表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら巨人でした。  作者: 新米オッさん兵士


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/24

第20話 リナとの決別の選択 ~守るために、離れるということ~

虚空の巨神が目覚めてから二十日目。

天空の要塞「アルカディア」は、紫の霧に半分以上包まれながらも、

六種族の総力でなんとか持ちこたえていた。

俺は要塞の最上層にある小さなバルコニーで、夜空を見上げていた。

人間サイズに戻り、剣を腰に差したまま、静かに考え込んでいた。

巨人族の真実を知ったあの日から、俺の心は決まっていた。

虚空の巨神を倒すために、俺は最前線に立つ。

それが「責任」であり、巨人として生まれた意味だ。

しかし、その決意が重ければ重いほど、

俺の胸を締め付けるものがあった。

リナだ。

「ケンタ……」

後ろから、柔らかい声がした。

振り返ると、リナが毛布を肩にかけ、こちらを見ていた。

彼女の瞳は、いつもより少し赤く腫れていた。

「こんな時間に、どうした?」

リナは俺の隣に並び、紫に染まった夜空を見つめた。

「ケンタが、最近……遠い目をしてるから。

何か、決めたんでしょ?」

俺は言葉に詰まった。

正直に言うべきか、迷った。

リナが先に口を開いた。

「言って。

私、ちゃんと聞くから」

俺は深く息を吸い、静かに話し始めた。

「リナ……俺は、巨神の核を直接狙うつもりだ。

次の大規模作戦で、最前線に立つ。

おそらく……かなり危険な戦いになる。

だから、俺は……」

言葉を区切った。

リナの目が、わずかに揺れた。

「私を、要塞に残して行こうとしてるの?」

俺は頷いた。

「そうだ。

お前は人間だ。

巨大種族の戦いに巻き込むのは、もう限界だと思う。

要塞で、みんなの後方支援をしてくれ。

人間の国々との連絡も、お前が一番上手くできる。

俺は……お前を守りたい。

失いたくない」

リナはしばらく黙っていた。

風が彼女の金髪を優しく揺らす。

やがて、彼女は静かに、しかしはっきりと言った。

「嫌だよ」

俺は驚いてリナの顔を見た。

「ケンタが一人で危ないところに行くなんて、絶対に嫌。

私も行く。

あなたの隣にいるって、約束したよね?」

「リナ……」

彼女の声が、少し震え始めた。

「ケンタが転生してきたばかりの頃、私を掌に乗せてくれたよね。

村が怖がってる中、私だけがケンタを信じた。

それからずっと、一緒に旅してきた。

巨大すぎて困ってるケンタを見て、笑ったり、怒ったり、泣いたり……

私、ケンタのそばにいるのが、すごく幸せだったよ」

リナの目から、涙が一筋こぼれた。

「でも……今、ケンタは変わった。

巨人族の真実を知って、責任を背負って、

本当に強くなった。

私も、嬉しかった。

でも、その分……私との距離が、遠くなった気がする」

俺の胸が痛んだ。

リナは涙を拭い、俺の目を見つめた。

「ケンタ。私は弱い人間だよ。

巨大なみんなの戦いに、ついていけないかもしれない。

でも、だからこそ……そばにいたい。

もしケンタが死んだら、私も一緒に死ぬ。

それが、私の決意だよ」

その言葉は、俺の心を強く揺さぶった。

俺はリナを抱き寄せ、彼女の小さな体を優しく包み込んだ。

人間サイズの俺でも、リナはとても小さく感じた。

「リナ……ごめん。

俺は、お前を守りたかった。

お前を失うのが、怖かったんだ。

前世の俺は、何も守れなかった。

だから今は、絶対に失いたくない」

リナが俺の胸に顔を埋める。

「わかってるよ。

でも、ケンタ。

守るってことは、離れることじゃないよ。

一緒に戦って、一緒に生きるってことだと思う。

私、ケンタの光になりたい。

たとえ小さな光でも……」

俺はリナの頭を優しく撫でた。

長い沈黙の後、俺は静かに言った。

「……わかった。

お前を置いていかない。

一緒に、最前線に行く。

ただし、絶対に無茶はするな。

俺が死ぬ前に、お前が死ぬなんて、絶対に許さないからな」

リナが顔を上げ、涙まじりの笑顔を見せた。

「うん。約束だよ。

私も、ケンタを守る。

人間として、できることを全部やるから」

俺たちはそのまま、紫の霧に染まった夜空の下で、

しばらく抱き合っていた。

やがて、リナが少し離れて、俺の目を見つめた。

「ケンタ。

もし……もしもの時は、

私を置いてでも、巨神を倒してね。

世界を守って。

それが、ケンタの責任だもんね」

俺は強く頷いた。

「ああ。

でも、絶対に『もしも』は起こさない。

お前と、みんなと、一緒に生きて、この世界を取り戻す。

それが、俺の新しい責任だ」

バルコニーの向こうで、要塞の灯りが優しく揺れていた。

仲間たちが、それぞれの場所で準備を進めている気配がした。

リナが俺の手を握り、微笑んだ。

「じゃあ、行こう。

みんなのところへ。

これからが、本当の戦いだね」

俺はリナの手を握り返し、決意を新たにした。

巨人として生まれた責任。

仲間を守るという想い。

そして、リナと共に歩む未来。

すべてを背負って、

俺はもう一度、前を向いた。

虚空の巨神との最終決戦は、もう目前に迫っていた。

(続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ