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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
My Name Is ...
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152/458

152.俺を語ろう

 今から20年と前、スマホなんて言葉もないどころか

パソコンなんてものも立方体のブラウン管と直方体の

箱であった頃の昔だ。


 俺は悪魔ではなかった。れっきとした「人間」だった。

今でさえ「半人半魔」なんて中途半端なステータスで

あるが、昔々の俺はどう見ても「半人半人」だった。


 あぁ、メタ発言となってしまうが今回の話はいわゆる

俺一人がただ淡々と昔話をするだけの、人によっては

つまらない内容になってしまう。だが、これからの

伏線なり色々と重要になってくるものが多いから

副会長はもちろん読者諸君も飽きずに読んでほしい。


 ……ていうか、これいつも通りだな。ただ他の誰かの

セリフがないだけでいつも通りだな、オイ!


 って、誰に話してるって? あ、いやこれは……

というか今回はけっこうシリアスな内容だからこんな

訳の分からないコントをしてる暇はねぇ。


 閑話雄大


 誰だ、雄大って。

 

 今から20年前で俺が今30前半、となると大体俺が

10歳の時に話になる。まだ英語も社会もわからない

小学生だった頃……あぁ、そうだ。俺はもうかれこれ

こんな身なりだがこの町に生まれて30年とたつ。

そうか、そうだったな副会長には言ってなかったな。


 なんでこんな身なりなのかは大体わかるだろ。

悪魔とサザエさんとのび太君は年を取らないんだよ。


 その時の俺は、まったくもって普通だった。ちょっと

ほかのやつらよりかは頭はよくて、テストでも早めに

名前を呼ばれて称賛を浴びる程度の頭の持ち主……だった

はずだ。だから俺を非難するヤツもいなければ、逆にほめ

たたえるなんてことをするヤツもいなかった。が、それは

それなりに友達も多く、そういう意味では充実した生活

ではあった……はず。


 もう20年も昔の話だ。忘れていてもおかしくない。


 クラスの中じゃ今でもそうだが、いつも後ろの方で

こそこそとしてるタイプだったが、それでも友達関係を

大事にして、自分の都合を無理にでも押し通してでも

断るなんて真似はしない。そういう意味では俺には

ずいぶんと「友達」というのは多かったのかもな。


 ガキの語る「友達」ほど軽いものはないけどな。


 そんな中でもやっぱり親友というのはいた。今でも

名前を明確に覚えている。俺は確か「タカちゃん」とでも

呼んで、俺の小学校で一番の自慢ができる友達だった。


 今でも覚えているよ。「タケちゃん」はヒーローだった。

どんなことがあろうが誰のためにも身を張ってバカをやれる

スーパーヒーローだったよ。


 俺とは反対に、男女関わらず休み時間になれば遊ぼうぜと

話しかけ、男子には好まれていた半面女子からは煙たい

対応をされていた気がする。だがな、そういうヤツほど

俺は好きだった。いい意味で平等、どんなに他人があーだ

こーだ言っても我を通して誰にでも平等に付き合える。

引っ込み思案な俺にとってはそれがどれだけ難しくて、

実際にやってのけるにはどれだけの勇気が必要になるか

わかっていたからこそ俺にとって「タケちゃん」は

ヒーローでいて「憧れ」でもあった。


「よう!」


 いつも「タケちゃん」は放課後になると俺にこう

やって話しかけてくる。これは「一緒に帰ろうぜ」と

いうこと。もう長らく一緒に帰っているからわざわざ

「一緒に帰ろう」なんて言わずともわかってしまうし、

あいつもそれをわかっていたからこそ、そっけない

セリフをかけてくる。


 今となっちゃ何を思ってこんな陰キャな俺に

話しかけてたのかわからないし、こうやって毎日

とは言わずとも帰路を一緒にしていたのかも

わからない。忘れたとでも表現の方がいいか。


「タケちゃん……」

「どうした? 今日は用事でもあんのか?」

「今日は日直じゃなかったっけ?」

「日直の仕事は終わった! だから帰るぞ!」

「いや、さっき先生がタケはどこだーって言って

 走り回ってたけど」

「先生はずっと立ちっぱなしだから、元気に走って

 いたほうが楽しいだろ!」

「えー」


 いつもこんな感じだ。ヒーローとは言ったが

対外的に見たらただの問題児だ。それでも楽しい

ヤツではある。


「ダメだよ。ちゃんとお仕事はしないと」

「そんなこと言ってたらロクな大人にならないぞ***」

「それは僕のセリフ」


 「***」ってのは俺の名前だ。もう俺の名前は忘れて

しまってな、昔の俺は一体何て呼ばれていたのか……


 わかるとは思うが「タケちゃん」は頭がいいほうでは

決してない。それでも学校で飛び級にひどくはなかったが

年齢に十分な学力はお世辞でも言えたもんじゃない。


「まーまーまーまー、帰ろうぜ!」

「ちょっと待って、荷物カバンに入れるかr」

「だーいじょうぶだって! また明日学校に来るん

 だったらおいてっても大ジョーブだって」

「家で勉強はしないの?」

「勉強は学校でするもんだろ?」

「……」


 うん、言わなくてもいいこれ以上は。


「ほら急いで急いで! 先生来るから!」

「悪いことしてるのはわかっているんだ」

「追われたら逃げるだろフツー」


 ネットもお金も大勢で集まれるような場所ももって

いなかった少年たちにとって、いつもの下校道の冒険が

楽しみでもあった。近所の焼き肉屋からふわりと

鼻に流れてくる炭とタレの香りで腹をすかし、誰にも

見られないようにひっそりと路地裏を通り抜け、

今日はこっち、明日はあっち、昨日は向こうに出てきた

けれど今日はどこに出るのだろうかと心を躍らせ、

しつけのなっていない外飼いの大型犬のワンと耳を

つんざく鳴き吠えに怯えながら走って帰るあの時間を

誰かと一緒に過ごせることが何より楽しかったのも

事実だ。


 いうなれば若かった。何がダメで何が嫌か、何もかもが

わからなくてただただ楽しいことを一心に考えて、毎日の

ように笑って過ごせる時間が「日常」で、どうしようもなく

「異常」で今ではあれがどう面白かったのすら思い出せ

ない。年を食ったなんて言葉が良くも悪くも似あうよ。


「あの駄菓子屋って何売ってるんだろ」

「えー、わからないよ」

「あそこずっとやってるけど、人だれもいねーじゃん」

「しーっ! タケちゃん聴こえる聴こえる!」


 思ったことを思ったように言う。今思えば俺はそんな

タケちゃんのブレーキ役だったのかもしれないな。


「そういえば最近なんの本読んでるんだよ」

「タケちゃん、どーせ聞いても忘れるでしょ」

「忘れる!」

「じゃあ言わない」

「冗談だって! ほらみんな「あくたがわ」とかの

 本ばっか読んでるのに、****ってずっと変な本

 読んでるだろ」

「家にあった本ってだけだから…… 別に」


 これが後にミコンなりにつながってくるのだが

そいつは後の話だから今は深くは話さない。おいしい

話はとっておくものだろう。


 一言だけそれについて語るとしたら、小学生が

朝のホームルームなりが始まる前にモクモクと

読むようなものでは決してない。よくある話で

マンガはダメとか、ラノベがダメとかの問題でも

ないし、その頃は「マンガ」を読むなんて文化が

子供たちの中で定着する前だし「ラノベ」なんて

言葉なんてものもない。


 それは日本語でつづられていなかった。だからって

英語でも韓国語でも、ましてはサウジアラビア語でも

ない。”地球上”の文献では読むことすらままならない

言語だった。


 が、どこの誰が落書きしたのかは知らないが

誰でも読めるようにひらがなで「読み方」なり

「意味」が書かれていて、一応ではあるが難しい

言葉があったとしても、よくわからないまま読むより

かは大分ましなだけだ。


 なんで普通に小説なりの、日本語の物語を読まずに

そんなイレギュラーな文献を好んで読んでいるかと

問われたら答えようは一つしかない。ただの興味だ。

家にあったこの本は「なんだろう?」。この程度の

好奇心があれば十分読む価値に値するさ。


「じゃーな」

「じゃーねまた明日」


 今みたいに高校に長い通学路を通っているわけでは

ないし冒険の時間もそこまで長くはない。まぁ、それを

どう長くするかが少年時代の俺、そして俺たちの

目標だったんだがな。


 俺は家に帰るとそそくさと屋根裏の収納に忍び込む。

そしてランドセルの中から先(さき)の一冊の本を取り出し

音を立てずに本棚にしまい込む。


 その本棚はところどころ雨や湿気で色が剥げて、一部

釘打ちされた木がサビとともに黄ばんで見える。その

棚の中は5冊程度しか収まっていなかったが、その

どれもがフリガナ付きの異国の書だった。俺はそこから

違う本を取り出し再びそっとランドセルにしまう。

今日読んだ本の中身は全部読めていない。でも物語とは

違って一貫性がないから別にとばしとばしで読んでても

問題はないし、少年だった俺でもその本は「長く」持って

いてはいけない代物だということは直観的にも理解は

していた。


 これらの異国の書…… 否(いな)、異界の書はどれもこれも

神話じみた話ばかりだった。人の殺し方、人はなぜ祈るのか、

神はいるのか、神は人を救うのか、ならば神は何者なのか、


 悪魔はいかに現れるか、なんて話が並べられただけだ。


 聖書とでも表現できればいいのだろうが、そうとも

言い難い話ばかりではあったが、好奇心に駆られた少年の

心をくすぐるのには十分すぎる話ばかりだった。


 それでも昔の俺はそれを実際にやってみようなんて

真似は決してしなかった。怖かった、怖気(おじけ)ついたとか

そんな幼稚な理由だ。だから俺は神も信じていたし、悪魔も

信じていた。それがどう自分たちに関わってくるのかまで

深く知ろう、やろうとはしなくとも俺はその奇怪な書籍の

扱いは少なからずわかってはいた。誰かに教えられた

わけではない。なんとなくそう思ってそうしただけだ。


 そういえば、タケちゃんは変って言ってたけど

タケちゃんはそれどころか本読むのめんどくさいとか

言ってずっと鉛筆で飛行機を作っているじゃないか。


 明日もまたタケちゃんと帰るのだろうか? 明日は

どんな道を通って帰るのだろうか? それもまた親友の

赴くまま楽しく面白く笑いながらなんだろうな。


 そう思いながら、またそっと屋根裏から降りて何事も

なかったように部屋に戻る。そうして一日一日が颯爽と

過ぎていく。


 それがよかった。それでよかったんだ。


 それが自転のように延々と淡々と続いていくと

ずっと思いたかった。


 それを続けていきたかった。


 続けなくてはならない、そう思ったんだ。


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