第6章第12話 今、解放される空の騎士。真の力は最強の騎士剣
空気が変わった。
正確には、流れが変わった。
奴が来たのだろう。
「悪魔・・・か」
奥から少しずつ黒い翼をもった人が見えてきた。
理性は持っているようだな。
目が死んではいない。
「ほう、今度はこれほどの軍隊をそろえたか。久しいな」
やはりオレを知っているような口調だった。
「だが・・・以前と違っていくつもの魂を持っているようだな。それも伝説の龍や英雄などの」
・・・そんな魂だったんだ。
「以前よりは格段と強いだろうな・・・だが我が最強である。さあ、剣を抜け。以前のようにもう一度」
いろいろ言ってるけど、オレはこいつと一度も言葉を交わしていない。
しかも勝手に話進めてるし。
困るな・・・。
「オレは過去のことは知らない。だが、過去のことでオレが残した不始末があったとしたら、全て拭い去ってやるさ」
前世が残した不始末がこの悪魔なら、オレは滅す。
そもそもオレしか眼中にないようだしな。
「みんな、呼んでおいて悪いがどうやらこれはオレ自身の不始末を片付けなければならないらしい。万が一、オレがやられるようなことがあったなら、その時はオレの代わりに奴を葬ってくれ」
オレはみんなにそれだけ言い残して刀を握る力を強めた。
轟騎、はやて姉、はるか、刹那、柚季、円、椿姫。
オレが死んだら後は頼んだ。
・・・ってか、何でこんな話になってんだ?
よ〜く、考えたら。
オレが負ける訳ねぇじゃん。
オレも悪魔の力持ってるし。
そんな心配要らなかったな。
オレにはまだ無限の可能性がある。
「行くぞ、ハヤブサァァァ!!」
ハヤブサの力を借り、元から迅速だったオレの速さにさらに磨きがかかる。
「この感覚・・・間違いない、奴だ!!」
悪魔はオレの覇気から前世のオレだと察したようだ。
「だが、以前と何も変わってはいない」
なっ!?
オレは壁に叩きつけられた。
「我には攻撃は当たらない。そんな攻撃など見切れるわ」
「くっ・・・」
思ったより強い。
瞬間移動とは・・・。
これは本当に残りの人に任せるかな・・・。
そのとき、頭に声が書き込まれた。
聞こえてはいない。
脳自体に聞こえたと錯覚させた。
<私の真の姿を開放します。あなたはその力で奴を倒してください。あなたならできます。この剣は、あの悪魔の何百倍も強力な力を秘めているのですから>
よくあるパターンだな。
だが、今は好意に甘えておく。
<エクスカリバー。我が姿と同化した最強の騎士剣>
これが・・・エクスカリバー?
マジかよ!?
すげぇじゃん!
オレってアーサー王並にすげぇじゃん!
それにこれはただのエクスカリバーではなく、更にハヤブサの魔力も加わった究極の騎士剣。
こんな剣を振るえるなんて・・・。
夢にも思わなかった・・・。
ハヤブサが以前持っているのを見たけど、その時よりも圧倒的に魔力が大きい。
「ありがとう、ハヤブサ。オレはあいつを討つぜ!!」
そう、その後に何も残らないほどにな。
再び剣を構えなおし、向かい合う。
あいつの速さは段違いだ。
攻撃を当てて一撃で決めれるとしても、当てること自体が難題だ。
本当にやる気が失せる。
だが、これはオレに課せられた試練だとすれば。
その先に何か待っているはず。
「一刀奥義・食物連鎖」
これは十三代目が編み出した奥義。一度の斬撃が連鎖していくという、直線に並んだらほぼ確実に命中する。十三代目はよく獣を狩るときに使っていたそうだ。
食物連鎖は、悪魔の腕を掠め、そのまま遠くへ連鎖していった。
「ぐ、掠ったか・・・。我の体に傷を付けるとは・・・お前、以前より強くなったな・・・。以前はあの魔術師を守っているだけだったのに」
「オレは過去のことは知らないが、何時でもとどまっているような奴にはなりたくないな」
「だが、所詮は人の子。我を討つことなど不可能。再び命を賭して我を封じ込めるか?」
そんな回りくどいことはしない。
あいつはここで討つ。
たとえ人間には不可能であっても。
オレはそれから否定の文字を取り除いてやるさ。
「残念ながら駿、今のあなたでは無理ね」
・・・誰っ!?
って、リズ!?
どこ行ってたんだよ!?
「その剣術では奴を倒すことは不可能ね。まず、型の神髄を呼び出せなければ勝つことはできないわ」
神髄?
オレは全ての型を修得したはずだ・・・。
さらにその上があるというのか?
「それを呼び出せたとき、あなたの剣は劔になるわ」
・・・字が違うだけじゃねぇのか?
そんなこと気にしていたら神髄にも到達できないか・・・。
「そもそも、私たちの剣術は刀で行うもの。今、あなたが手にしているものは刀ではなく騎士剣。そのことを考えて、そして奥義の意味を理解した時にその劔を振るうことが出来る筈だわ」
難題ばっか押しつけやがって。
だけど、オレの師匠・十代目のリズが初めてオレに剣について教えてくれた。
それだけオレには可能性がある。
元から可能性がない者はこんな話すらしないだろう。
そう思うと嬉しくなった。
それにしても、戦いながら話を聞いたり意味を考えるのは結構難しいんだな。




