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宝石の駒  作者: 彩霞
第四章

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第58話 駒と対になる宝石の名

「『宝石』になるには、大きさと透明度が必要なんです。ですが『ウバロバイト』は、産出しても透明度が低く小さいものがほとんどです。そのため、宝石にはなりにくいのです。ただ、濃い緑色をしていて綺麗な色をしているんですよ」


「……そうなのですね」


 ロバートが呟くと、ティナはうなずいた。


「さて。これで、リブームの駒に対応する宝石が全て登場しました。——タルナートさん、今コンラートさまが指を示された宝石を触っても構いませんか?」


「もちろんです」


 ティナはタルナートから許可を得ると、目の前にある布の上に、リブームの駒を自分側に一列に並べ、対になる宝石をロバートたちがいる側に置いた。


 (パイロープ)と、赤い色が特徴で透明度の高い『パイロープ・ガーネット』。


 (アンドラダイト)と、黄色味がかった緑色をしており、光に当たると特にきらきらと輝く『アンドラダイト・ガーネット』。


 (デマントイド)と、明るい緑色をした透明度の高い『デマントイド・ガーネット』。


 (グロッシュラー)と、透明度が低いがだいだい色が美しい『グロッシュラー・ガーネット』。


 (ウパロ)の前だけは、空白だ。もしタルナートが持って来たのであれば、ティナは小さくて透明度の低い、濃い緑色をした宝石『ウバロバイト』を置いたのだろう。


「『パイロープ・ガーネット』、『アンドラダイト・ガーネット』、『デマントイド・ガーネット』、『グロッシュラー・ガーネット』、『ウバロバイト』……。お分かりかと思いますが、リブームの駒はこれらの宝石の名前から取られています。(ウパロ)の名前はお話しましたように、『ウバロバイト』が変化したものと考えられていますから、これらの名前が使われたことが『独立したガーネットの名前』しているということがお分かりになるかと思います」


 コンラートは大きくうなずくと、確認するように「それぞれに対応した、ガーネットの種類があるということですね?」と尋ねた。


「ええ」


 だが、ロバートの向かい側に座っていたタルナートが、小首を傾げて「ちょっと待ってください」と言って話に割って入った。


「独立したガーネットの名前を持っているというのであれば、『アルマンディン・ガーネット』もありますよ」


(『アルマンディン・ガーネット』?)


 タルナートは、ティナの表情をうかがいながらはなしを続ける。


「……エジンさまもおっしゃっていたではありませんか。『パイラルスパイト』の中には、『パイロープ』『アルマンディン』『スペサルティン』の三種類があると。その中に駒の名前となった『パイロープ・ガーネット』もありますが、『アルマンディン・ガーネット』もあります。唯一、『スペサルティン・ガーネット』はありませんが、何故『アルマンディン・ガーネット』は駒の名前に選ばれなかったのでしょうか?」


 宝石商だからこその質問だろう。

 ロバートはだんだんと分からなくなって最後は話半分に聞いていたが、ティナは彼の質問をきちんと受け止めた上で、やんわりと答えた。


「先に申し上げた通り、駒の名前がどうしてガーネット属なのかは分かっておりません。また、採用された宝石と、そうでなかったものがあるのかも不明です。ですから、今申し上げた話は、人から聞いたり書物で調べたりした内容から、私が総合的に考えた答えであって、正解ではないのです」


 タルナートは勢いががれたようになって、肩から力が抜けたようにしゅんとする。


「……そうでした。すっかり忘れてとんだ意見を申してしまいました。ですが、今のお話が九割ほどがすんなりと受け入れられるような内容でしたので、つい……。申し訳ありません」


 弁解するタルナートに対し、ティナは微笑ほほえんだ。


「いえいえ、謝ることではありません。それにお気持ちは分かります。タルナートさんの意見には一理ありますから」


 そう言ってから彼女は、あごに軽く手を当てて考える仕草をした。


「うーん、そうですね……。私が思うに、リブームを作った人は明るい色の宝石を好んだのかなと思っていました。『アルマンディン・ガーネット』は、鉱物としては不透明で黒色のものが多いですから」


 タルナートはティナの説明に納得したようで、「ああ、なるほど……」とうなずいた。


「質問は、もうないですね。では、これにて私の説明を終わりにいたします。お話を聞いてくださりありがとうございました」


 終わらせたかったのか、少し早い口調で言いきってティナは頭を下げる。すると父と兄、そしてタルナートが自然と拍手を送った。


「中々興味深い話だった」


「本当に」


「私も身になる話をお聞きできて大変良かったです」


 三人がそれぞれ感想を述べる。

 一方のロバートは、何だか面白くなくて拍手などしたくなかったが、コンラートにまた何か言われるのも面倒だったため、体裁ていさいだけはつくろった。

 

 そのあとティナは、タルナートに「どうやって宝石の知識を身につけられたのですか?」と尋ねられていたが、「昔、仕事で覚えなければならかったので必死になって勉強しただけです」と有耶無耶うやむやに答えていた。


 タルナートはもちろん、コンラートもティナの宝石の知識に興味を持っていたが、 今回の宝石商の訪問は、兄の新しい指輪を作るためである。そのためティナは微笑を浮かべつつ、何とか本題に戻したため、それ以上ティナが宝石のことを話すことはなかった。

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