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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
My Name Is ...
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150/458

150.墓地に行こう

 銅栄墓地


 この街には墓地が二か所あるという話を

したのを覚えているだろうか。一つは

おなじみとなった御前神宮の境内にある

御前神宮直属の墓地で、もう一つに関しては

俺個人でもかかわりがないだけあって一切

話していなかった。


 銅栄墓地はその名の通りといえばその通り

なのだが、うちの町にあるもう一つの高校

銅栄高校の近所にある墓地だ。そこには

実際に赴いたことはないが、話の種には

したことがある。


 ネズミの死骸の処分場所と。


 悪魔”ノーティ”となった缶詰め状態で

発見されたネズミの死骸をその墓地に埋めた

と生徒会長に告げたのだ。が、本当は

その死骸ごと俺のミコンの中にすっぽりと

おさまってしまったため、別にその墓地に

いって土を掘り返してもネズミの死骸が

出るなんてことはない。


 それにあそこにはあまり近づきたくない

というのが本音だ。理由は単純明快、

「墓地」だからだ。


 お化けが出てきそうで怖い、とかそんな

乙女チックな理由でいかないのであれば

まだいい。よくないのは本当にお化けが

出てくるからだ。


 お化け(悪魔や霊)になるための条件に

ついて話したと思うがザックリ言ってしまえば

葬式の不手際がほとんどの原因だ。もちろん

どんなに有能なお坊さんが本気で葬式を

あげたとしても、その死者がそれ以上に

強い意志を携えていれば、霊や悪魔として

現世に残ることができる。が、そのたいていは

葬式などの「儀式」を通して、正式に現世から

解放されるものだ。


 ちなみに御前神宮はその点「完璧」の

一言に尽きる。悪魔の俺がいうんだから

本当にしっかりとしている。


 が、この銅栄墓地および銅栄神社については

そういうわけではない。不手際が多すぎる。

そのせいであそこの墓地はお化けが出やすい

環境になっている。


 まぁ、だからネズミの死骸をテキトーに

埋めたといっても通じる場所だろうと考えた

んだがな。


「*************************」


「具現召喚”ヴァンダー”」


 保険をかけるかとりあえず。この場でバトる

となればいろいろと”起こし”かねない。


「どうされたんでしょか、これまたずいぶんと

 珍しいタイミングで呼んで」

「この先にだれか来るようなことがあれば俺に

 伝えてくれ」

「それだけですかい?」

「それだけでいい」

「そいつは「人」と「人以外」。どちらを

 さしてるんでしょうか」

「両方だ。とりあえずここから先は俺だけで

 行かせてくれ」

「……了解ですー。今日はきれいな満月ですなぁ

 気ぃ付けてお願いしますね」


 いつも通りに”ヴァンダー”が姿を消す。

今回は”ヴァンダー”に頼る必要はない。

ただ、ここ一帯の監視だけしてくれればいい。


「……」



 道から外れるように階段が現れる。ここを

登れば墓地につながる。満月で月明かりが

照らしているとはいえ暗いものは暗い。普通の

人間ならこの階段をするすると登るのは無理だろう。


 あいにく俺とは無縁の話だがな。


 こんな場所に副会長がいる、どころか人っこ

一人としていそうにないが、ここはれっきと

した我が町の神社ならびに墓地なのだ。

どれだけけなそうがそれには変わりはなく、

神社としての役割を保ってはいる。一応な。


「うわっ!」


 顔にぶわっと何かが覆い被さる。それを

剥がそうとするがぺとぺとしてとりづらい。

うーわ、これはやられた。まんまと例の

八本足の糸吐き野郎につかまった。


 前が見えるとはいえ、階段が整備されていない

だけあって足元にだけ集中していた。ふと

前にきらっと光る糸に気がついたときには

もう遅い。


 俺は粘る髪の毛から糸をはずす。多少は

ましにはなったが、どうにも頭と顔に

"なにか"付いている感覚が消えない。

が、そんなことを気にしている暇はない。

今はこの獣道のような階段を進むのが先だ。


にしても人通りがおおいはずの墓地への

道だろうが! 住職ちゃんと掃除しておけ!


 ガサガサと足元から音がする。冬とはいえ

落ち葉がはらはらと落ちているのが見える。

俺はそれを何も感傷もなく踏みにじって歩く。


「……」


 ついたのか? 階段が終わったと思ったら

目の前が開けた。が、そこに墓場なり墓地と

言えるだけのものが見当たらない。


 もう少し道が続いているしその先だろう。

……って、本当に副会長がこんな暗い墓地で

俺の事を待っているのか?


 と、疑問符を打たんとしたがその必要は

なくなった。歩けばすぐに墓石と思しきものが

見えてきた。そしてその奥のほうでスッと

軍人のような姿勢の良さで立っているヤツが

一人。こんな時間にこんな場所で何もせず

待っている奴なんてそうそういない。


 副会長だ。


「遅かったですね」

「やっぱり俺の事を」

「ええ、あなたなら追ってくるでしょうと。

 いいえ、追う”しかない”でしょうと」


 月明かりが木漏れ日のように墓地に降り注ぐ。


 実にボスバトルが起こりそうな空気だ。


「なんでこんな場所に?」

「私用です」

「私用って」


 その私用が気になって来たと言いたいがそんな

冗談が通じるような空気じゃない。ただでさえ今は

俺が上手に出たところで意味がないと言うのに。


「ここがどこかわかりますか」

「知ってるよ。なんだかんだ言ってこの町には

 もう10年以上もいるんだ」


 とはいっても、この場所はそうそう何かしらの

大事がない限り、住民ですら来ることはない。が、

あいにく俺は10年以上どころか30年近くここに

滞在しているんだ。多少なりともこの場所がある

ことは知っていておかしくはない。


「こんな真夜中に来るような場所でもないし、まさか

 俺と一緒に肝試しをしようってことでもないだろ」

「当然です」

「じゃあなんで」


「あなたから回答をいただいていないので、こういう

 ”人の気配がしない”場所を選んだだけです。あそこは

 御前さんがいたので答えるのに引けを取ったと、そう

 解釈しています。なのでこのような場所を設けるのが

 最善かと」

「それが理由なのか」

「それが半分の理由です。もう半分はあなたの返答次第で

 告げようかと」


 副会長の目は俺をにらんだまま動かない。月の明かりが

目を照らして、真っ青に輝いているようにも見える。


「何度も言わせるなよ。俺は人間だ。この世界に悪魔や

 霊なんて非科学的な存在がいてたまるかよ」

「まさか「異能部」の副部長であるあなたからその発言が

 出てくるとは思いませんでしたが…… ええ、そうでしたね。

 あなたは奇跡を信じない。奇跡を信じなければありもしない

 可能性すらも見出さない。そういう人物でしたね」

「それは嫌味か」

「ええ、嫌味でもあり褒めてもいます。実に閉鎖的で、かつ

 合法的な性格と思考性だと」


 それよりも俺はこういう時だからこそ言いたいことがある。

が、それは先に言われてしまった。


「先に言っておきますと、私は人間です」

「え」

「無論、あなたは人間なのかととても非常識にもほどがある

 質問をしてしまったため、それに見合った私なりの回答を

 用意したまでです。


  私の予測が正しければ、あなたこそ

 私を人間なのかを疑っているかと」

「……」


 そう、俺はこれをずっと考えていた。俺と同じように

悪魔を視認することができ、俺と同じように悪魔に匹敵

するような力がある。それに、俺と同じような何もかもを

外から見ているような、主観性にかけた指向性もある。


 どれも悪魔の俺からしても、人間らしくない。

俺と良くも悪くも似ている。


「そんなの……」

「あなたは分かりやすい。人にしては不器用で、人外の

 何かにしては人間味がある。だから私はあなたと

 こうやって対峙したいのです」

「……それは、どうも」


 どうもと返答するのはこの場では正解だったのか?

それはまぁいい、本人もそれにはあまり言及していない

ようだし。


「褒めているつもりはありませんでしたが、それは今は

 言及はしません。神前さん、あなたからの回答さえ

 聞かせていただければそれで私は十分ですので、それほど

 悩み苦しい顔をするほどでもないでしょう」

「それは……嫌味か?」

「いいえ、何度も言わせないでください。あなたはとても

 分かりやすい。良くも悪くも他人にとっても」


 この顔に出る癖はいつまでたっても治らんな。


「では私の話でもしましょうか。特に前提として非科学的

 存在を否定しているあなたからしてみればこれから

 話す物事ほどくだらないものだとは思いますが」

「いや、それh」

「あなたにとってこれは有益な情報でしょう。いえ

 これは私の直観的判断のもとですが」


 勘でそういうとはずいぶんと俺のすべてを知っている

口をきいてくれるじゃないか。が、確かにこれは有益

どころか知りたくて知りたくて仕方がなかった内容だ。


「私は昔から”非科学的な存在”を見る体質でして、これで

 ずいぶんと苦労をしたものです。この場所ももちろん

 学校にも。私の祖先について少し知る機会があり

 自身のこの不幸体質も遺伝によるものかと信じて

 いましたが、そうではありませんでした。ただ単純に

 私は「運」がよかった。悪かったともとらえられますが」

「ようは自分の体質を生かして俺が何者か暴きたいと」

「そうです。それがもう半分の理由になります」


 暴いたところで俺のこれからなんて俺が決めることだ。

この場で副会長に「悪魔だ」とレッテルを貼られたら。

”デリトー”であったりの悪魔で記憶を消すか、あるいは

存在自体を消すかのどちらかを選ぶしかあるまい。まぁ

悪魔ではあるがじつに平和的思考の持ち主である俺と

しては後者は意地でも選びたくはない。


「何度も言わすな。俺は人間だ。人間の証明なんて

 そうそうこんな真っ暗な墓地で数分の間に

 できるだけの材料を持つものじゃない。副会長

 あんただってそうだろう?」

「……」

「なら逆に「俺が非科学的存在である理由」の証明を

 聞かせろ。そんな自分の霊感とか生い立ちがどうたら

 こうたら言ったところでそれが証明になるはずが

 ないだろ」


「そのとおり。


 ですからこの話は実に不毛な回答のない質疑応答に

 過ぎません。私自身、それを大きな目的でここに

 呼び出したわけではありませんので」


 ? それじゃあさっきの理由にそぐわないのでは?


「え? ならなんでこんなことをするんだよ」

「それは…… はぁ、長引かせて申し訳ありません。

 本来ならば本題から入るべき事柄なのですがあなたの

 動向をうかがってから物事を進めようかと。まぁ、

 いいです。あなたは人間、無実の罪があるように

 あなたは「科学的な存在」でありイレギュラーな

 存在である「非科学的な存在」とは違う。それで

 いいですか」

「あ、あぁ」


「それでは人間”神前 滉樹”に生徒会として、学校の

 一代表としてではなく一人の人間”六郷 加賀音”から

 お願いがあります」


 そういうと副会長は立ち位置を少し変え一つの墓を

見せた。その瞬間に俺にコイツは何をさせたいかが

わかってしまった。わかってしまうだろうこんな

ことをしてしまっては……


「六郷 悟」

「六郷 麻美」


 墓に書かれていた名前と俺に向けた副会長のぎらついて

いて、悲しみを抱いた表情で俺の身体がこわばる。


「ここに眠っている二人、父と母をよみがえらせて

 いただけませんか。あなたは”それ”ができるでしょう」


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