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ダンジョンに住む(なんで?)魔女に加護を貰った俺、TSしてなぜか配信者になる。いや、パーカーちゃんって安直じゃない?  作者: 九十九一


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12/15

Q.大事故で配信に出してしまいました……死んだ方がいいですか? A.え、なにそれ面白そうじゃん! 配信に出たろ!

「はぁ~、登録者20万人越えの配信者ねぇ……」

「は、はぃぃ……あの、今は配信の音声と映像を切ってますので……本当にごめんなさい……しかも、昨日だって、助けてもらったのに、撮影しっぱなしだったせいで、その、パーカーちゃんの存在が広まっちゃって……本当に、ごめんなさい……」


 パーカーちゃんこと、柚希にそれはもう一目惚れしてしまった姫は、その興奮で昨日のやらかしがすっぽ抜けていたが、先ほどの第二のやらかし発覚で、それはもう全力で謝罪をしていた。

 今なんて、地面に頭をこすりつけすぎて小さな窪みが出来てるほどだ。


「あー、いや、気にしなくていいよ。探索者として登録する際に、その辺の項目もあったしなー。俺はOKの方に入れちまってたし、仕方ないって。別に大きな実害は出てないし、大したことないだろうしなー。それに、俺がちょっと有名になるだけで君の命を守れたんなら、安いもんだよ」


 パーカーのフードで隠れて見えないが、フードの奥から覗く紅と蒼の瞳が優し気な形に曲がり、その声音もこちらを気遣う気持ちにあふれていた。


 ちなみに、柚希が言ったその辺の項目、というのは、ダンジョン探索者が登録手続きをする際に書く書類にある項目の一つに、


『ダンジョン配信承諾可否項目』


 というものがある。


 この項目で否を付けると、自動的に配信時に画面全体に規制がかかり、声についてもぼかされるようになっている。

 逆に可に付けると、先ほどまでのように、二人の姿がバッチリ映るのだ。


 大体の者は否を付けるのだが、柚希は基本的にどうでもいいかなー、と言う理由で普通に可の方に付けていたために、こうなったのである。


 ちなみにだが、これは探索者カードを所持している状況でなければ発揮されないものとなっているので、基本的には肌身離さず持つのが常識である。


 一応、これにOKをしているものは、仮に何らかの配信に巻き込まれても文句は言えないぜ、というような言われ方をされるが、それはそれとしてなるべく許可は取ろうね、というのは暗黙の了解となっている。


 この項目ができた理由は、簡単に言えばダンジョン黎明期から少し経った頃に、配信関係でちょっとしたトラブルがあったためだ。

 簡単に言えば、かなり強い探索者が偶然配信に出てしまった際に、その人物が秘密にしていた能力のあれこれが動画に映ってしまったからだ。

 この一件はかなり問題視され、最終的にできたのが先ほどの項目。

 まあ、いくら見られても構わないぜ! という人は、基本的に可の方に丸を付けるのだ。


 今回の一件は、ルール的に見れば問題ないとは言えるが、倫理的な方面で言えばヤバいよね、ということにもなる。

 故に、ブラック寄りのグレーゾーンなのだ。


「っていうか、別に配信は切らなくてもいいぞ?」

「……えっ? い、いいんですか? だって、その、パーカーちゃんって今すごくホットな人ですよ……?」

「って言われてもなぁ……多少戦い方を見られた程度で後れを取るほどやわじゃないしな。っていうか、最悪イルもいるし」

「ふふふ、我が生徒が危険な目に遭うのは看過できんからのう! それに、儂は柚希が死ねば地上の住処が無くなってしまう。それは面倒じゃし、絶対に死なさんようにはするぞ」

「とまあ、この通りだ」

「あ、いや、そうじゃなくて……えと、たくさん迷惑をかけちゃいましたし……わたしが原因で、パーカーちゃん、すっごく有名になっちゃったし……」

「いいよ、別に。というか、その方が面白いしな。あ、でも、俺は全然乗り気だからいいけど、俺以外には絶対にしないように気を付けるんだぞ」

「そ、それはもちろんですっ……そもそも、こんな大規模なやらかしは、昨日と今回の二回だけで……いつもなら、すぐに切ってたんですけど……あ、いえ、そもそも、『だけ』なんて言っちゃだめですよね……取り返しのつかないことでもありますし……」

「あ、なんだ、俺相手だけなのか? まあ、俺以外に被害者がいないならいいや! それで、続きはやるのか?」

「えっ……ほ、本当に、配信の続き、していいんですか……?」

「おう。まあ、あれだ。特別ゲスト! って感じでいいぞ~、面白そうだしな!」

「か、軽いですね……」


 まさかの軽い言い方に、姫は苦笑した。

 普通、いきなり配信に映されたら嫌がったり、キレたりするだが、柚希はそんなことはなかった。

 むしろ、笑いながらやろうぜ! とか言って来るほどだ。


「ん~、別に物語の主人公みたいに、目立ちたくねぇ! とかってあんまし思わないんだよなー。いやまあ、注目されまくるのは嫌だが、迷惑がなきゃ別にどうでもいいし」

「とかなんとか言ってるが、面倒で検査行きたくないとか言ってなかったかの?」

「それはそれ。ってか、検査って実際めんどくさかったろ」

「まあ、それはそうじゃな」

「というわけだ。どうせなら、一緒に配信に出ようか?」

「ほ、本当にいいんですか……?」

「おうよ。というか、登録者20万人越えの配信者の配信に出るとか、滅多にできる経験じゃないだろうしな! 人生、面白い方がいいってことだよ、若人」

「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて……配信、再開しますね……?」


 色々と心配もあったのだが、本人がいいって言っているし、曲がりなりにも姫は人気配信者と言ってもいい地位にいる。

 配信者としての本能と言うべきか、ものすごく配信したいと思っていたのである。


 それ以上に、あのパーカーちゃんと一緒に配信できる! というのも、理由ではあるのだが……いやむしろ、そっちの方が強い。もちろん、やらかしのこともあり、かなり申し訳なくも当然思っているが。


 ちなみに、柚希の方はと言えば、単純にダンジョン配信と言うものに興味があった……などということはなく、本当に面白そうだから、というもの。

 あとは、名前だけしか知らなかったダンジョン配信に今この瞬間に興味が出た、というのもある。


「おう! バッチコイ! あ、その前に名前とかって実名じゃない方がいいよな? 常識的に考えて」

「そ、そうですね。えっとじゃあ、パーカーちゃんでどうですか?」

「なんという安直な……あー、いやでも、ネットで出るならそれくらいドストレートで安直な方がいいのか……?」

「は、はい! それにその、パーカーちゃんで広まっちゃってますし……」

「そうなのか。まあ、そういうことならパーカーちゃんでいいや。……ちゃん付けなのは、個人的に複雑だが……」


 中身としてはバリバリの男なので、ちゃん付けは柚希にとってかなり複雑である。

 というか、好き好んで名乗りたくはないかなぁ、と苦笑い。


「ってか、イルはどうする? 出るの、やめとくか?」

「何を言うか! おぬし一人を危険にさらすわけにはいかんじゃろ! 先生として!」

「ほほう、かっこいいことを言ってくれるねぇ。……それで? 本音は?」

「このような面白いことを逃すとか、ただの阿呆じゃろ」

「デスヨネー」


 心配、0!


「まあいいや。それじゃあ、イルは魔女な。じゃ、早速やろうぜ!」

「わ、わかりましたっ! じゃあえと、再開しますね?」

「バッチコイ!」


 妙に気合が入り、楽しそうにしている柚希に、姫はなんだか微笑ましくて小さく笑みを浮かべると、ドローンの設定を操作して、音声と映像を映し始めていた。

 配信自体は、無音無映像で続けていたためか、その間に配信から離れた者たちもいたようである。

 それはそれとして、それなりの人数は残っていたようだ。


「え、えーっと、みんな見えるかな? 大丈夫?」


【あれ? なんか復帰した!】

【戻って来た!】

【てっきり、あのまま配信を切るかと思ったけど、残っててよかったぁ!】

【それで、どうなったの? 謝罪コース? 怒られちゃった?】

【まあ、あれだけのことをしたらなぁ……普通はブチギレられてもおかしくないよね……】


「あ、う、ううん! そこは大丈夫! 全然怒られなかったと言いますか……むしろ、その……いえ、見てくれた方が早い、かな! えっと、じゃあ、お願いします!」


【???】

【なんだろ?】

【まさか、パーカーちゃんが出てくれるとか?】

【そんなまさか!】


「櫻野姫のチャンネルを見ている人たち、どうも初めまして! パーカーちゃんです!」


 相変わらずパーカーのフードで顔を隠している柚希だったが、とても楽しそうな声で挨拶をし始めると、コメント欄が騒然となった。


 しかも、無駄に可愛い声を作っての挨拶である。


【!?】

【んん!?】

【え、ガチで!?】


「で、隣にいるやたらスタイルのいいのは、魔女です」

「初めまして、魔女じゃ」


 そして、隣にいるイルは柚希に言われた通り、魔女と名乗る。

 適当である。


【魔女wwww】

【適当すぎるw】

【ってか、どっちも名前が適当だし、安直すぎんだろww】

【っていうか、これどゆこと!?】

【説明! 説明を求む! 姫ちゃん!】


 急転直下すぎるこの事態に、コメント欄は大騒ぎになり、事の発端となったであろう姫に説明を求める者たちが爆増。

 それに対して、姫は少しだけ苦笑いを浮かべてから事の経緯を説明。


「あの後、お二人にその昨日の配信とついさっきの配信のことを謝罪したら、パーカーちゃんの方から一緒に出てくれるとの申し出がありまして……それで、折角だから一緒に配信を! ってことになりました! つまり、特別ゲストです!」


【マジかよwww】

【そんなんありぃ!?】

【つーか、パーカーちゃんお茶目だな!?】

【やばい、パーカーちゃんの太腿が大変良き……!】

【あと、やっぱり声が可愛い……】

【魔女の人もものすごい美人だし! ってか、スタイルヤバすぎ!】

【パーカーちゃんハァハァ……】

【もう変態がおって草】

【にしても、この二人寛容すぎるだろ】

【わかる。普通、あのレベルのやらかしくらったらキレるのに、むしろ嬉々として配信に出てるのは普通にすごい。聖人かな?】


 まさかのゲスト出演ということで、コメント欄は大盛り上がりだ。

 あと、変態が早速出て来たが……まあ、ダンジョン配信系ではよくあることなので、スルー。


「まあ、ゲストって言っても、ついさっき決まったんで、何すりゃいいのかよくわかってないんだけどな!」

「うむ。儂も配信? などよくわからん。個人的にはインターネットなるものがどのような物なのか、とてつもなく気になるところではあるのう! あ、後でそのドローンとやら、分解しても良いかの?」

「よくないですよ!?」


 配信以上にドローンを分解したいとかのたまう頭のおかしい魔女に、姫はツッコミを入れる。


【草ァ!】

【おいこの魔女さんなんかおかしいぞww】

【インターネットを知らないって、どこに住んでたんだ、この魔女さん】

【質問! パーカーちゃんってどれくらい強いんですか!】

【あ、それたしかに気になる!】

【言える範囲でいいからおせーておせーて!】


「えっと、パーカーちゃんの強さがどれくらいかって訊かれてますけど……」

「俺? そうだなー……あ、じゃあここのボスで検証する? どうせ、俺は魔女と一緒に食べるための焼き肉用の肉を集めてたとこだしな! それに、ここのボス、メッチャ美味いんだよ」


【草】

【レベルⅣのダンジョンなんだけど、すっごいかるぅい……】

【まあほら、Ⅵのダンジョンボス、ワンパンKOしてるし……】

【やっぱおかしいのでは?】


「でも、私もパーカーちゃんがどんな動きをするのか気になります! 前は命の危機でとっさだったので! カッコいいパーカーちゃんの動きが見たいです! あ、でも、わたしにそう言える権利ってない気が……」


【まあ、やらかしてるし……】

【普通に考えて、要望出すのはかなり図々しくはあるよね】

【うん、まあ】

【で、パーカーちゃんはどう出るか……】


「いや、気にしなくていいって。過ぎたことだし、俺も面白い経験できたし! とりあえず、今後あんなようなことがない様に気をつけてくれればいい!」

「本当にありがとうございます……次もし同じことをしたら……お腹を切りますッ……!」

「切腹は普通に怖いからやめような!?」


【草】

【ガチトーンにガチ表情じゃんww】

【でも、姫ちゃんが切腹をするかしないかで言えば……まあ、やるよね】

【強すぎw】


「まあ、何はともあれ……動きに関しては全然いいぞ~。動画配信なら、撮れ高あった方がいいだろうしな」


 かっこいい姿が見たい、という姫の先ほどの要望に、柚希は特に嫌な顔をすることなく、むしろノリノリで了承。


【ノリいいなおいww】

【パーカーちゃんはノリがいいのか……】

【ってか、結構警戒心ないな?】

【動画に出ることに対する危機感が薄い……?】

【そうか、つまりパーカーちゃんは無防備系激カワロリ(推定)ということか……】

【ふーん、えっちじゃん】


「あ、視聴者のみんな? パーカーちゃんに変な感情を抱いたら……殺しますよ♪」


 変態的なコメントを見た瞬間、姫の目から目身が消え、明るいのに殺意が乗った声でそんなことを言った。

 普通にホラーである。

 既に自分がやらかした上で、これを言える姫の神経はある意味すごい。

 もちろん、悪い意味で。


【ヒェ……】

【ひ、姫ちゃんが物凄くいい笑顔なのにホラーなこと言っとる……!】

【この気配……まさか、ヤンデレ!?】

【いやまあでも、あんな助けられ方したら、惚れちゃうよね】

【わかる】

【命の恩人だもんなぁ】

【それはそれとして、だいぶやらかしてるけどな……!】


「んじゃ、早速ボス部屋まで行くか~。あ、魔女はどうする? 戦う?」

「いや、儂は見学じゃな。それとも、儂の本気が見たいか?」

「実際見たい。だってお前それ、魔力で変異してんだろ? だったら、本気の時のお前の姿とか気になるじゃん?」

「ふむ、そう言えば真の姿を見せてはいなかったか」

「おう。で、見せてくれんの?」


【真の姿ってなんだ】

【変身とか?】

【そもそも変身できる奴とかおるん? 魔法?】

【いやー、そんな魔法無いと思うけどねぇ】


「あ、あの、真の姿ってなんですか……?」


 二人だけで会話が進むと言う状況にほんの少しだけ嫉妬した姫だったが、それ以上に真の姿という言葉が気になって、二人に尋ねていた。

 それらはこの配信を視聴している者たちも同様だ。


「あ、そう言えばこれって言っていいのか? 魔女」

「別に構わん。儂の手の内を晒したところで、そこらの人の子では儂に害をなすことなど不可能じゃからな。パーカーちゃんは……」

「パーカーちゃん言うな」

「いやしかし、真名を隠すためにそれを名乗っておるんじゃろ? なら別に儂がパーカーちゃん呼びしてもいいじゃろ」

「そもそも、俺がこの姿になったのはお前が原因なんだからな?」

「事故じゃ事故」

「あれは明らかに故意だよな!?」


【お? 喧嘩か?】

【この姿……?】

【なーんか、色々気になるワード出すなー】


「全く……で、お前は結局本当の姿を見せてくれるのか?」

「いや、見せん」


 見せてくれるのかと思ったら、きっぱりと断られた。


「見せないのかよ」

「この姿も真の姿みたいなもんじゃからな。ま、儂が本気になるような事態にならん限りは、このままじゃな」

「そうかよ。じゃあ、俺が戦うってことでいいんだな?」

「むしろ、儂は楽して美味なる食事が食べたい」

「……お前」


 なんとも情けないセリフに、柚希は呆れた様なジト目でイルを見つめた。


「だって! こっちの世界の食事が美味なのが悪い! 儂は悪くない!」

「子供かよ……」


 子供のような言い訳に、柚希はちょっと呆れた。


【可愛いなこの魔女w】

【ってか、こっちの世界てw】

【あれかな? ダンジョン探索者の中にたまにいる、厨二病的ロールプレイをする方?】

【ふーん、いいじゃないか……!】

【こんなエロい魔女さんが厨二病属性持ちとか最高過ぎ!】


「まあいいや。じゃあ、俺が戦うんで、早速ボス戦と行こうぜ」

「あ、は、はい! 楽しみにしてますね!」

「そんなに面白いもんじゃないとは思うけどなー」


 あはは、と苦笑い気味に柚希がそう返しながら、三人はボス部屋へ向かった。

 一応本編の補足。

 この世界におけるダンジョン配信は、最初はとある人が始めた単なる思い付きだったのですが、過去にそう言ったタイプの物語が普通に売れていた時期というのがあり、普通に受けました。

 で、本編中でもあったように、問題が起こって『ダンジョン配信承諾可否項目』なんてのが出来たんですね。

 大多数は否に丸を付けるんです。特に、強ければ強い人ほど。ただ、中には変人もいます。柚希は変人側。トップ層なのに、可に丸を付ける人は、ちょっと思考回路がおかしかったりする人が多いんですね。

 いい意味でも、悪い意味でも。

 これ、柚希とイルだったからおおごとにならなかっただけで、他だったら普通に大炎上もんです。今でもちょっと小火ってはいるけど、ノリノリで二人が出たことで、ある程度下火になりました。

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こちらでははじめまして ノリが軽いぞふたりとも そして想いが重いぞ姫w
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