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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
My Name Is ...
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151/458

151.墓地で話そう

「は?」

「そこまで不思議な顔をしないでください。自身も

 無理難題をあなたに吹っ掛けようとしているも

 同然なのですから」


 いつもと変わらないすくっとした立ち方のまま俺を

見つめてそう語る。


「これはあなたがヒトではないという仮説をもとに

 した根拠のない証明から提示する提案です。飲むも

 飲まないも自由です。ですがあなたの性分の上では

 これを見過ごすわけにはいかないでしょう」

「……なんでこんなことを俺に」

「簡単です。死者を復活させたいというのは誰もが

 思うことでしょう。そんな剣幕で理由を話すことも

 ないでしょうし、この話を寛容に飲むような人物では

 ないと私には思っているので、これ以上は話すのは

 遠慮しておきます。この話はここだけで終わりです。

 もし仮に”死んだ人間を復活させたい”という噂を

 あなたに流された暁には私の立場がありませんので、

 その自分に降りかかるリスクをとった上での行動だと

 考えていただければ」


 実をいうとこれはある程度予測はついていた。

まさかここまでど直球に俺にこれを言ってくるとは

想像していなかっただけで。


 想定できたのは当然、ここが墓地であること

この一つに限る。


 確かにここならこの時間誰も来ないし密会には

うってつけではあるがこんな若干学校や街から

離れたこんな場所に呼び込む必要はない。しかも

墓地が場所として優秀であるならばここ、銅栄墓地

でなくてはならない理由に相当しない。特にここより

近くで同じ学校の知り合いが運営する墓地がある。


 それにさっきも言ったがここは霊的に不安定だ。

ゆえにそういう霊とは度々どころかよく出会う。

その中には何者にも知られずただのうのうと佇む

実に「幽霊」らしい幽霊のほかにも、もしかしたら


 ……もしかしたら誰かの親しい間柄”だった”幽霊が

 いないとは限らないだろう。


「副会長、それh」

「父と母が死んだのはつい半年もたたないほど前です。

 ですのでここにはまだ父と母は生きずともいます」


 俺にはそこらをうろつく霊がここらをうろついている

のが見えているだけだ。その中に副会長がいる父と母が

いるのだろう。霊にも面影なんてものがあれば誰かは

見当がつくのだろうがそんなのわかったもんじゃない。


 半年前


 副会長の態度が常時変わっていないだけあってそんな

ことがあっただなんて思いもしていない。そんな雰囲気を

かもしている様子もなかったはず。


 ……いや、あっただろう。唯一その様子が。


「俺とマヤが訪問した時か」

「はい、その時にも言っていましたね」


 私は風邪で休んだわけではない。


 ならばなぜ休んだのだ。と思えば理由なんてずいぶん

絞られる。


「無理だろ」


 俺が悪魔でそれができたとしてもできなかったと

しても俺はこう答えるつもりだった。


「死体が蘇るなんて話があってたまるか。死体は

 「死体」になるべくしてなったと俺は思っている。

 それが自然の摂理であって、それこそ神の力あっての

 成し遂げられるものだ。そんな何も持たない人間風情が

 できていいことじゃない」

「それは存じています」

「ならそれこそ俺が神か何かだとでも思って言っている

 のか。仮に俺が人間じゃないとしても、俺が神であって

 それができるとしても俺は首を縦には振れないぞ」


「それはあなたが神か何かだと思っている場合です。

 私にとって、霊感を持つ私にとってあなたはヒトでは

 比較できない程の超常的な力を持っている霊か悪魔か

 と認識してます。それは理解できますか」

「……」


 確かにこれについては似たようなことをさっきばかし

生徒会長から聞いたばかりだ。悪い意味で人ではないと。


「私自身もあなた方、「異能部」の活動については非常に

 興味がありました。当然、私が霊に敏感であってあなた方の

 扱う「七不思議の解決」についてもこの目で実際に認識

 できるだけ面白味がありました。


  逆に存じ上げるとなぜそのようなことができるのか

 不思議でありませんでした。


  あの学校にはびこる七不思議を確認できる限りは

 単純に人が一つ経を唱えれば解決できるような軟弱な

 霊が起こしているわけではないのはこの学校で

 これらの噂が流れ始めたころから知っていました。


  が、あなた方、「ただの人」であるあなた方が

 余裕綽綽と解決していくのがあり得ない。たとえ

 巫女という霊媒に特化した人物が筆頭に構えていた

 としてもここまでできるのはあり得ない。この時点で

 あの部活は何か隠しているという結論に至りました」

「隠している?」

「はい、最も常識的で非科学的な結論としては

 ”自作自演”。自分たちで「学校七不思議」を作り

 それを裏で空気のように学校内に広め、部の活動

 という形で解決、名声を広める。意味合いは

 分かりませんがそれがもっとも理解できるでしょう」


 実際は大体当たっていて、若干間違っている。確かに

その学校七不思議が俺たち……いや、ほとんどが俺が原因

であるのは事実だ。だがそれを利用して自分の立ち位置を

高めようなんてことは…… うん、表面上はない。

が、大きくはやはり自分のやらかしたことの顛末を

図るといった部分だ。


 それにそれが理由にはならない。


「だがその自分の霊感がすごいっていうのが本当なら

 その噂が俺たちが撒いた種だってことは否定できる

 はずだろ。たかが「学校七不思議」をまいたところで

 そこに霊だとか異形の仕業なんて絡むはずがないって

 ことはわかるだろう。特に実際にその場に憑いている

 のだから」

「そのことは御前さんからうかがっているはずです」

「?」

「”噂”というのはそれ自体が”霊や悪魔”となり得る。

 ”霊や悪魔”が現れるだけで”噂”になり得る。噂と

 いうのは霊と悪魔が最も関係する事象でしょう?

 ですのであなた方が流したにしろ誰かが突拍子もない、

 戯言として七不思議を言っていたとしても、学校

 という大衆に認知されればそこに霊や悪魔が住み憑く

 というのは御前さんから教えてもらっているはずです」


 そうだったか? ぶっちゃけその辺りの知識は

ミコに聞くまでもなく知っていたし、もしかしたら

言っていたかもしれないが、スルーしていたのだろう。


「ですが、先ほどあなたのおっしゃる通り

 「”たかが”学校七不思議」です。あれほどまでに

 強力な悪魔、一体でもそこの地盤を狂わせかねない

 ほどの悪魔を大量に忍ばせることは不可能に近い。

 その時点であなたたちに疑いかけてもおかしくは

 ないというのは理由になりませんか」

「ならない」


 そう断言する。


「俺もミコに色々吹き込まれたからお前の言うことの

 大体は理解できる」


 そうほらを吹きつつ続ける。


「なら死んだ人間が生き返るなんて話なんてあっては

 ならない話だと言うこともわかっているだろう。副会長、

 あんたの話はわかる。だがそれを俺がやらなくちゃ

 ならない理由にはならない」

「いいえ、私の仮説が正しいならばあなたでしかできない」

「仮説?」

「あなたが”神”ではなく”悪魔”であるということです。

 私はいつ、私の両親を”元の人間”に生き返らせて

 ほしいと言いましたか? 当然、一度滅びた命を再び

 生き返らせることは条理に反します。ですが、悪魔は

 条理の外にいる。この世界に「束縛」される形で

 生きずとも残り続けることができる。そんなことができる

 でしょう」

「……」


 あぁ、できる。当然ながらできる。俺がそうやって何体の

悪魔を俺の眷属にしてきたと思っているんだ。


「あなたにもわかるでしょう、誰かを亡くした喪失感を。

 どのような形でも、それがどんなに歪んでいても

 埋めるための形を保っているのであればすがるしか

 ありませんでしょう」

「……」

「……はぁ、まだわかりませんか。私がそんな私情であなたに

 この話を持ち出したとでもお思いですか」

「私情以外に何がある」


 大きな出来事を起こすのにコイツが死んではならない。


 そんなピンポイントな理由なんてあるはずがない。仮に

あったとしてもそれは合理性を求めた私情でしかない。


 側は隠せても本心はまるで自分行儀ってもんだ。


「そうですか、そう思いになりますか」

「あぁ、いや…… 俺がそんな他人の事情をわかってない

 だけって話であって、色々と言いたいことがあるとh」


「弟」

「?」


「私にも弟がいます。それは以前からご存知でしょうが……

 私の母はとても厳格な性格でした。ダメなことはダメ

 いいことはいくらでも、そして私のことを誰よりも

 信じて真っ先に行動してくれた人でした。父もその

 感性が移ったのか母ほど厳格とは言えずとも面白くも

 あり、いうなれば愛が見えやすい人でした。


  しかし、私たちが何不自由なく生活できることは

 とてもでは難しかったと思います。あまり珍しくない

 理由ですよ。金銭面です。


  母も父も仕事をしてはいますが、稼ぎがあまりない

 仕事を選んでしまったために、富豪のように好きに

 お金を使うことはできません。ですが、私と弟が

 ほしいと言ったものは何でも買ってくれました。

 まぁ、性格が厳格なのでそれ相応の理由を付けなくては

 ならなかったのですが…… それでも母も父も私たちの

 前では弱い部分は見せなかった。親が理由で

 ”できない”という選択肢を選ぶことをさせなかった。


  これを知ったのは私が小学校の後半……もう覚えて

 いませんが確か6年生のころでしょうか。たまたま

 母と父が夜遅くまで、大量の通帳と小遣い帳を

 テーブルの上に広げて、私にはよくわからない話を

 していたのを覗いてわかりました。何を話している

 のかなんて小学生の私では到底分かりっこない内容

 ではありましたが、私たちに無理をして楽をさせて

 いたのかと感じ取ることはできました。その頃から

 弟も物心ついた頃ということもあり「姉」として

 そして「もう一人の母」として弟を父と母とともに

 守っていこうと決心しました。


  ……それが今の私の性格の現れです。特に

 私の場合は霊感が強く、いやな兆候も予感

 できるわけですから…… いえ、その話は後に

 しましょう。長くなりすぎました。


  そして半年前、父と母はいなくなった。

 理由は交通事故でした。お金がある程度安定して

 私一人でもなんとかできると判断して、私が

 生まれてから初めて見た父と母二人旅行でした。

 そうとも聞いていたので、ある種の自由を持った

 父と母について行くとは言わずに弟と留守番をすると

 願い出たのも私です。もし、私があのまま弟と

 留守番をせずに家族旅行について行っていたならば

 それに巻き込まれて私もここであなたと話す機会

 などなかったでしょう。それに弟も……


  ですが私はどうしても否めないのです。もし、

 私が父と母のことを守っていればどうなっていた

 のかと。


  「嫌な兆候を図る」ことができるならばその手の

 交通事故にまつわる霊感も感じ取れたのではないかと。

 そしたら「今」は変わっていたのではないかと、

 身勝手にそう思ってしまうのです。それが脳裏に

 軽蔑するように離れない。あなたは家族の大切さを

 しらない。どれだけ貧相で恵まれていなかろうと

 愛を持って、二人の幼子を育てようと躍起になって

 くれる人がいかに私や弟にとって欠かせないか。

 それがあなたにはわからない。わかってなどくれは

 しないでしょう。私が守れるはずだった平和を

 私の判断で失った気持ちなど知ったことはない、

 そういうものだと思っている。だから私はあなた、

 神前滉樹さんに、失った平和を返してほしいと

 誓うのです。


  神になど誓いません。悪魔に誓って私、そして

 家族を救ってください」


 気が付けば、俺は眼を閉じていた。


 閉じていたというのは違う。目の前がぼんやりと

見てはいるが情報として何も脳に入ってこない状況に

なっていた。ただグダグダとした長話に飽き飽きとした

わけではないのだが……


「あ」


 俺はふと、そうこぼす。何か思いついたわけではない。

何か目の前に現れたわけでもない。


 目前から副会長が消えた。


 いや違う。足元をちらりと見る。そこに副会長が

女々しくひざから折れるように倒れていた。なぜ?


 なぜ? ……違う、それは俺の手と副会長の頬が

物語っている。感覚はぼんやりとしているがヒリヒリと

赤く軽く腫れる俺の手のひら、そして頬に痛々しそうに

男にぶたれたような跡。…… 俺が殴ったのだ。

まるで脊髄で返答するように、息をするように。


 副会長は驚いたように座り込みながらこちらを

見上げてくる。なぜ殴られたのかを理解できない

かのように驚愕の顔を向ける。俺自身も殴りたくて

殴ったわけではない。さすがの俺も一人の女性を

殴っておいて野ざらしにするなんてことはしない。

これは一度謝ってからにしよう。


「ふざけんじゃねぇぞお前」


 ……あぁ、ん? おかしい俺は今「悪い」と

言って手を差し伸べようとしていたはずだが……


「お前は何を知って、何を思って俺にそう

 けらけらと誓っていやがる! 俺は神なんか

 じゃねぇって言ってるだろうが!!」


 これはもう俺の理性じゃ語れない。あぁ畜生。

ここまで俺はずっと平静を保っていたんだがなぁ……

こうなった以上もう止まらない。俺はもう

止められない。


「……」

「俺が救世主だと、笑わせるなよ。俺はどうしようも

 ないほどにこんな程度だ。人間性がどれだけ

 死んでいようが、どうしようもなく俺が何が

 大切で、何を持って捨ててこようが、あんたに

 語られる筋合いはねぇんだよ!」

「……あ、あなたh」


「…………申し遅れた。


  俺の名前は神前滉樹。だがこれは20年ほど前に

 名付けた”人の世”で生きるための名だ。

 俺の本当の名は


  ”ディア・ネ・グレイスタルーク”


  意味は”俺たち”の言語で「神は死んだ」だ」


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