↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダメな巫女娘に悪魔の加護を。  作者: 琴吹 風遠
SOMA
PR
111/458

111.証拠を見つけよう

 俺たちは食卓の上の掃除を済ませ

無事、何事もなかったかのように

本田家を迎え入れる準備が整った。


 かに見えた。


「あのー、義堂さん?」

「あ”? なんだよおい」

「これは一体」


 廊下には無数の泥づいた足跡が。

こんなものは夜になる前、夕方の

探索パートでは見つからなかった。


「これは……」

「おばけのあしあとだ」

「嘘つけ。大きさ的に義堂のだろ」


 そういえば外に少しだけ出て探した

って言ってたよな。まさか裸足で出て

そのまま入ってくるなんて思いも

してなかったが。


 この巨人のかと疑いたくなる足跡を

ふき取る作業も追加事項に入った。

急いでいたとはいえ、汚い足のまま

人の家を歩き回るなよ。


 それも込みで俺たちは食卓のある

居間、そしてミコと義堂が寝ていた

寝室の掃除に限らず、廊下から玄関

さまざまな場所を掃除した。それは

良心からそうしたのではなく、ただの

俺の家漁りの体のいい言い訳だ。


 あれだけの数の霊が出たというならば

やはりそれなにかしらの証拠があるはず。

それがどんなものかは見当もつかないが、

昨日との相違点を探すだけでも十分な

価値がある。


 まずは風呂場。ここは「ミコが汚した」

なんて理由づけて調べてみたが成果なし。

逆にミコから


「人の使った風呂を見たい……と、へぇ」


 と、なんか馬鹿にされた。浴室の掃除

ぐらいいいじゃん。そんな床とか舐める

わけじゃないし。


 そして寝室。ここはもっと言えば相違点が

ありすぎてよくわからない。どうやら義堂が

寝た後に色々と寝やすさを重視すべく、そこの

ものというものを動かしに動かしたようだ。

そのためここだけは調べるのは野暮ということで

ミコと義堂に掃除を託した。


 だが、あの場所も定例的にはやはり

相違点はないだろうな……


 そして問題の納骨堂なのだが、ここは正直

調べる必要がないぐらい調べてある。それも

俺が今晩どこで過ごしていたかを考えれば

そうなるだろう。それにその晩は誰もここには

こなかったのだから調べるには十分時間と

余裕があった。


 そう、誰も来なかったのだ。


 俺はずっと本田のおじいちゃんが霊の

正体だと考えていただけあって、夜が終わり

再び母体がある”ここ”に戻ってくるはず

だと踏んでいた。が、来なかったのだ。

ならば今回のこの騒動は本田のおじいちゃんが

まったくの無関係だと分かる。まさか

ずっと半信半疑だったミコの意見がここで

証明されるとはな。まぁ、もしかしたら

俺に警戒してまだ家の中でさまよっている

ってことも考えられるし、あるいは俺に

気が付かれないように壁をすり抜け、

そそくさと母体に戻ったなんてことも

考えられるが、そんなことまでして

”人間に見える”俺を避けていく意味が

ない。それに俺は一度鉢合わせているんだ。

だったらより注意する意味がない。


 そんなことで時間をつぶしていたら

時間は本田が戻ってくると言っていた

時間だ。まだまだ詳しく調べておきたい

場所もちらほらとあるが、あらかたは

調べてあるし証拠がないと言ってしまう

には十分だろう。


 ガラガラ


 玄関のほうで音が鳴った。多分、本田が

家の扉を開けた音だ。一応、錠をかけて

あったのだが自分の鍵で開けたのか。


「あ、おはようございます」

「はぃ、よぉ寝れたかぇ」


 俺は二階にいて、会話の内容はよく

聴こえなかったのだが、ミコが丁度

玄関にいて本田たちを迎え入れたの

だろう。


 義堂はその頃、部屋の掃除ではなく

お茶を淹れておけと命じてあった。無論

俺の方がお茶を淹れるのは上手いが

そんなところで俺の隠れたスキルを披露

する必要がない。俺はまだ家の中を

調べておきたかったが、家主が帰って

きた以上挨拶一つしないのは礼儀に反する。

仕方がなく俺は階段を下りた。


「おぉ、ココさんと言ったかぇ?」

「え、それは私ですが……」


 なんで俺もあだ名で呼ばれなきゃならない

んだよ。これは多分、昨日ミコが本田の

おばあちゃんと話したときにそう教えた

のだろうな。


 ……まさかとは思うがミコ俺の本名

忘れたんじゃねぇだろうな……


「おはようございます。それで私に何か

 用事か何か?」

「ええゃ、けぃすけがあんたと会いたい

 ゆうてたからの」

「え、圭佑君が?」

「今ぁ庭の様子を見にいっとるけどなぁ、

 ばぁちゃんは体があんな動かんから

 雪かきしてもらてんや、カッカッカ」


 あ、そういえば庭の様子を見るのを

忘れていたな。それに朝早くに(まだまだ

外は真っ暗)風が強くなっていたし

多少ながら雪が降っていたのは知っている。


 だから俺は外になんて出たくないのだ。

それに庭の掃除なんて俺ができるわけが

ないし、体のいい理由が思いつかない。

庭の掃除はレレレレのおじさんの仕事だ。


 ん? 一個多かったか? まぁいいや。


「それでどうだったんだ? そのー……

 お化けは出たのか?」

「あー、うん、出たよ」

「え!? マジかよ!? それで無事

 解決したのか!!?」

「いやそれはできなかった。だからもう少し

 情報集めをさせてほしいんだが……」

「あぁ、そうか…… いや、それはいいんだが

 そんなんで解決なんてできるのか?」

「解決できると思う。だから今はちょっと

 待っててくれないか。丁度、居間で

 お茶を淹れているからさ」

「そうか、なら……」


 解決できる。


 そう宣言してしまったからにはそうしなきゃ

ならないよなぁ…… ふとこの家に居れるだけの

言い訳をしたかっただけなのだが、俺は

まだこの件に関しては全く解決の兆しは

見つかってなどいない。


 ミコがもしかしたらあの時に起きていて

あの霊を見ていれば展開が変わっていた

かもしれないが、まぁ見たところで霊感の

関係で見れないのがオチだろう。それでも

俺が見たこと、体験したこと、義堂が追った

もの、見つけたものからどうにか結論を

見つけなくてはならない。


 それでも当然、その霊に出会わなくては

ならないし、また今日も夜を迎えるのか……

いや、それはさすがに礼儀が悪すぎる。

一応、明日は日曜日ではあるが二日も

泊まるのは俺たちの体力もつらいものがある。


 また来週ここに来るのか……

 はぁ、めんどくさいな。


 義堂が居間でお茶を持ってスタンバってる

はずだし、こんな玄関で本田家を待たせる

のはよろしくない。ミコがそれを察してか

そそくさと居間に誘導した。俺もそれに

合わせて居間に行く。


 そして事の顛末をミコと同じように

本田家に話す。そこには圭佑君はいない。

でも、何もわかっていない本田と本田の

おばあちゃんに話すだけでいい。


「……えぇ、そんなお化けがこの家に」

「ああ、もちろん自分で見てないから

 信じれないと思うが本当にあったこと

 なんだ」

「いや、信じられないわけじゃないんだ。

 その手の話は弟からは嫌なほど聞いて

 いたからな。まぁまさかあんたらも

 見るなんて思ってなかっただけだから」


 俺も実際に見て驚いている。それが

俺の想定していた霊と全く異なってて

”ある意味”驚いている。


 ていうかこのお茶旨いな!

 義堂意外と淹れるの上手いな畜生!


「そんお化けはどんなんやったぇ?」

「そうですね…… 二人いたんですが、

 人の形をしていて、身長はどちらも

 俺たちと同じぐらいでした」


「そいで、何かされたのかぇ?」

「え?」

「襲われたかい? 大丈夫かぇ?」

「それは……」


 あれ? そういえば何もされなかったな。

”ノーティ”ですら勝てないとしても俺に

挑んできていたというのに、あいつらは

俺たちのことを見ていないように無視

し続けていたな……


「いえ、一度もそんなことは」


「ならそりゃ守り神様や! カッカッカ!

 圭佑が驚いてたのは急に見えるよう

 なったからじゃな! カカッ」

「神様?」

「あぁ、神様や神様。だからあんま

 触らん方がええなぁ」


 神様か……


 神様なんてものは存在しないと勝手に

思っていたが、そんなことはないのか?

勝手に俺がこの長々としたくだらない

人生の中でそう決めつけてしまった

だけだが…… これは後でミコに聞いて

見てもいいかもな。


「神様ですか……」

「あぁ、神様さ」


 ミコがおばあちゃんに聞く。

少し考えたかと思ったらすぐに

にこっと笑って見せる。


「そうですね! それなら納得できます!

 でもそれが見えてしまっているのは

 いけないのでやっぱり、少しだけ

 作業をさせてください!」

「ええよええよ」

「それじゃあココ、ギドー君。早く

 作業に入るよ!」

「えぇえ、ちょっ待て!」


 何かわざとらしく俺と義堂を居間から

引きはがす。俺も義堂も思ってもない

行動に驚く。


「ちょっと待て待て!! ミコ!!

 何、どうしたんだよ!」

「……」

「ドラァ!!」


 ちょっとー義堂!! いくら

止まらないからって投げるなよー!!


 ポーーーン


 ズボッ!


 ミコを雪山の中にシュゥゥゥーッ!!

超! エキサイティン!!

 

「んな突っ走ってるだけじゃ、なんも

 わからねぇ! とっとと言え!!」


 いやあのー、そのミコさんは今、

雪の中にずっぽし入ってますが……


 あ、出てきた。


「ぶはぁ!! 何するのさ!」

「こっちのセリフだ馬鹿が! 何考えて

 やがんだよ!」

「いや、それは…… うん、ごめん、あまり

 あの場で言いたくなかったことがあるから

 それを伝えておきたかったの」

「あ”? 言いてぇこと?」


「うん、それは


  ここには神様はいない。

  神様は出てくるはずないの」

「それがどうしたってんだよ」

「だから嘘を付いていた方がこれは

 いい気がするの、だから……


  このまま帰った方がいい。

 ……と思う」

「あ”? だからそれがわからねぇんだよ」

「神様は私たち人間とは関与しないことに

 なっているの。だから圭佑君が見たように

 神様が目の前に出てくることは絶対に

 あり得ない」

「はぁ”?」

「神様っていうのは誰もが求める絶対の存在。

 その神様が一度でも下界に下りてしまえば

 その絶対の存在を求めて”魔”がやってくる。

 だからこそ神様はここになんているはずが

 ないの」

「でも、ほら……あれだ、付喪神とかいるだろ?

 ありゃなんなんだよ」

「あれは神様の形をしたものを作ることで

 逃げ道を作っているだけだよ。薬と偽って

 ラムネをあげても元気に感じるのと一緒」


 巫女であるミコがこの神仏理論を語ると

説得力がある。特にここ最近は、ミコの

知られざる知識量を垣間見ているせいも

ある。


 そして、”魔”がやってくるというのは

俺の感性が「正しい」と叫んでいる。

悪魔の俺もその神の絶対的な力なんてものは

意地でも欲しているものの一つなのだ。


「だからココと義堂が見たアレは神様

 なんかじゃない。お化けであることは

 間違いないよ。神様の加護なんてものは

 ないんだよ」

「……そんなこと、巫女であるミコが言って

 しまっていいのか?」


「うん、私、巫女である以前に人だから。

 だから、あり得ない「奇跡」を信じる

 なんてことはできないの。そんな神様が

 いたなら私は”あのとき”、”あの場所で”

 泣くことなんてなかったよ」


 ”あのとき”

 ”あの場所”


 俺にはわかる。俺と出会う前のことだ。

ただ一人でも自分の存在を手に入れるために

もがき苦しんでいたあの日々のことだ。


 でも、でも俺はこれを聞いて何も

思わないはずがない。


「だったら、どうしたらいいんだ?」

「神様だって信じている間に私たちが何か

 悪い情報を握ってしまう前にホンダ君に

 納得してもらうの。あれがまだ神様

 だって思ってくれていれば、十分……」

「それでいいと思ってるのか?」

「うん、そりゃ」

「へぇー、だってよ義堂」

「ほぉう? んなしかめっ面した野郎が

 いいなんて思ってるわけねぇよな。

 ケケッ!」


 俺と義堂はニヤニヤと見合った。


「だったらミコ一人で帰れよ。俺と義堂で

 なんとかしておくからさ。そのー……

 なんかやっとくってやつもよ。たかが

 巫女では無理な仕事だったってことか、

 やっぱり筋肉思考の男と頭のたけた人が

 こういうことには向いているって

 証明することになるな」

「……」

「??」


「……


  (#^ω^)カチン


  いいえ、私は最強の巫女だと何度と

 言わせるのよ。でも私じゃなんにも

 わからないから……」


「ならここにいる「異能部」の馬鹿二人は

 忘れたんじゃないんだろうなぁ?」

「……ふはッ、そうだね。私のわがままで

 できているみたいな部活だもんね。

 私無しでなんにもできないに決まってる

 よね!」

「それはそれで腹立つな!」

「だったら私がやるしかないでしょうが!!」

「お前、ほんとちょろいよな(笑)」


 馬鹿にし返してやった。いつものように

そしていつものように笑って答える。


「人ですからね」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。