112.また聞いてみよう
「それで、今は何もわかっていない
状態だけどこれからどうする気なんだ?」
「とりあえず……納骨堂かな?」
「まぁ、正直そこが一番何か見つけられる
ところだと思うが……」
「そうだね、それにさっきも言ったけど
そのお化けのための準備がしたいから」
「準備?」
「そ、ほらココとギドー君にやった霊障の
予防も小一時間、準備したでしょ?
それとおんなじ感じ」
俺たちは庭にいる。義堂がミコを雪の中に
投げ捨てたのだから当然、その雪があった
庭にいて当然だ。
「だからさ、私が色々と作業している
間に何か見つけてきてほしいんだ」
「んなこと言っても何がありゃいいかも
わかってねぇぜ? 俺たちゃ」
「ううん、ココは分かるよね?」
「え」
「さっきからなんか色々とわかってる風
だから、ココに聞けば大丈夫だと思う」
「えぇ……」
いやまぁ、そりゃその通りですが……
でもここは逆にその通りに俺も動いた
方が都合がいいか。
「ま、まぁある程度は知っているからね俺」
「そうそう、前に自分で
「こういうことに興味があるんだぁ」
って言ってたから」
「何100話も前の黒歴史えぐって
くれてんだよ!!」
「ま、頑張って!! 期待してるから!」
「お、おう」
期待されてしまった…… というか
俺はあれから意外とうかつなシーンが
多かったのかもしれないなぁ……
毎度毎度気にすると言い続けているが、
これじゃ意味がないな。
それじゃあ……
「あ”--…… ちょっと待て神前。てめぇ
さっきも思ったが、どこかおかしいと
思わねぇか?」
「「おかしい??」」
ミコと同時にそう言った。そりゃもちろん
今回の件に関してはおかしな部分なんて
のは山ほどある。そのせいで小さなことを
見失っている気がしないでもないが……
「そんな変な事でもあったのか?」
「てめぇさっき俺たちと同じようなバケモンが
出たっつっただろ」
「あぁ、義堂もそれは見てただろ?」
「ああ、だがなお前おかしいと思わねぇか?」
おかしい?
「俺たちと同じ姿かたちってよぉ……?
あんガキの言ってたこととちげぇよな」
「え? 違う?」
いや、そりゃ二人いたのは圭佑君が
言っていたのだから違う訳がないはz
……
「うーんと、確か大きくって小さかった」
……あっ
そういえばこんなことも圭佑君は
言っていたな…… これは確かにおかしい。
「……そういやなんで同じ大きさなんだ?」
「あぁ、ミコ、これもなんか思いつく
材料になるのか?」
「うーん、わからないけど……」
「ま、どーせ今は何もわからねぇよな。
俺たちゃそん間に探してっからよ!
ミコ、てめぇも頑張れよ!!」
「よっしゃあ!」
元気だなミコ。感情の起伏が激しい
気がするけど、それもミコのいいところ
だと理解しておこうか。
「それで俺たちはどこに行けばいいんだ?」
「いやもうやることは決まっているし、
どこにも行く必要はないよ」
「あ”?」
「事情聴取:パート2だよ」
____________
「あっ! 手伝ってよちょうどいい!!」
「えーメンドクサッ」
場所は変わらず本田家の庭。だが
今は義堂と俺以外にもう一人いる。
さっきからたどたどしく庭の雪の掃除に
勤しむ圭佑君だ。
ミコが雪にダイブしたときは丁度いなかった
ようだが、しばらくしたらまたこの庭に
圭佑君が戻って来た。
「デモー、イロイロオシエテクレルナラ
テツダッテヤッテモイインダヨー」
「うわ、なんかめんどくさそうだから
やっぱりいいよ」
「なんでここで引くんだよ!」
話が進まねぇよそんなんじゃ!
「あのさ、その見たお化けについて
まだまだ聞きたいことがあるんだ」
「えー、まえに話したじゃん」
「いやそれじゃあ足りないからさ」
ガン!!
「とっとと話せガキ。俺たちゃもう
後がねぇんだよ」
「うぇ……」
義堂、そんなおっかない顔しなくても
いいいだろ…… これじゃどっちがバケモンか
分かったもんじゃない。
「でもここの雪なんとかしたいから……」
「なら話ははえぇ。おら、そのスコップ貸せ
ガキはそこで見てな」
「「え」」
オラオラオラオラオラオラオラオラ!!!!
「おらよ、これでいいか? だから要件を言え」
「義堂、お前ほんっとかっちょいいよな」
「あ”?」
そこに痺れる憧れるわ。
じゃあ本題に入りますか。
「まずは……寝室に出たお化けについて
聞きたいことがあるんだけどさ
そのお化けってどんな大きさだった?」
「大きさ?」
「そうそう、大きさ。前に浴槽で見たっていう
お化けと大きさが違うかどうかってこと」
「んなことわかんないよ」
「そーですかい……」
「……んん? そういえばなんか大きいけど
小さかったな」
「どっちだよ!!」
まーたそんな色々とややこしい返答を
しやがって、この本田Jrは……
「うーんと、なんか…… 風呂場で見た
大きいヤツよりも小さかったな。でも
小さいヤツよりも大きかったよ」
「あ、それで大きくて小さいと」
これも一つの証拠になるな。
「それとさ、台所でそのお化けって
見たことってないのか?」
「そんな夜に台所に行くことなんてないもん。
台所にも行ってないよ」
「そうか……」
台所で見つけているのだからもしや圭佑君も
見てるかなと思ったが…… うーむ、これじゃ
全く意味がない。
「台所にはばーちゃんが危ないからって
入れさせてくれないんだよね」
「え、なんで? っていうか前に手伝い
とか言ってふつーに入ってるじゃん」
「ばーちゃんがいるときはいいの。
ばーちゃん腰が悪いから手伝いは俺が
頑張んなきゃな!!」
いい孫だな。俺は別にいらないし
それくらい従順で扱いやすい眷属が
いればどんだけ楽な事か……
後、聞きたいことと言えば……
「あのさ、お兄ちゃんの部屋でお化けって
見たことって……」
「そんな見たことないよ。それに兄ちゃんの
部屋なんて入ったらぶっ飛ばされるよ」
やっぱりだめか。
「あっ!! そういえば!!」
「ん?」
「確かあの部屋って死んだおじいちゃんが
昔使っていた部屋だって聞いたことある!」
「え!!?」
それは初耳だな。だがさっきもいったが
本田のおじいちゃんは霊にはなっていない
ってことで解決している。……とは限らないのか。
霊が母体とするのは骨とかと決まっている
わけではない。あくまで骨のほうが自分に
関連性が高い物として”有能”というだけ
あって絶対骨でなくてはならないなんて
ことではないのだ。だからもしかしたら
あの本田の部屋に”まだ”何かがある可能性が
あるのか。これは義堂と俺とでまた調べる
しかあるまい。
「お”い、それでガキてめぇはあのバケモンはの
正体はなんだと思ってんだよ」
「正体?」
「てめぇもありゃ悪いモンじゃねぇって
言うんじゃねぇだろうなぁ?」
「あれはぜってー悪いヤツだ!」
「あ”?」
俺もこれはちょっと意外な反応だった。
本田も本田ばあちゃんも”いい神様”だと
いうことで満場一致しただけあって、
どうせ圭佑君もそう言うと思っていた。
「なんでだよ」
「だってあいつが出てから、ばーちゃんの身体
悪くなってるんだもん!! だからはやく
あいつをぶっ飛ばさないと!!」
そうだったな。圭佑君ははなから
これが元々、俺たちを呼んだ理由の大きな
部分を占めているんだよな。
まさか……
「……だから俺たちを?」
「……そうだよ」
俺もよくわかってないことがこれだった。
圭佑君は義堂とメンチを切りあうだけの
ガッツがあるはずなんだ。そんな奴が俺たちに
助けを求めるなんて思えなかったのだ。
「俺がお化けをぶったおす!!」
とか豪語して、一人でなんとかしようと思う
のがこういう無駄にプライドの高いヤツの
テンプレートの行動原理のはずだ。
なのに俺たちみたいな「専門家」を
雇うとなれば、そんなプライドもくそも
ない。勝手に兄が呼んだということも
考えるが、それなら俺たちがやって来た
ときにあんな歓迎なんてしない。
つまりこの弟、圭佑君は自分の身勝手な
プライドを投げ捨ててばあちゃんのことを
守ろうとしたのか……
「俺、強いけどお化けが相手じゃ俺一人じゃ
”たぜいにぶぜい”だから、俺よりももっと
つよいお前らを呼んだんだ」
「けっ俺たちですら、んな手ぇ詰まってんのに
よくも「つえぇ」なんて言えんな」
「それでもあきらめない人たちだって
兄ちゃん言ってたから!!」
「ほぅ、あん野郎、モブのクセによく俺たちの
ことよくわかってんじゃねぇか…… いいぜ、
その通り動いてやろうってんだ、上等」
義堂がそんな力強く言わなくても俺は
元からそのつもりだったよ。圭佑君が自分の
プライドを捨てて、俺たちに救いを求めた
のだったら俺は
悪魔としてプライドを賭けてやろう。
「うし、んじゃ本田を呼べ。部屋を漁るぞ」
「あ! ちょっと待て!!」
うん、そりゃ圭佑君も止めるわな。だが
俺の思っていたことと止める意味が違った。
「そのお化けってぶっ飛ばしておいて
殺さないってできない?」
「あ”? なんでだよ。追い出せってか」
「お風呂場で見たお化けが泣いていたの
見て……なんか、可愛そうだったから……
だからそのまま俺んちから追い出す
だけってのは……」
「あー、そりゃあ……どうなんだ?」
泣いていたのは俺も確認している。
確かにあれは何かに”嘆いている”ようにも
見えた。そう考えると悪魔の一介として
あまり危害を加えたくはない気もする。
「義堂も見てたよな、それは」
「あ”? あぁ、あのミコの目の前で
グズグズ泣いてたヤツか」
「?」
「どうしたガキ? 何だその顔は」
「そんな泣き方なんてしてない」
「「……!!?」」
泣き方が違う……? いや、逆に
泣き方が違うというのはどういうこと
なんだ……?
「逆になんて言って泣いてたんだよ」
「えーん、えーんって」
「ぐすん、ぐすんじゃなくて?」
「うん。えーん、えーんって」
「「……」」
俺と義堂は昨日と同じように見合った。
そして再び、にやりと笑った。




