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ダンジョンに住む(なんで?)魔女に加護を貰った俺、TSしてなぜか配信者になる。いや、パーカーちゃんって安直じゃない?  作者: 九十九一


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16/25

上手く撒いた後に降ってわいて来た、まーた生活が変わりそうな予感。

「ふぅ……ここまで来れば大丈夫だな」


 あれから逃げること十分ほど走ったところで柚希は一息。


「いや、悪かったな、櫻野さん。あの場で問題なく逃げるには、あれしかなくてなー」

「そ、そそそ、そうでしゅか!?」

「ど、どうした? 噛んでるぞ?」

「はひっ!? あ、い、いえっ! ぱ、パーカーちゃんとて、ててて、手をぉ……!」

「ん? あ、悪い、咄嗟に手を掴んじまった。嫌だったか?」

「い、いいいえっ! そ、そんなことっ、死んでもありませんっ! むしろ、ありがとうございます! ご褒美です!」

「お、おう、それならいいが……」


 あまりにも食い気味な姫に、柚希はちょっとのけぞった。

 三人がいるのは、《美食の迷宮》から少し離れた場所にある公園だ。

 そこでは、子供たちが元気よく駆けまわっており、とても平和的な光景が広がっていた。


「うむ、追ってはないな。柚希よ、大丈夫じゃぞ」

「おう、ありがとな。イル。ってか、よく俺の意図に気付いたなー、お前」

「いやなに、おぬしがむやみやたらに暴力に訴える人間ではないことは理解しておるからのう」

「お前、俺に対する理解度、地味に高くない?」

「ん~、ほれ、おぬしが寝ている間に記憶を覗いたからのう。そこでおぬしの行動原理はわかっとるぞ」

「プライバシィィィ!」

「え、なんですかそれ!? 魔女さん! わたしにも教えてください!」

「何言ってんの!? ねえ、本当に何言ってんの!?」


 てっきり注意をするのかと思ったら、むしろプライバシー侵害を全力でやろうとして来た姫に、柚希がツッコミを入れる。


「ほほぅ、おぬし、儂の魔法を教わりたいとな?」

「はい! それがあれば、パーカーちゃんと……ふふ、ふふふふ……!」


 明らかにヤバい笑いを零す姫。


(なんだろう、この感じ……どことなく、蜜柑味を感じると言うか……いや、気のせいか)


 そんな姫の様子を見た柚希は、どこか自分の妹である蜜柑に似ていると思ったのだが……気のせいだと切り捨てた。


「ふぅむ…………いや、これはやめておいた方が良い」

「な、なぜですか……!?」

「単純に難易度が高い」

「全力で頑張ります!」

「おおぅ、熱意がすごい……じゃが、難易度が高い以上に、人間関係が修羅場になる故、本当にやめた方が良い」

「はっ、た、たしかに……人間関係のこじれは大変ですよね……修羅場もちょっと嫌かもですし……」

「なぁ、それ普通に俺に使ってない?」

「おぬしは儂の生徒。そして加護を与えた者。であれば、生徒の私生活など、丸裸にしておかねばならんじゃろ、先生として」

「どういう理屈!? お前それ、学校の先生が生徒に向かって『俺、お前たちのプライベートを把握してるけど、先生だからいいよな!』って言ってるようなもんだぞ!? どう考えてもまともじゃないわ!」

「何を言うか。おぬしの人生は既に儂の物!」

「ジャ○アンよりも暴君してやがる……!」


 この時代でも、ジャ○アンと言う存在は、理不尽な暴君として語り継がれていたりする。

 柚希から見たらイルは、まあどう見ても暴君だろう。


「仲が良さそう……羨ましい……羨ましいなぁ……」

「これのどこに羨ましさを!?」

「だって、パーカーちゃんと一緒に言い合いできるんですよ? 羨まし過ぎます。羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい……!」

「こっわ!? 櫻野さんこっわ!? なんか色々怖いよ!?」

「ハッ!? す、すみません!? わ、わたし、なぜかその……パーカーちゃんのことを思うと、視野狭窄になっちゃって……」

「そ、そうなのか……(今のはそのレベルじゃなくない……?)」


 やっぱり蜜柑に似てる……と、柚希の頭には切り捨てた先ほどの考えが再浮上していた。


「と、とにかくっ! えと、パーカーちゃん!」

「お、おう。どうした? そんなに気合入れて……」


 妙に気合を入れながら声をかけられ、柚希はちょっとたじろぐ。

 なんでこんなに気合が入っているのかがわからないので。

 反対に、姫の方はそれはもう一世一代の告白でもするかのように、とても気合が入りまくりの様子。

 そんな光景を、イルはニマニマと楽しそうに成り行きを見守っていた。


「わ、わわ、わたしと……お、お友達になってくれませんか!?」


 多少噛んだものの、姫は柚希に友達になってほしいとお願いした。

 何を言われるのかと思っていたら、単純に友達になりたいと言う願いだったため、柚希は思わず面食らったものの、ふっと小さく笑みを浮かべて、


「おう、いいぞ!」


 と、二つ返事で承諾した。

 承諾された瞬間、姫の表情は、ぱぁっ! と花開いたようなとても眩しい笑顔を浮かべた。

 その表情は年相応でとても可愛らしく、柚希自身も同い年だったら危なかったなー、と呑気に思った。


「じゃ、じゃあ、えと、れ、連絡先の交換を……!」

「おっけー。ほい、QRコード」

「ありがとうございますっ! わーい! パーカーちゃんの連絡先ゲットー!」

「おいおい、俺なんかの連絡先くらいで随分大袈裟だなぁ」

「――大袈裟じゃないですよ!」

「うおっ!?」

「パーカーちゃんは、わたしの命の恩人なんです! それはもう、あと少しでダンジョンの数ある染みの一つにされていたかもしれないわたしを! 危険を顧みずに助けてくれた、わたしの王子様なんです! カッコいいんです! 可愛いです! パーカーちゃんくらい可愛くてカッコよくて強いと、いろんな人が好きになっちゃうと思うんです! わたし、負けられません! まだ見ぬパーカーちゃんを愛する人たちに負けられません! パーカーちゃんはわたしのものです!」

「俺は俺のものだよ!?」

「あっ、ご、ごめんなさいっ。つい、本音が……」

「本音なの……?」


 どうしよう、早まったかな……柚希は目の前の少女と友達になったのをちょっと後悔した。


 とはいえ、別に悪い人じゃないというのはなんとなく理解しているし、ただちょっと人より個性的なだけだし、なんだったら妹もこんな感じだから、もしかすると、これくらいの年頃の女の子はこうなのかもしれない、と柚希は的外れなことを思った。

 元々、アオハルな学生生活ではなかったし、比較対象が妹なので……。


「と、ともあれ、その、お友達として、よろしくお願いしますっ!」

「おう! あ、どうせ友達になったのなら、敬語はいらんぞー」

「え、いいんですか?」

「おう」

「じゃ、じゃあ、敬語抜きで……普通にしゃべらせてもらうね!」

「おうよー。まあ、年齢的には俺の方が普通に上だろうけどなー」

「え!?」


 まさかの年上発言に、姫がそれはもう驚愕の表情を浮かべる。

 びっくりしすぎて、ちょっと口が開いているが。


「こんななりだが、俺、二十三歳だぞ?」

「……マジです?」

「マジですねー。ってか、櫻野さんはいくつ? 高校生くらいに見えるけど」

「十七だよっ! ついでに、高校二年生!」

「なら、六歳差かー」

「……って! え、本当に二十三歳なの!? その、十歳とかじゃなくて!?」

「おう。ほら、さっき言ったろ? 俺、こいつの加護が原因で女体化したって。本当は俺、男なんだよ」

「……そ、そう言えばそんなことを……あれって本当、なんです……?」

「本当だぞー。あ、男の時の俺、見る?」

「見るっ!」


 冗談めかして言ったつもりだったが、想定以上に食い気味に来たので、柚希は苦笑いを浮かべつつ、姫に男だった時の写真を見せる。


「わ、カッコいい……!」

「そ、そうか? そう言われると照れるな……」

「うぅむ、たしかにおぬし、そこはかとなく顔立ちは良い方じゃったな」

「そこはかとなくは余計だよ」


 こいつ一言多いな……と柚希は心の中でちょっと文句を呟いた。

 それはそれとして、現役女子高生にカッコいいと言われたのは普通に嬉しかった。


「こんなにカッコいい人が、こんなに可愛い女の子に…………あり、だね」

「ん? どうした?」

「あ、いえ! そ、それはそうと、お二人はこれから――」


 どうするのか、と訊こうとしたタイミングで、不意に姫のスマホが鳴る。

 こんな時に、と文句を言いそうになったが、そのディスプレイに映る文字を見て、文句が引っ込んだ。

 そこには、マネージャーと表示されていた。


「ご、ごめんなさい、ちょっと電話に出るねっ」


 そう言って、姫が二人か少し離れ、通話を始めた。


「おー、ゆっくりでいいぞー」

「ふむ、やはり電話とは不思議じゃな……あのような小さき物で離れた者と会話ができるわけじゃからな」

「お前なら魔法で色々できそうだけどな」

「まあ、できるぞ。念話魔法と言う魔法がある」

「マジかよ」

「ちなみに、今のおぬしであればそう難しくはない。覚えるか?」「ちなみに、片方だけしか習得してなかった場合、一方的な念話になる」

「それはぜひ! まあ、さすがにちょっと疲れたし、それは家に帰ってからで頼むわ。飯食いながらにでも聞くよ」

「了解じゃ」


 姫が通話している光景を尻目に、二人はそんな話をする。


 念話魔法とか、もうなんでもありじゃん、と柚希は思ったが、それ以上に様々な魔法を覚えられるのはでかいなぁ、とも思っているので、むしろこれくらいないと困ると思っている。


 どのみち、こんな姿にされた責任は取ってもらうつもりなので、そう思うのも当然といえるが。


「……はい、はい……いやあの、本当にそこは申し訳なく……後日謝罪動画を上げます……はい、はい……え? 本気、ですか……? はぁ……わたしとしてはすごく嬉しいですけど……さ、さすがに無理強いはできないですよ……? はぁ……わ、わかりました。ちょっと訊いてみます」


 と、マネージャーと話していた姫だったが、何かあった様子。


 一度通話を中断したかと思えば、二人のところに戻ってきて、恐る恐るといった様子で柚希に話しかけ、


「あ、あの、パーカーちゃん?」

「ん、なんだ?」

「その、えと……ダンジョン配信って、興味あるかな……?」


 そう、柚希に尋ねるのであった。


「……おう?」

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