。
そしてティーナは氷塊を出現させ、見る見るうちに大きくする。
竜の炎の球に対抗するためだろう。
「GUAAAAAAAAAAA!」
暴風ブレスが吹き荒れた。俺はすかさず魔法の障壁を張る。
アルティ、ティーナ、ロゼッタ、各自に障壁を展開し、それぞれ守る。
レジーナとディオンのいるところにもブレスは吹き荒れているはずだ。
だが、レジーナもディオンも自分で何とかするだろう。
神獣たちもレジーナたちが守ってくれるはずだ。
ブレスを吐きながら、竜はロゼッタから俺に視線を移した。
そして、俺を目掛けて炎の球が放たれた。




