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ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
嗤う門には複来る
124/446

124.悪魔を見つけよう

 フィンセント・ファン・ゴッホ


 そうイケテル系のおじ様顔の男は

言った。よく見たら服装が違うし

見ても「あ、あいつっぽい」と

わかってもよかったな。


 主


 そういったなアイツは。主という

のはやはり、この世界「絵の中」の創造主

である俺の眷属だろう。


「そうか、主がここに…… ていうか

 私も一応、主とか神様と同等だからね!

 メシアだけど実質、神的なところ

 あるからね!」

「ええ、イエスキリストあなたは

 私が生きた時代でも、非常に称えられた

 お方です。私も聖職者を目指した

 ころもありましたので、あなたの

 ことはよく知っております」

「そ、そうか……

 ちょっとユダ、あれが正しい教え子って

 やつだよ。よく見ておいてくれ」

「ええ、わかりました。じっくり

 ”見ておきます”」

「あなた「見る」だけだろそれ!!」


 仲いいこと。


(違うな)

(どうした義堂)

(アイツじゃねぇな。俺の感じた

 気配をあのゴッホっツーやつ

 からはかんじねぇ。どこに行きやがった)

(その気配って言うのはどこで消えたんだ)

(あ”? そうだなー、あ”-……

 ここにきたときに消えたな)


 つまりはここに隠れた時点で

すでに見失っていたということか。


 それに今の義堂がなぜにそんなにも

感性が鋭いかも、なんとなく察しがついた。

理由は単純、ここが「霊が統べる世界」

だからだ。詳しく言っていると時間が

ないから省くが、ようはこういう霊に

親密に接する世界だと、おのずと

霊感もあがるということだ。もちろん

この世界から出たら元に戻るし、

俺の活動の邪魔になるようなことには

ならないだろうが。


(しゃーねぇ、とっととずらかるぞ)

(いや、ちょっと待て義堂)

(なんだ?)

(あそこにいるやつらが言っていた

 ”主”っていうのが俺たちの目的の

 野郎じゃないか? だったら

 ひとつ情報を握っておくというのも

 重要じゃないか?)


 俺は相手の正体についてはある程度

絞込みはすんでいる。それでも

情報不足は否めないし、目の前で

その手の話を知っている、話している

やつらをミスミス見逃すのは非常に

もったいない。


(じゃあどうすんだよ。このままここに

 いてもどーせほとんど聞けねぇで

 おわっちまうぞ)

(あ、それなら)


 ______


「それでゴッホさんは初めてここに

 来られたんだったね」

「はい、ここに来るように言われまして」

「そうか。主にしては珍しい……

 それで君たちもかい?」


「はい、俺たちもアルジに呼ばれて……

 あ、申し送れました。私、ココと

 言うものです」

「俺ぁ……ギドだ」


「はぁ、珍しい名前ですね」


 話がうまく聞き取れないのであれば

話に入り込めばいいのだ。別にさっきの

ベートーベンの様子からは俺たちの

ことは危険視されているわけでは

ないし、ましては知られてすらいない

ようだ。なら単にゴッホと同様、

ソソクサと話に割り込めばいい。


「それにしても、アルジはいったい

 何を考えているのでしょうか」


 これは俺のセリフだ。


「さぁ、わかりません。こんなこと

 初めてだからねぇ……」

「え、前にもありませんでしたか?」

「え!? うそ!?」

「ええ、そう聞かされていたので……

 何分、私たちはつい最近ここに

 きたばかりなので……」

「は、はぁ」

「あなたたちはいつからここに?

 それとその、アルジというのは」

「そうか君たちは新参者なんだね。

 あーそうなのかー。ここは主様が

 私たち「絵」に命を吹き込んで

 できた存在だというのは感覚で

 わかるだろうね。私はその最初の

 頃からいたからそうだね……ざっと

 半年と1月くらいかな」


 やはり俺が悪魔でちょっかいを

かけていた時期と同じくらいか。


「それでアルジというのは」

「わからない」


「はい?」

「私も主様とは一回この場所に現れて

 以来あってもいないんだ。それに

 名前も知らないし、仕方ないから

 私たちで勝手にこの世界の創造主

 ということで「主」と付けただけだよ」


 名前はわからないのか。一番欲しかった

情報だったのだのだが残念だ。だが

俺がつけた名前をそのまま使うとなれば

”俺に見つかる”というデメリットが

まとわりつくだろうし、さすがに偽名を

使っているだろうな。根っこから名前を

聞くのは無理な話か。


「それで、それはそうとファン氏は

 主様に言われてここに来たというのは」

「いや、ただ導かれただけなので何とも」

「導かれた?」

「私は隣の絵から来たのは承知でしょうが

 いつものようにしていたら背後から

 そっと声がしたのです。主の声だと

 すぐにわかり、鏡の中に飛び込んだので、

 姿かたちまではわからないのです」


 つまりここにそのアルジ様が悪魔だと

わかるやつはいないと、そういうことか。

ここにいても有力な俺の眷属の情報は

得られそうにないな。


「そこのお二方はどこの絵から

 きたのでしょうか」

「あ”ぁ? 俺たちか? 俺たちは……


「コミカライズ版”ダメな巫女に悪魔の加護”

 から来た」


 義堂、とんでもないホラ吹きやがった。

出来ればそうでありたいけれどさぁ!!


「ほう、聞いたことがないなそれは」

「そうか、別にいい。とりあえず俺と

 コイツはとっとと行きたい場所が

 あるんで、おいとまとさせてもらうぜ。

 そのてめぇらと同じだ。


  アルジ様っつーヤツからお告げが

 きたんでな」

「そ、そうか」


 時々ではあるが義堂も皮肉を言う。

それは別にいいのだが、それが原因で

相手側に何か粗相がなければいいの

だが…… 特に相手が曲がりなりにも

神様(正しくはメシア)だから注意

してもらいたいが、さすがは神様

寛容な性格をしていることだ。


「それじゃあまたなカミサマ」

「あ、それと君たち!」

「なんだ? まだあんのかよ」


「悪魔は見たことはあるかい?」

「あ”? 悪魔だぁ??」


 俺はばれていないだろうとはいえ

顔が引きつる。さっきから俺がその

悪魔の一人だとバレていたらすでに

何かしらの行動をされていただろうし、

何より、俺の眷属を悪魔だと察しが

つかなかった連中に、俺を批評する

だけのスキルが思えない。


 皮肉でもないよな。

だが、それだけは話を聞いておきたい。


「悪魔は見たことねぇよ。ま、そこの

 神前っつーヤツは、俺たちの「絵」の

 中じゃ悪魔みてぇにバケモンだったが」

「そうか、そりゃ君たちは最近来たばかり

 だと言っていただけあるから、さすがに

 みたことはないだろうね」

「その、悪魔っつーのは何なんだ?」


「外界から来た者だと主は言っていた」


 外界


 そんなのどこかなんて聞く方が野暮だ。

その俺たちが本当は「外界の住人」

なのだから。


「外界というのは?」


 多分俺の顔はかなり汗一つかきそうな

ほどに焦っている。焦る必要なんてない

と言われればそのとおりなのだが、仮に

ここで俺たちがその「外界の住人」だと

分かれば、それが一番ヤバイのだ。


 考えればすぐわかる。ここには俺も

義堂も魂・精神だけがあるのだから

肉体がないんだ。


 そんな場所で拘束なんてされた

ものなら何が起きるかなんてわかりも

したくない。それこそ俺たちが絵の

中で暮らす以外ないだろう。


「外界というのはこの絵の外のこと。

 ま、そこに行けるのは主様ただ

 一人ができることだけどね。逆に

 その主が唯一警戒しているのが

 外界から来る「主の主」となる存在

 だそう。私がここに現れたときに

 そう伝えてくれたんだけど……

 君たちはその言葉を聞いていないのか?」

「……いや、聞いていない、かな? 

 あー最近のことだというのにどうも

 忘れているのかもな。イエス様、

 ありがとうな思い出させてくれてな」

「いいんだ。私たちはこの世界しか

 居場所がなんだから助け合うのが

 正しい行いってものさ」

「……」


 絵の中だというのにこの聖人は

聖人として成り立っているのか。

それはそうとどうにも気になることが

多すぎる。


 なぜこいつらはたかが絵の分際で

ここまでの性格諸々を表現することが

できるのだろう。


 この世界の創造主は、俺が知らない

間によっぽどの知識の持ち主だった

ということか……?


 それはすぐにわかることになる。

今はそんなことに気をとられている

暇なんてないよな。


「それじゃあ、また会えれば会おう」

「あなたによき旅路を」


 さてと、またここでも俺たちは鏡を

探さなくてはならないときたものだ。

多分、ゴッホの言い分からさっきの

誰もいない部屋はもとはゴッホの絵の

中だったのだろう。そしてそのアルジに

よってこの「最後の晩餐」の絵の中に

呼ばれたってことか。


「おい、神前」

「どうした義堂?」


「ありゃどういうことだ??」

「どういうことというと??」


「俺にゃあいつらがわりぃ奴らには

 見えねぇんだが、っつってもあれが

 動いてるっつー時点でおかしい

 んだろうが、それにしてもあれを

 解決して元の絵にもどすなんつー

 下卑た真似はしたくねぇよ」

「……義堂にはあれをただの「絵」だと

 認識ができないと」

「……あぁ、認めたくねぇがありゃ

 間違いなく誰が見ようが”人”だ。

 ”絵の中の奴ら”なんてクソッたれな

 扱いなんてできるはずがねぇだろ」


 俺もさっきから同じことを考えている。


 この現象を起こしているのは紛れもなく

悪魔である俺の眷属が一人だ。それが

形が違えど「何か」のためになっている

という事実はかわらない。どんな独裁者

であっても政治さえよければその独裁者は

救世主になりえるんだ。そして俺の

眷属はこの「絵の中」でそれを成し遂げ

ている。それを現状部外者である俺が

個人的な理由で元の状態”ただの絵”に

戻すなんてことをすることが許される

のだろうか。


「義堂はどうしたいんだよ」

「あ”? 俺か?」

「今回ばかりは俺もよくわかっていない

 状況になっているだけあって完全に

 部外者であるお前の意見が聞きたい」

「なんだてめぇ、神前てめぇは関係ある

 みてぇないいかたしやがって」

「いや、それは」

「まぁいい。んなことどうでもいい


  俺はあのままじゃヤベェって

 思ってはいる。そうだと思うぜ」


 ……んんん? さっきと意見が違う

気がするのですがー?????


「あれ!? さっきは元に戻すのは

 下卑たやり方だって言ってたよな」

「んな誰だってそう思うだろうが。


  神前てめぇがやろうとしてるのは

 ”誰も望まねぇ革命”だっつーことだ。


  ここの野郎どもは、この状況を

 楽しんでやがる。外界とかどーとかは

 知らねぇが、これはこれでよくやってる。

 なのに俺たち見てぇな野郎がちょっかい

 だして、勝手に色々ぶち壊すのは

 癪だっつーことだ。んで、こいつが

 やべぇっつーのは……あー……そうだな

 うん、そうだな。


  あいつらが絵じゃなくなるからだ。

 っつーことでいいのか? ちっわからねぇ。


  あいつらはあくまでどんなに足掻こうが

 はしゃごうが絵の中の身内でギャンギャン

 騒いでる、言っちまえば檻の中の虎と

 おんなじだろ。んな野郎がこんな場所で

 何もできずに仕舞になるのは、そりゃ

 手遅れっつーものだろ。っつっても

 よくわからねぇと思うが、ようは絵の中で

 しかできねぇもんは絵でしかねぇ。

 そいつをまるで人まねみてぇにやってる

 あいつらが見てて反吐が出る。だから

 俺は


  あいつらの目の前でこの世界を壊す。

 完膚なきまでに、この世界に破滅を

 訪れさせる。それがあいつらを絵の住人

 として生きるための手だ。


  神前てめぇがどう考えてるかなんて

 わからねぇが、俺は一人でもやるぜ。

 っつっても俺はどのみち、てめぇに

 ついてくだけだ。だから最後はてめぇが

 決めろ。てめぇが連れてきた世界だ。


  てめぇの手で、てめぇが終わらせろ」


 義堂は時々皮肉を言う。それが原因で

人を奮い立たせるなんてこともある。


「……くくく、ハハハハハハッ!!

 まったく義堂、お前は俺をどう

 見てるんだよ!」

「バケモン。そうだと思ってるし

 これからも今もそうだと思うぜ」


「あぁ、いいよそれでいい。

 それがいい。こんな人間無勢から

 悪魔のハウトゥーを思い出させ

 られるとはな! 人生何があるか

 わかったもんじゃねぇな畜生」


 義堂が隣でよくわかってないみたいな

顔をしている。わからないままでいい

勝手に言わせろ。


「いいぜ。やるぞ義堂」

「けっ、ったくめんどくせぇ」

「お前がそうしたいならそうさせる。

 それが副部長の役目だ。そして

 悪魔”神前 滉樹”がどれほどに

 非情で、冷酷で、無慈悲で、無道な

 魑魅魍魎の一介だということを

 思い知らせてやるよ」


「「そうはさせないよマスター」」

「え」


 俺はそのあとの数分間は記憶がない。

義堂もどうなったかなんてわからない。

ただ覚えているのは俺の目の前に突如、

現れた、二人のうり二つの悪魔だけだ。


 ____________


「ん、ふぁぁあああーーー よく寝t

 って寒ぅーー!! 冬の音楽室って

 やっぱり寒すぎる!! ってあれ?

 ちょっと待って…… 私、絵の中に

 入れてないじゃーーーん!!」


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