↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宝石の駒  作者: 彩霞
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/88

第7話 宝石の名が付いた駒

「……ルールは、まあ、知ってはいるけど、聞いてやる。久しぶりだし、『先生』っていうのに習ったことがないからな」


「そうですか。最近はおやりになってはいないのですか?」


「久しぶり」と言ったので聞いてみると、何故かロバートが「何が?」と聞き返した。

 ティナは少し疑問に思ったが、できるだけ自分の気持ちが表に出ないように気を付けながら「『リブーム』です」と答える。


 すると、彼は何かに気づいたようにハッとしたような表情をした。だが、それをすぐに誤魔化す。


「……腹の探り合いは始まっているんだろう? いちいち聞くなよ」


 ティナはロバートの態度を見て、「『リブーム』がどういうものかは知っているが、やったことはないのではないか」と思った。


 しかしそれならば、どうしてヴィヴェルシュは「リブームの相手がいないために息子がつまらなくしている」などと言ったのかと、別の疑問が出てくる。


 ロバートがこの屋敷に引き取られるときに嘘をついたのか。

 あるいはヴィヴェルシュが勝手にそう思い込んでいるだけなのか。

 それとも、ティナに警戒心をいてもらうために、ヴィヴェルシュがわざと嘘をついたのか。


(でも、もし私のことを考えていたのだとしたら考えが浅はかよね……。普通、ある程度「リブーム」ができる人は、対戦するだけで相手の力量が分かる。私がロバートさまと対峙たいじしたら、すぐに見破られることは分かっていたはず。だってヴィヴェルシュさまも、スイングラー当主の後継ぎとして「リブーム」の指導を受けていると思うから……)


 少なくとも、ロバートか、ヴィヴェルシュが事実とは違うことを言っている。

 それが意図的に言っているかどうかの判断は現時点でできないが、少しずつ探りを入れて知っておいたほうがいいとティナは思った。


「そうでございますね。良い心がけだと思います」


 彼女はとりあえず、ロバートが言ったことを気にせずに、話を続ける。


「では、初歩的なところから説明いたします。ロバートさまもご存じのこともあるかとは思いますが、説明させてください」


「……分かった」


 彼女はにこりと笑うと、早速「リブーム」のことについて話し始めた。


「『リブーム』は縦が六マス、横が六マス、計三十六マスに区切られている盤上で戦います。こまは白と黒の二つの色がありますね」


 ティナは木箱の中に入った駒を、ロバートに見せる。中には、白と黒の駒がきれいに仕舞しまわれていた。


「ああ」


「色の違いで、自分と相手の駒を区別します。さらに、白は先攻、黒は後攻と決まっています。ロバートさま、白と黒、どちらがいいですか?」


「選ぶのか?」


「はい。実際に、駒を触りながらやったほうが分かりやすいと思いますよ」


「……じゃあ、白」


「分かりました」


 ティナは、箱から予備以外の白の駒を全てロバートに渡す。


「駒を見てください。駒には色々な形がありますね」


 彼女が黒い駒を手に取りながら話したので、ロバートも白い駒を触りながら「うん、ある」とうなずいた。


(正方形)(ひし形)(円形)(三角形)(星形)の五つ種類がありまして、これにはそれぞれ宝石の名前がついています」


「宝石の、名前?」


「そうです。(正方形)は『パイロープ』、(ひし形)は『アンドラダイト』、(円形)は『デマントイド』、(三角形)は『グロッシュラー』、(星形)は『ウパロ』といいます。これは白も同じ形のものが、同じ名前で呼ばれています。これが『リブーム』の別名が『宝石遊び』と称される所以ゆえんです」


「パイロープ、アンドラダイト、デマ……えっと……」


「デマントイドです。一度では覚え切れないと思うので、分からなくなったらその都度つど聞いてください」


 すると、ロバートはむっとして言い返した。


「俺はそんな馬鹿じゃない」


 ティナは目をしばたたかせたあと、正直に言った。


「ロバートさまのことを馬鹿だとは思っておりません」


 しかし、ロバートは、ふん、と鼻で笑う。


「どうだか」


「本当でございます。一度で覚えられる人はそういません」


 何故、駒の名前を覚えられるかどうかということが気になるのか、ティナは内心「よく分からない」と思いながら言った。


「あんたは? どれくらいで覚えたんだ?」


「私も習い始めたときは、何度も聞きましたよ」


「具体的な期間を聞いているんだ。ちゃんと質問に答えろよ、『先生』」


 親切にされたかと思うと、いちいち突っかかるようなことを言い始める。

 簡単に相手のことや性格などが分かるとは最初から思ってはいないが、これまで教えてきた子どもの中でも特につかみづらいのは確かだ。


(ここで下手に反論すると、「もうやらない」って言いかねない感じよね……)


 ティナは「リブーム」の駒を動かすがごとく、相手の出方を見定めるために、従順なふりをしてロバートの質問に答えた。


「答えたくても答えられないのでございます」


「何でだ」


「気づいたら覚えていたという感じなので、覚えていないのです。私が『リブーム』を始めたのは、十歳かそこらです。毎日相手をしてもらっているうちに、自然と覚えましたから、はっきりとした時期は分からないのです」


 ロバートはティナの顔をじっと見たあと、「ふぅん」と呟く。納得したのか、そうでないのかよく分からない。


 だが、黙って彼が次に何を言うのかを待っていると、「……誰に習ったんだ?」と尋ねてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。