気が付いたらちょっとサイコパスな感じが出てしまったパーカーちゃん。強くて可愛いなら許されるよね!
「さて、いきなり襲ってきた原因を訊こうか。ってか。お前だれよ。ダンジョンで何してるん? 探索者……じゃない気がするが……うーん?」
金髪ゴスロリ少女を蹴り飛ばし、その少女から10メートルほど離れた位置に移動したパーカーちゃんは、雷の刀を持ったまま少女に襲ってきた理由を尋ねた。
「ん~、ん~、ウチが襲う理由? そんなの、血ぃ吸いたいだけだよ?」
「おのれは吸血鬼か」
「ありゃ、なんでわかったん?」
ただの比喩表現のつもりで言ったら、少女は目を丸くしながら少し驚いたような顔を見せた。
「……え、マジで?」
「マジだけどぉ?」
「ちょい待ち。え、吸血鬼? ほんとに?」
「そうだよ? 吸血する姫って書いて、吸血姫だよぉ」
「……スゥーー」
冗談のつもりで言ったら、本人曰く吸血姫とのことで、基本的に面白けりゃいいや、というパーカーちゃんでもこれにはかなり困惑した。
【吸血姫……ってこと?】
【うん、ちょっと待とうか】
【いやまあ、たしかにダンジョンができてから、こう、ファンタジーが増えたけどさぁ……吸血姫なんていたっけ?】
【いやそうじゃない。そんなことよりも……金髪ゴスロリ吸血姫とか、属性がッ! 強いッ……!】
【たしかに】
【んなこと言ってる場合か!? 絶対あの吸血姫ちゃんやばいだろ!】
【パーカーちゃん大丈夫か……?】
「あー……まず、これだけ聞かせて欲しい」
「ん~? 何、吸われるのが痛いとかぁ?」
「まあ、それも気になるが」
【気になるのかよwww】
【たしかに気になりはするww】
【作品によっては、痛くないどころか気持ちいいなんてのもよく見かけるよね】
「とりあえず、最初はチクッてするけど、その後は気持ちよくなるかなぁ」
「マジか」
「マジマジぃ」
「そうなのかー。……まあ、それはいいとして……で? お前はここで何してたんだ?」
「ん~? ウチは吸血姫だよぉ? 食事以外にあるぅ? ないよねぇ? あるわけないよねぇ?」
何を当然のことをと言わんばかりの表情でそう返す吸血姫に、パーカーちゃんはだよなぁ、と苦笑い。
さっきまで攻撃を仕掛けた人物と、それを受け止めて反撃した人物とは思えない、なんとも弛緩した空気に、視聴者たちもちょっと困惑。
それはそれとして、やっぱり心配するような声が多いのもまた事実だが。
「そうかー。……んで、なんか不味いとか言ってなかったか? ここのボス」
「うん、不味いねぇ。びっくりするくらい不味いねぇ……」
「そんなに?」
「ん~……匂いはないのに、味が薄いししかもその味が苦みしかない感じ」
「それは不味いな……」
吸血姫の説明に、パーカーちゃんもその味を想像して顔を少し顰めた。
【うん、不味い】
【そりゃしゃーない】
【不味いとも言いたくなる】
【あの、この空気感で大丈夫なのか……?】
「それで? 俺を襲ったのは?」
「美味しいご飯が目の前にのこのこ出て来たら、食べたくならなぁい?」
「うん、わかる」
【わかるの!?】
【そこわかっちゃだめじゃね!?】
【草】
【やっぱパーカーちゃんおかしいわ】
「だが、ただで食わせてやるわけにはいかないんだなー、これが」
「だよねぇ。じゃぁ、どうすれば血ぃ吸っていいのかなぁ?」
「……ふむ。実戦経験を積むと言う意味ではベスト、か……」
吸血姫の質問に、パーカーちゃんは顎に手を当ててそんなことを呟くと、ニヤリ、と不敵な笑みを浮かべた。
【あれ、なんかパーカーちゃん、笑ってない……?】
【と言うか今、実戦経験とか言わなかった? ねぇ? 言ったよねぇ!?】
【待って待って待って!? パーカーちゃん危ないって! 止めた方がいいって!】
【死ぬぞ!? さすがにあんな危ない人物相手は死ぬって!】
「じゃあ、こうするか。えーっと吸血姫。一つ、勝負をしようか」
「勝負ぅ?」
「そ、勝負。今から俺とお前でルール無用の戦闘を行う。それでお前が俺に勝てたら、血を吸わせてやろう」
「いいのぉ?」
パーカーちゃんの提案に、パァッ! と明るい笑顔を浮かべ、それはもう嬉しそうな反応を見せた。
「おう、いいぞ。で、俺が勝ったら……そうだなー。ま、そこは勝ってから考えるかな」
「あはぁ~っ! ウチに勝てる自信でもあるのぉ?」
「おう、あるぞ。生憎と俺は、相手の力量を測るのは得意でね。じゃなきゃ、ソロでダンジョンに潜るなんざ無理なんでな」
「ふぅ~ん? じゃあ、もういいよねぇ? 始めてもいいよねぇ? ウチ、早く血ぃ、飲みたいんだぁ~~~!」
狂気的な笑みを浮かべ、待ちきれないと言った様子の吸血姫はそう言った直後、ドンッ! と地面を強く踏み込み、瞬時にパーカーちゃんの目の前に現れた。
【速!?】
【ちょっ! 何その速度!】
【やばいやばいやばい!? スプラッターな映像が流れちゃう!?】
【魔女さーーん!? 止めてぇ! パーカーちゃん止めてぇぇ!?】
目にも止まらない速さで、パーカーちゃんの目前に現れた吸血姫は、情け容赦なく手に持った深紅の槍をパーカーちゃんの喉元目掛けて突き出し……
「甘ぇよ」
「なっ、がぁっ!?」
刺さる寸前でパーカーちゃんがいつの間にか出していた氷のナイフで槍を受け流され、直後に回し蹴りを脇腹にくらった。
かなりの勢いで吹き飛ばされ、吸血姫は大きな音と共に壁に激突した。
【は!?】
【え、今何した?】
【首を刺されたと思ったら、吸血姫ちゃんが吹っ飛んだ……?】
【いやなんで!?】
「いったぁ~~……ねぇ、女の子には優しくするもんじゃないのかなぁ?」
「いや、俺も女だが? 思いっきり首を狙って来たよね? 普通に人のこと言えなくない? むしろ、そっちの方がヤバくない? 首だよ? 首」
「ん~、それを言われるとたしかにぃ?」
「お前素直だな……」
普通に同意されて、パーカーちゃんは少しだけ困ったような表情を浮かべた。
「んふふぅ~、ウチはいつだって素直なんだよぉ。……でもぉ、本当にあなた、強いんだぁ。びっくりかなぁ。びっくりだなぁ。まさか、ノーモーションで反撃されるとは思わなかったぁ。しかも、手加減、したよねぇ?」
「ありゃ、バレた?」
「バレるよぉ。だってぇ、現にウチは生きてるんだしぃ。殺す気で打ってたら、間違いなくウチの内臓がぱぁん、ってなってたねぇ」
【マジでェ!!?】
【パーカーちゃんの蹴りってそんなにヤバいの!?】
【まあ、ファッティレックスを体当たりだけで風穴開けたし……】
【何それ怖い……】
【魔法の効果だけじゃなくて、純粋に身体強化魔法も得意、なのか?】
【魔法戦士系かな? やっぱり】
【でもあれって器用貧乏な職業だった気がするんだけどなぁ……】
「でも、あなたはしなかった。なんでぇ? どうしてぇ?」
「なんでって……いや俺、女の子を殺す趣味とかないし……男女平等主義だし」
「ん~? ウチが、女の子ぉ?」
「え、違うの!? 実は、そんなにスタイルいいのに男ってこと!?」
まさかミスったか!? と慌てるパーカーちゃんに、吸血姫は笑いながら否定する。
「いやいや、全然女の子女の子ぉ。女の子でおっけぇだよぉ」
「あー、びっくりした。気分を害したかと思っちまったぜ」
「あなた、変わってるねぇ?」
「そうか?」
「普通、自分の命を狙う相手に、そんなこと言うかなぁ?」
「さぁ? お前は殺す気かもしれないが、俺は殺す気なんてないしなー」
【わー、つよーい……】
【パーカーちゃんの頭、やっぱおかしいのでは?】
【攻撃を仕掛けてきた危険人物に対してするはいりょじゃねぇww】
「へぇ~~? じゃあ、ウチは殺してもいいってことぉ?」
「やれるならな」
「ふぅ~~~ん? ……じゃあ、殺すねぇ!」
パーカーちゃんの物言いに、怒った……というわけではなく、とても楽しそうな雰囲気で再びパーカーちゃんに襲い掛かる。
しかし、今回は真正面から仕掛けに行くことはなかった。
吸血姫はパーカーちゃんから5メートル離れた位置で突如として霧となって消えた。
「おっ! すげぇ! 霧になった!」
《あらぁ~、随分と呑気だねぇ?》
「なんか、声が響くなー。全方位から聞こえる気がする。……はっ! これが噂に聞く、ASMRって奴か!?」
【違うそうじゃない】
【なぜそうなる!?】
【霧になって消えたのに何も目を爛々とさせてるのがヤバイ】
【つーか、普通は慌てると思うんだけどぉ!?】
【パーカーちゃんで驚くだけ無駄じゃない? これ】
「しっかし、霧かぁ……」
《うふふぅ、さぁ、ウチがどこから来るか、わかるかなぁ?》
「そうだなー。正直わからないなー」
《あらあらぁ~、そうなんだぁ~? それじゃぁ……こうされても文句は言えないよねぇ?》
瞬間、パーカーちゃんの周囲をぐるっと深紅の槍が囲う。
穂先はパーカーちゃんに向いており、このまま突っ込んで来れば間違いなくパーカーちゃは串刺しになるだろう。
「あはぁ~! 油断大敵ぃ!! 個人的には、こ~んなに、美味しそうな血ぃを持った子を殺すなんて、もったいないけどぉ……あなたは強いから、殺さないと無理だねぇ」
【パーカーちゃん!?】
【これ絶対アカン奴! パーカーちゃん死なないでぇ!】
【こんなんどう回避しろってんだ!?】
【ダメじゃね……?】
「おっ、出て来てくれたな! やー、見えないと攻撃のしようがないからさー」
「あらぁ~? 頭でもおかしくなったのかなぁ?」
「いやいや、至って正常だぞ? ってか、これくらい、大したことないしなー」
「ふぅ~ん?」
本当に焦った様子がないパーカーちゃんに、吸血姫は少し眉をひそめた。
「じゃぁ、さようならかなぁ!」
そして、手を振り下ろし、槍がパーカーちゃんへ殺到し……ボギンッ! と、槍が折れた。
「へ!?」
槍が折れると言うおかしな現象に、さすがの吸血姫も驚きを隠しきれず、間の抜けた声を上げた。
【折れたぁ!?】
【なんでなんで!?】
【パーカーちゃんの体、鋼か何かで出来てるの……?】
【何もわからん……!】
「ふぅむ、こんなものか? って言うかお前、戦い方が合って無くね? 多分だが、こういう技よりも、純粋な近接戦闘の方が合ってるだろ」
「よくわかったねぇ?」
「いやなんとなく」
「そっかぁ……じゃあ、本気で、行ってもぉ~?」
「バッチコイ。全部受け止めてやるぜ」
「そっかぁ~。じゃあ、《血戦装鬼》」
吸血姫が何かを唱えると、突如として吸血姫の体を流動する紅い液体のようなものが覆う。
それらは次第に鎧のような形を形成し、動きが止まった。
そこにいたのは、ゴスロリの上から深紅の鎧を纏った吸血姫であった。
「お? なんか魔法か何か?」
「そうだよぉ。これを着るとねぇ、今までの三倍以上の身体能力を得られてねぇ……こうなるのっ!」
ドゴンッ!
と、消えた様な動きをしたかと思うと、吸血姫が手に持った槍の面になっている部分をパーカーちゃんに叩きつけた。
吹き飛ばされたパーカーちゃんの方はと言えば……。
「っと……たしかに、さっきより強いわ」
ふっ飛ばされている最中にくるっと体を回転させて、壁に着地していた。
どう見ても無傷……ではなく、よく見ると口端から血を流していた。
「あはぁ~~! 今のを受けて生きてるんだぁ~!」
「まあなー。いやー、いい一撃だったぜ。おかげで、ちょっと痛かったし」
【ちょっと……ちょっと?】
【あの、普通に血を流してません?】
【すごい勢いでふっ飛ばされたのに、なんでぴんぴんしてるんですかねぇ?】
【う、うーん?】
「じゃあ、まだまだ行くよぉ~!」
またしても高速で移動を行う吸血姫。
今度はふっ飛ばすのではなく、槍を巧みに操り、突きや薙ぎ払いを仕掛けて来る。
それらは的確に人体の急所を狙ってきている。
常人ではその槍の速度でについて行けず、すぐに穴だらけになっているが、パーカーちゃんの方はそれを涼しい顔で凌いでいた。
「あらあらぁ~? 防戦一方かなぁ?」
「いやー、まいった。かなり速いなぁ」
「その割には、軽い表情だねぇ?」
「ま、俺も本気出してないしな」
「ふぅ~ん? じゃあ、ウチは本気を出させる前に倒した方がいいかなぁ」
「おっ、いいねぇ。そういう意見。俺も同意見。相手に奥の手を使わせずに倒すってのはなー」
「うふふぅ~。意外と意見が合うんだねぇ?」
「だな。だが……生憎と負けるわけにはいかないんでね。じゃないと、あそこにいる魔女に殺されるし。……いや、殺されるだけで済むか? あいつならもっとヤバいことしそうだな」
などと話しながら、二人は激しい攻防を繰り広げる。
吸血姫が槍を突きだせば、パーカーちゃんはナイフでそれを的外れな方へと受け流し、薙ぎ払いが来ればひらりと紙一重で避けてそこから反撃を入れ、それを吸血姫が槍の柄で防ぐ。
互いに一切譲る気もない攻防に、視聴者たちは驚く。
魔女の方は楽しそうに観戦中である。
【すっごい呑気に話してるのに、ものすごい攻防してるんですけど】
【吸血姫ちゃんの方は槍で攻撃してて、パーカーちゃんの方はなんか短剣二本で対応してるのがバグ。なんて長物に対して、短刀とか言うリーチの短い武器で対応できてるんですかねぇ……!】
【バトル漫画みたいになってらぁ】
「魔女? ……うぅん? あの人……まあいいや。じゃあ、さっさと勝負を付けないとねぇ!」
「だなー。俺もお腹空いて来たし。ってか、配信中なんだよなー、これ。撮れ高的には十分だと思うし……んじゃ、俺も本気出すかー」
「させないっ!」
パーカーちゃんが本気を出すその瞬間を見逃さず、吸血姫は目にも止まらぬ速さでパーカーちゃんの頭部、首、心臓を槍で突き刺そうとしたが……。
「急所狙いはバレやすいぜ」
そう言ったパーカーちゃんに槍を回避され、そのまま槍を持った手を蹴り上げられた。
その勢いで槍が手から抜けて、槍は天井に突き刺さった。
【えぇぇ……】
【えぇぇぇぇ?】
【パーカーちゃん、やっぱ強すぎません……?】
【ってかこれ、前に見せたあのドレスを纏う魔法を使ってないんだよね? 素でこんだけ強いのに、あんな魔法を持ってるとか……うん、化け物かな?】
【こんな化け物がなんで今まで知られてなかったのか】
【ソロだからじゃ……?】
「それじゃあ……《魔装・風鎧》」
前とは違う言葉を唱えると、パーカーちゃんの体を緑色の風が覆った。
それらは次第にドレスを形成していく。
前回はパーカーの上からだったが、今回はパーカーも同時に変形する。
幾何学模様が光り出し、服の色も柔らかな緑色へと変化し、裾も伸びてふんわりとしたスカートへ変化し、それは袖も同様にふんわりとした物へと変化していた。
装飾も施されていき、頭部にはティアラのようなものまで生成された。
そうして、変化が終わると、そこには緑色の可愛らしいドレスを纏ったパーカーちゃんがそこにはいた。
だが、そのドレスは風魔法で出来ているためか、わずかに風が吹いており、パーカーちゃんの髪がふわふわと揺れる。
【なんか前回と違うんですけどぉ!?】
【前はパーカーの上からだったのに、今回はなんかパーカーが変形した!?】
【すげぇぇぇぇぇぇ!】
【待って待って!? メッチャ可愛いんだけど! 何その姿!?】
【魔法少女かな?】
【リアル変身が見れるとか、パーカーちゃんやっば!】
「うーん、やっぱこれすごいな……さすが魔女と言うかなんというか……ってか、ギミック凝り過ぎじゃね?」
「な、なんなんそれぇ!?」
「あ、悪い。反則かm――」
「めっちゃ可愛いぃ! ねね、本当にそれなぁに!? ウチ、興味津々!」
「え、そっち!?」
驚かれたし、明らかにこれ反則かもなぁ、なんて思っていたら、目の前の吸血姫はものすごく目を輝かせながら、可愛いと声を上げた。
【あれ、なんだろう。すっごい俺たち味を感じる……】
【奇遇だね、私も】
【敵(?)なのに、めっちゃテンション上がってて草生えるんですが】
【この戦闘、マジで緊張感ないんだけど】
【一応マジで殺意高い技とかもあるはずなんだけどなぁ……】
「はわぁ~~~! すごい魔法……! 服の形状が変わって、すっごく愛らしい姿に……それでいて、強力な力を感じるしぃ……うん、これはいいねぇ……ねぇねぇ」
パーカーちゃんの周囲をぐるぐると回りながら、いろんな角度から舐め回すようにじっくり見ていた吸血姫はパーカーちゃんに話しかける。
戦闘中だと言うのに、本当に緊張感がない。
「なんだ?」
「それ、強いんだよねぇ?」
「まあなー」
「それなら、次の一撃で決着、ということにしないかなぁ?」
「お、マジ? 早く終わるんなら俺もそっちの方がいいや!」
吸血姫の提案に、これ幸いとパーカーちゃんがそれはもういい笑顔で乗って来た。
「交渉成立だねぇ。それじゃあ……行くよぉ?」
「んじゃ、こっちも行くぜ」
お互い、20メートルほど離れた位置に移動。
【なんか、マンガみたいなことしてるんですが】
【こういうこと、リアルであるんだなぁ……】
【気が付いたらメッチャバズってません?】
【まあ、うん。だって、イレギュラーの中でも、かなりのイレギュラーでしょ、これ……】
【パーカーちゃん頑張れェェ!】
そして、どちらかが何かを言い出すことなく、同時に駆け出す。
だが、その時点ですでに両者には目に見えるほどに、大きな差があった。
駆け出した瞬間からのパーカーちゃんのスタートダッシュは異常な速度だったのだ。
先ほどまで、速度では吸血姫が勝っていたが、魔装を使用した直後から、パーカーちゃんの動きが目に見えて速くなった。
それは離れてみているほどわかる物で、明らかにパーカーちゃんの方が移動した距離が長かった。
「なっ!?」
想定外の速度を見せたパーカーちゃんに、吸血姫は驚愕の表情を浮かべ……
「んじゃ、俺の勝ちなー」
と、どこか気の抜ける声でパーカーちゃんは手に持った二本のナイフをすれ違いざまに振るうと、吸血姫の二の腕、足の腱を切った。
両腕両足を動かすことができなくなった吸血姫はカクン、と糸の切れた人形のように派手に転び、しばらく転がったところで止まった。
「はい終了。やっぱ、風魔法系は動かしやすいな」
そう言いながら、パーカーちゃんは魔装を解除し、同時に手に持っていたナイフも消した。
【えげつねぇ!? パーカーちゃん、えげつねぇ!】
【可愛い顔して、綺麗に手足の腱を切りやがったよ!】
【こっわ! いやほんとに怖いんだけど!?】
【サイコパスかな?】
【これが、パーカーちゃん……】
【魔法少女な見た目してるのに、やってることはバリバリの戦闘系過ぎる……】
「お疲れ様じゃ、パーカーちゃんよ」
終わったところを見計らって、魔女がパーカーちゃんの近くへやって来る。
「おっ、魔女。どうよー。圧勝だろ?」
近くにやって来た魔女に、パーカーちゃんはドヤ顔をかました。
やってやったぜ、と言わんばかりである。
「まあ、そうじゃな。しかし、おぬしなら秒で終わったじゃろうに」
「いやだって、普通に強いんだぜ? あれ。なら、ちょっとは戦いたくなるだろ。あと、撮れ高」
【撮れ高目当てであんなのと戦ってるのは普通にヤバいでしょ……】
【やっぱりサイコパスでは?】
【そうか、パーカーちゃんはサイコパスか……】
「おっとー? 言っとくが俺はサイコパスじゃないからな」
視聴者たちのコメントに、パーカーちゃんは心外とばかりに、そう返すのであった。




