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BACHI  作者: 三木男
3/9

それぞれの想いと決意


昨日まで三人で集まっていた広場には、一人で寂しげにうつむくゼンだけだった。何も言わずに横に座るバチ。


「……」


「……」


あんなに仲が良かった二人が、嘘のように気まずくなってしまったのだ。


「ゼン…」


名前を呼ぶことしかできなかったが、ゼンは小さな声で言った。


「俺のせいですずが…」


「は?なんでお前が悪いんだよ!どう考えたって俺のせいじゃねーか!!」


二人は自責の念をぶつけ合ってしまう。


「俺があの日にあんな所に呼び出したりしたからだろーが!!」


「俺だって応援するとか言っておもしろがってあおったりしただろ!!」


「うるせぇー!!」


ドガッ!!


バチはゼンを殴りつけた。


「オラァ!!」


ボゴッ!!


ゼンも殴り返し二人はつかみ合いの大喧嘩を始めてしまう。


「俺のせいだって言ってんだろうが!!」


「違う!俺のせいだ!!」


泥まみれになりながら殴りあう…。

何度殴られても一つも痛くなかったが、お互いの胸だけは今にも張り裂けそうな程痛かった。


次第に涙が溢れる二人。


「俺は…すずを守ってやれなかった…」


「俺もだ…何もできなかった…」


殴るのをやめ、立ち尽くす。


「俺は!!」


何かを決意したように涙を流しながらバチが喋りだす。


「強くなって…すずを喰ったあいつを絶対に殺してやる…!!」


ゼンもそれに応えるように言った。


「俺もだ…すずの仇を必ずとる!!」


沈黙が続きバチは話し出す。


「約束だ!!…二度とこんな思いしたくない!!俺達は必ず強くなって…一緒にあいつをぶっ飛ばしに行こう!!」


「あたりまえだ!!約束だぞ!!強くなる!!それまでは…おわかれだ…」


バチはポケットをあさり赤いリボンを取り出しゼンに差し出す。


「これすずのリボンだ…二つある…一つはお前のだ!!」


それを受け取るゼンは涙が止まらなかった…。


二人は歯を食い縛りながら抱き合い、涙が枯れるまで泣き続けたのだった。


「じゃあな…」


「あぁ…またな…」


お互いの決意を胸に背を向けて歩きだす。


父二人も悲しみともどかしさを胸に見守っていた…。


   惨劇については各地に伝えられた。


この悲惨な事件は、悪魔という恐怖を再び人々に植え付け、過去の凄惨な日々を思い出させるには十分な出来事だった…。


ここ10年英雄の失踪と共に悪魔も活動を停止していたからだ。


        ー そして翌日 ー


    誓いを立てたバチは目を覚ます。

台所の方で音がし向かうといつものようにガクが朝ご飯を作っていた。


「お?おはよーバカ息子!もう飯出来るからよー!座ってまっとけ!」


言われた通り座って待っていると元気に親父がご飯を持って来た。


「いただきまぁーす!!ほら食え!!」


いつもと何も変わらない父にバチは小さな声で問いかけた。


「…怒らねぇのかよ…」


「ん?なんでだ?」


「俺のせいですずが死んだんだぞ!!」


それを聞いたガクは真剣な顔をして言った。


「お前が何か間違ったことしたのか?俺はお前が間違ったなんて一つも思っちゃいねーよ…」


「好きな奴に好きって伝えたかっただけだろ?それの何がおかしいってんだ!ちゃんと漢じゃねーか!」


「お前は何も悪くねぇ…わりぃのは…」


そう言い喋るのをやめた…。バチはまた涙が溢れそうだったが堪え言った。


「親父…あのさ…俺を鍛えてくれ!!誰にも負けないくらいに!!」


「……」


「いいけどよ…何の為に強くなりてぇかだけは間違えるんじゃねぇぞ!!」


何のことかわからなかったバチだがとりあえず返事をした。


「んならさっさと飯食え!!冷めちゃったじゃねぇか!!」


「コラッ!!いただきます言ってねぇだろ!!かぁちゃんにも言ってきやがれ!!」


いつもと何も変わらない父親に唖然としながらご飯を食べるバチだった。


       ー その頃ゼンは ー


昨日の親友との誓いを胸に、ゼンは起きて早々に外で剣術の修行をしていた。


シュパッ!!


素振りの音が朝の静けさに鳴る。

元々父親が毎日素振りをしていた影響もあり、剣を振り回していたが、ろくに修行をしたわけでもないゼン。


ゲンジはその姿をしばらく静観していたが、痺れを切らして話しかける。


「ゼン!」


「ん?なんだ親父か」


「お前急に木刀なんか持ち出してどうした」


察しのいいゼンは、ゲンジが薄々感じとっていることに気づいていた。


「見たらわかんだろ?剣の修行してるんだよ!復讐するためになっ!!」


「…そうか…じゃあ一生お前は強くならんな…」


「なんでそうなるんだよ!!俺はバチとあの化け物を倒す!!約束したんだ!!」


しばらく間を置いた後にゲンジは言う。


「それがダメだと言ってるんだよ…剣はな…そんな理由に力は出してくれん!!」


「うるせぇな…邪魔するならあっち行ってくれよ!!」


バチンッ!!


ゲンジがゼンの頬に平手をした…。

胸ぐらを掴んで起こし父親は言う。


「大事な幼馴染が死んだ!!どれだけ辛いかは俺にもわかる!!」


「だけどな…このままじゃまた大切な誰かを失うぞ!!親友のお前がそんなんでどうする!!」


「お前が支えてやれ!!お前が強い子だってのは俺が一番わかってる!!」


「支えてやれ…」


ゼンは自分の間違いに気づき涙したが、居た堪れない気持ちを伝えた。


「俺だってあいつの力になりたいんだ…でも力がなくて…」


「…心配するな…俺が責任もって強くしてやる…」



       ー 時はさかのぼり ー


ドガッ!!


ボゴッ!!


   広場で殴り合う息子を見守る父親達。


「派手にやってんな…」


「…あぁ」


「なんかこいつらよぉ…俺達にやっぱ似てんな」


「そうだな…」


そう言いながら二人は静観している。


「復讐…だって言ってんぞ…」


「そうだな…もし修行してくれって言ってきたらどうするんだガク」


「……わかんねぇ…でもあいつらの気持ちもすげぇわかんだよ…」


二人は悩み、ガクが言い出す。


「しばらく離すか…どうせ俺達の修行は村じゃ出来ねぇしな!!」


「そうだな…その時が来ればそうしよう…」


        ー そして現在 ー


「覚悟できてんだろうな?俺みたいに強くなりてぇんなら相当な覚悟がいるぞ?」


そう言うガクにバチが応えた。


「誰だと思ってんだバカ親父!!腕立てでも組み手でもなんでもしてやんよ!!」


「そうか…じゃ遠慮はいらねぇな!!荷物まとめろ!!しばらく家を空けるぞ!!」


「え?」


家を出て修行することになり驚くバチだったが、急いで荷物をまとめた。


「おっと!かぁちゃんにいってきますしねぇとな」


二人で手を合わせ、早々に家を出た。


「しばらく村に戻れねぇからそのつもりでいろよ!言ってる意味わかるか?」


「わかってるよ!!…じゃあ…ゼンの所行ってくるよ…」


「わかってんじゃねーか!行ってこい!村の入り口で待ってるからな」


そう言って向かったバチだったが行く途中の路地でゼンに会う。


「おぅ…!ちょうど探してたんだよ…」


「俺もだ…」


「俺しばらく村から出るわ…!寂しいってゼンが泣いたらいけねぇって思って会いに来てやったぞ!!」


「はぁ?寂しくなんかねぇーよ!俺も村出るのお前に言ってやろうと探してたんだよ!!」


顔を見合わせ笑い合うのだった。


「じゃ一緒にすずにも教えてやろうぜ!!」


「そうだな!!」


二人は彼女の墓前に向かい自分達のプレゼントが供えてあるのを見て辛くなったが、元気な声でお別れの挨拶をした。


「すず!!しばらく会いにこれねぇけど泣くんじゃねーぞ!!」


「また来るからな…!!待っといてくれな!!」


そう言い、二人は後にしたのだった。


        入り口で待つ父親達。


「おせぇなあいつ等!!」


「まぁいいじゃないか!しばらく会えなくなるんだからな!」


「おっ!あれだろ?やっときやがった!」


二人が遠くに見えたようだ。


「ガク!!」


「ん?なんだ?」


「六年後だ…忘れるなよ…!!」


「わかってるよ…」


そう話す二人の所に彼らが到着した。


「おうバカ息子共、芋って逃げたかと思ったじゃねぇか!!」


ガハハと笑う親父に、二人が声を揃えて言う。


「誰が芋るかよ!!」


元気な三人を見てゲンジが言った。


「すずちゃんにちゃんとお別れしたのか?」


頷く二人。


「そうか…大事なことだからな…それじゃ今度はお前等だ!」


二人は目を合わせ真剣な表情で語り合う。


「ゼン…絶対に強くなって帰ってくるからな…」


「あぁ…俺も絶対に強くなる…約束だ!!」


「じゃあな」


親子達はそれぞれの決意を胸に再会の日に向け旅立って行く。


           つづく

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