ノリノリすぎるパーカーちゃんと魔女。色々と嬉しいゆるだんの社長。姫は……テンションが上がる。心の内で。
ダンジョン配信に興味ないか、と言われた柚希は、まあ興味はなくもないし、せっかくだから話だけでも聞こうかな、といったことにより、急遽姫が所属する事務所、『ゆるだん』へと訪れていた。
そのそばには当然というべきか、イルもいる。
イル曰く、
『そのような面白そうな話、儂が行かんわけがなかろう!』
だそう。
まあ、可能なら魔女の方も連れてきてほしいと言われていた姫にとっては、ちょっとありがたかった。
そんなことで、ゆるだんの事務所に到着。
姫はそこに所属している配信者であるため、普通に顔パスで入ることができた。
一緒にいた柚希とイルについても、姫と一緒だったので特に止められることはなく、姫が事情を話したら、すんなりと先へ進むことができた。
一行は、事務所内のエレベーターに乗り、3階へ。
ダンジョン配信者事務所である『ゆるだん』は、規模としては中規模な事務所だ。
配信者の数は、大体二十人弱。
基本的に撮れ高よりも、人命優先を基本としており、どんなに再生数が稼げそうな場面に出くわしたとしても、対処不能と判断したら速攻で逃げろ、というルールがある。
とはいえ、昨日の姫の様な一件もあるので、逃げられない場合もあるにはあるが、ダンジョン配信系の事務所としては、死傷率はトップクラスに少ない。この辺りは、日ごろから注意喚起を促しているのだ。
もっとも、初見殺しなトラップの回避など、しようがない場合もあるのだが……。
話はほどほどに、三階へ到着した一行は、そのまま社長室へ向かう。
「櫻野です」
社長室に到着したところで、姫がドアをノックし、名前を名乗ると、入れ、という声が中から響いてきた。
「失礼します」
「お邪魔します」
「ほほう、ここが事務所とやらのトップがいる場所か」
「おいイル……」
「仕方あるまい。気になるんじゃから」
入った瞬間から、興味深そうに中を見回すイルに、柚希は小言を一つ。
が、全然やめる気配がイルにはなかった。
「やぁ、君たちが、うちの櫻野を助け、そして迷惑をかけられた探索者君かな?」
「うぐっ……じ、事実なだけに、全く言い返せません……」
入って早々、事実と言う名の言葉の刃物が姫の胸を抉った。
「まったく、普段は優等生な君が、あんな事態を起こすとは思わなかったけどね、おかげで軽くボヤ状態だよ?」
「す、すみませぇん……」
「まあ、幸いなことに、二人が気にするどころか、ノリノリで配信に出てくれたから、大炎上にはならなかったけどね。それでも、ぎりっぎりの瀬戸際だったが」
「うぅ……」
「後日、ちゃんと謝罪動画は出すように。あと、改めてコンプライアンス研修をするから」
「わかりました……あの、二人とも、本当にすみませんでした……」
「何度も謝らなくていいんだぞ? むしろ、一緒に写真撮りたい! とか言ってる方が俺はいいなー。気が楽だし、あっちの方が面白いし」
「うむ。儂も特に気にせんよ。こうして面白いことに巡り合えたからのう!」
「ふむ、本当に寛容というか……いや、この場合は単純に楽しんでるだけか? まあいいか。さて、まずは自己紹介と行こうか。初めまして、私がダンジョン配信者事務所『ゆるだん』の社長、雲切霧火だ。気軽に、キリキリと読んでくれて構わない」
「いや、普通に雲切さんで」
「ふむ、では儂はキリキリと呼ばせてもらおうかのう」
「へぇ、魔女さんはノリがいいんだね? まあ、それはいい。先ほど名乗った通り、私はここの社長だ。というより、ウチの家系は代々配信者系の事務所をやってるみたいなんだがね」
『ゆるだん』の事務所の社長、先祖代々配信者系の事務所を運営しているようで、基本的に全員が違う事務所を運営している。
雲切家で一番若い社長である、雲切霧火は、ダンジョン配信というわけだ。
一番古い事務所は、百年以上前の事務所だが、そちらについては今でも存続している……というわけではなく、時代の変化に合わせて、事務所の方針を変化させてきたようだが。
「あ、立ったままもあれだし、そこのソファーに座るといいよ」
「じゃあ、遠慮なく」
「ほう、なかなかに座り心地の良い腰掛じゃな」
「社長ってどこでこういうの見つけて来るんだろ……」
霧火は三人にソファーに座るように促すと、三人はソファーに座る。
イルはふかふかな座り心地のソファーにやや驚いたような表情を見せ、姫はこれどこで見つけて来たんだろうと疑問を零す。
「それで? なんか、俺、そこの櫻野さんに配信者に興味ないかって言われて来たんですが」
ソファーに座ったところで、呼ばれた理由を霧火に尋ねる。
「あ、敬語はいらないよ。面倒だろう?」
「そりゃ助かる。んで、返答は?」
「そうだね……個人的な理由で言えば、単純に君たちが面白かったから、かな」
「そうか? 普通に戦ってただけだぞ?」
「あれを普通と言うか……君、ずれてるってよく言われない?」
「俺ほどの常識人はいないってよく言われるな」
「それ、絶対お世辞だよ」
「地味にひでぇ……」
バッサリ言うなぁ、この人……と柚希は苦笑い。
霧火は笑っていたが。
「さて、本題に入る前に、まずは改めて謝罪をさせてほしい。うちの櫻野がとんでもないことをしでしかしまい、すみませんでした。後日、あの昨日今日で得た収入から、お二人へ迷惑料と出演料をお支払いいたします」
敬語じゃなくていいと言った傍から、霧火が頭を深々と下げながら謝罪。
「え、いや、別にそこまでしなくてもいいんだが……」
「そういうわけにはいかない。これは、こちらとしてのけじめでもあるからね。なので、受け取ってほしい」
「これ、断っても押し付けられる奴だよな?」
「そうだね。全力で押し付けるよ」
「じゃあ、まあ……受け取るか」
柚希的には、面白い経験ができたしいいやと思っているのだが、それ以上に受け取らないとめんどくさそうだとも思ったので、仕方なく受け取ることにした。
「ありがとう。振込先は後で教えてくれると助かる」
「了解だ。……んで、本題ってのは、さっきも言った、配信者に興味ないか、という話だよな?」
「あぁ。最初に確認したいんだが、二人はレベルⅦのダンジョンに潜れるのかい?」
「以前はかなり準備してーって感じだったが、今はその時よりは楽かなー」
「儂はそもそもレベルⅦなど知らん。じゃが、《魔女の焔》程度であれば片手間で制覇できるのう」
「ふぅん? 特に嘘を吐いてるわけでもない、ね」
レベルⅦに潜れるかどうか尋ねられ、二人はそれぞれの回答をする。
イルの方は、そもそも《魔女の焔》以外のダンジョンに行ったことはないため、よくわかってはいないが、《魔女の焔》を片手間で攻略できると豪語している時点で、まず間違いなくⅦに潜れるだろうと霧火は当たりをつける。
「それで? さっきは、面白そうだったから、ってのが個人的理由って言ってたが、なら、個人的じゃない方の理由はなんだ?」
「おっと、そうだね。ん~、とりあえず、理由は二つ。これは社長としての私と、ライバーたちの親のようなものとしての私それぞれだ。まず後者から行こうか」
「おう」
「ウチの事務所に所属してる配信者たちって、初心者~中級者に入りたての子が多いんだよ」
「なるほど?」
「そこにいる姫は、ゆるだんの中でもトップクラスだね。まあ、学生間でもかなり強い方だが」
「たしかに、《魔女の焔》で見かけた時とか、ある程度対処してたな。個人的な見立てだが、そう遠くない内にレベルⅤのダンジョンを攻略できるんじゃないか? まあ、比較的簡単な所だが」
救援要請でボス部屋に行った時に見た姫の戦闘風景を思い出し、柚希はそう判断すると、霧火は少し驚いたような表情を浮かべる。
「へぇ、よく気が付いたね? 実はそうなんだよ」
「パーカーちゃん、すぐにわかるんだ……」
「俺はソロだからなー。たまに、ソロ狩り仕掛けて来る阿呆がいて、そういう奴らの対処でなんとなくわかるんだよ。そいつの力量とか」
「うむ、戦士としての基本じゃな。あ、いや、今のおぬしは魔法少女として、か?」
「魔法少女言うなっ! あれ、気にしてんだからな……?」
「何やら気になる単語だが……今は話を続けても?」
魔法少女と言う、配信者事務所の社長として、とても気になる単語が聞こえて来たが、それよりも今は話を優先させないといけないと、と話が脱線しないように努める。
「あ、おう。いいぞ」
「先ほど言ったように、初心者~中級者入りたての子が多いわけだが、それ以上の子がうちにはいないんだ」
「ん? それって、普通のことじゃないのか? ここに来るまでの間に、配信者のあれこれを櫻野さんから聞いたが、上級者たちは滅多にいないんだろ?」
「まあ、そうだね。でも、滅多にいないだけで、いないってわけじゃない。とはいえ、そう言う人たちと言うのは、大抵が規模の大きい、所謂大手と呼ばれる事務所にいる。そして、そういう人たちの指導を受けられるから、結果的に探索者としての質も良くなるわけだ」
「なるほどな。つまり、親としてってのは、俺とイルに戦闘についての指導をしてもらいたいってことか?」
霧火の説明からおおよその考えを見抜いた柚希は、それを指摘。
霧火はふっと笑み浮かべて軽く首肯する。
「そうだ。先ほどの大事故からの特別ゲストとして参加した君のファッティレックスの対処法については、わかりやすくもあった。まあ、とてもじゃないが真似するのは難しいだろうけどね」
「レベルⅥにソロで潜れる奴はあれくらい誰でもできるんだがなぁ……」
「それは常識じゃないからね? そもそも、レベルⅥにソロで潜れる人は日本じゃ少ない方だし」
「そうなんかー」
「君ってやっぱ世間知らず……?」
「俺は俺のやりたいようにやってただけだ」
「パーカーちゃん、カッコいい……!」
「いや柚希の場合、合わせられる者がいなかったことと、単純に一緒に行くような相手がいなかっただけじゃろ」
「ねぇ、俺今普通にいいこと言ってたよね? なんでそこで水差すの??? 櫻野さんが尊敬の眼差しで見て来てたよね? なんで?」
「儂じゃからな」
「うわぁ、納得できるはずないのに、めっちゃ納得できるぅ……」
柚希のプライバシーガン無視で色々と知っているので、こういう時普通にうざい、柚希はそう思った。
「まあいい。そんなわけで、親としての理由はそう言うのを見てほしいってこと」
「理解した。で、社長としては?」
「正直、そこの優等生(笑)のやらかしでウチが炎上しそう。っていうか、ちょっと炎上中」
「マジかよ。え、なんで?」
「ほら、昨日と今日で無断で配信しちゃったからね」
「あー、そういうこと。たしかに、配信者でもない人を勝手に映したとなったら、そりゃ燃えるか」
「ん? なんじゃ、燃やされたのか? 儂が消火してやろうか?」
「イル、多分お前の言ってる炎上は、物理的な炎上だろ」
「それ以外に何がある」
「こっちで言う炎上ってのは、大体がインターネットで大多数の人間から叩かれることを言う。まあ、色々違うとは思うが」
「ふぅむ? よくわからんが、そういうこともあるんじゃなぁ……」
こちらの世界はよくわからん、とイルはからからと笑う。
ダンジョンに住んでいたせいで、その辺がよくわかっていないのだ。
「で、炎上してるってのが俺たちに入ってほしいってのと関係してると?」
「そうだね。正直、汚い大人の話しにはなるが……炎上を鎮火させるには、君たちが入ってくれた方が都合がいいんだよ。強引にはなると思うけど、誤魔化しようがあるからね」
「ふむ?」
「ぶっちゃけ、打算だし、下心だよね」
「本当にぶっちゃけたな……」
「そりゃあ、ただでさえ迷惑をかけてるのに、そこからさらに厚顔無恥にも、打算と下心で入ってほしいと頼んでるんだよ? それに、これはこちらの都合。無理強いする気はないし、断るなら断ってくれて構わない。むしろ、君たちには何のメリットもない提案だ。っていうか、仮に君たちが入っても、それはそれで炎上しそうだしね! はっはっは!」
炎上すると自分で言いながら、それはもう快活に笑う霧火。
「笑い事じゃなくない?」
「本当にすみません……」
「なんじゃ、愉快じゃな、キリキリは」
そんな霧火に対して、三者三様の反応を見せる。
柚希は呆れ混じりに。
姫は謝罪し。
イルは面白いなと笑う。
「いやだって、色々と迷惑をかけた相手がウチに入って来ようものなら、普通に炎上物じゃない? 絶対燃えるって。こいつら、金で解決したんだ! とか、汚い手を使って二人を入れたんだ! とか、そんな風に言う人とか絶対出るよ? 一定数以上」
「俺、ネットはそこまで詳しくないが、そんなになのか……」
「そんなに、さ。過去には、どんだけやらかしても、まあ、あの事務所だから、なんて理由で許された事務所があったらしいけどね。うちの先祖の建てた事務所に」
「へぇ~。すごい事務所があったんだなー」
「といっても、百年以上前だよ」
「メッチャ前じゃん」
「ウチの家系、代々そう言う家系だから」
「ふーん? まあ、それはどうでもいいや」
「君、結構バッサリ言うねぇ」
割とすごいことを言ってはいたのだが、柚希的にはどうでもいいことだったので、バッサリである。
「まあいい。それで、どうだろうか? あぁ、仮に所属するってなると、ノルマみたいなのはあるが……」
「ノルマってのは?」
「そうだね……まあ、君たちなら月に一回は配信してほしい」
「そんなんでいいのか?」
「まあね。そもそも、オーディションで入れるわけではなく、こちらからお願いしているわけだからね。君たちに有利なようにするさ」
「なるほどなー」
「それで、どうだろうか? まあ、個人的にはとても面白い光景が見られそうだから、是非とも入ってほしいと言うのが本音だが、同時に迷惑もかけたので断ってくれた方がある意味安心できるんだがね」
「いいぞー。面白そうだし」
「あぁ、うん。そうだよね、いいよね……って、え、いいのかい!?」
断られるだろうと思っていた霧火だったが、まさかのOKの返事に驚いて素っ頓狂な声を上げ、ぎょっとした顔で思わず聞き返していた。
「なんで驚くんだよ?」
「いやだって、君、話聞いてた? 明らかにそちらにメリットはないよね?」
「そうか? 面白そうなことができる! ってだけでメリットだろー。なあ、イル」
「うむ。詳しくはわからぬが、あれじゃろ? 自分たちをだしにして、数多の人の子らに戦闘を見せびらかすんじゃろ?」
「身も蓋もない言い方だね……」
間違ってはいないけど、歯に衣着せぬイルの物言いに、霧火は苦笑いを浮かべる。
「あ、あの、パーカーちゃん、本当にいいの?」
姫自身もまさか柚希がやると言うとは思わず、驚きながらも聞き返していた。
「おう! ってか、個人的に普通にダンジョンに入るのもちょっと飽きててさー。それにほら、今の俺、こんななりじゃん? 櫻野さんの話しでは、可愛いってのも大きなステータスになるんだろ? 自分で言うのもなんだけど、可愛いと思ってるしな! あとはほら、俺、なんかよくわからんけど、パーカーちゃんって名前で人気? になってるんだろ? それなら、期待に応えたくなるじゃん?」
「へぇ、君、面白い考え方だね?」
「最後に素顔がバレたとはいえ、やること自体は楽しかったしな! なんで、そっちが良ければ、喜んで所属するぞ!」
「すごく嬉しいよ。それで、そちらの魔女さんは?」
「儂も同じじゃ。とはいえ、儂はあまり詳しくないので……そうじゃな、柚希と一緒であれば構わぬ」
「了解だ。となると、二人一組というスタンスになるね。うちにはそういう配信者はいなかったし、とても面白そうだ」
イルの発言に対して、特に何か思うことはなく快く承諾。
「よし、じゃあ早速契約の話をしようか」
そんなわけで、二人はとんとん拍子に『ゆるだん』への所属が決まり、契約やら注意事項の話を受けて、この日は解散となった。
◇
二人が去った後の事務所にて。
「ふぅむ……いやまさか、話題になったばかりのパーカーちゃんと、あの謎の魔女さんが我が事務所に入ってくれるとはね」
事務所の窓から帰っていく二人を見つめながら、霧火はそう言葉を零す。
その表情はとても楽しそうだ。
霧火としては、現在の『ゆるだん』の状況でもそれなりに満足していた。
少なくとも、登録者数が十万人を超えている配信者がそれなりにいるからだ。
現代において、ダンジョン配信とはかなり身近な物だ。
ダンジョンに詳しくない者やそもそもダンジョンに入らない、入れない者たちや、駆け出し探索者たちにとって、直接赴かずともダンジョンを見ることができると言うダンジョン配信は、根強い人気を誇っている。
当然需要が高いので、ダンジョン配信者というのは、かなりの数が存在。
個人から企業、果ては探索者協会公認のダンジョン配信者、なんてのもいる。
故に、この業界は常にレッドオーシャンであり、新規参入する者がいても、大抵は埋もれたまま引退して行くなどざらだ。
それに、配信者をする者たちのほとんどはものすごく強い、などというわけではなく、よくて上の下、もしくは中の上程度で、大体は初心者だったり、Ⅲ卒業間近の者だったりする。
中には、トップ層クラスのバケモンたちもいたりするが、そういう人たちは大抵頭がおかしいので基本的に例外中の例外だ。
それ以外は、配信者としてお金を稼ぐのが目的であることがほとんど。
ダンジョン探索で稼げずとも、配信者として当たれば、生活が楽になるからだ。
それはゆるだんも同様。
ただ、ゆるだんは他の事務所とは違い、基本的に配信者たちの人命を優先しているので、そういう意味では収益や人気などが他事務所よりも劣っている部分があるのも否めない。
そんな状況で、昨日今日の姫のやらかしが起こり、霧火的にはそれはもう頭を抱えた。
が、結果を見てみれば、まさかの迷惑をかけた相手が楽しそうだから、なんて理由でこちらの事務所に入ると言うではないか。
さらに言えば、魔女であるイルの方の具体的な強さはよくわからないが、相方であるパーカーちゃんこと柚希がかなりの強者であることはわかっている。
この世界にはスキル、と言う物が魔法とは別に存在しており、社長である霧火もそれを保有している。
とはいえ、戦闘面で役に立つようなものではない。
「魔女さんはともかく、パーカーちゃんは間違いなく善性。それも、かなりのお人好し。そこにつけこむ気はさらさらないが……なんだか、面白くなりそうだ。利益などは二の次。配信者がいかに、自由にのびのびと、個性を発揮できる事務所にするか。それが、我が家の方針だからね」
それを言い出したのは、雲切家で初めて配信者事務所を作った者だ。
かなり破天荒な人物だったと言われているが、実際のところは定かではない。
当時は今のようなファンタジーがありふれた物ではなかったようだが、それでも何らかのファンタジーはあったらしい、とだけはその者が残したノートなどから理解している。
「いやぁ、そこはご先祖様に感謝かな。おかげで、こんなに面白いことができるわけだし。ノウハウ残してくれたからこそ、今もこうして事務所が出来ている。それに、新しい人材、それも他の事務所やギルドでさえも喉から手が出る程欲しいであろう人材が入って来てくれた。業界のトップ、などというものに興味はないが……ふふ、彼女たちはどんな影響を与えていくのかな? 今から、色々楽しみだ」
ふっと未来に思いを馳せ、霧火はそう呟くのであった。




