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第96話 水属性素材GET!

 ヌルヌルスライムを倒した後、ゲートが出現した。


「お」


 前に行ったダンジョンでは、こんなものはなかった気がする。


 だが、ここは終着点だし、そもそも上から落ちてきたせいで元の道を戻って登ることもできない。


 だったら、これは帰るためのゲートなんだろう。


「まあ、俺はバルに攻撃させて帰る方法もあるけど」


 一応そういうやり方もある。


 あるが、一般的には使わない。


 というか、できれば俺もあまり使いたくない。


 なので、素直にゲートへ入ってみた。


 すると、予想通りダンジョンの入口へ飛ばされた。


「やっぱ帰還用か」


 そこは普通だった。


 だが、問題はそこじゃない。


 手元にある素材を見る。


「……いや、だからヌルヌル属性ってなんだよ」


 一応、属性は属性だ。


 だから使えるのか? と一瞬思わなくもない。


 だが、やっぱり違う気がする。


 少なくとも、俺が欲しかったのはそういうのじゃない。


「いや、使えないだろ、これ」


 そう思いながら、改めて手に入れた称号の方も確認してみる。


 そこに書かれていたのは、シークレットボス初討伐という文言だった。


「……あ」


 その瞬間、少し嫌な予感がした。


「もしかして、違うボス倒した?」


 よく考えたらそうだ。


 あそこ、謎解きらしきものを無視して、滑って落ちて、バルに捕まって、そのままたどり着いた部屋だった。


 普通に考えたら、正規ルートのボス部屋じゃない。


「倒す相手が違うってことじゃねぇか……」


 そうなると、話がだいぶ変わってくる。


 俺はヌルヌルの支配者の称号効果も確認した。


「ヌルヌルデバフ無効……」


 ヌルヌルの滑る効果と、ヌルヌルの不快感を自由に無効にできるらしい。


「いや、効果はめちゃくちゃ有用だな」


 あそこのダンジョン限定っぽいとはいえ、持っているのといないのとでは天地ほど差がある。


 そうとわかれば、やることは一つだ。


 もう一度入る。


 今度は、新しく得た称号の効果を活かして、ヌルヌルの床を正面から突破する。


 実際、それでうまくいった。


 滑らない。

 気持ち悪くない。

 視界もまとも。


「……快適すぎるだろ」


 さっきまでの苦労は何だったのか。


 そう思いたくなるくらい、普通に進める。


 そして今度こそ、正解の道の先にボス扉があった。


「よし」


 扉を開く。


 中にいたのは、大きな亀型のモンスターだった。


「お前か」


 今度こそ、ラザロの言っていたやつだろう。


 このボス部屋自体にもヌルヌルはある。

 ただ、さっきのヌルヌルスライムの部屋みたいに、部屋全体がヌルヌルで埋まっているわけじゃない。ところどころにぬめった場所がある程度だ。


 だから本来なら、踏んだ時に足を取られたり、動きを狂わされたりして厄介なんだろう。


 だが、こっちはもう違う。


 ヌルヌルの支配者の称号のおかげで、滑りも不快感も無効だ。


 さっきまで散々苦しめられたヌルヌル地帯が、今はただの少し気持ち悪い床でしかない。


「だったら話は早い」


 俺はバルへ指示を飛ばした。


「バル! アンカーチャージだ!」


 バルが突っ込む。


 亀型のボスは、見た目通りやはり固かった。


 一撃で終わる感じではない。


 だが、通らないわけでもない。


 アンカーチャージが命中するたび、甲羅へひびが入る。


「よし、効いてる!」


 硬いが、バルの方が上だ。


 亀型のボスが固いというより、普通の攻撃では厳しいだけで、バルのアンカーチャージなら押し切れる。


 もう一度。


 さらにもう一度。


 そのたびに、甲羅のひびが広がっていく。


 最初は一筋だったひびが、次第に全体へ走っていくのが見えた。


「そのままいけ、バル!」


 ボスの反撃自体はある。


 だが、こっちは足場で困らないし、動きも読みやすい。


 さっきのヌルヌルスライムみたいな理不尽さはない。


 だからこそ、ひたすらバルをぶつけ続ける。


 そしてついに、甲羅全体へひびが回った。


「今だ!」


 次の一撃で、甲羅が砕けた。


 破片が飛び散り、その下に隠れていた弱点が露出する。


「そこだ、バル!」


 露出した弱点へ、さらに一撃。


 今度は防ぐ甲羅もない。


 そのまま、亀型のボスは崩れ落ちた。


「……よし!」


 変な復活ギミックも、ぬるぬる洪水もない。


 ちゃんと倒した感触がある。


 そして、ボスを倒した後ろにゲートが出現した。


「こっちも帰れるようになってるのか」


 シークレットボスの時と同じで、どうやら帰還用らしい。


 これなら周回もできるな。


 そして、ドロップした素材を確認する。


「堰守の甲羅……」


 さらに、その説明を見て、俺は思わず握り拳を作った。


「水属性素材!」


 これだ。


「これを……これを求めていたんだ!」


 ようやく当たりを引いた。


 変な回り道をした。


 ヌルヌル属性だの、シークレットボスだの、余計なものも挟んだ。


 だが、ようやく本命にたどり着いた。


「いらん回り道をしてしまった……」


 そう思わなくもないが、今はそれでいい。


 必要なのは結果だ。


 そして今、その結果は手に入った。


「とりあえず、角は使い捨て予定だし……」


 なら、やることは決まっている。


「バル、周回するぞー!」


 そもそも、ここへ来るだけでも丸太筏を作らないといけない。


 だったら、一回一回を無駄にはできない。


 来られるうちに来て、取れるだけ取っておくべきだ。


 そうして、俺は何度もボスを倒した。


 そして「堰守の甲羅」を集める。


 大分溜まった。


「よし」


 これだけあれば、しばらくは足りるだろう。


 ようやく、次へ進むための材料が揃った気がした。


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