行軍開始
化け物の顕現が成功した事によって閉じられて行く暗黒の空間を見詰めながらマルナはうっとりとした表情を浮かべていた。
「国なんてどうでも良いわ。彼の召喚に成功したんだから」
先程とは真逆の事を言うマルナ。
あの化け物を召喚する為だけに犠牲となった民に対しての冒涜。
国を守る為ではなく、自分の欲を満たす為に犠牲となったと知ったら民は激怒するだろう。
だが、激怒した所で止まるような存在ではない。
自ら建国した国を滅ぼそうとするのはまともな神経をしていないのだ。
民の激怒なぞ、その狂気的な精神の前では塵芥扱いだろう。
「さあ!さあ!私の召喚獣相手に貴方達は何処まで耐えれるのか見せてみなさい!!」
マルナは国を襲った賊に対して、宣戦布告をした。
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とある森の中。
ある男は苦々しげな表情で遠くで暴れている化け物を見て声を漏らす。
「とんでもないのを召喚したな」
そんな彼の背後には魔術師風の格好をした男と、その更に背後には無数の人形の生物が規律の取れた隊列で控えていた。
「あれはこの世界に居ていい生物じゃないだろうが」
「発言よろしいでしょうか?」
「なんだ」
魔術師風の格好をした男からの問い掛けに、気だるげに応えた。
「はっ!今我々が見ている化け物は主が恐れるほどに危険な存在なのですか?」
「見ていて分からないのか?」
答える主と呼ばれた男の声からは呆れが感じられる。
「い、いえ!生半可な存在ではあの化け物には勝てないのは理解しております!ですが!強大なる主が恐れるほどの存在だとは到底思えませんでした!」
必死に弁明しようとする魔術師風の男から化け物に目を戻しながら主と呼ばれた男は言う。
「確かに俺であれば倒すのに苦労はするだろうが、勝てるぞ」
「やはり」
「ただこの世界に居てはならない存在に俺が負ける要素はないしな……さてと、アイツとの決着をつけに行くぞ」
「化け物は倒さないのですか?」
「ああ。あれは召喚主の言う事を聞くタイプではないだろうし、野放しにしてアイツとの戦いで役に立ってくれたらいいと考えてるからな」
(俺からして厄介なあれが、アイツにとって厄介な相手に変わらないだろう。それに、あれに殺られた者を救えば忠誠心もスゴいからな)
男はなんとも酷い考えで見捨てる事にしたらしい。
「分かりました。とても見苦しいですが、私は主の言う事に従います」
自分の主がまさかそんな事を考えてるとは思いもしない魔術師風の男は、敵を倒すために選択された決断に主の心を想い心を痛めながら、それほどに強大な敵なのだと再認識して身を引き締める。
「国落としを開始する。行くぞ!!」




