103 見張りの竜との戦い その3
前回のおはなし:竜と戦闘中。
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竜はブレスを防いだのが、俺だと気付いたのだ。
そして俺を先につぶすべきだと判断したのだろう。
激しい攻撃を加えているアルティたちではなく、俺を選んだのはさすがだ。
知性の低い魔獣ほど自分に激しい攻撃を加えるものを真っ先に潰したがるものだ。
つまりこの竜は、防御の重要性を理解しているということだろう。
そして人族は竜に比べて脆いということも熟知している。
人族と戦うのは初めてではないのかもしれない。
俺が落ち着いて炎の球に対応しようとしたとき、
「はあああああ!」
ティーナが準備していた巨大な氷の塊を炎の球を目掛けて放つ。
炎の球は、竜の上から俺目掛けて落ちるように飛んでくる。
必然的にティーナの氷の塊は下から上への軌道をとった。
(防御は任せてと言っていたのだけど……)
とはいえ、ティーナの判断は間違っているとまでは言えない。
俺がいないパーティーならば、ティーナがそう行動しなければ死者が出かねない。
一般的なパーティーの魔導師の行動としては、当然、もしくは必須の行動ともいえるだろう。
そんなことを考えていると……
「はあああっだあああああ!」
皇女にあるまじき雄たけびを上げ、炎の球に当たる寸前、氷塊の軌道を急激に変えた。
上昇から下降へ。自由落下に水平方向への加速が加わる。
物凄い速さで氷の塊は竜にぶち当たる。
竜は氷塊は炎の球にぶつけるものと判断し、新たな炎の球を用意し始めたところだった。
現在、竜の魔力リソースは、暴風ブレスと炎の球二つに割かれている。
それゆえ、防御のためのリソースがほとんど残っていなかった。
「GAAARAAAAAAA!」
高速で飛ぶ氷塊は竜にぶつかり、鱗を砕いた。
「まだ!」
ティーナが叫ぶと、氷塊が形態を変える。
氷塊は一瞬で霧散すると「ピシピシピシ」と音を鳴らしながら、竜の全身を凍り付かせた。
暴風ブレスを吐いていた口ごと凍る。
それにより暴風ブレスは止まった。
ティーナの魔力変換の素早さと巧みさに俺は心底驚いた。
氷塊を極めて短い間で、純粋な冷気を持つ魔力に変換させたのだ。
「さすが、ディオンの弟子」
俺はティーナを褒めながら、自分を目掛けて飛ぶ炎の球を魔力をまとった左手でかき消した。
「GU……」
竜はティーナではなく、俺をじっと見た。
そしてブルブルと体を激しく震わせながら、魔力を発散させる。
ティーナの放った冷気を振り払った。
ティーナの攻撃は竜の鱗、一枚を砕いた。
だが、それすらも大したダメージではなさそうだ。
竜の生命力の高さは恐ろしい。
「guuu……」
竜は低く唸ると、ごろりとゆっくりと仰向けになった。
降参の合図だ。
今まさに、剣で襲い掛かろうとしていたアルティが急ブレーキをかけて止まる。
だが、ロゼッタはそのポーズの意味を知らない。
すでにつがえていた矢を、負けを認めた竜に向かって放ってしまった。
その矢を止めようと俺が動こうとしたときには
「そこまで」
ロゼッタと竜の中間地点に、審判であるディオンが立っていた。
まるで最初からそこにいたかのような、自然さだ。
その右手には、先ほどロゼッタの放った矢が握られている。
「いつの間に……」
ロゼッタは、ぽかんと口をあけ、ディオンの動きに驚愕していた。
「ロゼッタさん。仰向けは負けを認めたという意思表示。攻撃は止めねばなりませぬ」
「すみません」
「まあ、知らなかったのでしょう。以後気を付けてくださいね」
ディオンはロゼッタではなく、その師であるレジーナをじろりと睨んだ。
「伝えるのを忘れておった。すまぬ」
レジーナはすこし反省しているようだった。
改めてディオンは大きく息を吸った。
「勝者人族!」
ディオンの声は山中に響き渡る。
「GRAAAA……」
竜は仰向けの状態から起き上がった。
ロゼッタは肩で息をしながら、矢を弓の弦につがえている。
ティーナも未だ杖を変えたまま竜を睨みつけている。
二人とも緊張の極みだ。
アルティは剣を鞘に納めると、ロゼッタとティーナに向けて言う。
「もう大丈夫」
「へへ、ありがとう」
緊張の切れたロゼッタはガクっとひざをつきそうになった。
そこを師匠のレジーナが支える。
「ひとまずは終わりだ。落ち着くがよい」
そう言いながら、矢を弓の弦から外させる。
一方、ディオンは弟子のティーナに笑顔を向ける。
「いい動きでした。特に最後の攻撃は良かったですよ」
「あ、ありがとうございます」
ディオンはティーナの杖の先を持って、優しくゆっくりと下げさせた。
試合が終わったのに、臨戦態勢を取り続けるのは失礼だ。
だから師たちは弟子を落ち着かせつつ、臨戦態勢を解除させたのだ。
そして、俺は竜に近づく。
「いい戦いだった」
「GRRRR……」
竜は静かに唸った。恐らく竜の言葉で何かを言っているのだろう。
俺が具体的にどのあたりが見事だったか語ろうとしたとき、もう一頭の竜が降りてきた。
先ほど戦った竜より三倍以上は大きかった。
ここまでのおはなしはいかがだったでしょうか。
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