魔法は楽しいな!
その魔法は本来、存在してはいけない魔法なのだろう。
マルナが魔法を発動すると、辺り一帯に異様な雰囲気が漂い始めた。
空は暗雲に覆われ、地面は震動する。
立つこともままならなくなるほど震動が大きくなった時、民の体が粒子へと転じる。
空へと昇る粒子は一点へと集い、大きな球体が作れられて行く。
粒子全てが球体に集うと球体は縮小を始めた。
どんどん、どんどんと小さくなり、ついには目視ですら視認できないほど小さくなった。
パリン。音として表現するなら鏡が割れるような音が響いたかと思えば、球体を中心にして空間が割れて行く。
それはどんどんと大きくなり、マルナの目の前に巨大な暗黒の空間が生み出された。
「ふふふ」
マルナは笑みを漏らす。
成功した、と。
歓喜の喜びに心が満たされるのを感じながら、マルナは魔法を完成させるべく腕を振るった。
暗黒の空間から黄緑色をした異形の腕がまず、出現した。
その腕は人の腕を模してはいるが、筋肉と筋肉の合間に複眼が存在していた。
次に出て来たのは顔。
これもまた不気味で、顔の何処にも目も口も無いのだ。
代わりと言ってはなんだが、様々な動物の顔の造形が張り付けられていた。
その次に出てきたのは足。
いや、足と言うよりも下半身と称した方が正しいだろう。
なにせ、彼の下半身は蛇なのだから。
最後に出て来たのは、胴体。
これは至って普通の人の胴体だった。
肌も黄緑色と言う訳ではなく、普通の肌色。
肉づきも健康的な人と同じだ。
なんともアンバランスで不気味な化け物がこの世界に顕現した。
「貴方に最初の命令を下すわ。自由に暴れなさい」
その日、後の世で「終末の化け物」と呼ばれる怪物が解き放たれた。




