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ダンジョンに住む(なんで?)魔女に加護を貰った俺、TSしてなぜか配信者になる。いや、パーカーちゃんって安直じゃない?  作者: 九十九一


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13/21

強くて(声が)可愛くて太腿が大変素晴らしい正体不明な人物の素顔が出たらどうなる? 知らんのか、ネット上でお祭りになる。

 三人がいるレベルⅣダンジョン《美食の迷宮》は、所謂中級者向けダンジョンだ。

 視聴者がコメント欄で書き込んだ通り、このダンジョンはⅠ~Ⅲのダンジョンを無理なく攻略できるようになった者たちが最初に行くダンジョンとして有名だ。


 まず、深場に行かなければ攻略難易度がⅣの中では比較的低いこと。

 次に、出て来る魔物がどれも美味であること。

 そして、このダンジョンが階層型のダンジョンであることだ。


 まず、ダンジョンには洞窟型、階層型、平野型、迷宮型、山岳型、水辺型、熱帯型など、様々な型がある。

 これらはその名の通りの特徴を持っており、その難易度は千差万別。

 そしてこれらの型の中にも様々な環境があり、例えば平野型には草原や砂漠などがあったり、山岳型であれば、雪山や火山地帯なんかもあったりする。


 一番特殊なのは階層型であり、階層型は階層ごとに環境が設定されている。

 言ってしまえば、他の型の複合タイプ、とでもいうべきだろうか。

 そして、このダンジョンは階層型であり、環境は階層によってまちまちだが、基本的には草原ような環境であることが多い。

 気温湿度共に、春の環境となっており、かなり過ごしやすいのが特徴だ。


 そして、《美食の迷宮》はかなり広くもあり、魔物の種類も豊富。

 様々な戦法を必要とするために、レベルⅠ~Ⅲを卒業した者たちが自身の能力などを磨くために探索者が数多く来るのだ。


 ……まあ、それ以上にドロップする食材が美味しすぎることが、最大の理由ではあるが。

 中には、迷宮の中で暮らすような猛者もいるくらい、ここの食材は人気だ。


 もっとも……たいていの場合はテントを建てたら魔物に完膚なきまでにぶっ壊されるし、家を建ててもやっぱりぶっ壊されるし、そこそこいい感じの竪穴住居を作ってもやっぱりぶっ壊されるしで、ここに家を建てる奴はアホ、と言われているが。

 そもそも、ダンジョンに暮らすことが間違っているので。


「お、ここだここ」


 そうこうしている内に、一行は《美食の迷宮》のボス部屋に到着。

 目の前には、ごつごつとした岩壁に似合わないやたらと精巧な作りの扉がある。

 この先にボスがいるのだ。


「わたし、実はここのボス初めて見るんですよね……」

「そうなのか? 《魔女の焔》にいたのに?」

「あそこはその……浅瀬であればそんなに難しくないので……」

「なるほどなー。けど、それはちょっと危険な考えだな」

「あぅ……すみません……」

「いや、いい。んじゃ、早速狩りをするか。魔女、櫻野さんの護りは任せたぞー」

「うむ。砂の一粒たりとも付かせんと約束しよう」

「さすが」


 イルの全力を知らない柚希だが、少なくとも自分を完封した相手であることは理解しているし、何より魔法に対する知識が膨大だと言うこともなんとなくわかっているためか、柚希は小さく笑って任せることに。


【砂の一粒ww】

【めっちゃ自信満々だなぁ】

【パーカーちゃんがいると聞いて!】

【トレンド入りしてたので来ますた】

【うわ! マジでパーカーちゃんいる!】

【ほあ!? なんだあの絶世の美女!?】

【えっろ……!?】


「おっと、そうじゃ。パーカーちゃんよ、おぬしの魔法に魔法を纏う物があったな?」

「ん? あぁ、あるな」

「あれ、今すぐ儂が改良しようか?」

「お、いいの? 理論は聞いたけど、さっぱりでさー。ってかお前、人の魔法を改変できんの?」

「おぬしの場合、儂が加護を与えておるから、問題はないぞ! で、どうする?」

「それじゃあ頼むわ」

「うむ、任された。ちと、背中に触れるぞ」

「おう」


【なんだなんだ? 何してるんだ?】

【今、聞き間違えじゃなければ、魔法を改変するとか……】

【そんなまさか!】

【人の魔法を改変するなんて無理だろwww】


 イルは柚希の背中に手を触れると、触れた箇所が蒼く光りだした。

 それに対して、一切気に留めることなく、イルは柚希の体内にある魔法発動のための術式に手を加えていく。

 この世界の魔法の大半は、術式を体内で組み上げ、それに魔力を流すことで起動する。


 基本的には、広く普及している汎用型術式を体内で生成し、いつでも使えるように刻み込むのだが、中には天才と呼ばれる者たちもいる。

 そう言った者たちはオリジナルの術式を体内に生成し、自分だけの魔法を組み上げる。


 柚希が使用する様々な属性の武器を生成する魔法や、体に魔法を纏う魔法などは柚希が自分に足りないものを補うために組み上げた術式だ。


 まあ、柚希の場合、前者の魔法については諸事情で装備している革手袋の方に術式を刻み込んでいるのだが。


 と、そんな体内の術式を外部から、しかも全くの他人が弄る、というのは通常ではありえないことだ。


「ん~……うむ、これでよし。ついでにサービスしといたぞ」

「サービス? まあいいや、ありがとな! んじゃ、早速行くか!」

「あ、あの……今お二人は何を?」

「さぁ?」

「さぁって……え、パーカーちゃんよくわかってないんですか?」

「知らんな! だって俺、こいつと出会ったの昨日だし!」

「え!?」


【草ァ!】

【お互いのことを知らないのに一緒にいるの……?】

【どういうことなんだww】

【昨日から一緒に暮らし始めたって言ってたけど、まさかの出会ったのも昨日からはマジで草】

【さっきの行動は何だったんだ?】

【さぁ?】

【本人が改変って言ってたから改変じゃね?】


「おーし、入るぞ!」


 元気よく柚希が目の前の扉に手をかけ、ずずず、と押した。

 思い音を立てながら扉が開く。


 中は半径100メートルほどの円形の広間となっており、天井はそれなりに高い。

 ドーム状ではなく、円柱状と言った方がいい部屋の作りだ。

 壁には等間隔で赤く光る石が設置されており、それによって中は暗くはない。


 そんな部屋の中央には、恐竜のような……というか、まんま見た目ティラノサウルスな魔物が鎮座していた。


「あ、あれが……」

「おう、たしか……《ファッティレックス》だったか?」

「太った恐竜……?」

「そそ。あれって、見た目筋肉質なティラノサウルスみたいだろ? でも、実はあの体皮の下には分厚い脂肪があって、その下に筋肉があるんだ。つまり、二重構造ってわけだな」

「はぇ~~、そんな特徴が……」

「ふぅむ、パーカーちゃんよ、あれは美味なのか?」

「美味い。メッチャ美味い。ってか、このダンジョンで一番美味い食材はあいつだな。個人的にはあれを絶滅させても後悔はないくらいに美味い。一度食べればわかるんだが……ぶっちゃけ、国産黒毛和牛の霜降り肉よりはるかに美味い」


【そんなに!?】

【ファッティレックス……でぶいのか……】

【あいつ、打撃系職からするとマジでクソボス】

【斬撃も割とクソなんだよなぁ……】

【斬撃も打撃もダメ……え、どうしろと?】


「あの、パーカーちゃん? あのボスはどうやって倒せば?」

「ん? あぁ、そうだなー。じゃあ軽く対処法でも教えるか。櫻野さんって武器は片手剣だよな?」

「はい! 片手剣です! 私、軽戦士なので!」

「なるほどなー。じゃ、丁度いいか。ついでに、このダンジョンに挑もうとしている探索者がいればよーく見ておくように!」


【何々? 対処法を教えてくれるの?】

【メッチャありがたい!】

【ボス戦の対処法って、Ⅰ~Ⅲの対処法を教えてくれる動画はそこそこあっても、Ⅳ以上となると少ないからなぁ……】

【まあ、ダンジョン配信って、高レベル帯の人が少ないし……むしろ、姫ちゃんは高い方】

【だな】

【さて、パーカーちゃんがどれくらい動けるのか見ものだな】

【正直、あの動画を嘘だとか言ってる奴もいるし、やらせって言ってるのもいるしで、実際本当に強いのかわからんし】

【お手並み拝見】


「まずは、こいつ相手じゃ死ぬほど相性が悪い打撃系武器から行こうか」


 そう言ってから、柚希は異空間魔法の中から、手頃なガントレットを取り出すと、革手袋の上から装備。

 ちなみにこのガントレットはなんてことない普通の物で、性能的にはレベルⅣのダンジョンであれば、それなりに戦える程度の代物だ。

 大体、レベルⅢダンジョンを卒業した者が最初に買うレベルだろうか。


【お? ガントレットだ】

【でも、そんなにいい武器ってわけじゃないな……】

【あれで戦うとか馬鹿じゃんww】

【人気配信者の配信に出たことで、天狗になっちゃったのかな?www】

【うーわ、面倒なのが湧いてる】

【とりあえず無視だ無視。それよりも、パーカーちゃんがなんでガントレットを出したのか見なきゃ】


「じゃあ、まずは悪い例と行こうか。魔女、これから戦闘を始めるから、櫻野さんを護ってあげてくれ」

「了解じゃ」


 柚希に指示されると、イルはパチン、と指を鳴らして自身と姫を覆う結界を創り出した。

 かなりの透明度があるようで、ほとんど何もないように見えるが、実際に手で触れて見るとかなり硬い感触が手に返って来る。


「わっ、これすごい……!」

「ま、この程度、児戯にも等しい。かなり頑丈じゃからな」

「魔女さんって、すごい人……?」

「こちらではどの程度か知らぬが、まあ、魔法であれば儂の右に出るものはおらんな」


【ほんとぉ?】

【うーん、実際にどれくらいすごいのかはわからないが……】

【少なくとも指パッチンだけで結界生成はすごい】

【ってことは、術式展開がかなり速いってことか?】


「オッケーだな。それじゃ、始めるぞ。まず悪い例」


 そう言った直後、柚希の体がぶれ、次の瞬間にはファッティレックスの腹の辺りに潜り込んでおり、拳を引き絞っていた。


【ん!?】

【え、速!?】

【10メートルくらいあるよな? え、いつの間に!?】

【身体強化か……?】

【うーむ、わからん!】


「まず、拳で戦う時は、こいつの腹部を攻撃するのは悪手だ。こうなる」


 ずんっ! と引き絞った拳を思いっきりファッティレックスの腹部にぶち当てたが、ファッティレックスの腹が波打つだけで、特にダメージが入った様子はない。


〈グルルウゥ!〉


 それどころか、いきなり殴られたことで怒りだしてしまった。

 どう見てもノーダメージだ。


「見ての通り、こいつは脂肪が厚すぎてこういう打撃は吸収されちまう。しかもこいつ、結構キレやすくてなー。なので、初撃をミスるととても厄介なことになる。これがよくある負けのパターンの一つだな」


〈グガァァァ!〉


 ファッティレックスが勢いよく太い腕を振り下ろすが、それを特に見ることなく、柚希は軽々と受け止める。

 衝突した瞬間、ドガァァァァン! という轟音が鳴り、地面に罅が入ったが、柚希はノーダメだ。


「はい、見ての通り勢いよくぶっとい腕を振り下ろしてきます。こいつ、筋肉もすごいのでまともに食らったらひとたまりもないです」


【いやあの、受け止めてるんですがそれは】

【あれぇ? ファッティレックスの攻撃ってこんなに軽く受け止められるっけ……?】

【ま、まぐれだろ、まぐれw】

【にしては、その衝撃で地面に罅入ってるんですが……】


「では、ガントレットの場合、どうやって攻撃すればいいかと言えば……答えは簡単。おら、口開けろ!」


 唐突に右足で勢いよくファッティレックスの顎を蹴り上げると、ファッティレックスの体が少し浮く。


〈グギャァァ!?〉


「で、頭が上に行った時にした顎を掴んで下に引っ張ると口が開くので、一緒に下がってくる上顎目掛けてアッパーを入れれば……おらぁ!」


〈~~~~~~!?〉


「見ての通り、大ダメージを与えられます」


 いきなり蹴り上げられ、強制的に口を開かされたと思ったら、口の中を思いっきりアッパーされたファッティレックスは声にならない悲鳴を上げ、地面を転がる。

 とても痛そうにしており、よく見れば涙目である。


【ええぇぇ……】

【エェェェ……】

【どう見ても小学生くらいしかないのに、あの細腕でどうやって……?】

【普通に肉弾戦強くて草】

【ファッティレックス吹き飛ばす威力ってヤバくね?】

【あいつ、クソ重いんだぞ? マジでパーカーちゃんやばい……?】

【威力えぐぅ……】


「余裕があれば尻尾を掴んでジャイアントスイングをするのもありだな。それじゃあ、次、片手剣での対処法だ。櫻野さんはよく見ておくように!」

「はい! 全力で見ますっ!」

「うん、いい返事! それじゃあ、次は片手剣を、と」


 柚希は拳に着けていたガントレットを外し、再度異空間魔法を使用して、その中に仕舞う。


 代わりに刃渡り90センチほどの片手剣を装備。

 見た目はシンプルな片手剣で、これと言った装飾もない、何の変哲もない普通の片手剣だ。


【今度は片手剣か】

【いやあの、片手剣とかガントレットはどっから出してるの……?】

【あれ、昨日の配信でもやってたけど、マジで原理不明】

【あれだろ? 魔法系スレでめっちゃ議論されてる奴】

【創作物では定番のアイテムボックスだよね? あれ、メッチャ羨ましいんですけど……】


「さ、片手剣だな。知っての通り、ファッティレックスってのは、脂肪の下に筋肉がある。その筋肉が結構硬くてな。そのせいで刃が通りにくい。だが、ダメージを与える方法はいくらでもある」


〈グルガァァァァァァ!〉


 殴られたことで怒り心頭となったファッティレックスが、その巨体を揺らしながら、柚希に迫る。


 その様子はさながら大型トラックが迫って来るかのような迫力だ。

 それに対し、柚希は馬鹿正直にファッティレックスに突っ込んでいく。


【ちょ!? 正面から!?】

【待て待て待て! それは死ぬ奴!】

【やっぱバカなのか? ファッティレックスにそれは悪手でしかねぇしww】

【はい乙ー】

【イヤァァァ! いきなりスプラッターなのはやめてぇぇ!】

【どう考えてもバカなことしてるのに、なんで二人は助けないの!?】


 と、柚希の蛮行を見て、コメント欄はかなり荒れる。

 中には悪意のあるコメントをする者もおり、かなり酷い。

 その大多数はこの後柚希が轢き殺される光景を予想したのだが……現実はそうはならなかった。


「ふっ――!」


 柚希はファッティレックスに近づき、あわやぶつかると言う瞬間で突然右斜め前に方向転換。

 すれ違いざまにファッティレックスの膝裏を手に持った片手剣で切りつけた。

 ブシュッ! と血が勢いよく噴き出し、ファッティレックスの巨体がぐらり、と傾く。


〈ギャァァァァ!?〉


 いきなり膝裏を切られ、ファッティレックスは悲鳴を上げながら、バランスを崩して地面に転がる。


「はい、こういう風に比較的守りが薄い関節部分を切ることでファッティレックスの動きを止めることができます」


【お、おう……】

【普通に轢かれるかと思ったら、変な方向転換して、そのまま切ったんですが……いやあの、え?】

【しかも、走るファッティレックスの膝裏だけを狙って切ったよね? すご……】

【いやいや、あんな巨体なんだし、切るのなんて簡単だろwww お前らバカすぎww】

【はいはい、無知を晒すのは止めましょうねー。そもそもファッティレックスって、見た目のわりに動きが速いし、でかいしで、実は膝裏を狙うのは難しいんだよ。つーか、普通に走ってるんだから、綺麗に斬るのとかむずいんだぞ?】

【そうそう。よくあるだろ? でかい奴って速く動いてても遅く見える、みたいな。それだよ】

【しかし、なるほど、たしかに言われてみれば関節部分は比較的柔らかいもんな……盲点だったわ。参考にします!】


「ちなみに、この方法を取った時の難点は、ファッティレックスが死ぬほど暴れること。見ての通り、もんどりうってますね。あれ、結構ヤバいので注意が必要です」


 そう言う先にいるファッティレックスは、柚希の言う通り、痛みでびったんびったんしている。

 暴れるせいで、尻尾などもびったんびったんしており、かなりすごいことになっている。


【草】

【草】

【参考にしようと思ったら最終的に参考にならなかった件について】

【これは酷いw】

【結局どうしろと……!】


「あ、あの、パーカーちゃん! 結局どう倒すのがいいんでしょうか!」

「ぶっちゃけた話、魔法が一番手っ取り早い」


【ですよねぇ!】

【知 っ て た】

【やはり魔法……魔法が全てを解決する!】

【結局魔法になるのか……】


「ちなみに、槍とか弓は結構有効打を与えやすい。口を開けた瞬間に全力の投擲をすれば普通に死ぬ」


【そうだけども! たしかにそうだけども!】

【そこまで行くのが大変なんですがそれはw】

【参考にならないww】


「ま、正直こんなんじゃ面白くないと思うので、最後に魔法であれをKOして終わりにするか! と言うわけで……まずは雷の槍を生成」


 そう言って、柚希は右手に全長1.5メートルほどの雷の槍を生成。

 それをその場で振り回してみる。


「ん~、やっぱ背が縮んだから扱いにくいか……? いや、空中で使えば大丈夫か」


【出た! パーカーちゃんの謎武器!】

【これか、魔法スレで考察されまくってる武器って】

【なにこれカッケェ!】

【雷で作った武器とか、なんて厨二心をくすぐるんだ!】

【あの手袋かなぁ……?】

【いいなぁ! カッコいいなぁ! 欲しいなぁ!】


「ふむ、昨日の調整の成果が出ておるな。なかなかに良い」

「調整って、魔女さんはあれ知ってるんですか?」

「うむ。じゃが、あれについてはパーカーちゃんが口外を禁じておる故、話すことはできんぞ」

「企業秘密って言ってましたもんね」

「うむ」


【やっぱ魔法系か?】

【魔道具の線もあるけど……どっちも言えないかな】

【それはそれとして、やっぱ魔法っていいよなぁ……】

【使えないからメッチャ憧れる……】

【魔法職って、結構人気職だし、上澄みとかマジでこう、人外だからなー】


「いつもなら、これだけでいいんだが……ここは撮れ高優先! 《魔装・纏雷》」


 ダンジョンから脱出する際に用いた魔法を使用。

 先ほどイルから術式の改変を施されたことにより、今までとは比べ物にならないくらい発動がスムーズであり、さらには魔力の消費がぐんと減っていた。

 バチバチ、と雷が弾け、近くにいたら感電してしまいそうなほど。


「お、いいね! これなら……って! おいいr……じゃない、魔女! なんか、今までと形状が違うんだけどぉ!?」


 消費量も減り、普段使いもできそうだと喜んだのも束の間。

 自身の魔法を確認するべく、自分の体に視線を落とすと、そこにあったのはいつもの鎧姿……ではなく、可愛らしいドレスの形状をした魔法であった!


【雷のドレス!? 何それ可愛い!】

【カッコいいし可愛い!】

【パーカーのフードで顔隠れてるけど、可愛いじゃん!】

【魔法少女っぽいなー】

【いいねいいね! すごくいいねぇ!】

【でもなんか、パーカーちゃんちょっと怒ってる?】


「ふふふ! おぬしの職業の意味を軽く調べ、それに近しくなるように調整したぞ! どうじゃ? 調子は」

「絶好調だよちくしょーめ! っていうか、なんかいつも以上に力がみなぎってる気がするんだが!? 何した!?」

「む? そうなのか?」

「いやお前がしたんだろ!?」


 とぼけるイルに、柚希はそう指摘するが、イルは首を振って否定。


「いや、儂がしたのあくまでも魔力消費の改善、それから形状の変化だけじゃ。能力向上には手を付けとらんよ」

「は? じゃあなんで……って、まさか、これ職業特性か!? うっそぉー!?」


 とても嘘をついているようには見えず、それについて考える柚希であったが、すぐになにが理由なのかということについて確信した。


「あ、あの! パーカーちゃん!」

「なんだ!?」

「すごく可愛いです! あとでツーショットいいですか!?」

「このタイミングでそれ訊くぅ!?」


【姫ちゃんww】

【たしかに可愛いけどもw】

【まあ、顔は見えないんですけどね】

【マジでどんな顔してるのか気になる】

【素顔! 素顔見せて素顔!】


「いやまあ、いいけど!」

「やったぁぁぁぁぁ! 約束ですよ! しましたからね! 絶対ですよ! 逃げないでくださいね!?」

「お、おう……」


 なかやたら必死な姫を見て、柚希はちょっと引いた。

 なんでそんなに本気なの……? と。


「ま、まあ、いいや。それよりも……じゃあ、今からファッティレックスを倒します。と言ってもまあ、一瞬になっちゃうとは思うけど……なっ!」


 気を引き締め、柚希が駆け出す。


 柚希の魔法である《魔装》の効果により、身体能力が大きく向上。

 現在身に纏っているのは雷属性なので、移動速度に対する上昇効果が最も高い。


 その代わり、普段以上の動きになるので慣れないと制御が難しい。

 当然、扱えないままにする柚希ではないので、普段から練習に練習を重ね、完璧な制御を身に着けていた。


 ……もっとも、それは加護を貰うまでは、の話であって、今の状態での制御訓練などは一切していない。


 その結果何が起こったかと言えば……


 ズガァァァァァァァァァァン!!!


〈ガ、ァァァ……〉


「ふべっ!?」


 いつものように一歩踏み込んだ瞬間、弾丸の如き速度でファッティレックスに突っ込んでいき、そのままボス部屋の壁に大激突をかますという結果になった。


【うぇぇぇぇぇぇぇ!?】

【ちょっ! なんかすごいことになってんぞ!?】

【な、なにが起こった……?】

【ぱ、パーカーちゃんが消えて、轟音が聞こえたと思ったら、なんかファッティレックスに風穴空いてる……? で、パーカーちゃんは壁に激突……え? え??】

【どういうことぉ!?】


「……はぇ!? ぱ、ぱぱぱ、パーカーちゃん!?」

「うぅむ、これはまた……消費効率を上げたことで、結果的に性能も向上しておるのう。うむ、やはり儂、天才!」


【おい魔女ww】

【お前が原因か!?】

【ってか、あれを見て自画自賛できるとか、精神構造どうなってんだよ】

【パーカーちゃん!? 大丈夫か!?】

【自爆で死亡とかマジで末代まで笑われるぞ!?】

【生きてるなら返事してくれェェェ!】


 自分の力で壁に激突するとかいうとても頭の悪い状況になってしまった柚希に対し、心配するコメントが多数書き込まれ、同時に姫もかなり心配する。

 今現在も激突した影響で発生した土煙が発生しているが、柚希らしき影が出てこない。


「……い、痛たた……し、死ぬかと思ったぁ……」


 と思ったら、ゆらりと小さな影が出て来た。

 それはふらふらとした足取りでこちらに向かってきていた。


【お! 無事だ!】

【あの勢いでぶつかって平気とかすげぇな……】

【やっぱトップ層疑惑が……】

【レベルⅥをソロで潜れてる時点でどう考えてもトップ層】


「いやー、マジでびっくりした……ってか、魔女! お前さっき天才って言ってたけど、これじゃあ天賦の才じゃなくて、天の災いのほうだわ!」

「ふふふ、どちらも似たような物じゃ!」

「んなわけあるかっ! まったく……酷い目に遭った……って、ん? どうしたんだ? 櫻野さん?」

「え、あ、い、いや、あの……パーカーちゃん、フード……」

「ん? フード? ……あ」


 自分を見て頬を染めながら固まる姫に、柚希がどうしたのかと尋ねると、恐る恐ると言った様子で自身の頭を指さしながらフードと言って来た。


 どういうことだろう、と思った柚希はぺたぺたと頭に手を当てると、そこから返って来たのはふわふわさらさらな髪の毛の感触……そう、フードが取れてしまっていたのだ!


【え、あ、え!?】

【か、可愛いぃぃぃぃぃぃぃ!?】

【待って待って待って!? メッチャ美少女!? 超美少女! ヒャッハーーーーー!】

【やばいやばいやばい! この可愛さは国宝級!】

【しかも! オッドアイ! オッドアイじゃん! 紅と蒼の瞳とか最高かよ!】

【ぱ、パーカーちゃんが美少女過ぎて、動悸が止まらん……! これが、恋……!?】

【しかも! この可愛さで俺っ娘!? 属性がてんこ盛り過ぎる!】

【俺たちは今、歴史的瞬間に立ち会っているのかもしれない……!】

【おい! 早速トレンド入りしてるぞ!!】

【銀髪ロングオッドアイ俺っ娘つよつよ美少女とか、そりゃトレンド入りするに決まってんだルルォ!?】

【属性の渋滞起こしてて草】


「……うわー、最悪だぁ……」


 顔を隠すためにしていたフードが取れてしまったことに、柚希は頭を抱えた。


 目立ちたくないとは思わないが、かといって目立ちたいと言うわけでもない柚希にとって、無駄に可愛い方なこの顔を見られるのは面倒になるからと言う理由で避けていたのだが……結果は御覧の通りである。


 お祭り騒ぎだ。


「あー、まあ……なんじゃ、ドンマイ!」

「ドンマイじゃねぇぇぇぇぇぇ!?」

「あ、パーカーちゃん! わたしとツーショットお願いします!」

「そしてこのタイミングでそれ言って来る君も十分おかしいねぇ!? とりあえず近くに来てくれ! 写真撮るぞ! もう自棄だーーーーーー!」

「わーーーい! パーカーちゃんと写真だーーー!」


【カオス! 圧倒的カオス!】

【これは酷いwww】

【姫ちゃん、自分の欲望を優先してやがる!】

【ってかこれ普通にヤバいなぁ……】

【こんなに可愛いのに、クソ強いとか、どう考えても勧誘合戦やん】

【パーカーちゃんでこれなんだから、一緒にいる魔女さんも絶対ヤバい】

【セットで勧誘されそう】

【これは面白くなってきましたぁ!】


 このあと、仲良く写真を撮って、ドロップアイテムを回収して、三人はダンジョンを出た。

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