初配信が始まるも、早速露呈する二人の異常性と頭のやばさ。
【《ゆるだん》デビュー配信だぜ!】
魔女&パーカーちゃんねる
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#ゆるだん #ダンジョン #初配信
「これをこうしてこう……よし、おーい、この配信を見てる人~、ちゃんと見えてるか~?」
配信用のドローンのセッティングなどを終え、ちゃんと配信がされているかどうかの確認を行うと、かなりの速度でコメントなどが流れていく。
【キタキタキタァ―――――!】
【待ってた!】
【遂にこの瞬間が!】
【うおっ!? メッチャ可愛い顔が間近にィ!?】
【フード被ってないんだ】
【オッドアイ! 銀髪ロング! だぼだぼパーカー! なんと言う性癖のデパート……!】
【これが噂のパーカーちゃんか……】
「お、見えてるっぽいな! んじゃ、知ってる奴は知ってるかもしれないが、初めましての人は初めまして! 今日からダンジョン配信事務所『ゆるだん』の配信者として活動していくことになった、パーカーちゃんだ! よろしくな!」
「配信を見ている人の子らよ、初めましてじゃ。儂はそこにいるちっちゃいパーカーちゃんの永遠の相棒、魔女じゃ。儂もパーカーちゃんと共に、配信活動とやらをしていくことになったのでな、お手柔らかに頼む」
自分たちがちゃんと映っていることを確認し、早速二人は自己紹介を行う。
永遠の相棒、とかなんとか言ってる魔女がいたが、パーカーちゃんはスルーである。
「しっかし、10万人? も見てるんだな。ま、多いのか少ないのか、全然わからないんだがな!」
「じゃなぁ。こーんな小さき物で、映像を送信できるとは……うぅむ、科学とは面白いのう」
【初配信で10万人は異常なんだよなぁ……】
【個人勢なら数十人行けば大成功、企業勢なら数千人でかなりいい方、って感じか? ゆるだんだと……一万行けばいい方って感じだったんだがなぁ……w】
【正直、話題になったばかりのパーカーちゃんたちが配信! ってなると、そりゃあ、人も来る】
【中には冷やかしとか、アンチ的なのもいるけどな】
【そこはもうしゃーない】
「おし、じゃあ、今日の初配信について軽く説明して行くぞ! 今日俺たちが来てるのは、《鬼火の氷園》だ。洞窟型の氷雪系ダンジョンだな。で、出て来る魔物は人型系……それも、鬼種が多い。主にオーガだ」
【ちょっ、いきなりとんでもないとこ行ってるんですけどぉ!?】
【しれっとレベルⅤダンジョンを最初の配信に持って来るのは控えめに言って頭おかしいww】
【え、大丈夫なんだよね?】
【身の丈に合った場所に行かないと死ぬぞ】
【パーカーちゃんに常識を求めるのは間違ってるぞ】
【パーカーちゃんは頭おかしいからw】
「おっと? 俺の頭がおかしいと? それ、よく言われるが、俺は至って普通だからな!」
コメント欄を見つつ、それに対する言葉を返す。
配信者として、全部のコメントにリアクションをする必要はないが、それはそれとして適度にコメントを返すように、と言われている。
ちなみに、この時代における配信中のコメントを見る方法は二種類。
一つは、ドローンで空中にコメント欄を投影する方法。
もう一つは、専用のコンタクトレンズを入れる方法だ。
このコンタクトレンズは、リアクションレンズという名称で、対応したアプリを入れることでインターネットへの接続が行える。
ダンジョン配信者たちは、このどちらかを活用することでコメントに対するリアクションなどをしている。
とはいえ、リアクションレンズに関しては、視界にコメント欄が表示される関係上、戦闘中に視界が悪くなるという欠点が存在しているので、使用者は全体の三割ほどだ。
一応、任意でオンオフにしたり、文字の透明度を変更できたりするが、戦闘中に切り替えるのは難しいので、結局はドローンで確認が多い。
ちなみに、姫はレンズ派である。
【俺っ娘!?】
【パーカーちゃんは俺っ娘なのか!】
【銀髪ロングオッドアイでものすごく可愛い外見なのに、口調のギャップが凄まじいww】
【可愛いです!】
【キャラ濃いなぁww】
【これは伸びる!】
「なぁ、魔女。この外見で俺って言うのって変なのか? あと口調」
「知らん。儂は口調なんぞに興味などない」
「お、おう」
「じゃが、おぬしの場合は小生意気感があってよいぞ。手が全て滑って食べてしまいそうなくらいにはな」
「うん、殴るよ?」
「ふっ、この儂の三割の力で張った結界を割れない者が言いよるわい」
「いつか絶対殴る……!」
【仲いいのか悪いのかわからねぇwww】
【ってか、三割の力で通用しない……パーカーちゃんって弱い?】
【ってか、パーカーちゃんっていくつなんだ?】
【魔女さんは……メッチャエロイけど】
「ったく……んじゃ、入ってくぞ。ダンジョンについての解説は進みながら適宜でいいだろ。ほいしゅっぱーつ!」
「さて、面白いことがあればいいのじゃがな!」
【空気感ww】
【なんで遠足に行くみたいなノリなんだ】
【マジで初配信で事故らなきゃいいけど】
レベルⅤダンジョンであるにもかかわらず、軽いノリのパーカーちゃんに、視聴者たちは心配な気持ちになった。
中には、配信事故の一件を知っている者もいるが、知らない者もいるのだ。
そう言う者たちからすれば、パーカーちゃんは勝気な印象のある小学生くらいの少女にしか見えない。
最も、探索者の中にはパーカーちゃんのように背の低い者もいるので、あまり外見は参考にならないのだが。
と、そんなこんなでダンジョン内。
「とりあえず、何も知らない人のために軽く説明だな。レベルⅤダンジョン《鬼火の氷園》は、さっきも言ったように洞窟型の氷雪系ダンジョンだ。常に氷点下だ。なので、水分補給用に水を持って来ても、凍ってしまう可能性があるので、実は結構厄介なダンジョンだ」
【ってことは、仮に熱々の飲み物を持って来てもそのうち冷めるってことか】
【脱水症状との戦いかな?】
【氷雪系はマジで面倒。体温持ってかれるから】
「そうだな。氷雪系は、知っての通りかなり体温をもっていかれる。ここは基本氷だけだからマシだが、雪がある場所に関しては、マジでクソ中のクソ。あれ、動きにくいんだよ」
「ふむ。雪は厄介じゃからな。人肌に触れれば溶けて水となり、結果的に衣類がその水を吸収。そこからさらに体温を奪うからな」
「だな。んで、ここのダンジョンは厄介なことに……実は炎系の相性が頗る悪い」
【どういうことだ? 氷には炎が有効だと思うんだが】
【あー、うん。初めて行く人とか、知らない人はそう思うよな……】
【このダンジョンはなぁ……】
【クソギミックはマジ勘弁】
「お、知ってる奴が多いっぽいな! んじゃ、解説……っと、どうやら魔物が出たみたいだな」
説明をしようとしたところで、奥から三体の魔物が近づいてきたところを確認。
その姿は、まさに鬼とも言うべき容姿であった。
鋼のような硬い筋肉を持つ、三メートルはあろう巨躯をした人型の魔物だ。
装備品などはなく、腰に蓑のようなものを巻いただけで、手には棍棒を持っている。
額からは立派な角が伸びており、その先端はかなり尖っている。
「お、オーガじゃな。ふぅむ、そこまでの脅威ではないのう」
「まあな。ぶっちゃけ、このダンジョンじゃ最弱と言っていい。ってか結構雑魚」
【いやあの、オーガさんって結構な強い魔物じゃなかった……?】
【少なくとも、レベルⅢダンジョンではボスやってたりするし、普通ならかなり苦戦するタイプの一般通過魔物かな】
【本来なら、油断するなって言うところなんだけど……パーカーちゃん、《魔女の焔》のボスをワンパンKOしてる姿がバッチリ知られてるせいで、なんかこう、あんまり言う気がないよね】
【戦闘! 戦闘みたい戦闘!】
「魔女、どうする? たまには魔女がやるか? 俺、既に何回か戦闘してるしさー」
「ふむ。そうじゃな。儂も配信者になったことじゃし、ここは一つ、我が力を見せてやろうではないか」
パーカーちゃんが魔女に戦闘するかどうか尋ねると、魔女はやると返す。
配信者としてパーカーちゃんと共に活動する以上、自分だけ何もしないと言うのも問題だと思ったことと、折角だからパーカーちゃんに自分の力の一端を見せようという理由もある。
「では……そうさな。一つの魔法で終わらせよう」
「お前なら楽勝だろ、それ」
「そりゃもう」
【え、オーガ三体いない?】
【三体まとめて一つの魔法で終わらせるの? マジで?】
【いやいや、さすがに……】
【でも、パーカーちゃんが言ってるし】
【そういや、魔女さんだけ一度も戦ってる姿を見たことがないんだよね】
【気になる】
【弱いのか、強いのか……果たして】
と、一度も戦闘を見ることができない魔女に対して、視聴者たちはそれはもう興味津々だ。
パーカーちゃんの言動などから、少なくともパーカーちゃんよりも強いのではないか疑惑がある上に、そのパーカーちゃんが強さの面でかなり信頼している様が見て取れるからだ。
「では、そうさな……パーカーちゃんよ。たしかこのダンジョンは、火属性の相性が悪い、そうじゃな?」
「あぁ、そうだな。簡潔に言えば、このダンジョンに火属性系の魔法の効果を抑えるギミックが仕込まれてるんだよ」
「なるほどな」
「100の効果を持った火属性魔法があったとして、それが9割減。つまり、10の効果しか出せなくなる」
「ほほう、十分の一か。ならば、火で行こうか」
「普通なら、バカだろって笑うところだが……ま、魔女なら問題ないだろ」
「任せよ」
【あのー、話してるのはいいんだけど……ナチュラルに会話しながら、オーガの攻撃、避けないでくれません?】
【しかもよそ見しながらなんですが】
【この時点で強いってわかるのがなんかこう、ね】
【あれ? ここってレベルⅤのダンジョンなんだよね? なんかおかしくない?】
と、コメント欄で言われているように、現在進行形で二人はオーガから攻撃されていた。
その巨体に見合った筋力を持っており、金棒を一振りするだけで、そこらの木ならへし折れてしまいそうな攻撃が振るわれているにもかかわらず、二人はまったく意に介することなく、普通に会話をしながらそれらを回避。
パーカーちゃんの方は振り下ろされる金棒をひらりと紙一重で回避し、横薙ぎに振るわれればその金棒に手をついてそのまま跳躍。
男の時であれば、金棒の棘に当たっていたが、今は小さな少女の体となっているため、手が小さいので、棘に当たらずに触れられる。
が、普通に勢いよく振られているので、下手に触るとケガするが、パーカーちゃんの場合は手に魔力で強化を施しているので、ダメージはない。
魔女の方は、その場から一歩も動くことなく、攻撃を対処していた。
上段から振り下ろされた金棒が、魔女の頭上から十センチほどで横に逸れて地面に衝突し、横薙ぎの攻撃は斜め上に飛んで行く。
まるで、見えない何かに邪魔されているように。
【二人とも、回避方法、おかしくね……?】
【パーカーちゃんはめっちゃ軽やかな動きで回避してるのに、魔女さんだけなんかおかしいw】
【魔女さんが避けてると言うか、攻撃が勝手に避けてる感じか……?】
【何をどうしたらそうなるんだww】
【これ、マジで魔女さんヤバいんじゃね……?】
【魔法、か? それにしては、発動した素振りがない気がするな……】
【魔道具? いや、魔道具らしきものも見えない……となれば、やはり魔法だろうが……くっ、わからない】
【考察組も湧いて来てるやん】
「うむ。まあ、こんなものか。パーカーちゃんよ、少し下がれ」
「おっけー」
魔女に言われて、パーカーちゃんはオーガを軽く蹴りつけると、その勢いで数メートル後方に退避。
その際に、宙返りをしたものだから、パーカーちゃんの白い太腿が思いっきり映ることとなり、それはもう……湧いた。
【ふぉおおおお!】
【太腿! 太腿良き!】
【やっぱパーカーちゃんの太腿は最高だ……!】
【ってか、パーカーで気付かなかったけど、よく見たら下ホットパンツじゃね?】
【丈が短いホットパンツを穿くことで、だぼついたパーカーを着た際に、まるで下には何も穿いていないかのように見せる技法……なんて、男心をくすぐるんだッ……!】
【魔女さんは全体的にエッチだけど、パーカーちゃんはなんかこう、下品じゃないエッチさがある……!】
「魔女、お前エッチだって」
「おぬしも言われとるぞ」
「いや、俺に欲情するとか、ただのロリコンの変態じゃん」
「儂は好きじゃぞ? 性的に」
「何言ってくれてんの!?」
【草ァ!】
【うん? この二人、なんかおかしい?】
【エッチって言われて恥ずかしがるんじゃなくて、煽りあうような感じなんだけどww】
【草】
【ってか、魔女さんがとんでもねぇこと言ってる】
【ロリコンかな?】
【おねロリ……ありだな!】
【銀髪長身激エロボディのお姉さんと、銀髪ロングオッドアイの俺っ娘幼女のおねロリ……何その性癖の博覧会。すみません! 誰か、エロ同人書いてくれません!?】
【馬鹿野郎! 生物はダメだろ!】
【草】
【そこじゃねぇww】
「ま、おふざけはほどほどに……《獄炎》」
楽しそうに笑っていた魔女だったが、小さく魔法名を唱えた瞬間は、笑みが消え真剣な表情へと変化。
それと同時に、魔女の前方に、巨大な炎の渦のような物が発生する。
それは三体のオーガを包み込むと、一瞬で消し炭にしていた。
しかも、それだけでは終わらず、それはものすごい勢いで前方へ飛んで行った。
その際に、奥から魔物の物と思われる断末魔が聞こえたが。
【は!?】
【え、ちょっ!?】
【待って待って!? え、なにその魔法!?】
【火属性、だよな? なんか規模がおかしくね!?】
【ちょいちょいちょい!?】
【何その威力!?】
【ここ《鬼火の氷園》だよな? なんだあの魔法の威力!?】
「おー、お前すごいな」
「これくらい、朝飯前じゃ。しかし、あれじゃな。ここは火属性魔法の方が儂は良さそうじゃ」
「へぇ~、その理由は?」
「威力調整が楽」
「デメリットを調整に使うのなんて、お前くらいじゃね? 知らんけど」
「楽ができるのならば使う。ま、思った以上に対したことがない仕掛けじゃな」
通常の探索者たちからすれば、死活問題のようなギミックにもかかわらず、魔女は面白くなさそうな表情でそう零す。
【あれが大したことない……?】
【氷雪系ダンジョンで、火属性魔法が使えないって、かなりの死活問題なんですが……】
【ダンジョンとかあんまり詳しくないから、いまいちわからない……】
【できれば解説が欲しいです!】
「ん? あ、そういや解説がまだだったな。そうだなー……ダンジョンに詳しくない奴ら向けに簡単に説明するとだな。例えば普段は腕立て伏せが百回できるとするだろ? で、今回のようなギミックで筋力が低下した、ってなった際、その中で出来る腕立て伏せの回数が十回だけになるってことだ」
【あ、なるほど、そういう感じ】
【魔法の威力で言われてもよくわからなかったけど、それで説明されたらよくわかった】
【でも、なんで魔女さんの魔法はあんなアホ火力に……】
【パーカーちゃんもおかしいとは思ってたけど、それ以上に魔女さんもおかしかった】
「儂は魔女じゃからな。魔法など、呼吸をするのと同義じゃ。そもそも、威力が減退するのならば、それ以上に魔力を込めればよい」
「脳筋だな、お前。魔法職なのに」
「頭脳派と言ってくれ」
【デメリットをごり押しでどうにかするのは、脳筋だろww】
【やばい、この魔女さん面白いw】
【妙に世間知らずっぽいというか……】
【ダンジョンに住んでたって言ってるが、本当かどうか知らんし。ってか、ダンジョン内でずっと暮らすとかできるのか?】
「さて、あんまし長居してもつまんないだろうし、先進むか。どうせなら、ボス部屋まで行った方がいいだろうしなー」
「それもそうじゃな。もうちっと、歯ごたえのある魔物が良いのう」
「レベルⅤでお前が歯ごたえがあると思えるような奴はいねぇよ」
「面白くないのう……」
【あ、うん、まだ雑魚魔物(世間から見たら雑魚じゃない)しか倒してないのに、なんだろう、この安心感】
【バカ火力はパーカーちゃんだけじゃなかったよ……】
【あれぇ? オーガってかなり強い魔物だったんだけどなぁ(遠い目)】
【これ見た探索者たちが真似しなきゃいいけど……】
【大丈夫……だと思いたいなぁ……】
序盤から既にやばい奴らの雰囲気しかない二人に、視聴者たちは早くも遠い目をするのであった。




