い・み・ふ・め・い
その日、街を護る兵士達は困惑した。
敵軍の中に、戦場に似つかわしくない純白のワンピースを着た者がいたからだ。
その者が着るワンピースの上部は胸部が少しはだけており、大きなお胸は男達の視線を釘付けにする。
その逆に、下部は露出が少なく、丈は膝下までを覆っており、清楚なイメージを見た者に抱かせた。
その中間の位置には、草葉の模様が施された焦げ茶色の細い革ベルトが巻かれており、胸部によってダボッたいイメージを受ける格好がそれを巻くことで払拭され、その代わりに胸部がさらに強調される。
兵士達は困惑と熱い視線を、仲間からは嗜虐的な視線と独占欲を向けられているマルナはその中を、全てを愛おしく、包みこむような笑みを浮かべながら進む。
誰もがマルナという存在に見惚れていると認識しているマルナは、心の中で狂喜する。
(良いわ。敵味方関係なく、私に夢中というのはとても心地良い。戦争中、この視線がず~~~~っと私に向けられるなんて、我ながらカリスマ性が恐ろしい)
マルナは自己陶酔しつつも前へ前へと歩き、ついに敵味方のちょうど中間地点まで辿り着いた。
「皆さん、こんにちは。私はマルナ。貴方達の御主人様になる者です」
「「「「「は?」」」」」
あまりにも意味不明な自己紹介に、敵方である騎士も、味方である傭兵達も呆気に取られた。
「私は今から貴方達を救って上げます」
「「「「「…………」」」」」
「な、何を言っているのだ?」
続いて発せられた言葉に誰もが理解できず、ただただ目を大きく見開く中、一人の騎士が呆然とマルナに問い掛けた。
「ああ!なんと可哀想な事でしょうか!貴方達はこの都市の住民から、領主から騙されている事にも気づいていないなって……!!」
神を敬う信徒のように、または道化のようにマルナは苦し気な表情で自身の胸に手を当てて俯く。
「「「「「…………」」」」」
そのあまりにも芝居がかった様子に、敵味方関係なく怒りを募らせ始めた。
「何故私はこのような場所に赴いたのか……その理由はここでハッキリしました。私は、貴方達を愚鈍なる住民と領主からの洗脳を解くためにここに居るのです。だからどうか、安心して私に身を預けなさい」
そう言い切ったマルナの表情は、慈しむような素晴らしい表情だった。
ただ一つ、騎士達の怒りの導火線に火をつけた事を除いて。
「全軍!我らが都市を侮辱した反逆者共を殺せぇえええええたえ!!!!!」
「「「「「「「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」」」」」」」」」」
こうして戦いの火蓋は、敵方の殺意をこれ以上ないほどに高めて始まった。
たぶん、次までは地の文はマルナの心情ではありません。




