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ダンジョンに住む(なんで?)魔女に加護を貰った俺、TSしてなぜか配信者になる。いや、パーカーちゃんって安直じゃない?  作者: 九十九一


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18/28

家の前に黒髪ハーフアップ美少女。かと思えば激ヤバな妹ちゃんの襲来だった模様。

「しかし、柚希少女よ」

「ん、なんだー?」


 ゆるだんでの契約などの話を終え、二人は柚希への帰路に就く途中、不意にイルが柚希に話しかける。


「本当に良かったのか? あのような安請け合いをしてしまって」

「あー、配信のこと? いいんだよ。正直、元の体には戻れないんだろうし、だったらこの体でしかできないことをした方がいいだろ? 楽しそうだし!」


 にこっ、ではなく、にかっ、とした勝気な笑みを浮かべながら、柚希はイルの質問にそう答える。


 無理矢理加護を与えたことに関しては全く、これっぽっちも、後悔などもしていないし、反省する気もないイルだが、さすがに女体化させてしまったことについては申し訳なく思っていた。ほんの少しだけ。


 イルから見ても、今の柚希はかなりの美少女であり、低身長ながらスタイルも良く、ロリコン趣味ではない者からもかなりのアプローチがありそうだとも思っている。


 であれば、配信などという、不特定多数の者たちの衆目を集めるようなことを、なぜ柚希が進んでやろうと思ったのか気になった。

 それに対するイルの問いに、柚希はあっけらかんと答えたので、イルは思わず目を丸くさせた。


 しかし、すぐにふっと笑みを浮かべる。


「そうか。ま、おぬしが良いなら良い! ますますおぬしのことが気に入ったぞ、儂は。どうじゃ? いっそのこと、儂と恋仲になるか?」

「はぁ? 寝言は寝て言え。誰のせいでこんな姿になったと思ってんだよ」


 などと、言葉は冷たいように見えるが、柚希自身の表情はとても楽しそうである。

 それがわかっていたので、イルは特にむっとした気持ちになることはなく、じゃれ合うくらいの気持ちで柚希の頭を軽く小突いた。


「ほほぅ? この儂の告白を断るとは、おぬしもなかなかガードが固いのう! 儂を知るものからすれば、儂からの告白など、感涙にむせび泣くと言うのに」

「ダンジョンに住んでた奴が何言ってんだ」

「別に、生まれた時からあそこに住んでおったわけではないんじゃがな」

「そうは言うが、俺はお前があそこに住んでた、くらいのパーソナルデータくらいしか知らんのだが?」

「パーソナルデータがなんなのかはわからぬが……ま、その内話す」

「ふーん? まいいや。話したくないことの一つや二つ、誰にだってあるしなー。それに、俺とお前はまだ会ったばかり。なら、気長に待つさ」


 ふっと可愛らしい見栄を浮かべながらそう答える柚希に、イルはなんだか胸が温かくなった気がした。


 イルからしてみれば、自分に対してこうも遠慮なく色々言って来る柚希がとても好ましいのだ。

 元々、イルは自分の力目当てに来る者たちばかりを見て来たし、仮に気まぐれに人助けをした時は、力を恐れられたりもした。


 強い者ほど、孤独になることは多い。


 イルには対等と言える友人などいたことはないし、ましてや半ば冗談とはいえ、告白しても速攻で断って来た者もいたことがなかった。

 イル的には、目の前の見た目幼女の皮を被った、ただのお人好しな元男性が、とても好ましく、そしてかなり気に入ってもいた。


 少なくとも、一緒にいて飽きることはないだろうな、と。


 出会ったばかりの相手とは言え、ここまで気に入るとは思わなかったイルからすれば、自分の現状はとても不思議な物に見えた。


「おぬしは、本当に人が好いのう。ま、そう言う事ならば、儂も気長におぬしと一緒にいさせてもらうとしよう」

「お前、俺の世話になる気満々だよな」

「そりゃそうじゃろ。こちらにおいて、おぬし以上に信用でき、そして気に入っている人の子はおらんからな」

「お、おう、そうか……真面目な顔で言われると照れるな……」


 真面目な顔で信頼されていると言われ、柚希は思わず頬を染めて照れる。

 その様は、ただただ可愛らしい幼女でしかないので、とても微笑ましい。


「お? なんじゃ? 儂の言葉にドキッとしのか? ん? ほれ、言うてみぃ?」

「うっせ。ほれ、さっさと帰って焼肉するぞ焼肉! 折角、《美食の迷宮》で大量の肉を手に入れたんだ、今日は食べて飲むぞ!」

「うむっ! ……と言うかおぬし、酒飲んでよいのか?」

「……あー、なんだかファッティレックスのクソ美味い肉、一人で食いたくなってきたなー」

「ふむ、ではこの儂秘蔵の酒でも出してやるとしよう」

「よーし、一人で食いたい気分じゃなくなった! さ、帰って肉だ肉ぅ!」

「うむ! 焼肉、楽しみじゃなぁ!」


 二人は《美食の迷宮》で取って来た肉のことで頭をいっぱいにしながら、足早に家へと帰って行った。



 それからほどなくして自宅に到着……したのだが。


「む? おぬしの部屋の前に誰かおらぬか?」


 柚希が住むマンションの部屋の前に、何者かが座っていた。

 その様はまるで、誰かを待っているようにも見え、それに気が付いたイルが隣にいる柚希に声をかける。


「マジ? あ、ほんとだ……って、えっ」


 イルの発言で、自分の部屋の前を見た柚希は、本当にいるなぁ、と思った直後にその表情が固まった。


「どうした? あの者と知り合いか?」

「まあ、知り合いって言うかなんと言うか…………まあ、うん、知り合い」

「なんじゃ、随分と玉虫色な返事じゃな?」

「……うわぁー、あれ絶対昨日の一件だろ……たしか、俺のスマホに通話が繋がらなかったから、実家に電話した、とか言ってたもんな……」

「ぶつぶつと独り言をして、本当にどうしたのじゃ? あの者、本当に知り合いなんじゃよな?」

「まあなぁ…………はぁ、でもまあ、逃げ出した俺も悪いし、仕方ないか……」


 どこか諦めた様子の柚希に、イルは首を傾げる。

 そんなことを気にも留めていない柚希は、重い足取りで自分の部屋の前へ。


「あー……えーっと……蜜柑、なんでここにいるんだ……?」


 自分の部屋の前に座る少女……というか、柚希の妹である蜜柑に、柚希は曖昧な表情を浮かべながら声をかけた。


「……? なぜ、私の名前を?」


 いきなり声をかけて来た上に、なぜか名前を知っている銀髪オッドアイの幼女にこてんと首を傾げながら名前を知っている理由を尋ねる蜜柑。


「いやなぜって……そりゃあ、兄ちゃんだし……」

「…………兄さん?」

「おう、兄さんだ」

「………………………………………………………………兄さん、タイに行ったの?」


 長い沈黙の末、蜜柑の口から出て来たのは、そんな言葉であった。


「行ってねぇよ!? いやたしかに、今の時代、魔法やらスキルやらで性別を変えるみたいな技術はなくはないが、ここまでのチェンジはないだろ!?」

「そのツッコミの仕方……間違いない、兄さんっ……!」

「おわっ!?」


 ツッコミの仕方で兄と判断するや否や、蜜柑は瞳を潤ませて柚希に抱き着いた。


 昨日まではこちらの方が背も高く、体格的にも良かったのだが、今現在は妹より背が低く、体格的にも劣っているということもあり、危うく後ろに倒れそうになったが、咄嗟に魔力を使って軽く身体能力を向上させることで倒れることを回避。


「私……兄さんが行方不明になったって聞いて……ずっと心配で……」

「悪かったな。ちょっと色々あって、逃げ出してなぁ……」

「ん……無事ならいい。いつもと変わらない兄さんでほっとした」

「いや変わってるよね!? どう見ても、昨日までのナイスガイな蜜柑の兄さんからは、百億光年くらいはかけ離れてるよね!? なんだったら、性別から声から何までが変わりまくってるよね!? 蜜柑、俺のことをどう判断してんの!?」


 いつもと変わらないと言われた柚希は、勢いでツッコミを入れまくる。

 何をどうしたらいつもと同じに見えるのか、柚希はそれがとても気になった。


「? 兄さんの魂的な?」

「え、なに、魂見えるのお前!?」

「兄さんの魂ならなんとなく」

「冗談なのか本気なのかわからねぇ……!」

「ん、気のせい。ところで…………そこの痴女は?」


 今まで気づいてはいたが、一切触れなかった蜜柑が柚希のすぐ近くにいるイルを痴女と言って誰なのか尋ねた。


「痴女言うな!? いやまあ、たしかにこいつの格好、ちょっとエロいけど!」

「ほほう、エロいとな? 他の者から言わても特に何も思わんが……うむ、柚希少女から言われるのはなかなかに気持ちが良いのう! どうじゃ? 一晩、越すか?」

「しねぇよ!?」

「……兄さんと、一晩……? 私でもしたことないのに……泥棒猫……この痴女は泥棒……私の、私だけの兄さんを奪う、最悪の人種……」

「蜜柑? 蜜柑さーん? あの、なんか怖いんですが? あのー、なーんでイルに対してハイライトの消えた目でじっと見つめてるんですかねぇ……?」

「……シッ――!」


 ギィィィンッッ!


 柚希を抱きしめていたはずの蜜柑の姿がぶれたかと思うと、次の瞬間には甲高い音がマンションの廊下に響き渡っていた。

 見れば、どこからともなく取り出した無骨なナイフが蜜柑の手に握られており、それがイルに向かって差し出されていた。

 しかし、そのナイフの刃がイルに届くことはなく、イルの手前数センチほどで止まっていた。


「うむ、なかなかに良い動きじゃな。職業的には……そうさな、暗殺者、と言ったところか?」

「……ん、ただの痴女じゃないみたい」


 阻まれたことについては特に何も思っていないらしい蜜柑は、ナイフを太腿にあるポーチに流れるような動作で仕舞う。


「ふふふ、遠慮なく首を狙いに来るとは、おぬし、なかなかに面白いのう! というか、柚希少女よ。おぬし、止めようと思えば止められたじゃろ」


 いきなり襲われたイルの方はと言えば、これっぽっちも怒る様子はなく、むしろ楽しそうに笑いながら何もしなかった柚希に笑みを浮かべながらそう投げかける。


「あー、まあなぁ。だが、どうせお前のことだ。体を動かすこともなく受け止めるか、回避するだろうなと思ったから何もしなかった。あと、蜜柑からは殺気は感じても、本当に殺す気はなかっただろうしな。多分、脅し程度だったんだろ」

「……さすが兄さん。私のことをよくわかってる。結婚しよ?」

「しないよ?」

「むぅ……残念」


 流れるような、それでいて当然だよね? と言わんばかりの様子でプロポーズを仕掛けて来る蜜柑に、柚希はしないと即答。

 蜜柑は残念そうだ。


「仲が良いのじゃな?」

「ま、色々あってな。……とにかく、今の音で誰か来るかもしれん。蜜柑、お前も飯食ってくか? 今日はイルと焼肉パーティーの予定でさ、大量に肉があるんだよ」

「もちろん、食べる。痴女と二人きりにはさせない」

「儂、嫌われとるの?」


 明らかに敵意むき出しな蜜柑の様子に、イルは疑問符を浮かべながら柚希に嫌われているのかどうかを尋ねる。


「いや、蜜柑はこれがデフォ。こいつ、俺に対しての愛が重いんだよなー」

「なるほどのう。まあ良い。儂は空腹じゃ。焼肉とやらが早く食べたい」

「お前って、結構な食いしん坊キャラだよな」

「長く生きとるとな、美味しいものが一番の娯楽になるんじゃよ」

「ふーん? そんなもんか」

「そんなもんじゃよ」


 話はそこそこにし、三人は柚希の家の中に入っていった。

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