表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンに住む(なんで?)魔女に加護を貰った俺、TSしてなぜか配信者になる。いや、パーカーちゃんって安直じゃない?  作者: 九十九一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/12

馬鹿正直に話すことも大事、この世界はクリーンな世界です。

 それからちょっとしてイルが起床。

 柚希はイルにも朝食を出すと、どういうわけかイルは器用に箸で普通に食べ始めた。

 驚いた柚希が理由を尋ねると、


「大抵の道具はすぐに使えるんじゃよ、儂」


 とのこと。

 天才肌め……と、柚希は心の中で吐き捨てつつ、ジト目をイルに向けた。


 それから二人は適当にのんべんだらりと過ごしていると、ピンポーンとインターホンが鳴った。


「む、この不可思議な音は確か、来客を知らせる物、じゃったか?」

「あぁ。まあ、想像通りなら……」


 遂に来てしまったか、と柚希は思わず身構える。

 カメラ越しに映るのは、スーツを着た一人の女性と、全体的にがっしりとした、どう見ても探索者な風貌の男性だった。


「やっぱか……悪い、ちょっと出て来るわ」

「うむ、気を付けるのじゃぞ。身体的には、さほど変わっていないはずじゃが……まあ、何かあれば儂に言うとよい。撃退しよう」

「しなくていいからな!? ってか、そこまでやわじゃねぇよ」


 ったく、と苦笑いしながら、柚希は玄関へ移動。

 それから扉の前で深呼吸し……ガチャ、と玄関の扉を開けた。


「あぁ、こちらにいたのですね、私、日本探索者協会未帰還者捜査課の月代と申します。苑間柚希さんで……って、はい?」


 扉が開くと同時に、スーツを着た女性が挨拶を行ったが、柚希かどうかを確認する段階に言った直後、出て来た人物が男性ではなく、とても愛らしい銀髪オッドアイの少女であり、尚且つなぜかだぼついたTシャツ一枚という姿に、目を丸くしていた。


 尚、隣にいる探索者と思しき男性は、速攻で視線を逸らした。

 漢である。まあ、背が高い彼から見たら、柚希の胸元が見えそうなので……。


「どうも」

「え、あ、え? あの、すみません。部屋を間違えました」

「いえ、間違ってないっすよ?」

「いやでも、苑間さん、の家、じゃないですよね?」

「いえ、苑間の家っす」

「あ、あー! も、もしかして、妹さんとか親戚とかそういう……」

「いえ、俺が苑間柚希ですが」

「「…………は!?」」


 そんな一連のやり取りをした後、まさかの情報に、やってきた二人はそれはもう一度固まった後、驚愕の表情を浮かべた。


 そもそもこの二人、未帰還の苑間柚希(♂)を探すべく、いないとは思うけど一応来た方がいい、みたいな気持ちで自宅を訪ねてみたら普通に人が出て来た。だが、その人物がなぜか男ではなくどっからどう見ても、小学生程度の少女で、更には未帰還とされている苑間柚希を名乗っている……そんな状況なので、固まるのは当然だし、驚くのも無理はない。


「あー、とりあえず、事情説明が必要なんで、中へどうぞ」

「あ、は、ハイ、お邪魔します……」

「俺は一応ここで待機させてもらいます」

「いや、別に気にしないんですが」

「……女性の部屋に入るのはちょっと……」

「いや俺中身男なんですが?」

「でも外見は女性ですよね?」

「それはそれですよ。中身が男なら俺は男です」


(何その超理論……)


 男は困惑した。


「というか、ボディガードも兼任してるだろうに、一緒に入らなかったらまずいでしょ。俺が何かするかもしれないんですよ?」

「それは、そうですね……すみませんが、ついて来てもらえると」

「はぁ、わかりました」


 仕方ないか、と探索者の男は溜息を吐いてから、仕方なく中へ入ることにした。

 スリッパはないので、そのまま上がるように促し、リビングへ。


「む、なんじゃ、結局連れて来たのか? おぬし、散々悩んでおったじゃろ」

「いや、正直いい言い訳が思い浮かばんかった。それならもういっそ、暴露しちゃった方がいいなって」

「そうか」


 結局のところ、柚希はどうやってイルの存在を誤魔化すか、そしてどうやって自然にこの体のことを説明するか、という言い訳をギリギリまで考えてはいたものの、結局納得させられるだけの言い訳が思い浮かぶことはなく、もう諦めて全部話すことにした。


 そもそも、ダンジョンは不可思議の集合体みたいな場所なので、今更魔女が見つかりましたー、加護もらいましたー、女になりましたー、とか言っても、最初は信じられずとも、最終的には信じられるだろう、と柚希は思ったのである。


 まあ、問題があったら逃げればいいや、とか思ったこともあるにはあるが。


「え、えーっと、情報では苑間さんは一人暮らしだと聞き及んでおりますが……そちらの美女は……? あと、本当に苑間さん、なんですよね?」

「こいつはダンジョンで拾いました」

「は?」

「というか、なんか気に入られて押しかけられました」

「え、ちょ、ちょっと待ってください?」

「あと、こいつのせいで女になりました」

「え、ええぇ、あ、あのー?」

「ちなみに昨日帰還報告をしなかったのは、報告とか検査とか検査とか検査とかが面倒だったからです! すみませんでしたぁぁぁぁぁーーーー!」


 有無を言わずに、柚希は昨日起こったことを簡潔に、且つ箇条書きのように言って、最後は報告をしなかったことを全力で謝罪。

 ちなみにこの時、勢いよく頭を下げた影響で、襟の辺りから服の内側が見えてしまったため、速攻で探索者の男は全力で目を逸らした。

 この男、やはり漢である。


「あ、い、いえ!? というか、最初っから説明をしてください! 色々と頭が混乱しますのでっ!」

「っと、そうですね。んじゃまあ、実は――」


 さすがにパンク寸前だった月代は、頭を整理すると言う意味も込めて、柚希に事情説明を求めた。

 それに応じた柚希は、今度はなるべく詳しく、かつわかりやすく昨日の出来事を語った。


「――なるほど、未確認のエリアに、ダンジョンに住む魔女、で、その魔女から加護を受けた結果、可愛らしい女の子に……」

「まあ、そう言うことですね」

「……徳田さん、どう思います? というか、そんなことってあるんですか?」

「いや、俺も聞いたことないんですが……ってか、ダンジョン《魔女の焔》、ですよね?」

「そうですね。そこで押し売りされましたよ、加護」

「押し売り言うでないわ」

「間違っちゃいないだろー」

「押し売りしたのではない。嫌がるおぬしを捕まえて、強制的に付与したのじゃ」

「もっとヤバいわ!?」


 などと言い合う二人の銀髪の女性を見ながら、月代と徳田の二人はうーんと唸る。


「あー、とりあえず、苑間……さんは、探索者カードを出していただけますか?」

「あぁ、どうぞ。準備してあるんで」


 元々提出は言われるだろうと思っていた柚希は、予め持っておいた探索者カードを提出。


「ありがとうございます。早速お調べしますね」


 月代はカバンの中からスマホに似た機械を取り出すと、それを探索者カードに向けて何かを調べ始める。


「苑間柚希さん。年齢は二十三歳で、生年月日は2127年9月28日住所は――」


 これは簡易型探索者カード識別装置と言う物で、簡単な情報、主に名前と生年月日、住所などが調べられる。


 それ以外の探索者としての能力を調べる場合は、日本各地にある探索者協会の本部、もしくは支部に行かなければ調べることはできないので、どこでも能力が見られる、などということはない。


「ありがとうございます。では、こちらの探索者カードに魔力を流していただけますか?」

「はい」


 返却された探索者カードに魔力を流す柚希。

 すると、カードが淡く光り出し、それによって目の前の二人が驚く。


「まさか、本当に……?」

「まあ、そう言うことですよ。あぁ、先に言っておきますけど、こいつは探索者カードとか持ってないんで」

「え、そうなんですか!?」


 ダンジョンに住んでいたと聞いていたので、てっきりカードを持っているのかと思えば、カードを持っていたなかったと知らされ、月代は素っ頓狂な声を出した。


「はい。ってか、マジで偶然会ったんですよ、こいつとは」

「儂としても、まさか人の子が我が隠れ家に入って来ることは想定外だったんじゃがな」

「な、なるほど……ですが、こんなことが……」

「で、まあ、どうせこの後は検査とかあるんすよね?」

「そうなります、ね。さすがに、性別が変わってしまったことと、ダンジョン内に人が住んでいたことが前代未聞過ぎると言いますか……ですので、そちらのえーっと、イルさんとお呼びしても」

「構わぬよ」

「では、イルさん。イルさんも、その、検査を受けて頂くことになるのですが……」

「構わん。それくらいせんと、儂のことは信用できんじゃろ」

「た、助かります。では、早速向かいましょうか」

「え、今からですか?」


 行くことは想定していたが、まさか今すぐとは思わず、柚希は思わず目を丸くする。

 そんな様子を見た月代は、当然ですと頷くと口を開いた。


「当然です。これはかなりの特殊な事例ですので、今すぐにでも検査が必要です」

「まー、そりゃそうかー……イルもいいか?」

「いつでも問題はない。むしろ、早めに面倒ごとは片付けるに限る」

「……それもそうだなー。というわけなんで、よろしく頼みます」

「わかりました。徳田さん、車の準備をお願いします」

「了解です。んじゃ、先に行ってますね。……あー、生きた心地がしなかった……」


 女性だけ、しかも、訪問先にいた二人がやたら美人だったし、何より片方は無防備すぎ、もう片方はありえないくらいスタイルがいいとあって、男の徳田的には非常に辛いものがあったので、先に車の準備をする、というのは渡りに船だった。


 徳田はずっとドキドキしっぱなしだったことと、女性しかいない部屋に男一人と言う状況が心臓に悪かったようで、足早に柚希の家を出て行った。


「では、我々も行きましょうか。……あ、苑間さんはまともな服を着てください」

「あー……やっぱだめですか?」

「当り前ですっ! そんなに大変すばら――んんっ! 恥ずかしい姿を晒しながら外へ行くと言うのは問題です!」


 現在の格好を怒られた。


「あ、ハイ。すんません」


 何か一瞬、変なことを言いかけなかったかこの人、と思いつつも、柚希はTシャツの他に洗濯したばかりのパーカーを羽織り、下は引っ越しの時に間違って入ってしまった、中学生時代のハーフパンツを穿くことでどうにかした。


「行きましょう……って、あれ? そのパーカー……」

「このパーカーが何か?」

「あ、いえ、何でもありません。では、行きましょう」


 柚希が着ているパーカーに、どこか既視感を覚えつつも、それよりも検査を早めにした方がいいと言う思考に持って行き、月代は二人を連れて日本探索者協会の支部へ向かった。



「えー、検査の結果……苑間柚希さんであることが確定し、同時にイルさんも一応、人間であることがわかりました」

「なんじゃ、儂、一応人間という部類なのか?」

「そうなります」


 あれから半日ほど二人は精密検査を受けた。

 その結果として、柚希は苑間柚希であることが証明され、イルは一応人間ではある、ということがわかった。

 だがしかし、イル的には自分が一応人間、ということに微妙に納得が行っていない様子であった。


「まあ、仕方ないか……」

「それから苑間さんですが」

「あ、はい、なんですか?」

「その前に、口調、普段通りでいいですよ」

「あ、マジで? んじゃあ、普段通りに。それで、なんだ?」

「まず疑問があるのですが……その髪から出ている粒子は何ですか?」

「あ、これ? 魔力」

「はい? 魔力、なんですか? それ」


 まるで魔力を知らないような言い方だが、この場合は単純にこの粒子が魔力だとは思っていなかったために、月代はなんですか状態になっている。


「あぁ。こいつの説明曰く、余剰魔力放出現象っていう物らしくて、メッチャ魔力がある状態の人間は、こうなることがあるらしいんだよ」

「……え、マジ、ですか? あの、イルさん」

「マジじゃぞ。なんじゃ。こっちにはおらんのか?」

「あ、いえ、ごく稀に少し光を放ってる人がいる、という報告を受けたことはありますが……なるほど、あれらは魔力、と」

「で、精密検査的にはどこも問題ないんだよな?」

「あ、はい、そうですね。強いて言えば、柚希さんの場合は肉体年齢が若返ってると言いますか……」

「え、そうなのか!?」

「は、はい。具体的には、その……小学生程度?」

「うわ、マジかよ……実際小さいし小学生っぽい体してるなぁって思ったら……なあ、イル。これも加護が原因か?」

「間違いなくな」

「マジかー……」


 ここに来て、柚希の体が本当に小さくなっていることが判明。

 元々は二十三歳の男の体だったのだが、今では小学校低学年程度の肉体になってしまったようである。

 これには柚希もがっくり。


「じゃあ、何か? この体って成長するってことか?」

「それはわかりませんが……イルさん、どうなんですか?」

「ふぅむ、そうじゃのう……儂もこのような事例は初めて故なんとも言えんが……成長しない可能性が高い、と言えるな」

「そうなのか?」

「うむ。そもそも、今の柚希少女はかなり魔力が膨大になっておる。それ故、成長しようにも魔力が体に馴染みすぎて、自然に変質しなくなっているのじゃ。あれじゃ。小さい頃から魔力を鍛えすぎると、成長が止まる、という現象がある。今の柚希少女はまさにそれじゃな」

「なるほどなー。そういや学生時代、妙に成長が無さすぎる奴がいたな……しかも、魔力が多かった気がする」

「うむ、そういうことじゃ」


 なるほど、と柚希は色々納得したのだが……そのすぐ傍にいる月代……だけではなく、近くにいた職員たちも、イルの説明が耳に入ってきており、全員総じて、それはもう驚いたような表情を浮かべていた。


「む? なんじゃ、儂、何か変なことを言ったか? やけに視線を受けとる気が……」

「あ、い、いえ……あの、イルさんって、その、どこでその知識を……?」

「研究した結果じゃが」

「それって、ダンジョン、で?」

「そうじゃな。あ、いや、その前からも研究はしていたが……まあ、そういうことにしておいてくれ。っと、柚希少女よ、そろそろお腹が空かぬか?」


 ふと、気付いたようにイルが自身の腹部をさすりながら、柚希に空腹じゃないか? と尋ねると、柚希も言われてみれば、と空腹を感じ始めた。


「あー、そう言えばそうだなー。結構長かったし……ってことで、俺たち、そろそろ帰っていい?」

「あ、いえ、その前に一つ」

「まだ何かあるのか?」

「はい。イルさんですが……その、戸籍が見当たらないんですよ」

「やっぱか」

「まあ、当然じゃろうなー。ダンジョンに住んでたわけじゃからなー」


 むしろあった方が問題じゃろ、とイルは心の中で苦笑いを浮かべる。

 その辺も色々と理由はあるし、イルとしてもある程度の予測は付いているのだが……確信が持てるまでは言わないようにしていた。


「ダンジョンが発生した現代においては、ダンジョンの転移トラップのせいで、どこからともなく来てしまう、という事例もなくはないので、身分証として探索者カードを作っていただきたいのですが」

「なんじゃ、作ってもらえるのか? ならば頼む」

「ではこちらへどうぞ!」


 面倒なことはまだまだ終わりそうにないようである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ