説明回って世界観開示のために必要だし大事だけど、割とだれやすいし見てて疲れない?
適当にピザを注文してから三十分と少しで到着。
適当に受け取ってから早速食べる。
「あ~、探索後のピザは美味い! ついでに酒も美味い!」
「ほほう! これはなかなかに美味しいではないか! 熱々とろとろでよいのう、よいのう!」
探索後ということもあり、柚希はピザをガツガツと食べつつ、同時に酒も飲んでいた。
ちなみに、柚希はそこまで酒は飲む方ではないが、そこそこの探索をしてきた帰りはこうして飲むことが多い。
ちなみに、果実系が好みである。
余談ではあるが、二人の格好は先ほどとは打って変わって、とてもラフな物になっている。
柚希は体に合う服がなかったため、適当にTシャツを着ており、下はなにも穿いておらず、真っ白な肌を晒している。
イルの方は、帽子とコート(?)を脱ぎ、白のブラウスとスカートのみであり、ニーハイソックスも履いていたが、それも脱いでおり、むっちりとした白い太腿を惜しげもなくさらしている。
なんと言うか、どちらもずぼら。
もっと言えば、世の男性が見たら少々興奮してしまうような、そんな光景である。
「さて、おぬしに魔法を教える約束じゃが……その前に、おぬしの持つダンジョンや魔法についての知識を教えてほしい」
美味しいピザを食べながら、イルが柚希にそう尋ねて来た。
柚希は手に持っていたピザ(照り焼きチキン)を口の中に放り込み、それを嚥下してからあぁ、と頷く。
「そうだなー……まず前提として。ダンジョンが出現したのは、今から五十年くらい前だな」
と、柚希はダンジョンや魔法についての知識を語り始めた。
まず前提として、この世界は元々ダンジョンやら魔法という、所謂ファンタジーと呼ばれるものがあったわけではない。
今から五十年前のある日、突如として世界各地にダンジョンが出現。
プロローグ冒頭部分で多少語っているためいくつか割愛はするが、ダンジョンは言わば資源の宝庫とも言うべき場所だった。
現代の生活において欠かせない、魔石やドロップアイテムなどを手に入れるための場所。
そして、自身を強くするための場所。
それが、人類から見た、ダンジョンに対する認識である。
……もっとも、その認識はプラスの面だけを見た場合であり、それ以外であれば、日常的に命を落としてしまう場所であったり、たまに魔物が地上に出現してしまったりする恐ろしい場所、という認識でもある。
プラスの面よりもマイナスの面の方が強く、一般人的にはマイナスの面が強い。
しかし、プラスの面を強く認識する者がいるのもまた事実。
それが、探索者である。
この名称自体は、何度か変わっており、魔物狩り、冒険者、探検家、無謀者、などなど色々あったのだが、最終的に探索者に落ち着いた。
とはいえ、この探索者という単語の中には、色々な職業が内包されているので、言ってしまえば、ダンジョン関係の職業を全部まとめた総称が探索者ということだ。
「で、この探索者って奴の中には、そうだなー……戦士とか、武道家とか、魔法使い、付与術師、他にも色々あるが、まあ、ようはそいつの職業だな」
「ふむ、戦闘系に関する職業という認識で良いか?」
「基本的な探索者の認識はそれでいいが……これら以外にも色々あるんだよ。例えば、死体屋とか、地図屋、回収屋、情報屋、あとはサポーターってのもいるな」
「ふむ。それらはどういうものなんじゃ?」
「死体屋は、ダンジョン内で死亡した人の遺体を回収する仕事だな。あれだ、亡くなったら葬式をするだろ? だが、その遺体がないんじゃ悲しいし、何より最後に会うことすらできないことが嫌だ、そう思う人が多くてな。で、少しでもいいから亡くなった人の体を持ち帰ってきてほしい、そう言う人たちの願いに応えるためにできた職業だな。まあ、やる奴は少ないが、結構な収入になるらしいんで、普通の探索者と兼業でやってる奴も多い」
「なるほどのう」
ちなみにだが、この死体屋の仕事の成功率はよっぽどのベテランじゃない限りはあまりよろしくない。
何せ、魔物は人を食べるのだ。
骨が一本でも残っていれば御の字、それくらいに死体屋は難しく、シビアなのだ。
尚、運よく五体満足で残っている場合もあるが、本当に稀だ。
「地図屋はダンジョン内の地図を書いて売る奴だな。回収屋は、ダンジョン内で死んだ人の遺品を回収する、もしくはダンジョン内で失くしてしまった物を探す人のことだな」
「死体屋に近いのう」
「そうだな。前者は人そのものだが、後者は遺品だからな。まあ、生きてる人が回収してきてほしいと依頼する場合もあるが」
「なるほど。情報屋はわかるが、サポーターとは?」
「荷物持ちだな。ダンジョンは場所によっては広範囲で、寝泊まりの必要すらある場所も存在する。そんな中、大荷物を持って移動は大変だからなー。だから、荷物持ちが意外と重宝されるんだ」
「そう言う職業もあるのか……かなり多いんじゃな」
「まあな」
今しがた柚希が説明した職業たちは、総じてサブ職業と呼ばれている。
ダンジョンそのものを相手にすると言うより、探索者や、それ以外の人たちのために動く職業とも言える。
あってもなくてもいい職業ではあるものの、あれば非常に助かるし、プラスの面がかなり多いのが、サブ職業の特徴だ。
まあ、中にはダンジョンに挑めない腰抜け、などという者もいるが……そう言う者たちは、最終的にサブ職業の者たちに助けられるか、蔑んだばかりに酷い目に遭ったりするのだが。
「で、魔法か……あー、まあ、あれだな。魔法って言えば、魔力を燃料に、様々な現象を引き起こす、って感じか。つーか、魔法は未だによくわかってないからな……魔法だけじゃなくて、スキルなんてものもあるし」
「ふむ、なるほどのう。ま、今魔法を解説しても理解が遅れると思うし、今は良い。魔法の大雑把な認識はそれで十分じゃからな」
「そうか。一応こんなところだが、何かあるか?」
「ある。おぬしがさっき見せた救援要請とか言っておったものはなんじゃ?」
「あぁ、これか?」
そう言って柚希が取り出したのは、黒色の長方形をした電子機器だ。
「そうそれじゃ」
「これは、よくある連絡用の端末で、まあ、スマホだな。色々と技術的な変化もあるにはあったが、なんだかんだこれに落ち着いたらしい奴だ」
五十年前の時点では、色々と技術革新があり、所謂腕時計型の通信端末なんかもあったのだが、色々あって今のこの形に落ち着いている。
というのも、腕時計型は探索者たちには不向きだったのだ。
持ち運びという意味ではかなりありだったのだが、激しい攻撃が発生する場合に壊れることが多々あったためだ。
結局、この端末の形状での需要が増え、戦闘中は収納袋等に入れればいいとなった。
とはいえ、昨今でも試行錯誤は繰り返されており、少しずつではあるが色々な形状の端末が出てきてはいるが、未だにスマホのような端末の方が人気である。
「ふむ、機能は?」
「そうだな……これは探索者が使用するような機種で、命の危機が訪れた時に救援要請ってのが出せる。これと同じシステムを使用している物にその要請が来て、さっきみたいにその場所に行って助けられる、ってわけだ」
「なるほどのう。便利なんじゃな」
「つってもまぁ、助けに行く奴は少数だからなぁ……特に、今回みたいな高難易度ダンジョンじゃな」
「ま、無理もあるまい。低レベルならいざ知らず、高レベル帯と言うのは、命の危機が発生するからのう」
「そう言うことだ。他にも色々機能はあるが……ダンジョンの空き状況なんかも調べられるな」
「そうなのか。なかなかに面白い」
未知なる物には興味津々なイルは、触りたい、というような表情を見せており、じーっと柚希を見つめる。
「……ほらよ。壊すなよ?」
「おぉ! さすがじゃな! ……ふむふむ、ここをこうして、こう……なるほどのう、なんとも摩訶不思議じゃな……」
表面や横、裏を見たり、画面を色々と操作したりと、かなり楽しそうに触るイルに、柚希は苦笑を浮かべる。
魔女は全員好奇心旺盛なのか? と。
「ん? のう、柚希よ」
「なんだ?」
「一つ疑問なんじゃが……この、おぬしの登録情報に登録されとる職業と言うのは、固定なのか?」
「ん? あー、それな。それは探索者として登録する時に、色々適正を調べるんだよ。どういう魔法、スキルが向いているのか、ってな。俺はなんつーか、器用貧乏タイプだったからなー。魔法も使えるけど、同時に体術系もできる、みたいな」
ピザを食べつつ、そう説明する柚希。
先ほどの説明にあったサブ職業とは違い、戦闘系の職は基本的に適性を調べてから決定される。
もっとも、可能性がいくつもある場合は、好きな物を選択できる形式ではあるが。
「ふむ。で、職業は?」
「ん? それなら魔法戦士みたいな感じだったが……」
「ほほう……じゃあおぬし、今は転職したということじゃな」
「は?」
「いやほれ、おぬしの職業、魔法少女になっとるぞ」
「なんだそのふざけた職業!?」
「いや本当じゃぞ? ほれ」
そう言ってイルが柚希にスマホを返却し、柚希はその画面に映る自身の職業欄が確かに『職業:魔法少女』となってしまっていた。
「は!? なんで!? なんでこうなった!? つーか、魔法少女ってそれ職業なのか!?」
自分の職業が魔法少女と記載されるのを見た途端、柚希はそもそも職業じゃなくね!? とツッコミを入れる。
「まあ、出ている以上、職業なのではないか? ちなみに、魔法少女とはどういう物なんじゃ?」
「どういうものっつってもな……簡単に言えば、魔法を使う少女って感じだが……あー、あれだ、大抵なんか変身してる。あとは色々と定義があるにはあるが、あれはマジでよくわからんが、うん、ってかなんで俺魔法少女扱いなの?」
「あれじゃろ、儂が加護を与えて、小さくなったからではないか? どう見ても、子供じゃろ、その姿」
「ぬぐっ……」
自分でも気にしていることをよくもまぁ、と心の中で吐き捨てるが、正直魔法を教えてくれる都合上、そこはもう割り切るしかねぇ……とか思っているし、何より戻らないなら今更どうこう言っても仕方ないな……と諦めてもいる。
というか、なんでこうなったし、みたいな。
「まあ、スタイルは……子供ではないか。無駄に胸があるしな……」
「いやお前のせいじゃね?」
「それはそうじゃな」
「開き直んなよ」
それはそれとして、イラっとする物はイラっとするが。
「そう言えばおぬし、先ほどスキルとか言っておったが、それはなんじゃ?」
「あー……なんか面倒だから今度でいい?」
「まあ、構わんが」
「んじゃそういうことで。ってか、ピザが冷める。さっさと食おうぜ」
「そうじゃな! このような美味なる食事が冷めるなど、もったいない!」
二人はまずは食事! とばかりに目の前のピザを平らげた。
食事後は、イルによる魔法講義となった。




