第55話 ガーネットの種類
「ガーネットに属する……? それは……『ガーネット』というのは、宝石の名前ではないということですか?」
ロバートは小首を傾げて尋ねると、ティナは小さく首を横に振った。
「いえ、そうではなく、ガーネットと言われる宝石の中に、細かい区分があるのです。まず宝石となるガーネットの区分は二つあり、一つが『パイラルスパイト』、もう一つが『ウグランダイト』と呼ばれます。この『パイラルスパイト』の中に、『パイロープ』というものが属しているのです」
「あっ、パイロープ……」
はっと気づいたロバートを見て、ティナは相好を崩した。
「ええ、そうです。リブームの駒の一つである『パイロープ』のことですね」
「『パイラルスパイト』に属しているのは、『パイロープ』と言う名のガーネットだけなのですか?」
尋ねたのは、ロバートの隣に座るコンラートである。
そのため、ティナは彼のほうを見て答えた。
「いえ、他に二つあります。『アルマンディン』と『スペサルティン』という種類です」
「つまり、『パイラルスパイト』の中には、『パイロープ』『アルマンディン』『スペサルティン』の三種類があるということですね」
コンラートが分かりやすく整理してくれる。お陰で、沢山出てくる宝石の名前も理解しやすく、ロバートはふむふむと小さく頭を縦に振った。
「そういうことになります。そして先ほど申しました『パイラルスパイト』と並ぶ、『ウグランダイト』にも三種類あります。ここに『ウバロバイト』『グロッシュラー』『アンドラダイト』があるのです」
(リブームの駒の名前だ……。あれ、でも「ウパロ」は?)
「グロッシュラー」と「アンドラダイト」は、リブームの駒の名前である。
しかし、「ウバロバイト」が少し気になった。
「ウパロ」に音が似ているが、似ているだけで同じではない。他の駒の名前が、「パイロープ」「グロッシュラー」「アンドラダイト」とガーネットという宝石の種類の名前をそのまま継承しているのに、「ウパロ」だけが違うのが不思議だった。
「『ウパロ』は『ウバロバイト』に近いですが、どうして全く同じ呼び名ではないのでしょうか? もしかして『ウパロ』という名前のガーネットがあるのでしょうか?」
ロバートが気づいたことを聞いてみると、彼女は「『ウパロ』は、『ウバロバイト』から取った名前で間違いないと思いますよ」と言った。
「では、何故?」
「私も以前疑問に思って調べたことがあるのですが、『ウパロ』も元々『ウバロバイト』と呼ばれていたようなのです。それが色んな人がリブームを教えて行く過程で『ウバロバイト』が『ウバロ』になり、それが変化して『ウパロ』になったと言われています。資料によっては、『パイロープに合せた言い方になった』というのもありました。『パ』と『ロ』が同じだからそういうふうに言われたのかもしれません。しかし、どれも確定した話ではないので、はっきりとしたことは分かっていませんが、そんな過程があったようです」
「へぇ……」
「そして、リブームのほかの駒である『グロッシュラー』と『アンドラダイト』はそのままの名前で使われています」
「あの、どうして『アルマンディン』と『スペサルティン』は使われなかったのでしょうか? それに『デマントイド』が今話した中にはなかったように思うのですが……、何故なのですか?」
「私はリブームを作った者ではありませんので、実際のところは分かりません。ですが、恐らくこれらには独立したガーネットの名前を持っていたからではないかと思います」
「独立……?」
ロバートはよく分からず、一旦兄のほうを向いた。
だが彼も分からないようで、小さく肩をすくめる。そのため、もう一度ティナのほうを向いて「どういうことですか?」と尋ねた。
「そうですね……」
ティナはどう説明しようか少し悩んだあと、テーブルを挟んで向かい側に座る父のほうを向いた。
「すみません、当主さま」
「何だい?」
「リブームの駒を貸していただくことはできますでしょうか? 駒があったほうが皆さん分かりやすいかと思うのです」
「もちろん、構わないよ。——誰か、リブームの盤と駒を持って来てくれ」
父がそう言うと、メイドの一人が盤と駒の入った箱を持ってきてくれた。
ティナは礼を言いながらそれを受け取ると、早速箱から黒色の■、◆、●、▲、★を一つずつ出し、自分の目の前に並べる。
そして、彼女はコンラートのほうを見て次のように尋ねた。
「コンラートさま、少し質問をしてもよろしいでしょうか?」
「もちろん」
「ガーネットというと、コンラートさまは真っ先にどういう色が思い浮かびますか?」
ティナはテーブルの上に円を描き、そこに載っている全ての宝石を示した。この中から選べ、ということらしい。
コンラートはふっと笑うと、ロバートの目の前に置いてあった赤い宝石を指さした。




