101 見張りの竜との戦い
前話のおはなし:レジーナが竜を挑発した。
「ここは俺に任せて先に行けと~」のコミカライズ1巻が12日発売です。3巻も発売中!
「最強の魔導士。ひざに矢をうけて~」の4巻とコミカライズ1巻発売中!
レジーナは俺たちと竜を四対一で戦わせたかったからあえて挑発じみたことを言ったのだ。
まず、四対一だけ提示した。
その上で荷が重いと思うなら一対一でいいなどと言われたら、四対一を受けるしかない。
それが誇り高い竜と言う生物である。
「さすがは竜だ」
レジーナは満足そうにうなずいた。
そして俺たちの方を振り返る。
「ということになった。力を合わせて戦うがよかろう」
言い終わるとレジーナは俺の方をじっと見た。
レジーナの言いたいことはわかる。
弟子たちの訓練になるように、ほどほどに手を抜けと言っているのだ。
そして、大怪我しないように気を付けて欲しいとも言っている。
さすがにそれらをレジーナは口には出さない。
竜が聞いたらプライドをひどく傷つけてしまうからだ。
そして、ロゼッタ、ティーナ、アルティが俺の方を見る。
ロゼッタたちは、俺に指示をしてほしいのだ。
アルティ以外は竜と戦うのは初めてだ。不安に違いない。
竜との初戦は指示を出すべきだろう。
「わかった、任せておいて」
そういって、俺は微笑んでから三人に指示を出す。
「アルティ前衛で。ティーナは魔法攻撃を。ロゼッタは距離をとったまま弓を使って」
三人とも黙ったまま頷いた。
俺の指示は当たり前のことしか言っていない。
それでも指示を受けたことで、少し安心したように見える。
「防御は俺に任せて。思いっきりやっていいよ」
「わかった!」
「はい」
「腕が鳴りますわ!」
それから俺は神獣とフィーに諭すように言う。
「フルフル、シロ、フィー、それにルーベウムも。手出しは無用だからね」
「ぴぎ」「めえ」
「もとより手を出すつもりはないよ」
「わかった。きゅる」
ルーベウムはディオンの懐に隠れたまま返事をする。
「それなら良かった」
フルフルとシロはディオンの方へと歩いて行った。
だが、フィーは俺の服の内側から動かない。
「ぼくはなにもしないし、邪魔もしないからこのままいるね!」
「いや、一応危険だから」
俺はルーベウムと戦った時、尻尾で障壁を破られて火炎ブレスを食らった。
そして服が全部燃えた。
もしそうなったとき、中にフィーが居たら怪我をしそうだ。
精霊ゆえに、フィーは物理耐性も魔法耐性も高い
特にフィーはただの精霊ではなく、神霊だ。余程の攻撃でなければ、通用するまい。
それに俺の服を燃やしたルーベウムも神獣の竜だ。竜の中でも特に強い。
目の前の竜がルーベウムと同じことが出来るとは思ってはいない。
だが、念のために離れていた方がいいのは間違いないだろう。
「レジーナさまのところに行っといて」
「……わかった。気を付けるんだぞ」
「うん。気を付ける」
しぶしぶという感じでフィーはレジーナのもとへと飛んでいった。
そして、俺はレジーナを見てうなずいた。
準備は出来た。いつでも始めてくれと言う合図だ。
レジーナもうなずく。
「竜よ。準備は良いか?」
「GRRRRR……」
「審判はこの竜神の神官、ディオンが務める」
そういって、レジーナは自分の近くにいるディオンを手で示す。
「竜神様の神官。竜人族のディオン・エデル・アクアと申します。以後お見知りおきを」
「Gr……」
「あらかじめ言っておくことがございます」
丁寧に頭を下げながらディオンが続ける。
「こちらのティーナは我が弟子ではあります。ですが審判を公平に務めましょう」
「GRRR」
竜は「保証はあるのか?」と言っているように思う。
「竜神様の神官として、公平公正に審判を務めることを竜神様にお誓いいたします」
「GR……」
竜はディオンを審判として認めたようだ。
竜も竜人族と同じく竜神を信奉している。
それゆえ竜族も、竜神の神官には敬意を示すのだ。
だからこそ、竜もディオンが審判を務めることに納得したのだろう。
(あれ? 竜神の神官のディオンが行けば群れの長とも話せたのでは?)
そんなことを俺は思った。
元々、竜のひげが欲しいというところから、今回のことは始まった。
「まあ、いっか」
ディオンも弟子を育てるため、竜と戦う機会を与えたかったのかもしれない。
俺たちは竜の前に、隊列を組んで身構えた。
その様子をディオンは見て、一度深く頷いた。
続いて竜の方を見る。竜は「GR……」と唸って、準備完了を告げる。
ディオンは大きく息を吸ってから、天を仰ぐ。
「竜神様、ご照覧ください。若き人族と偉大なる竜族の戦士の力比べにございます!」
その声はとても大きく、そしてよく通った。山脈の遠くまで響いただろう。
本当に竜神に聞こえるのではと思えたほどだ。
竜神への挨拶を済ませたディオンは、竜と俺たちの方を順番に見る。
「これは竜神様にささげる戦いである。正々堂々全力を尽くすがよい」
「「はい」」
「GGRRR……」
「はじめ!」
ディオンの明朗な声で、戦いの開始が宣言された。




