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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
Made in Utopia
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185/458

184.確認しよう

「それで俺はなんでここに……???」

(もーーー大変だったからね!!!!)


 さてさて、目が覚めた場所は前回の義堂がらみの

揉め事と同じ流れであれば、なぜか生きていて、

なぜか揉め事が解決していて、なぜか廃工場から

離れた学校の保健室で目覚めるテンプレートに

収まるはずだが、生きていること以外は全く

異なる。いや、俺の意識がない間にあの鹿羽さんの

大暴れを食い止めているのかもしれないが、

俺の目の前で、弁解をする眷属たちを見る限りは

そういうわけではないらしい。


「とりあえず、水を飲ませてくれ」

(あ、用意しますか?)

「いや、お前ら用意できないだろ」


 俺は階段を下りて台所の冷蔵庫からペットボトルの

水を取り出す。飯は食わない反面、単純に手を

つけやすいというなんとも怠惰な理由で飲料については

かなりうるさいのだ。


 どうせ俺の家には俺と眷属しかいないのだ。

コップにつぐなんて気品あることはせずにぐびぐびっと

小さな蓋穴から吸いつくように、水を飲む。


 普段は水なんて買わない。コンビニで水が無料で

もらえるクーポンを受け取った次第。それを手を付けずに

残っていただけだ。


 動作からわかる通り、俺は今まったく何事もなかった

かのように、まるでいつものように"帰宅"している。


 つまり、俺は自分の家にいる。廃工場でも保健室でもなく。


「……ぷへぇ」

(プヘエ? なにそれ?)

「"ゲイジー"、これは飲んだ後に言うセリフだ。だから

 語彙に力がないことには気にするな」

(??)


 やはりただ帰ってきた雰囲気とは言え、身体は自分の

身に起きたことを覚えているらしい。なんなら声も極力

出したくないぐらいには疲労がたまっている様子だ。

あー、もう寝たい。だって時計は日付を大いに回って

3時を指している。ということはかなりの時間、俺は

眠っていたということになるな。


 眠ったのに寝たいとは、ずいぶんとぐうだら。


「あ”ー、この感じだといいところ無理した感じだろ」

(えぇ、まぁ死にかけましたから)


 死にかけたのかぁ。さらっとおっかないこと

言ってくれるな。と言いつつも死ぬなんてたいそうな

ことでもないんだがな、俺にとっても。だとしても

失うことは怖いものだ。痛いのも怖い。


「とりあえず、俺がわかっていることはと言えば


  まずあの女に触ったのが悪かったんだろうなという

 ことと、俺がとんでもない力で吹っ飛ばされたって

 ことだけだな。それ以外はまったく記憶になければ

 自力で帰宅していたのかすら、かすかにすら覚えて

 いない」

(そんなにすごい力だったんですか?)

「あぁ、多分俺が今まで生きた中で一番の衝撃だった

 かもしれん」

(え)

「そこんところは"ヴィーハ"と"ノーティ"がよくわかって

 いるんじゃないk…… あれ、そういえばノーティは?」

(まだマスターに憑いているよ)


 と、脳裏に語り掛けてくる。寝ている間も"ヴィーハ"は

俺に憑いたままだったのか。


(さっきの女に吹っ飛ばされた時に真っ先に倒れちゃって)

「えぇ……」

(でも、毛玉が吹っ飛ばされている間に足でブレーキを

 してくれたおかげで壁に当たって、跡形なくパァン

 ってならなかったから)

「それは俺もヤだな」


 風船みたいな効果音が似つかわない、実にサイコな

絵面になりそうだ。だが、きっと本当に俺の身体が割れる

としたら、リボルバー銃を放つみたいな盛大に大きな

オノマトペは鳴らないんだろうな。それこそ、

風船みたいなしょぼくれた音になりそう。


 そこがよくわからないのだ。


 明らかに物理的な力で吹き飛ばされたわけではないのは

受けた自身がわかっている。鹿羽さんの霊感は確認して

あまり驚異的なものではないこともわかっている。


 だから可能性とすると、あの場で霊的な何かに

"わざと"憑かせて俺に太刀打ちしてきたとなる。だが、

そんな即興で憑かせた霊に、上位種である俺を倒す

だけの力を出すことなんてできるのだろうか。


「多重人格の一部がそういう力だとしたらあり得るか」

(そういえば、なんでマスターはあの女に触ろうと?

 多分、それしなかったらきっとあんなことには……)

「それは俺の不注意だ、すまん。まさかああなるなんて

 思っていないし、気になってしまって行動にすぐ

 移っちゃったんだ」

(それは私たちの落ち度でもありますし)

「……で、触れた理由が」


 俺はぐっと腕をまくる。アザになるほどに掴まれた

場所に指をさして、くるっとここらへんと回す。


(?? 何もないように見えますが?)

「あぁ、ここをがっちりと掴まれたんだ。それこそ

 腕がもげるかと思うくらい。だから何かしら傷なり

 アザができていると思ったんだが」

(……何もない)

(それって変だよねマスター)

「よくわかってるな"ヴィーハ"。やっぱり憑いていると

 そういう痛みとかの感覚もわかりやすいのか?」

(そりゃあね。というか"痛み"が私たちの糧みたいな

 ところあるから)

「それもそうか。実際めちゃくちゃ痛かった。見た目とは

 裏腹に握力は強いんだなと思っていた程度だったが、

 どうにもそういうわけじゃないなって」

(というと?)

「そう、まるで」


「内側を絞め殺そうとせんとばかり」の痛み


(内側、ってことは)

「内側なんてそんな皮膚の内側の筋肉ってわけじゃない。

 もっと精神的なものに起因したものが、力として

 発揮している感じだ。だからこそ"皮膚には"アザに

 ならず、"憑いている霊"に何かしらのダメージを受けた

 んじゃないかって思ったんだ。だから"ヴィーハ"、

 もしかしたら後ででもいいが腕を見てみてほしい」

(いやもう見てるよ。アザみたいのはなかったけれど

 確かに私にはダメージらしい傷はあるよ)


 本来、人間の身体と憑依した霊には苦痛や悦楽のような

感覚を共有するシステムは搭載していない。霊に憑かれた

人間が自殺したとしても、霊は死なないように。だから

"ヴィーハ"が俺と同様、ダメージを受けているなんて

システムエラーはあってはならない。


「だからあの女の手に何かあるんじゃないかって思って

 触った、というのが理由だ」

(なるほど……)

「それで、俺があの場で吹っ飛ばされたってことは

 確かに何かはありそうだな」


 ということでそろそろ話者を変えるか。メインは俺の

倒れている間に起こった出来事なのだから。


(ええ、彼女には確かに霊的に強力な武器を持っている

 様子でした。事実、私たちの存在にも気が付いていた

 んですから)

「霊感がないのに?」

(だから、聞いたことはありませんが"霊感がいきなり

 上がった"と考えるとしか。それこそ多重人格で

 別の人格に変わった瞬間にそのもう一つの霊感が

 はたらいたとしか。だから私たちも実は危なかった

 んですよ)

「え」

(マスターが吹き飛ばされたのがわかった瞬間に

 マスターのもとに私と"ゲイジー"が現場に向かいました。

 "ヴィーハ"からいきなり、ヤバイ!と、ミコンを通じて

 連絡が入るものですから驚きましたよ。


  それで急いでマスターのもとに来たら、言っていた

 通り壁に打ち付けられて倒れていたところでした。

 それにあと一歩遅かったらとどめの一撃を与えようと

 している場面でしたから)


 アブネェアブネェ。あの鹿羽さんの無言キャラが頭から

離れないためか、あまりに場面の情景が思い浮かばない。


(そこで"ゲイジー"が割って入ったんですよ、二人の間に。

 そうしたら、彼女も驚いて攻撃を止めました。まぁ、

 すぐに交戦体制になったんですが。確か、


 「仲間がいたのか」


  と言っていたはず。ですからマスターが私たち霊と

 同族であることもわかっていた、ということに

 なりますね)

「……ん? ってことは俺は前みたいに血を流して暴走

 したってわけじゃないのか」

(ええ、むしろ肉体的には健康そのものですよ今も。

 もっともダメージが入ったのは我々、霊たちなんですが。

 だから、普通の人みたいにノビていました)

「やっぱり、俺自身には痛みはなかったのか」


 てことはこの倦怠感は明らかに俺に憑いている

"ヴィーハ"たちのせいなんじゃないのか? 感覚は

共有しないとはついさっき説明しているとはいえ

それは"ただの人間"でのシステムであって、俺の

ようなもともと似た者同士ならばその限りではないから

その可能性はあり得る。ありよりの大ありだ。


(だから、どうにかしてマスターを守らなくては

 ならないと思い、ひとまずあの場所から離れました)

「え、俺寝てたけどどうやって?」

(それはもちろん、私が乗り移って)


 "ヴィーハ"がそう言った。それこそ俺の身体に

乗り移ったまま、脳に語り掛けるように。


「え!? そんなことできるの!!??」

(いえ、マスターみたいな同族ぐらいにかできないん

 じゃないかと思いますよ。それも自身の

 コントロールが効かない状況、痛手のダメージを

 受けたり、寝ているときという限定的な条件下

 ぐらいでしか。我々もできるかできないか怪しい

 挑戦でしたから、許してください。それぐらい状況が

 まずかったので。


  ひとまず、マスターの身体をどうにかして移動

 させるしか、解決方法がなかったんですよ。


  ……それぐらい、彼女はヤバイです。アレと真っ向

 勝負をしたら、不利がつくのはこちらです。第一に

 宿主がやられているんですから、魔力の供給もままなら

 ない。それでいて、マスター自身もわかる通り、相手の

 力量が測り取れない。だからこそ、撤退しました)

「しかしよく撤退できたな。あの口調と様子なら地獄の

 果てまで追いかけてきそうだったが」

(えぇ、確かに追いかけてきました。が、"街中"までで

 それ以上は追ってはきませんでした。私たちも狙って

 そうしたわけではないんですが多分、自分が人並外れた

 ことをしていることを理解しているから、人目に触れる

 場所までは追いかけられなかったんでしょうね。


  当然、マスターを歩かせている間は彼女も攻撃の

 手を止めるわけもなく、私と"ゲイジー"で迎撃を

 していました)

(……私、頑張った)


 なるほど、まさか死にかけている俺がそれこそ

シカバネのように夜の街を徘徊する羽目になるとは。


「って、戦えるのかお前ら? 一応上位種の眷属とは

 いえ戦い専門の霊でもないだろ」

(ほんとに大変だったんですよ! 唯一の対抗手段

 である"リア"である私が頑張らないといけなかった

 んですからね!)

(……でも、私も頑張った)


(そう、私が能力で刀に変形して"ゲイジー"が私を

 持って、武空術さながらに戦ったんですから)

「え! めっちゃ見てぇ!!」


 うわーーー!! 俺、そういう戦い好きなんだが!

いつもはホワホワーとしたキャラが仲間の力を使って

敵と対峙するとか、どこのソウル〇ーターですか!?

コミカライズか、アニメ化したらそのシーンはちゃんと

作ってくれるのだろうか? だとしたら、戦闘シーンを

文字だけで書けない作者に取って代わって演出を

任せたいものだ。俄然やる気出てきたぞ。


(と言っても、ずっと防戦一方でしたけどね。私たちの

 動きに合わせて、あちらも屋根とか電柱を走り回って

 翻弄されましたから……)

「えぇ、すげぇ」


 ほんわかキャラが戦うのは"ゲイジー"だけではなく

様子だけは向こうも同じか。


「それで俺はなんとか生き残ったってわけか。だいたい

 何があったかは分かった。だが……」

(だが……?)


「結局、鹿羽アイツは一体何者なんだ……?


  何か、俺たちと同じ特徴的な様子とあったか?

 逆に同族なら、ずいぶんと面倒ごとになるんだが……」

(特徴……あるにはあるんですが……)


("リア"、じゃあ"アレ"は?)

("ゲイジー"あれって……あぁ、確かにありましたね)


 特徴だけでどんな悪魔かを特定できるかと言われれば

そう言うわけではないのだが、相手が相手なら何かしらの

情報を手に入れて優位に立っておかないといかない。

しばらくバーサス鹿羽編は続くのだろうから、俺も用意

すべき悪魔や霊を見つけておかないといかない。


(…………なるほど……)

「?」

(鹿羽という名前なんですね。あの女は)

「あ、あぁそれが何か大事なのか」

(それは、まぁ、ずいぶんと嫌な名前を持っていることで)

「悪魔にも言われるのかよ、それ」


(いえいえ、むしろ"私たち"にとって嫌なだけですよ)

「は?」


(私たちが街にたどり着いて、彼女が逃げるときは屋根の

 上からとんで逃げたんですよ)

「もう飛んだり跳ねたりしても驚かんな」

(いえ、飛んだんですよ。


  背中から壮大にも白鳥みたいな翼を生やして)


 ???


 白鳥みたいな翼だって?? ここからわかることなんて

だいたい想定はつくが、それってまるで……って、そうか。

それなら俺の「霊感センサー」が働かなかった理由も

説明が付くなぁ。


(ええ、彼女は私たちのような"悪魔"ではありません


  彼女はむしろ逆、


  "天使"ですよ)


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